>
>
公開日
Sakana AIの「Sakana Namazu」は、オープンモデルのKimi K2.6をベースに、日本語と日本の業務文脈へ独自データでチューニングしたLLMです。OpenAI互換のAPIとして提供され、base_urlとモデル名を差し替えるだけで既存のコードから呼び出せます。情シスにとってこれは、統制可能な調達ルートが用意されたという前向きな話である一方、開発者が承認なしに設定1行で送信先を変えられるという新しいリスクの入口でもあります。本記事では、料金体系とAPI仕様を押さえたうえで、同名の無料サービスとの混同をどう避けるか、法人プランで何を取りに行くべきかを整理します。
本記事のポイント
✓ 同じ「Namazu」に2系統ある:無料の Sakana Chat(α版Namazu搭載)と、商用APIの Sakana Namazu は規約もデータ扱いも別物。申請審査で最初に切り分けるべき論点
✓ ベースはKimi K2.6(Moonshot AI):2026年3月のα版はDeepSeek/Llama/gpt-oss系だった。数か月でベースが入れ替わっており、社内規程を「禁止モデル名」で書く運用は成立しない
✓ OpenAI互換=base_url 1行でシャドーAI化:既存資産を活かせる反面、承認なしに社内データの送信先を変えられる。従来のSaaS棚卸しでは検知しにくい
✓ 法人プランでZDR・リージョン指定が相談可能:ただしデフォルトではない。個人でAPIキーを取得した利用は保護のない条件で社内データを流すことになる
Sakana Namazuとは?Kimi K2.6ベースの日本語特化LLM
Sakana Namazuは、ゼロから訓練された国産モデルではなく、オープンモデルのKimi K2.6をベースに、Sakana AIが社内独自のデータで日本語と日本の業務に合わせてチューニングしたLLMです。Web検索とコード実行を組み合わせて、複雑なタスクを最後まで完走させる用途を想定して設計されています。
3つの訴求ポイント
公式ページでは、次の3点が特徴として掲げられています。
訴求 | 内容 | 情シスの読み替え |
|---|---|---|
日本語と日本の業務文脈に特化 | 敬語や商習慣を踏まえた自然な日本語で業務文書やメールを処理 | 日本語比率の高い定型処理を安価に大量処理する用途に向く |
高性能な問題解決能力 | モデル自身がWebを調べ、コードを書いて動かしながらタスクを完走 | エージェント的挙動を前提とした権限設計とログ設計が必要 |
切り替えは設定変更だけ | 接続先を1か所変えるだけで既存のコードやツールが動作 | 移行容易性と同時に、無断切り替えの容易性でもある |
利用開始の手順とマルチモーダル対応
導入手順は3ステップで、API Consoleでアカウントを作成してキーを発行し、接続先を https://api.sakana.ai/v1 に差し替え、モデル名に sakana-namazu を指定するだけです。OpenAI SDKをそのまま使えます。
python
料金がテキストと画像のトークン量で計算される旨が公式ページに記載されており、画像入力に対応するマルチモーダルモデルであることがわかります。デモの1つでは、画像認識能力を使って参考画像をWebから収集し、座標指定で1,000匹の魚群にモチーフを再現させる例が示されています。なお、コンテキスト長とレート制限は公式ページに明記がないため、設計前に確認が必要です【要確認7】。
【最重要】同じ「Namazu」に2つある|Sakana ChatとAPIの違い
情シスが最初にやるべきことは、上がってきた申請がどちらのNamazuなのかを切り分けることです。名前が同じでも契約形態・データの扱い・禁止事項がまったく異なり、片方の審査結果をもう片方に流用すると判断を誤ります。
比較軸 | Sakana Chat(無料) | Sakana Namazu(API) |
|---|---|---|
搭載モデル | Namazu α版 | Sakana Namazu(Kimi K2.6ベース) |
ベースモデル | DeepSeek-V3.1-Terminus/Llama 3.1 405B/gpt-oss-120B | Kimi K2.6 |
提供形態 | Webチャット・翻訳(Sakana Translate) | OpenAI互換API |
料金 | 無料 | トークン従量課金+ツール利用料 |
利用可能地域 | 日本国内からのみ | EU・EEA域内、英国、スイスは利用不可 |
入力データの学習利用 | 規約上デフォルトで利用対象。設定画面からオプトアウト可 | 【要確認2】 |
機密情報の入力 | 規約の禁止事項で明示的に禁止 | 法人プランでZDRを相談可能 |
情シスの主戦場 | シャドーAI検知と利用ルール周知 | 契約条件の詰めとAPIキー管理 |
無料のSakana Chat側は、規約(2026年5月19日制定)で入力内容を学習・改良に利用すると定めており、禁止事項として自己または第三者の個人情報の入力、および他人の機密情報・営業秘密の入力が挙げられています。加えて、アカウント削除後も学習を行ったモデルの重みや監査ログについては削除義務を負わないとされています。無料版は規約の設計上、そもそも業務データの投入を想定していません。
一方のAPI版は、法人プランで円建て支払い・請求書払い・リージョン指定・ゼロデータ保持(zero data retention)といった要件に応じた相談が可能とされています。同じ製品名でありながら、業務利用の可否がプロダクトのレイヤーで分かれている点が、今回のNamazuを審査する際の最大の注意点です。従業員が「Namazuは会社で使えると聞いた」と言ってきたとき、それがAPI経由の話なのか無料チャットの話なのかで結論は逆になります。
無料チャット側の規約リスクと利用ルールの作り方はAI利用ガイドラインの作り方と生成AI社内ルールに必要な10項目、機密区分の切り方は機密情報と個人情報の違い・3段階分類を基準にすると社内で説明しやすくなります。
ベンチマークの読み方|Kimi K2.6比で何が上がったのか
公式が示しているのは「ベースの高い性能を維持しつつ、日本語と日本固有の文脈の理解力ではすべての項目でベースを上回った」という構図です。維持と向上を分けて読むことが、過大評価を避けるポイントになります。
領域 | ベンチマーク | 対Kimi K2.6の結果 |
|---|---|---|
数学的推論 | AIME26 | ベースの高い性能を維持 |
幅広い知識と推論力 | MMLU-Pro | ベースの高い性能を維持 |
コーディング | LiveCodeBench v6 | ベースの高い性能を維持 |
日本語の指示理解・応答品質 | JFBench | ベースを上回る |
日本語翻訳 | Translation(社内ベンチマーク) | ベースを上回る |
中立性 | FairPoliticsQA | 34.10% → 56.30% |
情シスとして押さえるべき論点が3つあります。
第一に、日本語以外の領域は「維持」であって「向上」ではないという点です。コーディングや数学的推論を主目的に選定するなら、Kimi K2.6そのものや他のフロンティアモデルと比較する必要があり、Sakana Namazuを選ぶ理由は日本語と日本の業務文脈に絞られます。
第二に、FairPoliticsQAの56.30%という絶対値の解釈です。34.10%からの向上幅は大きいものの、到達点は半分強にとどまります。α版で示された「回答拒否率72%→ほぼ0%」とは指標の性質が異なるため、社内資料で両者を混同しないよう注意してください。中立性が改善したことと、中立性が担保されたことは別の話です。
第三に、Translationが社内ベンチマークである点です。第三者による独立検証ができない指標のため、選定資料に引用する場合は「提供元の自社評価」と明記しておくのが安全です。翻訳用途で既存ツールと比較する場合は、DeepLの機能と法人利用の考え方と並べて自社の実データで評価することをおすすめします。技術的な詳細は公式ブログで解説されているため、選定前に一次情報を確認してください【要確認10】。
料金体系と「トークン以外に効く」ツール利用料
Sakana Namazuは月額固定費がなく、消費したトークン量と、Web検索・コード実行を使った分だけの従量課金です。単価はフロンティアモデルと比べて明確に安く、大量の日本語定型処理を安価にさばく設計になっています。
課金項目 | 単価(USD) | 参考円換算(1ドル160円) |
|---|---|---|
入力 | $0.95 / 1M tokens | 約152円 |
出力 | $4.00 / 1M tokens | 約640円 |
キャッシュ済み入力 | $0.15 / 1M tokens | 約24円 |
Web検索 | $7.00 / 1,000回(ページ本文の取得込み) | 約1,120円 |
コード実行 | $0.12 / 時間(セッション保持) | 約19円 |
※円表記は公式ページが1ドル160円で換算した参考価格です。実際の請求は米ドル建てとなります。
エージェント用途では検索回数がコストを決める
見落とされやすいのが、トークン単価とツール利用料の性質の違いです。Web検索は1,000回あたり$7.00で、ページ本文の取得を含みます。自律的に情報を集めるエージェントを組むと検索回数は容易に数十回/実行に達するため、実行回数×検索回数でコストが決まる構造になります。トークン単価が安いことに安心して検索回数の上限を設けないと、想定外の請求につながります。
対策はシンプルで、実行あたりの検索回数に上限を実装し、キャッシュ済み入力($0.15)を活用できるプロンプト設計にすることです。同一の長い前提文をリクエストごとに送り直す設計では、キャッシュの恩恵を受けられません。
モデル仕分けの受け皿として位置づける
同じSakana AIのSakana Fuguは高性能版のAPI単価が入力$5.00/出力$30.00(100万トークンあたり、272K以下)であり、Sakana Namazuは入力で約5分の1、出力で約7分の1の水準です。Fugu記事で触れた「Token Gobbler」対策としてのタスク仕分け戦略に、明確な受け皿ができたことになります。
現実的な三層設計は次のようになります。
高度な論理推論・多角的分析・大規模デバッグ → Fugu Ultra等のマルチエージェント基盤
日本語中心の大量定型処理(問い合わせ返信、文書整形、要約、翻訳の下書き) → Sakana Namazu
単純な分類・抽出 → さらに安価な小型モデル
AI予算の膨張を抑える観点では、この仕分けルールをコード側のルーティングに実装することが要点です。コスト構造の見直しについてはSaaSコスト削減と最適化の実務の考え方が応用できます。
OpenAI互換がもたらす新しいシャドーAIリスク
「接続先を1か所変えるだけ」という導入容易性は、統制の観点では承認なしに社内データの送信先を変更できるという意味になります。これは従来のシャドーAI対策の網に引っかかりにくい、新しい形態のリスクです。
従来のシャドーAI検知は、SaaSへのログインやOAuth連携、SSOのアプリ一覧、ブラウザからのアクセスログを手がかりにしてきました。しかしOpenAI互換APIの差し替えは、ブラウザを経由せず、アカウント連携も発生せず、サーバーやCI環境から api.sakana.ai へHTTPSで通信するだけです。IDaaSのアプリ一覧にも、SaaS管理ツールのアカウント棚卸しにも現れません。
検知と抑止の実務的な打ち手は次の3つです。
エグレス制御:本番・ステージング環境からの外部API宛て通信を許可リスト方式にし、未承認のLLMエンドポイントを遮断する
リポジトリの静的検査:
base_urlの値やモデル名文字列をCIでスキャンし、許可外のエンドポイント指定を検出するAPIキーの発行統制:LLM APIキーはシークレット管理基盤で集中管理し、個人名義の発行と環境変数へのハードコードを禁止する
AIコーディング環境から発生する類似の統制課題はシャドーMCP対策ガイド、シャドーAI全般の検知手法は生成AI利用状況の可視化とシャドーAI検知の手順で扱っています。あわせて、Web検索とコード実行を自律的に行うモデルであるため、外部Webコンテンツを取り込む過程で間接プロンプトインジェクションの影響を受ける可能性があります。出力をそのまま業務処理に流さない設計が前提です(プロンプトインジェクションの手口と対策)。コード実行を伴うエージェントの権限設計はAIコーディングエージェントのガバナンス設計が参考になります。
法人プランで確認すべき7項目|ZDR・リージョン・バージョン固定
法人プランでは、円建て支払い・請求書払い・リージョン指定・ゼロデータ保持(ZDR)など、要件に応じた相談が可能とされています。重要なのは、これらがデフォルトで付いてくるものではなく、契約時に取りに行く条件である点です。
問い合わせ時に確認すべき項目を優先度順に整理します。
No | 確認項目 | なぜ必要か |
|---|---|---|
1 | ゼロデータ保持(ZDR)の適用範囲 | 入力・出力・ツール実行ログのどこまでが対象か。プロンプトは残らないがWeb検索クエリは残る、といった差が出やすい |
2 | 学習利用の有無と停止の契約上の担保 | 「オプトアウト設定」ではなく契約書面で担保されるかが監査対応の分かれ目【要確認2】 |
3 | データ処理・保管のリージョン | 日本国内で完結するか、推論とログで場所が分かれないか【要確認3】 |
4 | モデルのバージョン固定 |
|
5 | SSO・監査ログ・アクセス権限管理 | 公式ページの法人プラン記載には含まれていない。提供状況を個別確認する必要がある【要確認9】 |
6 | SLA・稼働率・サポート窓口 | 業務プロセスに組み込む前提条件 |
7 | 第三者認証(SOC 2/ISMS等)と副処理者の一覧 | 委託先管理の観点で自社の監査要件に耐えるか |
とくに4番のバージョン固定は、API提供のLLMを業務に組み込む際に見落とされやすく、後から効いてくる項目です。モデルが更新されると、同じプロンプトでも出力形式やトーンが変わり、後続の自動処理が壊れます。日付付きスナップショットの提供有無と、旧バージョンの提供終了までの猶予期間を契約前に確認してください。
また、EU・EEA域内、英国、スイスからは利用できないという地理的制限が明記されています。これは同社のSakana Fuguと同様の対応方針ですが、Fuguの制限がEU・EEAだったのに対し、Sakana Namazuでは英国とスイスが追加されています。欧州拠点や海外出張者を抱える企業は、利用地域の技術的ブロックを含めたアクセス制御の設計が必要です。監査に耐える統制の全体像はAIガバナンスの推進体制と実装ステップ、認証取得を絡める場合はISO 42001(AIMS)の要求事項を参照してください。
ベースモデルがKimi K2.6である点をどう社内規程と整合させるか
Sakana NamazuのベースはMoonshot AI(中国)のKimi K2.6です。社内規程に「中国製モデルの利用禁止」と書いてある企業では、この一点で形式的に引っかかります。ここは規程そのものの書き方を見直す好機です。
まず事実関係を整理します。2026年3月に公開されたNamazu α版のベースはDeepSeek-V3.1-Terminus、Llama 3.1 405B、gpt-oss-120Bの3系統でした。それが数か月のうちに、同じ「Namazu」という製品名のままKimi K2.6ベースへと入れ替わっています。製品名は変わらず、ベースモデルだけが差し替わったという、極めてわかりやすい実例です。
規程を「禁止するモデル名」で書くと、この種の入れ替えに追随できません。ベースは差し替わり、ラッピングされ、名前も変わります。判断軸は次の順序で設計するほうが持続します。
サービス提供事業者は誰か(契約相手・準拠法・管轄裁判所)
入力データはどこで処理・保管され、どの国の法令が適用されるか
入力データは学習等に二次利用されるか、停止が契約で担保されるか
アカウント管理・キー管理・ログ取得が監査に耐えるか
(参考情報)ベースモデルの出自とライセンス
この順序で見ると、Sakana Namazuの契約相手はSakana AIであり、ベースモデルの出自は5番目の参考情報に落ちます。オープンウェイトモデルは、誰がどこで動かすかによってデータの流れが変わるためです。
参考として、2025年2月に個人情報保護委員会が公表した「DeepSeekに関する情報提供」は、DeepSeek社のサービス利用に伴い取得されたデータが中国に所在するサーバに保存され、中国の法令が適用される点を周知したものでした。あわせてデジタル社会推進会議幹事会事務局から、各政府機関等に対しDeepSeek等の生成AIの業務利用に関する注意喚起が発出されています。いずれも問題としたのは運営事業者へのデータ送信であり、公開されたモデルの重みそのものではありません。この区別を規程に反映できていないと、実運用と規程が乖離します。
Kimi系モデル自体のライセンスとセキュリティ論点はKimi K3のセキュリティ・ライセンス条項の読み方、企業導入の観点はKimi K3の企業導入ガイドで整理しています。ベースモデル側の条件を理解しておくと、Sakana AIとの契約交渉でどこまでが同社の裁量なのかを見極めやすくなります。
情シスの実務対応4ステップ|評価から本番組み込みまで
API提供のLLMは、無料チャットとは逆の順序で管理します。まず正規ルートを用意してから、無断利用を塞ぐ流れです。禁止だけを先に出すと、開発現場が個人名義のキーで動き始めてしまいます。
ステップ1:正規のAPIキー発行ルートを先に用意する
法人プラン経由で契約し、ZDRとリージョンの条件を確定させたうえで、シークレット管理基盤にキーを登録します。この段階で「使いたい場合はここから申請する」という窓口を明示しておくことが、無断利用の抑止に直結します。個人名義のキー発行と環境変数へのハードコードは、この時点で禁止事項として明文化します。
ステップ2:評価は隔離環境と公開データで行う
契約前の技術評価は、公開情報またはダミーデータに限定し、評価用キーを本番用と分離します。評価観点は日本語の敬語・商習慣の再現性、Web検索の出典提示、コード実行の安定性に絞ると、他モデルとの差が出やすくなります。相対比較の軸はAIエージェント・主要AIツールの比較やClaudeの日本語精度と企業活用の整理が使えます。
ステップ3:エグレス制御とコード検査で無断切り替えを塞ぐ
前章のとおり、OpenAI互換APIの差し替えは既存の検知手法をすり抜けます。本番・ステージング環境からの外部API通信を許可リスト方式にし、CIで base_url とモデル名の文字列を検査する仕組みを入れてください。あわせて、無料のSakana Chat側についても利用実態の可視化を行い、業務データが入っていないかを確認します(シャドーAIの検知の仕組みと対策)。
ステップ4:コスト上限とバージョン変更の監視を運用に載せる
検索回数の上限、月次の利用上限アラート、モデルバージョンの変更通知の3点を運用に組み込みます。バージョン固定が提供されない場合は、代表的なプロンプトの出力を定期的に回帰テストし、挙動変化を検知できる状態にしておくのが現実的な代替策です。
よくある質問(FAQ)
Q:Sakana Namazuと無料のSakana Chatは同じものですか?
A:別物です。Sakana NamazuはKimi K2.6をベースにした商用LLMでOpenAI互換APIとして提供され、法人プランではゼロデータ保持やリージョン指定を相談できます。一方Sakana Chatは無料のWebチャットで、搭載モデルは2026年3月公開のNamazu α版(DeepSeek/Llama/gpt-oss系ベース)です。規約上、無料版は入力データの学習利用がデフォルトで対象となり、個人情報や第三者の機密情報の入力が禁止されています。審査時はどちらの話かを必ず確認してください。
Q:業務データを入れて使えますか?
A:API版については、法人プランでゼロデータ保持(zero data retention)やリージョン指定を相談できるとされているため、契約条件を確定させたうえでの利用は選択肢になります。ただしこれらはデフォルト設定ではありません。個人でAPIキーを取得しただけの利用は、こうした保護のない条件で社内データを送信することになります。無料のSakana Chatについては、規約の禁止事項に該当し得るため業務データの投入は避けてください。
Q:料金はどのくらいかかりますか?
A:月額費用はなく、入力$0.95/出力$4.00/キャッシュ済み入力$0.15(いずれも100万トークンあたり)の従量課金です。加えてWeb検索が1,000回あたり$7.00、コード実行が1時間あたり$0.12かかります。エージェント用途では検索回数がコストを左右するため、実行あたりの検索回数に上限を設けてください。
Q:Sakana Fuguとの違いは何ですか?
A:Sakana Namazuは単一モデルのAPIで、日本語と日本の業務文脈への適合とコスト効率が持ち味です。Sakana Fuguは複数のフロンティアモデルを動的に協調させるマルチエージェント基盤で、高度な論理推論に強い一方でトークン消費が大きくなります。単価差は入力で約5倍、出力で約7倍あるため、タスクの難易度で仕分けるのが実務的です。詳細はSakana Fuguの企業導入ガイドで解説しています【要確認4】。
Q:既存のOpenAI向けコードからそのまま移行できますか?
A:base_urlを https://api.sakana.ai/v1 に変更し、モデル名を sakana-namazu に指定するだけで動作するとされています。ただし情シスの立場では、この容易さは無断切り替えの容易さでもあります。エグレス制御とCIでのコード検査をあわせて整備してください。
Q:海外拠点でも利用できますか?
A:GDPR等のEU/EEA固有規制への対応を進めているとされ、現時点でEU・EEA域内、英国、スイスからは利用できません。同社のSakana FuguはEU・EEAが対象でしたが、Sakana Namazuでは英国とスイスが加わっています。欧州に拠点や出張者がある企業は利用地域の制御を設計してください。
Q:モデルのバージョンは固定できますか?
A:公式ページで確認できるモデル名は sakana-namazu のみで、日付付きスナップショットの提供有無は明記されていません。業務に組み込む場合、モデル更新による出力変化で後続処理が壊れるリスクがあるため、契約前にバージョン固定の可否と旧バージョンの提供終了猶予を確認することをおすすめします【要確認8】。
まとめ
Sakana Namazuは、Kimi K2.6という高性能なオープンモデルを土台に、日本語と日本の業務文脈へ寄せたLLMです。OpenAI互換API、フロンティアモデル比で明確に安い単価、法人プランでのゼロデータ保持とリージョン指定という組み合わせは、日本語中心の大量処理を担わせる選択肢として現実的な水準に達しています。
一方で情シスが押さえるべき論点は3つに集約されます。第一に、無料のSakana Chatと商用のSakana Namazuは名前が同じでも規約もデータ扱いも別物であること。第二に、接続先1行の差し替えで送信先が変わるため、従来のSaaS棚卸しでは無断利用を検知できないこと。第三に、ゼロデータ保持やバージョン固定はデフォルトではなく、契約時に取りに行く条件であることです。
そして今回の事例が示した最も汎用的な教訓は、同じ製品名のままベースモデルが数か月で入れ替わったという事実です。社内規程を禁止モデル名で書いている限り、この変化に追随できません。事業者・処理場所・二次利用・監査可能性を判断軸に据えた書き方へ改めるタイミングです。
明日から着手できる順序は次のとおりです。
申請の切り分け:Namazu関連の申請が無料チャットかAPIかを区別する運用を先に決める
正規ルートの用意:法人プランでZDR・リージョン・バージョン固定を確認し、キーをシークレット管理基盤に集約する
無断切り替えの封鎖:エグレス制御の許可リスト化と、CIでの
base_url検査を実装する規程の書き換え:禁止モデル名の列挙をやめ、事業者・処理場所・二次利用・監査可能性の4軸に置き換える
新しいAIサービスが登場するたびに同じ調査を繰り返さないためには、SaaSとアカウントの棚卸しを仕組みとして持っておくことが有効です。利用状況の可視化についてはAdminaのSaaS可視化機能、統制要件への対応はコンプライアンス対応機能、試用は無料トライアルからご確認ください。
本記事の内容に誤り等がございましたら、こちらからご連絡ください。
監修
Admina Team
情シス業務に関するお役立ち情報をマネーフォワード Adminaが提供します。
SaaS・アカウント・デバイスの管理を自動化し、IT資産の可視化とセキュリティ統制を実現。
従業員の入退社対応や棚卸し作業の工数を削減し、情報システム部門の運用負荷を大幅に軽減します。
中小企業から大企業まで、情シス・管理部門・経営層のすべてに頼れるIT管理プラットフォームです。









