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ゼロタッチキッティングは、PCの入替や新入社員への端末配布を、情シスの物理作業からクラウド設定中心の運用へ移す方法です。端末を利用者の自宅や拠点へ直送し、初回起動後にWi-Fiへ接続して会社アカウントで認証すると、必要なセキュリティ設定やアプリを自動適用できます。
ただし、ゼロタッチデプロイは「誰も何もしない」仕組みではありません。「誰も何もしない」という表現は、情シスの物理作業を原則なくすという意味であり、事前の設計や調達・物流の役割分担まで不要になるわけではありません。MDMの設計、購入時の端末登録、通信帯域の見積もり、資産ラベルの貼付など、事前に分担を決めるべき作業が残ります。Windows中心の企業だけでなく、MacキッティングやiPhone・iPadの一括配布を行う組織にも役立つよう、OSごとの役割分担と判断基準を具体化します。

ゼロタッチキッティングとは
ゼロタッチキッティングとは、端末固有の識別情報をあらかじめ管理基盤へ登録し、利用者の初回起動時に業務用設定を自動配信する導入方式です。
本記事のポイント
ゼロタッチキッティングでは、情シスによる端末ごとのOS設定やアプリ導入を減らせます。
Windows、Apple製品、Androidでは、登録プログラムとMDMの組み合わせが異なります。
認定販売店からの自動登録は、同一販売チャネルで継続調達できる環境であれば手作業を最小化しやすい一方、既存端末を手動登録する例外手段もあります。
導入成否は、端末調達、ID、MDM、ネットワーク、物理作業の設計を分けて決めることで左右されます。
定義と対象範囲
ゼロタッチキッティングは、PCやスマートデバイスを管理者が開封して個別設定する代わりに、クラウド上のポリシーを端末へ配信する方法です。利用者は端末を受け取り、インターネットへ接続して組織アカウントでサインインします。その後、Wi-FiやVPNの設定、証明書、暗号化、EDR、業務アプリなどがMDMから配布されます。配布の順序や方式は、OSやMDM製品、アプリの種類によって異なります。
ここでいう「ゼロタッチ」は、情シスが原則として実機へ触れずに済む状態を指します。利用者の開封、電源投入、ネットワーク接続、認証は残ります。資産管理ラベルの貼付、同梱物の調整、検品、配送もクラウドでは自動化できません。IPAの入札関連文書でも、端末の払い出し・返却には検品、キッティング、配布・回収、資産管理台帳の維持管理が作業項目として含まれています。
従来方式との違い
手動キッティングでは、担当者が端末を開封し、初期設定、OS更新、アプリ導入、暗号化、動作確認を1台ずつ実施します。クローニングでは、標準化したマスターイメージを複数端末へ展開しますが、OS更新や機種変更のたびにイメージを保守する負担が発生します。
方式 | 主な作業場所 | 設定の基準 | 向く場面 |
|---|---|---|---|
手動キッティング | 情シス部門・キッティングセンター | 担当者の作業手順 | 少数端末、特殊機器が多い環境 |
クローニング | 社内または委託先 | マスターイメージ | 同一機種・同一構成を短期間で配る環境 |
ゼロタッチキッティング | 利用者の自宅・拠点を含む | MDMの構成プロファイルと配布ルール | 直送、複数拠点、継続的な端末更新 |
手動作業にかかる時間と、利用者側の初期セットアップにかかる時間は、端末構成や作業範囲によって異なります。この時間差は、情シスの作業時間と利用者が待つ時間を分けて評価すると比較しやすくなります。
MDMの役割
MDMは、端末登録後に設定・アプリ・セキュリティポリシーを配る管理基盤です。ゼロタッチ導入では、OSベンダーの登録サービスが「どの組織の端末か」を識別し、MDMが「どの設定を配るか」を決めます。端末配布後も、紛失時のワイプ、OS更新、アプリ配布、準拠状態の監視を継続できます。
MDMの機能や導入範囲は、MDM(モバイルデバイス管理)の必要性と基本機能で確認できます。ゼロタッチを検討する際は、初回設定だけでなく、返却・初期化・再配布までを同じ管理基盤で扱えるかを設計対象に含めます。
ゼロタッチ導入が必要になる背景
端末更新とセキュリティ運用が重なる組織では、ゼロタッチキッティングによって展開作業を平準化できます。
Windows 11移行と教育分野の展開
Windows 10のサポート終了時期については、Microsoftの製品ライフサイクルページ(Windows 10 Home and Pro のライフサイクル)で現行スケジュールを確認でき、終了が近づくにつれてWindows 11への移行に伴うPCの調達・配布・再設定が集中しやすくなります。台数が増えるほど、個別作業を前提にした運用では通常業務が圧迫されます。ITmedia @ITが2024年7月に紹介したキッティング手法の調査によると、Windows Autopilotの利用率は全体では2.8%から9.6%へ、5001人以上の大企業では6.8%から26.5%へ増加しており、特に大企業での採用拡大が目立ちます。
教育分野でも、文部科学省のGIGAスクール構想第2期の調達等ガイドラインに、ゼロタッチによる端末の初期設定作業の自動化により導入・入替等の作業負荷が軽減されると記載されています。山口県教育委員会は、Microsoft Intuneを介してクラウド上に設定を構築し、Autopilotを使った大規模な事前プロビジョニング展開を実施したとされています。大量配布では、端末を設定する場所を集約しないこと自体が運用上の利点になります。
工数削減を読むための前提
「工数を90%削減できる」と一律に捉えるのは危険です。Jamf Proの導入事例では、株式会社アトラエがゼロタッチ導入によりキッティングにかける作業を体感として9割削減できたと紹介されていますが、この数値はMac管理の対象作業を比較した事例です。すべての企業、すべての物理作業に同じ削減率が当てはまるわけではありません。
比較する際は、手動作業に含めていた範囲を先に固定します。たとえば、100台を1台3時間で手動設定していた場合、作業時間は300時間です。ゼロタッチ導入後に情シスの実機作業を検品・例外対応の0.5時間へ抑えられれば、50時間となり、250時間を他業務へ振り替えられます。一方で、ラベル貼付や個別ソフトの設定が残るなら、その時間は削減効果に含めません。
キッティング時間の分布は、作業範囲や環境によって幅があります。自社の実測値がない場合は、直近のPC入替で担当者が記録した開封、設定、確認、配送の時間を分けて集計し、どの工程を自動化できるかを判断します。
市場拡大と管理範囲
国内PC運用管理・保守サービス市場は継続的な成長が見込まれるとする調査があり、端末のライフサイクル管理需要が背景として挙げられています。端末を配るだけでなく、利用中のパッチ適用、故障交換、返却、廃棄までを一貫して管理する需要が背景にあります。
ゼロタッチPCを導入する目的は、単にセットアップを速くすることではありません。端末が初回利用時から管理下に入り、利用者や拠点が増えても同じ基準でセキュリティを適用できる状態を作ることです。
▶ 関連記事: MDMとは?仕組みと選び方・主要製品比較を解説【2026最新】
OS別の仕組みと選定基準
OS別のゼロタッチキッティングは、登録プログラム、ID基盤、MDMの三層を接続して実現します。
Windowsの構成
Windowsでは、Windows AutopilotとMicrosoft Intuneを組み合わせる構成が代表例です。販売店やメーカー、または管理者が端末のハードウェアハッシュをAutopilotへ登録し、端末に展開プロファイルを割り当てます。利用者がWindowsの初期セットアップ画面で組織アカウントにサインインすると、Entra IDへの参加、MDM登録、アプリとポリシーの適用が進みます。
必要なライセンスは、Intuneの契約形態、MDM自動登録の構成、Entra ID JoinかHybrid Entra ID Joinか、利用する条件付きアクセスによって変わります。料金・含有機能は改定されるため、調達時は契約中テナントの管理センターで自動MDM登録とクラウド参加が有効になっているかを確認します。有効であればパイロット展開へ進み、有効でない場合は必要なライセンスまたは参加方式を整理してから端末を発注します。
オンプレミスActive Directoryへの依存が強い場合は、Hybrid Entra ID Joinを選ぶことがあります。ただし、初期設定中にドメイン接続やVPNが必要になる設計は、直送運用の失敗要因になります。社内ネットワークへ接続しないと使えないアプリがあるなら、クラウド参加端末で利用できる代替手段を先に検証し、代替できない業務端末だけを例外フローに分けます。
Mac・iPhone・iPadの構成
Macキッティングでは、Apple Business Managerだけでは自動設定を完結できません。Apple Business Managerは、組織所有端末を組織に紐付け、MDMへ割り当てるための管理ポータルです。実際に管理プロファイルを強制適用するのは、MDM側で設定するAutomated Device Enrollmentです。
標準的な流れは、Apple Business ManagerでMDMサーバーを登録し、販売店から組織へ割り当てられた端末をMDMへ配分し、MDMでAutomated Device Enrollmentのプロファイルを作成する順番です。プロファイルには、セットアップアシスタントで表示する画面、FileVaultの暗号化、Wi-Fi設定、アプリ配布、管理者権限の扱いを含めます。Jamf Pro、Intune、IruなどのMDMは、このプロファイル配信と継続管理を担います。
Macは利用者にローカル管理者権限を付与するかで、運用の安全性とサポート負荷が変わります。開発ツールなどのために権限が必要な部門があるなら、全社員共通の管理者付与ではなく、対象グループへ限定した権限昇格フローを設計します。株式会社Tooは、他社MDMからIruへ移行した事例で、Macのセットアップ時間が半減したと発表しています。
Androidの構成
Androidでは、Android Zero-touch Enrollmentを使い、対応端末を対応パートナー経由で購入してMDMへ関連付けます。要件の中心は、端末がゼロタッチ登録に対応していること、購入チャネルが対応していること、Android Enterpriseに対応するMDMを利用することです。Google WorkspaceはAndroid Zero-touch Enrollmentの技術要件には含まれていませんが、MDM製品や管理モードの選択によって必要なライセンスは変わるため、採用するMDMベンダーの契約条件を個別に照合します。
初回起動時には、端末が登録情報を取得し、指定されたMDMによる企業管理を開始します。個人利用も認めるBYODでは仕事用プロファイル、会社支給端末を全面管理する場合はフルマネージド端末など、管理モードを業務要件に合わせて分けます。端末のOSバージョンだけでゼロタッチ対応可否は決まらないため、発注前に販売店の対応機種一覧とMDMの対応モードを照合します。
比較表と判断軸
対象OS | 登録の基盤 | MDMで担う作業 | 選定時の判断軸 |
|---|---|---|---|
Windows | Windows Autopilot | Entra ID参加、構成プロファイル、アプリ、準拠状態 | 既存ID基盤、Windowsアプリ、直送の可否 |
macOS・iOS・iPadOS | Apple Business ManagerとAutomated Device Enrollment | 管理プロファイル、暗号化、アプリ、監視・制限 | 販売店のABM割当、管理者権限、Apple専用機能 |
Android | Android Zero-touch Enrollment | Android Enterprise登録、業務プロファイル、アプリ配信 | 対応端末、パートナーチャネル、管理モード |
複数OSを管理する場合は、すべてを単一製品に寄せることだけを目的にしません。Windows端末の準拠判定と条件付きアクセスを優先するならIntune中心、Apple固有の設定やMac運用を細かく扱うならAppleに強いMDMを併用するなど、必要な管理粒度から決めます。比較の観点は、料金ではなく、対応OS、登録方式、アプリ配布、暗号化、ログ、API、運用担当者の体制で統一します。
MDMの製品比較を始める前に、MDM(モバイルデバイス管理)の概要と製品選定のポイントで、管理対象と必要機能を整理すると選定条件を作りやすくなります。
▶ 関連記事: Kandji(Iru)と Admina の連携手順と注意点を解説|API設定・デバイス管理の実務ガイド
▲ ゼロタッチキッティングを構成する3層の基盤と設定配信の流れ
ゼロタッチキッティングの導入手順
ゼロタッチキッティングは、小規模な検証で設定・通信・例外処理を固めてから対象端末を広げる手順が安全です。
要件整理の段階
最初に行うのは、対象端末、利用者、配布先、アプリ、認証方式、返却時の処理を一覧化することです。ここでは「全端末を同じ手順にする」ことよりも、例外を先に分類します。たとえば、工場で専用USB機器を使うPC、開発者向けMac、オフライン拠点の端末は、標準プロファイルだけでは完結しない可能性があります。
端末ごとに、誰が発注するか、誰が識別情報を登録するか、誰がラベルを貼るか、誰が配送するかを決めます。調達部門、情シス、販売店、物流委託先の役割が曖昧なまま発注すると、端末は届いたが管理基盤に登録されていないという問題が起きます。
管理基盤の構築段階
次に、ID基盤とMDMを接続し、標準プロファイルを作成します。標準プロファイルには、ディスク暗号化、画面ロック、OS更新、EDR、ブラウザ、業務アプリ、証明書、Wi-FiまたはVPNを含めます。アプリは必須と任意に分けます。初回セットアップ時に大量の任意アプリまで必須化すると、利用開始までの時間が延び、失敗時の切り分けも難しくなります。
アプリの配信順は、認証、セキュリティ、業務継続の順で決めます。具体的には、MDM登録、暗号化、EDR、ブラウザ、業務アプリの順に成功を確認し、会議ツールや補助アプリは利用開始後に配信する設計が扱いやすくなります。
調達と端末登録の段階
端末調達では、認定販売店またはメーカーから識別情報を登録してもらう方式が、最も手作業を減らせます。WindowsではAutopilotへのハードウェアハッシュ登録、AppleではApple Business Managerへの端末割当、Androidではゼロタッチポータルへの登録が該当します。
販売店へ依頼する発注書には、端末型番・数量だけでなく、登録先テナント、組織ID、MDMへの割当先、資産ラベルの貼付位置、配送先情報、同梱する案内書を明記します。登録済み端末がどのグループへ割り当てられるかを、出荷前にサンプル端末で照合します。
パイロット検証の段階
パイロット検証では、情シス用端末だけで完了とせず、一般利用者に近いアカウント、社内ネットワーク、自宅回線、モバイル回線を使って確認します。登録、サインイン、暗号化、必須アプリ、再起動、利用開始までの所要時間を記録します。失敗した場合は、MDMの展開ログ、端末のイベントログ、ネットワークの通信ログを同じチケットに残すと原因を分けやすくなります。
時期 | 実施内容 | 完了判断 |
|---|---|---|
発注前 | 対象端末、ID、MDM、調達ルート、例外端末を整理 | 端末ごとの登録責任者が決まっている |
構築期 | ポリシー、アプリ、暗号化、通信許可を設定 | 標準利用者の業務開始に必要な設定が定義されている |
検証期 | 異なる回線・アカウント・端末機種で試験 | 失敗時の復旧手順と担当者が決まっている |
展開期 | 出荷、利用者案内、問い合わせ受付、ログ監視 | 初期化・再配布を含む運用手順が使える |
導入判断のチェックリスト
対象端末のOS、機種、所有区分、配布先を一覧化しています。
端末の登録方式を、自動登録と手動登録のどちらにするか決めています。
必須アプリと任意アプリを分け、初回セットアップで必須となるアプリ数を抑えています。
初回起動時に必要な認証先、MDM、OS更新先への通信を許可しています。
暗号化の回復キー、紛失時のワイプ、退職者からの回収、再配布の手順を決めています。
ラベル貼付、検品、梱包、配送の担当と証跡の保管場所を決めています。
この項目がそろっているなら限定展開へ進めます。端末登録の担当または通信経路が未確定なら、大量発注ではなく検証端末で不足項目を埋める段階です。
国内導入事例
組織・業種 | 導入時期 | 課題→施策→成果 |
|---|---|---|
山口県教育委員会・教育 | 公式事例公表時点 | 大規模端末展開に向け、Microsoft Intuneでクラウド上の設定を構築し、Autopilotによる事前プロビジョニングを実施しました。Microsoftは教育現場で初の大規模展開として紹介しています。 |
中外製薬株式会社・製薬 | サービス導入事例公表時点 | スリムワークサポートを利用して大規模なPCリプレースを実施したと、パナソニック コネクトが事例として紹介しています。大規模更新では、端末配布だけでなく集中管理とライフサイクル運用を組み合わせています。 |
株式会社アトラエ・IT | 導入事例公表時点 | Jamf Proのゼロタッチ導入により、キッティングにかかる作業の9割を削減したと株式会社Tooが紹介しています。削減対象はMacのキッティング作業であり、物理配送までゼロになったという意味ではありません。 |
Apple端末を含む資産情報を管理する場合は、KandjiとAdminaのAPI連携手順およびデバイス管理の実務ガイドも、MDMと台帳を結び付ける際の参考になります。
▶ 関連記事: MDM連携とは?台帳を自動更新する仕組みとJamf等との棲み分け
▲ 失敗を防ぐためのゼロタッチキッティング4段階の導入手順
一般EC購入端末の登録方法
一般ECや量販店で購入した端末も手動登録で管理下に置けますが、自動登録と比べて作業・制約・再配布時の確認が増えます。
Windows端末のハードウェアハッシュ登録
Windows端末は、販売店によるAutopilot自動登録がない場合でも、ハードウェアハッシュを取得してIntuneへ登録する方法があります。端末を起動し、PowerShellなどで必要なハッシュ情報を取得し、管理者がAutopilotへインポートした後、展開プロファイルを割り当てます。インポート後に端末を初期化して初回セットアップを実行すると、Autopilotのフローで設定が進みます。手動登録の具体的な手順と前提条件は、Microsoftの公式ドキュメント(Windows Autopilot の手動登録)で随時更新されており、発注前に現行の要件を照合し、要件を満たす場合は手動登録フローへ進み、満たさない場合は認定販売店経由の調達を検討します。
この方法では、少なくとも一度は担当者または利用者が端末を操作して情報を取得するため、箱のまま利用者へ直送する運用には向きません。数台の緊急購入や既存端末の移行には使えますが、毎月数十台を同じ方法で登録すると、ハッシュ取得漏れ、CSV形式の不備、端末と資産台帳の紐付け漏れが増えます。継続的にPCを調達する組織では、自動登録できる販売チャネルへ発注を集約するほうが運用負荷を下げられます。
Apple Configuratorによる組織追加
Apple製品では、販売店からApple Business Managerへ自動割当されていない端末を、Apple Configuratorで組織管理へ追加できる場合があります。操作端末はmacOS上のApple Configurator 2、またはiPhoneで動作するApple Configurator for iPhoneが対象です。対応する端末種別(Mac、iPhone、iPad)や必要なOSバージョンはAppleが随時更新しており、Appleのサポートページ「Apple Business ManagerにデバイスをManually addする」で最新の前提条件を確認します。条件を満たす場合は手動追加フローへ進み、満たさない場合は認定販売店経由の調達や端末交換を検討します。条件を満たす場合は、Apple Configuratorで端末を準備して組織へ追加し、Apple Business Manager上でMDMへ割り当て、Automated Device Enrollmentプロファイルを適用します。
この手順では、端末の物理操作と初期化が必要です。また、購入経路や端末の状態によっては組織への追加可否、ユーザーが管理を解除できる猶予期間などの扱いが変わります。利用者へ配布済みの端末を後追いで登録する場合は、業務データの退避、初期化の同意、再設定の案内まで含めた移行計画を作ります。端末が組織所有である証跡を保持できない場合は、強制監視を前提にせず、通常のMDM登録または端末交換へ切り替えます。
例外端末の管理台帳
手動登録端末は、自動登録端末と同じ台帳に記録しつつ、登録方式を区別します。最低限、資産番号、シリアル番号、利用者、購入先、登録日、登録担当者、MDMの端末ID、初期化可否を残します。これにより、端末交換や退職時に「どの方式で再登録するか」を判断できます。
やってはいけないのは、手動登録をした端末だけをスプレッドシートの別管理にし、MDMの端末情報と資産台帳を連携しないことです。紛失時にワイプ対象を特定できず、棚卸しでも台帳上の端末と管理下の端末が一致しなくなります。手動登録を使う場合でも、標準端末と同じ返却・廃棄フローに乗せます。
▶ 関連記事: 法人・企業用IT資産と社用デバイスを一元管理する方法
▲ 端末の調達ルートと状況に応じた最適な登録方式の選択フロー
失敗パターンと対策
ゼロタッチキッティングの失敗は、端末登録、ネットワーク、アプリ設計、物理作業を同じ作業として扱うと起こります。
帯域逼迫の発生条件
オフィスで数十台から数百台を同時に起動すると、OS更新、Microsoft 365 Apps、EDR、会議ツールなどのダウンロードが集中します。1台あたりの初期配布量を仮に8GBと置き、同時起動台数を100台とすると、外部回線から取得するデータは単純計算で最大800GBになります。ただし、8GBはあくまで試算上の仮定値であり、実際の配布量はアプリ構成や差分配信の有無によって変わります。実際にはキャッシュや配信最適化で減らせますが、帯域見積もりなしに一斉展開すると通常業務の通信も遅くなります。
対策は、必須アプリを絞る、部署・時間帯で起動を分ける、配信の最適化を設定する、事前プロビジョニングを使うという順番で検討します。販売店やキッティングセンターで事前プロビジョニングを行う場合も、最終利用者のサインイン後に配信される設定を確認する必要があります。準備済みと表示されても、利用者固有のアプリや権限が完了しているとは限りません。
プロキシ遮断と認証失敗
初期セットアップ中の端末は、利用者が通常使うブラウザ設定や認証済みVPNをまだ持っていません。そのため、社内プロキシで認証を要求したり、MDM・ID基盤・OS更新先への通信を遮断したりすると、登録の途中で止まります。
この問題は、初期セットアップ専用のネットワークを用意し、必要な宛先への通信を許可して検証すると切り分けられます。社内回線での通信が確認できれば社内展開へ進み、確認できない場合はモバイル回線や自宅回線での初期設定を許可するか、ネットワーク例外を整備してから展開します。利用者に無条件でテザリングを依頼するのではなく、通信費負担と情報セキュリティのルールも同時に決めます。
物理作業の見落とし
ゼロタッチ導入後も、ラベル貼付、検品、梱包、配送、故障交換、返却回収は残ります。物理作業を情シスが担うのか、販売店・物流委託先が担うのかを決めないと、端末は利用者に届いたが台帳登録や資産ラベルが未完了という状態になります。
物理作業を外部へ委託するなら、ラベル番号の採番方法、貼付位置、作業後の証跡、配送先変更時の連絡期限、故障端末の回収先を発注条件に含めます。パナソニック コネクトは、パナソニックグループ全社約14万台の集中管理ノウハウを基に、法人向けPCサブスクリプションのスリムワークサポートを提供しています。大規模運用では、クラウド設定と物流を別々に最適化せず、ライフサイクル全体で責任分界を決める考え方が有効です。
設定を詰め込みすぎる失敗
初回ログインで全アプリ、全ポリシー、全証明書を必須にすると、1つの配布失敗が業務開始全体を止めます。特に古い業務アプリ、手動入力が必要なライセンス、社内サーバー接続を前提にしたソフトは、ゼロタッチの必須工程に入れないほうが安全です。
利用開始に不可欠なセキュリティ設定と基本アプリだけを初期段階で完了させ、部門固有アプリは利用開始後に配布します。どうしても初回設定に必要なアプリは、サイレントインストール、再起動要否、ライセンス認証、ネットワーク依存をパイロット環境で確認し、失敗した場合に利用者が再試行できる手順を案内します。
▶ 関連記事: キッティング自動化とは?おすすめツール比較と導入のロードマップ
ゼロタッチキッティングの実行計画
ゼロタッチキッティングを定着させる最初の一歩は、次回の端末発注前に標準端末1機種で登録から返却までを通して試すことです。
まず、直近のPC入替で1台に何分かかっているかを、開封、OS設定、アプリ導入、確認、配送に分けて記録します。端末台数が年間10台未満で調達チャネルも不定期な場合は、自動登録フローの構築コストが削減効果を上回る可能性があります。その場合は手動登録を例外フローとして整備し、台数が増えた段階で自動登録チャネルへ切り替えるかを判断します。次に、Windows Autopilot、Apple Business ManagerとAutomated Device Enrollment、Android Zero-touch Enrollmentのうち、自社端末に対応する登録方式を選びます。販売店による自動登録が可能なら標準フローに採用し、一般EC購入端末はハードウェアハッシュ登録やApple Configuratorによる例外フローとして台帳に区別します。
そのうえで、標準利用者のアカウントを使い、自宅回線と社内回線の両方でパイロット端末を起動します。MDM登録、暗号化、必須アプリ、再起動、利用開始までの時間を記録し、失敗時のログ取得先と問い合わせ窓口を決めます。ゼロタッチPCは、設定を自動化するだけでは完結しません。調達、ID、ネットワーク、物流、資産台帳を同じ運用計画に載せることで、端末の増加や交換にも対応できる仕組みになります。
端末管理とSaaS管理を合わせて見直す場合は、MDM連携でデバイス台帳を一元管理も参照し、MDM上の端末情報と利用者・アカウント情報を結び付ける運用を検討できます。
まとめ
ゼロタッチキッティングは、端末を利用者へ直送し、初回起動後にクラウドから業務環境を構成する方法です。手動キッティングの時間を減らせますが、端末登録、MDM設計、通信帯域、資産管理、配送といった準備は残ります。
明日から着手するなら、次回の端末発注予定から標準機種を1つ選び、販売店の自動登録可否、利用中のID・MDMライセンス、初回設定に必要なアプリ、物理作業の担当を1枚の表にまとめます。その後、1〜2台で自宅回線と社内回線の両方を使った検証を行い、失敗ログと復旧手順を残してから対象台数を増やします。
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監修
Admina Team
情シス業務に関するお役立ち情報をマネーフォワード Adminaが提供します。
SaaS・アカウント・デバイスの管理を自動化し、IT資産の可視化とセキュリティ統制を実現。
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