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【監修】本記事はネットワークセキュリティ・情報システム管理の実務経験を持つ編集部セキュリティ担当が執筆・監修しています。
企業が取り扱うデジタル資産の重要性が増す中、ネットワークを狙う悪質なサイバー攻撃は巧妙化し続けています。その対策として古くから中核を担ってきたのが「IDS(侵入検知システム)」と「IPS(侵入防止システム)」です。
しかし、ネットワークトラフィックの暗号化やクラウド移行が進む2026年現在、単に製品を設置するだけの対策は通用しなくなっています。本記事では、ids ipsの根本的な違いや役割分担から、EDR・WAF・NDRといった他ツールとの関係性、さらに運用の失敗を防ぐ具体的な選定ポイントまで、実務ですぐに役立つ知識を体系的に解説します。

IDS/IPSとは:現代のネットワークセキュリティに必要な理由
本記事のポイント
IDSは異常を検知・警告するシステム、IPSは検知に加えて自動遮断・防御まで行うシステムである
トラフィックの約95%が暗号化されている現代、SSL復号連携やAI検知を搭載した最新製品の選定が重要な検討事項となっている
境界防御を担うIDS/IPSと、エンドポイント防御のEDRを組み合わせた「多層防御」が2026年の主流である
IDS(Intrusion Detection System:侵入検知システム)およびIPS(Intrusion Prevention System:侵入防止システム)は、企業の社内ネットワークやサーバーを不正侵入から守るためのシステムです。IDSはファイアウォールのようにポート制限だけでなく、ネットワーク内の通信トラフィックを詳細に監視し、サイバー攻撃を特定します。
2026年現在、クラウドネイティブIDS/IPS市場は急成長を遂げており、たとえばMarketsandMarketsは同市場が2028年までに約80億ドル規模へ拡大すると予測しています(参考:MarketsandMarkets IDS/IPS市場レポート)。日本国内の改正個人情報保護法(2022年改正・2022年4月施行)や、米国50州(2018年までに全50州で整備完了)・EUのGDPR(2018年5月施行)をはじめ世界各国で施行・強化が進む「データ侵害通知法」の義務化、およびクレジットカード業界基準「PCI DSS v4.0(2022年3月発表・2025年3月完全義務化)」への対応に伴い、セキュリティ侵害が発生した際に「いつ、どこから、どのような不正通信が行われたか」を可視化・記録できるIDSは、監査証跡の確保という観点からもコンプライアンス対応に直結する要件となっています。
IDSとIPSの根本的な違いとそれぞれの導入目的
IDSは「検知・報告」を目的とし、IPSは「検知・自動遮断」を目的とする点に根本的な違いがあります。
IDSはネットワーク上のパケットをコピーして分析(プロミスキャスモード)するため、通信遅延を起こしませんが、不正侵入を物理的に止める力はありません。一方、IPSは通信経路上に直接介入(インライン配置)して不正通信をその場でブロックします。それぞれの違いを一覧表で比較します。
比較項目 | IDS(侵入検知システム) | IPS(侵入防止システム) |
|---|---|---|
主な目的 | 不正アクセスの検知、ログ記録、管理者への警告 | 不正アクセスの検知に加え、リアルタイムな通信の自動遮断・防御 |
配置方法 | 通信パケットのコピーを監視(ネットワーク負荷極小) | 通信経路のインライン上に配置(パケットを直接精査) |
システム負荷 | ログの生成と解析が中心のため、トラフィックへの影響が少ない | リアルタイムなパケット解析と遮断処理を行うため、負荷が高まる場合がある |
誤検知時の影響 | 正常な通信を「攻撃」と誤検知(偽陽性/False Positive)しても、通知のみで業務は停止しない | 誤検知が発生した場合、正規の通信(業務APIなど)まで遮断して業務を停止させるリスクがある |
運用の難易度 | アラートを人間が精査する必要があり、判断に専門知識を要する | 自動で遮断するため即時対応可能だが、過検知を防ぐための高度なチューニングが必要 |
SOCで即時対応できる体制があればIDSのログ分析で十分ですが、夜間・休日も含めた自動防御が必要なケースではIPSが現実的な選択です。
▲ IDS(検知・警告)とIPS(自動遮断)のネットワーク配置と処理フローの違い
【2026年最新】暗号化トラフィックの壁とAIアノマリー検知
2026年時点で現場が対応を迫られている課題が主に2つあります。通信の暗号化率の上昇と、攻撃の高度化への対応です。
2024年時点で、Webおよびネットワークトラフィックの約95%が暗号化(SSL/TLS通信)されています(Google透明性レポート(2024年)等の各社セキュリティレポートによる)。従来のIDS/IPSは暗号化されたパケットの中身(ペイロード)を検査できず、攻撃をスルーしてしまう深刻なリスクを抱えています。そのため、2026年にIDS/IPS製品を選定する際は、単独でSSL通信を復号するか、次世代ファイアウォール(NGFW)の復号機能とシームレスに連携できることを確認しておきたい。
また、未知のゼロデイ攻撃への対策として「AI/機械学習を搭載したアノマリー(異常)検知機能」の実用化が進んでいます。従来のシグネチャ(既知の定義ファイル)型では防げなかった新種の攻撃に対し、AIアルゴリズムが平常時のネットワーク挙動を学習します。ただし製品によって精度差が大きく、PoC(概念実証)でのベースライン学習期間の確認が購入前の必須チェック項目になります。
IDS/IPSと他セキュリティ対策(FW・WAF・EDR・NDR)の違い
各セキュリティツールは対応する防御レイヤーや役割が異なるため、組み合わせて使うことで防御の穴を埋めることができます。
特に近年は境界防御(IDS/IPS)のみに頼るのではなく、端末側を守るEDRや、内部ネットワークの振る舞いを監視するNDRを連携する「ゼロトラスト」アプローチが主流です。各ツールの違いを整理します。
セキュリティツール | 監視・防御の対象(レイヤー) | 主な役割・イメージ | IDS/IPSとの関係 |
|---|---|---|---|
ファイアウォール(FW) | L3〜L4(IP、ポート番号) | 通していい通信かの「アクセス制御」をする門番 | 連携が基本。FWを通過した「許可された通信の中身」をIDS/IPSが細かくパケット検査する。 |
WAF | L7(Webアプリケーション層) | SQLインジェクションなど、Webサイトの脆弱性を防ぐ | 併用が必要。IDS/IPSがOS等を守るのに対し、WAFはWebアプリを保護する。 |
IDS/IPS | L3〜L7の一部(OS・通信) | ネットワーク全体の不正通信を検知・遮断する検問所 | 本記事の主役。プラットフォーム全体の不正パケット検査を担当。 |
NDR | 内部ネットワーク全体 | ネットワーク内の「不審な動き(振る舞い)」を監視 | IDSの進化版。境界検知(IDS)と違い、侵入後の横移動をAIで可視化・追跡する。 |
EDR | ホスト/PC端末(エンドポイント) | 端末内で実行されたマルウェアの挙動を監視・隔離 | 侵入後の対策。境界を突破された後の「最終防衛線」としてEDRが稼働する。 |
中規模〜大規模の企業において、セキュリティの一部を統合するためにファイアウォール、IDS/IPS、アンチウイルス、スパムフィルタリングなどを1つにまとめたUTM(統合脅威管理)も依然有効です。
組み合わせ設計の具体例は次節の失敗パターンで確認できます。
▲ ファイアウォール、IDS/IPS、WAF、EDRが連携する「多層防御」の構成イメージ
IDS/IPSの導入・運用における2大失敗パターンと対策
IDS/IPSの導入において、運用の手間やリソースを無視した結果、形骸化してしまうケースが多発しています。実務で避けるべき2つの失敗パターンと対策を整理します。
失敗1:初期設定のままIPS(遮断モード)を有効にし、業務通信を止めた(過検知)
チューニングをせずに導入した結果、自社で利用しているマーケティングツールやCRMなどの安全なAPI通信、独自のCookieを「攻撃」と誤検知(偽陽性/False Positive)してしまい、業務システムや外部Webサイトが突如停止してユーザーに多大な影響を与えるパターンです。
対策: 導入初期の数ヶ月間は「IDS(検知モード)」で稼働させ、どのような通信がアラートに引っかかるか様子を見ます。誤検知を除外(チューニング)する作業を終えてから、段階的に「IPS(遮断モード)」に切り替えるのが正しい手順です。
失敗2:毎日数千件のアラートが発生してオオカミ少年化(アラート疲れ)
高度なシグネチャを大量に有効化したものの、社内にセキュリティの専門家がおらず、発生する膨大なアラートの中から「本当に危険な高リスク情報」と「無視して良い低リスク情報」の選別ができないパターンです。結果としてアラートを無視するようになり、深刻なサイバー攻撃を見落としてしまいます。
対策: 自社に24時間体制のSOC(Security Operation Center)を構築できない場合は、外部の専門事業者へアラートの監視や緊急時の対応を委託する「マネージドIPS/IDS(MSS/MDR)サービス」を検討しましょう。不要なログをリアルタイムでの監視・除外できるSIEMなどの統合プラットフォーム構築も有効です。
24時間365日の安全確保にあたっては、IDSの導入とともに専門のアナリストによる有人監視(SOC連携)体制を整備することで、自社の管理工数を最小限に抑えつつ誤検知を確実に排除し、堅牢なセキュリティ体制を維持できます。
▲ 業務通信を止めないための安全なIPS導入・運用の3ステップ
よくある質問
Q:IDS/IPSとWAFの最大の違いは何ですか?
A:IDS/IPSがOS、ミドルウェア、ネットワーク全体への攻撃を防ぐのに対し、WAFはSQLインジェクションやクロスサイトスクリプティング(XSS)など、Webアプリケーションの脆弱性を狙った攻撃の防御に特化している点が異なります。
Q:EDRが導入されていればIDS/IPSは不要ですか?
A:いいえ、必要です。EDRはPCやサーバー(エンドポイント)内の侵入後の挙動を監視するのに対し、IDS/IPSはネットワーク境界やプラットフォーム全体で侵入される前に不正通信を防ぐため、両者を組み合わせた多層防御が推奨されます。
Q:IDS/IPSを運用するための人員や専門知識が足りない場合はどうすべきですか?
A:自社での24時間監視が難しい場合は、セキュリティ専門の運用事業者(SOC)に監視やアラート判定を委託する「マネージドIDS/IPSサービス(MSS/MDR)」の活用を検討してください。
まとめ
IDS/IPSは、巧妙化するサイバー脅威からネットワーク環境を守るための要だ。しかし、2026年時点においては単一製品の設置だけに留まらず、約95%に及ぶ暗号化通信に対応するSSL復号機能の確保や、エンドポイント(PCやサーバー端末)を保護するEDRとの多層防御設計を検討したい。自社で24時間365日の監視が困難な場合は、マネージドサービスを活用して専門のSOCと連携するのが現実的な選択肢だ。まずは自社のネットワーク構成図を開き、どこに検問(IDS/IPS)を配置し、どのように多層防御を構築すべきか、具体的な要件整理から最初の一歩を踏み出してみましょう。
✅ 自社のネットワーク構成図を確認し、IDS/IPSの配置箇所を特定する
✅ IDS/IPS導入初期はまず検知モード(IDS)で稼働させ、チューニング後に遮断モード(IPS)へ移行する
✅ SIEMまたはNDRとのログ連携要件を要件定義書に追記する
✅ EDRやWAFとの組み合わせによる多層防御設計を要件定義に含める
本記事の内容に誤り等がございましたら、こちらからご連絡ください。
監修
Admina team
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