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Admina Team
2025/08/12
Webサイトをただ閲覧しただけで、知らないうちにウイルスに感染してしまう。そんなサイバー攻撃が、ドライブバイダウンロードです。近年では、パソコンだけでなくiPhoneやAndroidなどのスマホを狙った手口も巧妙化しており、個人情報や金銭を窃取される被害も発生しています。
この記事では、ドライブバイダウンロードの仕組みや具体的な攻撃例、今すぐ実践できる具体的な対策まで分かりやすく解説します。
ドライブバイダウンロードとは
ドライブバイダウンロードは、ユーザーが意図しない形で、Webサイトを閲覧するだけで自動的にマルウェア(悪意のあるソフトウェア)がダウンロード・実行されてしまうサイバー攻撃です。ユーザーが怪しいリンクをクリックしたり、ファイルをダウンロードしたりといった能動的な操作をせずとも、気づかぬうちに被害が進行する点が最も恐ろしい特徴です。攻撃者は、Webサイトに不正なスクリプトを埋め込み、訪問者のデバイスに存在する脆弱性を突いて攻撃を仕掛けます。
ドライブバイダウンロードの仕組み
ドライブバイダウンロード攻撃は、主にOSやブラウザ、プラグイン(Java、Adobe Flash Playerなど)に存在するセキュリティ上の弱点、すなわち脆弱性を悪用した攻撃手法です。攻撃者はまず、正規のWebサイトを改ざんするか、不正な広告(マルバタイジング)を配信し、ユーザーに対して罠を仕掛けます。ユーザーがそのサイトや広告が表示されたページにアクセスすると、埋め込まれたスクリプトが自動で実行され、使用しているデバイスの脆弱性を探します。脆弱性が見つかると、それを悪用してマルウェアを送り込み、感染させてしまうのです。
ドライブバイダウンロード攻撃に該当するもの
ドライブバイダウンロード攻撃に該当するものは、大きく分けて2つのケースが挙げられます。
攻撃者によって改ざんされた企業や個人のWebサイトを訪問した場合
Webサイト自体は正規のものであっても、そこに表示されるオンライン広告が不正なもの(マルバタイジング)である場合
どちらのケースも、ユーザーは正規のサイトを閲覧しているつもりでいるため、攻撃を受けていることに気づきにくく、深刻な被害につながる危険性があります。
トロイの木馬との違い
ドライブバイダウンロードとトロイの木馬は混同されがちですが、その役割は明確に異なります。ドライブバイダウンロードはマルウェアの感染経路・手口を指す言葉です。つまり、どのようにしてマルウェアがデバイスに侵入するか、その方法論を示します。
一方、トロイの木馬はマルウェアの種類の一つです。無害なプログラムを装ってデバイスに侵入し、後から情報窃取などの悪意のある活動を行うプログラムを指します。ドライブバイダウンロード攻撃によって、結果的にトロイの木馬が送り込まれる、という関係性になります。
ドライブバイダウンロード攻撃の具体的な手口
ドライブバイダウンロード攻撃の手口は、年々巧妙になっています。ここでは、代表的な攻撃の手口について解説します。
改ざんされたWebサイトを利用する手口
最も一般的な手口は、正規のWebサイトを不正に改ざんし、悪意のあるスクリプトを埋め込む方法です。攻撃者は、企業の公式サイトや有名なブログなど、多くの人が訪れる信頼性の高いサイトを標的にします。サイトの管理者が気づかないうちに改ざんを行い、訪問者がアクセスするのを待ち構えます。ユーザーは普段通りサイトを閲覧しているだけで、バックグラウンドではマルウェアのダウンロードとインストールが自動的に実行されてしまいます。
不正広告(マルバタイジング)を利用する手口
マルバタイジングは、「Malicious Advertising(悪意のある広告)」を短縮した言葉で、Web広告配信の仕組みを悪用した攻撃手法です。攻撃者は広告配信ネットワークに不正な広告を紛れ込ませます。この不正広告が掲載されたWebサイトをユーザーが閲覧すると、広告が表示されただけでドライブバイダウンロードが実行されます。Webサイト自体は改ざんされていないため、サイト運営者も気づきにくく、広範囲に被害が及ぶ可能性があります。
ドライブバイダウンロードのデバイス別の注意点
かつてドライブバイダウンロード攻撃は主にパソコンを標的としていましたが、現在ではスマートフォンも例外ではありません。私たちが日常的に利用するデバイスごとに、どのようなリスクがあり、何に注意すべきかを理解しておくことが重要です。
パソコン(Windows/Mac)
パソコンは、OSであるWindowsやmacOSだけでなく、利用しているブラウザや様々なアプリケーション、プラグインに脆弱性が存在する可能性があります。特に、ソフトウェアのアップデートを怠っていると、既知の脆弱性を放置することは、攻撃者にとって格好の標的です。業務で利用するパソコンが感染した場合、個人情報の漏洩だけでなく、社内ネットワーク全体へ被害が拡大し、事業継続に深刻な影響を及ぼすリスクも考えられます。
スマホ(Android/iPhone)
「iPhoneは安全」というイメージがあるかもしれませんが、決して無敵ではありません。OSやアプリの脆弱性を突かれれば、iPhoneであってもドライブバイダウンロードの被害に遭う可能性があります。
Androidスマホも同様で、OSのバージョンが古いままだったり、提供元不明のアプリをインストールしていたりすると、リスクは高まります。スマホが感染した場合、連絡先や写真、位置情報といったプライベートな情報が盗まれたり、SNSアカウントを乗っ取られたりする危険性があります。

ドライブバイダウンロードのセキュリティ対策
ドライブバイダウンロードは気づかぬうちに進行する脅威ですが、適切な対策を講じることで被害のリスクを大幅に低減できます。個人でできる基本的な対策から、組織として取り組むべき対策まで、具体的な方法を紹介します。
個人向けのセキュリティ対策
個人レベルで最も重要な対策は、お使いのデバイスを常に最新の状態に保つことです。OS(Windows、 macOS、 iOS、 Android)やWebブラウザ、各種アプリケーションのアップデート通知が来たら、速やかに適用しましょう。これにより、判明している脆弱性が修正されます。
また、信頼できる総合セキュリティソフトを導入し、常に有効にしておくことも不可欠です。不審なWebサイトや広告には安易にアクセスしないという心掛けも大切です。
法人向けのセキュリティ対策
企業や組織では、個人の対策に加えて、より包括的なセキュリティ体制の構築が求められます。従業員が使用するすべてのデバイスのソフトウェアアップデート状況を一元管理し、徹底させることが基本です。UTM(統合脅威管理)やWAF(Webアプリケーションファイアウォール)といったセキュリティ機器を導入し、不正な通信を入口・出口でブロックする仕組みも有効です。また、従業員に対して定期的なセキュリティ教育を行い、脅威への意識を高めることも欠かせません。
ドライブバイダウンロードに感染した場合の対処法
もしドライブバイダウンロードによるマルウェア感染が疑われる場合は、迅速な対応が必要です。まずは、感染したデバイスをすぐにネットワークから切断し、被害の拡大を防ぎます。次に、導入しているセキュリティソフトでシステム全体のスキャンを実行し、マルウェアの駆除を試みてください。自力での対処が難しい場合や、企業の重要な情報が関わる場合は、速やかに情報セキュリティの専門家や専門業者に相談することが賢明です。

まとめ
ドライブバイダウンロードは、Webサイトを閲覧するだけでマルウェアに感染する可能性がある、非常に巧妙で危険なサイバー攻撃です。攻撃者は、OSやソフトウェアの脆弱性を悪用し、パソコンだけでなくiPhoneやスマホなど、あらゆるデバイスを標的にします。万が一の事態に備え、感染が疑われる場合の対処法もあらかじめ確認しておきましょう。
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