>
>
公開日
クレジットカードの不審な請求に慌てた経験はありませんか。近年、クレカ不正利用の原因となるフィッシング詐欺や情報漏洩が急増しており、自身がターゲットになるリスクは常に存在します。この記事では、不正利用がなぜわかるのか(検知の仕組み)から、犯人がバレるかどうか、補償の実態まで幅広く解説します。カード利用者向けを中心に、EC運営者が知っておくべき補償の仕組みも取り上げます。

クレジットカード不正利用の原因とは
この記事でわかること:
オンライン上でのフィッシング詐欺や情報漏洩による「番号盗用」が不正利用の最大原因。
2025年の被害額は510.5億円と11年ぶりに減少したが、依然として非常に高水準で推移している。
2025年3月末の「EMV 3-Dセキュア」原則義務化が、不正利用被害の抑制に大きく貢献している。
暗証番号の推測されやすさやカード署名なし、明細の放置は、全額自己負担(補償対象外)の要因となる。
クレジットカードが不正利用される主な原因は、フィッシング詐欺や情報漏洩による番号盗用です。
被害額の実態と「番号盗用」の急増
一般社団法人日本クレジット協会が2026年3月に公表した最新データによると、2025年の年間クレジットカード不正利用被害額は510.5億円でした。これは過去最高を記録した2024年の555.0億円から約8.0%の減少となり、2014年以来実に11年ぶりの減少へと転じています。しかし、被害総額のうちオンライン決済等で悪用される「番号盗用」の被害額は475.4億円(約93.1%)を占めており、9割超が番号盗用によるものであり、EC決済のセキュリティ対策は引き続き急務です。
なぜ番号が盗まれるのか
クレジットカード不正利用の原因として最も多いのが、実在する大手企業(配送業者や金融機関、ECサイトなど)を装ったメールやSMSで偽サイトへ誘導するフィッシング詐欺や、ECサイトのセキュリティ脆弱性を突いたハッキングによるカード情報の盗難・流出です。物理的な盗難・紛失だけでなく、悪意ある第三者によってオンライン上で情報が抜き取られることが被害の大半を占めています。11年ぶりに全体の被害額が減少した背景には、2025年3月末を期限とした「EMV 3-Dセキュア」の原則義務化が大きく貢献しています。
クレジットカードの不正利用はなぜわかる?
カード会社はAIを活用した24時間監視システムにより、普段と異なる異常な取引パターンをリアルタイムで検知しています。
最新のAI(機械学習)によるリアルタイムスコアリング
カード所有者さえ気づかない不正利用を瞬時に見抜くことができるのは、常に進化を続ける検知・認証技術のおかげです。決済が行われるごく僅かな時間(ミリ秒単位)で「オーソリゼーション(信用照会)」が行われますが、現在は「機械学習」を用いたAIスコアリングが主流です。AIは、過去の膨大な不正データ、取引の時系列データ、金額の規則性、接続デバイス情報などを即座に解析し、取引ごとのリスクをスコア化しています。これが、カード会社が不正を検知できる最大の理由です。
AI導入の具体例
大手クレジットカード会社も次々と最新AIを導入し、不正検知の精度を高めています。例えば、国内大手のエポスカードは2024年11月よりAI不正検知ソリューション「PKSHA Security(パークシャ セキュリティ)」を本格導入。ユーザーの過去の取引傾向(時間帯、金額、場所など)を時系列で機械学習し、通常とは異なる「未知の不正パターン」を高精度に検知しています。同システムは三菱UFJカードやDCカード、NICOSカードなどでも導入が進んでいます。
グローバルな動向としては、Mastercardが「Decision Intelligence Pro (DI Pro)」を世界規模で導入し、ダークウェブ上のデータ解析を含むより高度な対策を展開しています。
「リスクベース認証」による判定フロー
2025年3月末に義務化された「EMV 3-Dセキュア(3Dセキュア2.0)」では、「リスクベース認証」と呼ばれる仕組みが採用されています。これは、すべての決済でパスワード入力を求めるのではなく、AIがアクセスのリスク度合いを判定し、処理を分岐させるシステムです。
認証フロー | リスク判定 | 追加認証の有無 | ユーザー体験(UX) | 該当する取引割合 |
|---|---|---|---|---|
フリクションレスフロー | 低リスク(安全と判断) | 不要(自動で通過) | パスワード入力なしで一瞬で完了 | 全体の約9割以上 |
チャレンジフロー | 中・高リスク(不審と判断) | 必要 | ワンタイムパスワードや生体認証を要求 | 全体の約1割以下 |
▲ クレジットカード決済時におけるAI不正検知のリアルタイムスコアリングの流れ
犯人はバレる?誰が使ったかわかるか
個人による不正利用犯の特定は極めて困難であり、カード会社や警察による専門的な捜査が必要です。
犯人を個人で追及してはいけない理由
「検知システムがあるのなら、誰が使ったかすぐにわかるはず」と利用者は感じがちですが、犯人は海外のプロキシサーバーを経由してIPアドレスを隠蔽したり、使い捨ての配送先住所を指定したりと巧妙に身元を隠します。利用者が個人で犯人を特定しようとして不審なサイトへ再度アクセスしたり、相手に連絡を取ろうとしたりすると、さらなる個人情報の漏洩や脅迫などの二次被害に巻き込まれるリスクがあり極めて危険です。
警察による「デジタルフットプリント」の追跡
不正利用の犯人は、完全に足跡を消せるわけではありません。警察のサイバー犯罪捜査部門やカード会社は、以下のような「デジタルフットプリント(デジタルの足跡)」を精査して犯人を特定し、逮捕に至らせています。
決済時に使用された端末の「IPアドレス」や「MACアドレス」
商品の「送付先住所」や配送業者の営業所受け取り時の「防犯カメラ映像」
フリマアプリやオークションサイト等での「転売履歴」と登録口座情報
実際、金融機関や大手ITサービスの名称・ロゴを悪用したフィッシングメールで不正にクレジットカード情報を入手し、ECサイトで商品をだまし取った容疑者が警察のサイバー犯罪捜査によって逮捕された事例は複数報道されています(警察庁「令和6年におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について」参照)。このように、デジタル上の犯行であっても警察が本腰を入れれば逮捕されます。被害に遭った場合は、速やかに警察へ一任しましょう。
クレジットカードを不正利用されたら誰が払う?
原則としてカード会社が被害額を全額補償しますが、会員に重大な過失がある場合や申告期限を過ぎた場合は自己負担となります。
原則としてカード会社が補償
不正利用された金額は、原則としてカード会社が付帯する「盗難保険」や補償制度によってカバーされ、利用者の支払い義務は免除されます。しかし、何でも無条件に補償されるわけではなく、利用者側の過失やルール違反がある場合は「全額自己負担」という厳しい現実が待っています。
全額自己負担(補償対象外)となる失敗パターン
申告期限の超過(60日ルール):多くのカード会社では、被害発生日(または明細通知日)から「60日以内」に届け出がない場合、いかなる理由があっても補償対象外となります。明細を数ヶ月放置していた場合は自己負担です。
カード裏面に署名(サイン)がない:基本的なルールですが、署名がない状態で紛失・不正利用された場合は「会員の規約違反」となり補償されません。
推測されやすい暗証番号を設定していた:生年月日、電話番号、住所、「0000」や「1234」など容易に推測できる暗証番号を設定し、それが破られて決済された場合は「重大な過失」とみなされます。
家族や同居人による無断利用:同居の家族、子供、親族が勝手にカードを使ってオンラインゲームの課金などを行った場合、規約上「会員自身の管理不足」となり補償の対象外です。
ECサイト運営者(加盟店)を襲う「チャージバック」の二重苦
利用者は補償制度で守られますが、その負担はすべてECサイト運営者(加盟店)に転嫁される仕組みです。これをチャージバックと呼びます。クレジットカードの不正利用が発生し、カード会社がユーザーへの請求を取り消して返金を行うと、その売上代金はカード会社からEC加盟店(ショップ側)へ支払われません。つまり、EC加盟店は「商品はすでに発送してしまい戻ってこない(騙し取られる)」かつ「売上金は没収される」という二重の損害を被ることになります。これが、EC事業者にとって不正検知システム(多層防御)の導入が死活問題である理由です。
▲ 不正利用された被害額が「補償対象(カード会社負担)」になるかの判定フロー
クレジットカード会社は不正利用をどのように調査する?
不正利用の調査は、カードの一時停止から始まり、本人への状況確認および加盟店への詳細な取引照会を経て完了します。
1. カード利用の一時停止と保留
AIシステムが取引の異常(深夜の連続決済、高額な換金性商品の連続購入など)を検知すると、被害を最小限に防ぐため、カード会社は即座にそのカードの利用を保留・停止させます。この段階ではまだ本人への連絡が行われていないこともあります。
2. 本人への利用意思確認
保留措置を取った後、カード会社からメール、SMS、専用アプリ、または直接の電話で「この決済はご本人のものですか?」という確認が入ります。本人が「身に覚えがない」と回答した時点で、正式な調査に移行します。なお、この確認の際、カード会社が暗証番号やセキュリティコードのすべてを聞き出すことは絶対にありません。
3. 加盟店への取引照会と事実認定
カード会社は決済が実行されたECサイト等の加盟店に対し、購入時のIPアドレス、配送先情報、会員登録情報などの開示を求めます。これらを精査し、第三者による「番号盗用」であることが確認されれば、不正利用として認定され、補償手続きが進められます。この一連の調査には通常、数週間から2ヶ月程度の期間が必要です。
クレジットカードの不正利用に気づいたら何をすべき?
不正利用が発覚した際は、直ちにカード会社へ連絡して利用を停止し、警察へ被害届を提出しましょう。
発覚時の正しい対応手順とタイムライン
不審な請求を発見した際は、慌てずに以下のスケジュールに従って迅速に対応を進めてください。
【発見直後】利用明細の再確認:利用日や金額を確認します。店舗名ではなく決済代行会社(「ST*」「GMO」「PAY.JP」など)の名称が記載されているケースや、家族の利用がないかをまず確認します。
【即日】カード会社への緊急連絡:身に覚えがないことが確実であれば、カード裏面に記載されたダイヤルへすぐに連絡します。カードの「機能停止(無効化)」と「再発行」を依頼します。
【数日以内】警察への被害届提出:最寄りの警察署(または交番)に行き、カードを不正利用された旨を伝えて被害届を提出し、必ず「受理番号」を控えてください。この受理番号がないと、カード会社の補償(保険適用)が受けられない場合があります。
【1〜2ヶ月】カード会社での調査と返金処理:警察の受理番号をカード会社に伝え、調査が完了すると、不正利用分の請求が取り消されるか、すでに引き落とされている場合は口座へ返金されます。
▲ 不正利用に気づいてから解決・返金されるまでの4つの対応ステップとタイムライン
クレジットカードの不正利用を防止するための対策
利用者・事業者それぞれがとるべき対策を整理します。
2025〜2026年の義務化動向と事業者向けの多層防御
経済産業省の「クレジットカード・セキュリティガイドライン」改訂に基づき、2025年3月末までに原則すべてのEC加盟店で「EMV 3-Dセキュア」の導入が義務化されました。現在はさらに「ガイドライン6.0版」「6.1版」へのアップデートが進んでおり、3Dセキュア単体ではなく、システムの脆弱性対策や不正ログイン防止といった「多層防御」の構築が強く求められています。
国内企業の具体的導入事例:株式会社LIXIL
EC事業者側における不正対策の重要性を示す実例として、大手住生活グループ「株式会社LIXIL」の公式通販サイト「LIXILストア」の取り組みが挙げられます。同ストアでは、換金性の極めて高い「浄水カートリッジ」や「高機能シャワーヘッド」などが狙われ、3Dセキュアをすり抜ける巧妙な不正注文により、月間数百万円規模の被害が発生していました。そこで同社は、かっこ株式会社が提供する国内実績No.1の不正検知サービス「O-PLUX」を導入。トライアル段階で97%の不正検知率を記録しました。これにより、従前の目視チェックや出荷後の商品回収にかかっていた運用負荷をほぼゼロに削減し、同規模の実被害を抑制し、業務負荷の削減と被害抑制を同時に達成しています。
個人ができる具体的な自衛策
Web明細を毎月必ずチェックする:サブスクリプションの自動更新や、クレジットマスター(機械的なカード番号生成)による数百円の「テスト決済」を見逃さないよう、月1回は目視で明細を確認してください。
複雑なパスワードと使い回しの防止:ECサイトのログイン情報を破られ、登録済みのカードを不正利用されるケースが多発しています。パスワードは推測されにくい英数字記号の組み合わせにし、使い回しは避けてください。
フィッシング詐欺への警戒:SMSやメールで届いたリンクは直接クリックせず、必ず公式アプリやブラウザのブックマークからアクセスする習慣をつけてください。
まとめ
よくある質問(FAQ)
Q. 不正利用の調査中もカードは使えますか?
A. カード会社が利用を一時停止した場合、調査中は原則として該当カードは使用できません。急ぎの場合は再発行を依頼するか、別のカードを利用してください。再発行には通常1〜2週間程度かかります。
Q. 家族が無断でカードを使った場合はどうなりますか?
A. 同居の家族や親族による無断利用は、規約上「会員自身の管理不足」とみなされ、補償の対象外となるケースがほとんどです。カードの保管場所や利用状況の管理は会員本人の責任とされています。
Q. 3Dセキュアを設定していれば100%防げますか?
A. 3Dセキュア(EMV 3-Dセキュア)は不正利用リスクを大幅に低減しますが、100%防止できるわけではありません。フィッシング詐欺でワンタイムパスワード自体を騙し取られるケースもあるため、3Dセキュアに加えて明細確認や不審メールへの警戒も継続することが重要です。
不審な請求に備えて今日からできること
不審な請求に慌てないためには、毎月の利用明細チェックを習慣化することが最も確実な第一歩です。少額のテスト決済や身に覚えのない請求がないか、Web明細で月1回は必ず目視確認しましょう。また、暗証番号が推測されやすいものであれば今日中に変更し、不審なSMSやメールのリンクは開かないよう徹底してください。被害に遭ってから動くのでは遅すぎます。月1回の明細確認と暗証番号の見直しを、ぜひ今日中に済ませてください。
今日から実践できる防犯チェックリスト
✅ 毎月、利用明細(Web明細)を隅々まで目視確認している
✅ クレジットカードの裏面に、油性ペンで自身の署名(サイン)を記入している
✅ 暗証番号(PIN)に生年月日や電話番号などの推測しやすい数値を使っていない
✅ カード会社の紛失・盗難時の緊急連絡先(電話番号)をスマホに登録している
✅ 不審なメールやSMSのURLを安易にタップしない習慣が身についている
本記事の内容に誤り等がございましたら、こちらからご連絡ください。
監修
Admina Team
情シス業務に関するお役立ち情報をマネーフォワード Adminaが提供します。
SaaS・アカウント・デバイスの管理を自動化し、IT資産の可視化とセキュリティ統制を実現。
従業員の入退社対応や棚卸し作業の工数を削減し、情報システム部門の運用負荷を大幅に軽減します。
中小企業から大企業まで、情シス・管理部門・経営層のすべてに頼れるIT管理プラットフォームです。




