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AISIとIPAが2024年9月に公表した「AIセーフティに関する評価観点ガイド」では、生成AIの安全な活用に向けて、セキュリティ確保やプライバシー保護など6項目の評価観点が示されています。
生成AIの業務利用が広がるなか、情シス担当者には、未承認ツールの利用を把握しながら、安全な利用環境を整える役割があります。対策は単なるアクセス制限では完結しません。組織ルール、ネットワーク・端末、AIアプリケーションを組み合わせ、利用実態の可視化、OAuth権限の管理、公式AI環境への誘導、教育を循環させる必要があります。
本記事では、生成AIセキュリティのベストプラクティスとして、シャドーAI検知の方法、利用状況を可視化する手段、検知後のガバナンス運用を整理します。

シャドーAIとは?生成AI利用状況可視化が急務な理由と潜むリスク
シャドーAIとは、情報システム部門の許可を得ずに、従業員が業務で利用している生成AIサービスを指します。個人契約のチャットAI、既存SaaSに組み込まれたAI機能、ブラウザ拡張機能、OAuth連携した外部アプリなど、利用形態は多岐にわたります。
利用者の目的は、文書作成、要約、調査、翻訳、定型作業の効率化である場合が少なくありません。一方で、入力内容の保持、学習への利用、人手レビュー、外部共有の扱いは、サービス、契約プラン、管理者設定、API利用条件によって異なります。機密情報・個人情報・営業秘密を入力できるかどうかは、各サービスのデータ利用規約、法人向け設定、委託先管理の内容を前提に判断します。
Vercel事案に学ぶOAuth連携の死角
Vercel社は、2026年4月のセキュリティインシデントについて、同社従業員が利用していた第三者AIツール「Context.ai」の侵害を起点に、従業員個人のVercel Google Workspaceアカウントが乗っ取られたと公表しています[1]。Vercel社のセキュリティ速報では、その後に攻撃者が当該従業員のVercelアカウントへアクセスし、一部の非機密環境変数を列挙・復号したと説明されています。
同社は、インシデントの起点となったのは第三者AIツールのGoogle Workspace OAuthアプリに関する侵害であり、複数組織の利用者へ影響し得るとして、Google Workspace管理者とGoogleアカウント所有者に当該アプリの利用状況の確認を案内しています。本文で扱う論点は、AIツールそのものの脆弱性に限らず、外部アプリへ付与したOAuth権限、個人アカウントと組織アカウントの境界、トークン侵害後の横展開をどう管理するかにあります。
クラウドサービスへの直接アクセスが社内ネットワークを経由しない場合でも、クラウドIDとOAuth認可を介して組織データが外部アプリと結び付くことがあります。境界防御だけでなく、誰が、どの組織アカウントで、どのアプリへ、どの権限を付与しているかを継続して把握する運用へつなげます。
データ侵害コストとコンプライアンス上の論点
IBMは「2026年データ侵害のコストに関する調査」で、データ侵害の世界平均コストを499万米ドルと公表しています[2]。個別組織の被害額は業種、侵害範囲、検知までの時間、復旧方法で大きく変わるため、この数値を自社の損害見積もりとしてそのまま用いるのではなく、優先順位を検討する際の背景情報として扱います。
株式会社エルテスは、2026年1月13日に会社員・公務員300名を対象として実施した「生成AIの利用に関する調査」で、生成AI利用者の少なくとも約5人に1人が企業に許可されていないツールを利用していたと公表しています[3]。同調査では、個人情報を含むデータをアップロードしたとの回答も示されています。これは300人を対象としたインターネット調査の結果であり、全企業へ一律に一般化する数値ではありませんが、利用ルールの認知と実際の入力行動に差が生じ得る点を検討する材料になります。
顧客データや営業秘密を未承認サービスへ入力した場合のリスクは、入力先の利用規約、保存・再利用の設定、委託契約、データの所在、安全管理措置によって変わります。法務・個人情報保護担当部門が利用規約、データ処理条項、社内のデータ分類基準を確認し、外部入力を許容できる情報区分と禁止する情報区分を定められるなら、その区分を検知ルールと利用者向け通知に反映します。確認できないサービスは、限定検証の対象から外します。
参照資料と本文中の位置付け
生成AIの安全性に関する公開資料には、プライバシー保護、セキュリティ確保、データの扱い、検証可能性などを評価・統制の観点として整理するものがあります。本記事では、利用組織が取り組む統制に焦点を置き、入力データ、ID・認可、ログ、利用ルールを分けて整理します。特定の評価項目数や資料内容を自社の統制要件へそのまま転用するのではなく、自社のデータ分類と利用環境に合わせて判断します。
本文中のリンク先は、Vercel「Vercel April 2026 security incident」、IBM「2026年データ侵害のコストに関する調査」、株式会社エルテス「生成AIの利用に関する調査」、三菱UFJフィナンシャル・グループ「MUFGがAI Nativeな組織をめざす理由」、デジタル庁「ガバメントAI『源内』」です。各リンクは、本文で扱う事例・統計・公開施策の発信者による資料に対応しています。数値や機能の提供状況は更新されるため、運用設計では各発信者の原典と管理画面の表示を基準にします。
▶ 関連記事: シャドーAI事例と生成AI事故原因|情シスが取るべき漏洩対策
▲ OAuth連携を経由したシャドーAIからのセキュリティ侵入経路
生成AIの利用状況を可視化する3つのアプローチ比較
社内のAI利用を把握する手法は、大きく従業員アンケート、ネットワーク監視、SaaS管理ツールの3つに分けられます。単独の手法だけで全利用を把握できるとは限らないため、組織規模、端末管理の範囲、ID基盤、利用を許可するAI環境、ログ保存方針に応じて組み合わせます。
1. 従業員アンケート(自己申告)
全従業員に対して、利用しているAIツール、利用目的、入力した情報の種類、個人契約か会社契約かを回答してもらう手法です。特別なシステム投資を伴わず、短期間で利用目的や現場の困りごとを収集できます。
一方で、無断利用を申告しにくいと感じる従業員がいる場合、実態との差が生じます。また、ブラウザ拡張機能やSaaSに内蔵されたAI機能は、利用者自身が生成AI利用として認識していないこともあります。アンケートは全数把握の証跡ではなく、許可済み環境の不足、教育内容、例外申請の需要を把握するための補完的な手段として扱います。
2. ネットワーク監視(SSE/CASB)
社内ネットワークや会社貸与端末の通信ログを監視し、AIサービスへのアクセスを検知する手法です。NetskopeやPalo Alto NetworksなどのCASB(Cloud Access Security Broker)製品を含むSSE構成では、Webアクセスの可視化、サービス分類、ファイルアップロード制御、DLPポリシーの適用を設計できます。
通信ログで把握できる範囲は、プロキシ経由の有無、TLS復号の設定、端末へのエージェント導入、ブラウザ管理、製品のDLP機能によって異なります。入力内容や添付ファイルまで扱う設計では、従業員のプライバシー、労務、保存期間、閲覧権限もあわせて整理します。会社管理端末と会社管理ブラウザにトラフィックを集約できるなら、アクセス制御を含む検証へ進めます。BYODや個人回線が中心で集約できない場合は、ネットワークログだけを完全な利用実態とみなさず、IdPログや申告情報を組み合わせます。
3. SaaS管理ツール(SSPM/SaaS管理基盤)
Google WorkspaceやMicrosoft Entra IDなどのIDプロバイダ(IdP)と連携し、OAuth認可アプリ、SSO利用、監査ログ、連携先APIが提供する範囲の情報を整理する手法です。Vercel事案のように、組織アカウントと外部アプリのOAuth連携が論点となるケースでは、認可済みアプリと付与済みスコープの棚卸しに利用できます。
API経由で情報を取得する構成では、大規模なネットワーク変更を伴わずに始められる場合があります。ただし、個人アカウントでの直接Webアクセス、私物端末の利用、未管理ブラウザの拡張機能、APIキーのみで接続するサービスは、IdP連携だけでは記録されないことがあります。対象・提供状況は、連携するIdPの監査ログ、OAuthアプリ一覧、SaaS管理ツールの連携仕様、端末・ブラウザ管理の有無で変わります。
3つのアプローチの総合評価
項目 | アンケート | ネットワーク監視 (CASB) | SaaS管理ツール |
|---|---|---|---|
検知の網羅性 | 低(自己申告に依存) | 高(管理対象の通信をカバー) | 中〜高(OAuth連携・ID基盤をカバー。個人アカウント利用や私物端末からのアクセスは対象外) |
導入コスト | 無料〜低 | 高(大規模プロジェクト) | 中(ライセンス課金) |
セキュリティ制御 | なし | 通信ブロック・DLP | 連携アプリの解除・アカウント棚卸し |
適する状況 | 初期状況の把握と利用目的の収集 | 管理対象端末・通信へ厳格な統制を適用する環境 | クラウドツールの認可状態とアカウントを棚卸しする環境 |
従業員がフルリモートで働き、各部門が多様なクラウドツールを契約している場合は、まずIdPのOAuthアプリ一覧と監査ログを基に、利用アプリ・利用者・権限を棚卸しします。社内ネットワークからの通信を厳格に制御する必要があり、会社管理端末へセキュリティエージェントを展開できる場合は、CASBやSSEでアクセス制御まで含めた運用を組み立てます。SaaS管理ツール(IdP連携方式)による検知範囲と、個人アカウント・私物端末・ブラウザ拡張機能・APIキー利用の見えない範囲を分けることで、追加する統制を判断できます。
検知後のアラートは、いきなり全件を同じ優先度で扱いません。「機密情報を扱う部門か」「OAuthスコープにファイル読み取り・書き込み・メール送信が含まれるか」「退職者・休眠アカウントに紐付くか」「承認済み代替サービスがあるか」を基準に、緊急、要調査、情報収集の3段階へ分けると、誤検知や不要な利用停止を減らせます。
ネットワーク監視の前提となる全体像は、SASE(Secure Access Service Edge)についての解説記事でも確認できます。
▶ 関連記事: SASE(Secure Access Service Edge)とは?わかりやすく解説
▲ 生成AIの利用状況を可視化する3つのアプローチの対比
SaaS管理ツールを活用した生成AI可視化の手順
SaaS管理ツールを用いて未承認のAIサービスを洗い出す場合は、検知、分類、影響調査、是正、再発防止を分けて設計します。ツールの検知結果は、利用禁止の根拠ではなく、調査対象を優先付けるための記録として扱います。
IdPおよび主要SaaSとのAPI連携
最初に、企業が利用しているID基盤(Google WorkspaceやMicrosoft Entra ID)とSaaS管理ツールをAPIで接続します。OAuthアプリの認可状況、利用者、付与スコープ、ログイン履歴、管理対象SaaSの監査ログを取得できる構成なら、各従業員がどの組織アカウントを通じて外部アプリへ権限を付与しているかを棚卸しする土台になります。
SlackやSalesforceなどの社内標準ツールとの連携は、対象サービスがAPIまたは監査ログで外部アプリ・ボット・拡張機能の情報を提供している場合に有効です。連携前に、取得項目、閲覧者、保存期間、退職者データの取り扱いを台帳化します。ログ保存と閲覧権限を定められるなら、個人の利用状況を必要以上に追跡せず、インシデント調査に必要な証跡を残す運用へ進めます。
ホワイトリストの定義と自動分類
次に、会社として利用を許可するAIサービスと利用条件を登録します。サービス名だけでなく、許可する契約プラン、利用できるアカウント種別、入力可能なデータ区分、利用目的、管理者、利用期限を台帳で管理します。例えば、法人契約のAIサービスであっても、個人アカウントでの利用や、未承認のプラグイン接続は許可対象と分けて扱います。
管理ツールの自動分類は、登録済みの許可条件と検知したアプリ情報を照合する補助機能です。名称が似たアプリ、正規サービスを装うOAuthアプリ、業務上必要な例外利用もあり得るため、自動的に未承認と表示されたことだけを理由に遮断しません。検知後は、利用者、OAuthスコープ、利用開始日、利用部門、代替手段の有無を確認し、許可、条件付き許可、例外審査、停止候補へ分類します。
リスクスコアリングと優先順位付け
検知されたシャドーAIは、ツールが提示するリスクスコアだけで決めず、権限とデータの組み合わせで優先順位を付けます。たとえば「カレンダーの読み取り」だけの連携と、「Googleドライブ内のファイル操作」「メール送信」「組織データの継続的な同期」を含む連携では、影響調査の順序が異なります。特権管理者のアカウント、共有ドライブ、顧客データを扱う部門、退職予定者のアカウントに関わる連携は、優先的に扱います。
利用者への通知では、検知日時、対象アプリ、確認された権限、利用継続中に必要な手続き、回答期限、代替の公式環境を明示します。業務上の理由とデータの種類を申請してもらい、承認者が情報システム、法務、業務部門のいずれかを判断できるようにすると、例外を口頭判断にせず記録できます。ブロック前に業務影響、連携解除時に失われるデータ、代替手段の準備状況を確認できれば、影響調査後に解除または段階的制限を選べます。確認できなければ、一時的な利用停止と利用者への個別連絡を先に行います。
棚卸し頻度は、初回は全件確認、以後は高リスクOAuthアプリを週次、全体を月次または四半期ごとに確認するよう、利用数と担当者数に合わせて設定します。退職・異動・権限変更のイベントと連動できるなら、定期棚卸しだけでは見落としやすい孤立アカウントを早期に発見できます。
主要なID基盤の一つである具体的なMicrosoft Entra IDの機能や導入メリットは専用の記事で解説しています。
以下のリンクは、シャドーAI管理に関する機能案内です。対応するAIサービス数や、ブラウザアクセスを識別する条件は本文の根拠として断定せず、製品の仕様・契約内容・管理設定に基づいて確認します。200+のAIサービス利用をブラウザアクセス単位で可視化できるプラットフォーム
この機能の検知対象、ブラウザアクセスを識別する条件、利用できるIdP・端末管理・ログ連携の範囲は製品設定で変わります。導入判断では、製品の管理画面と公式機能資料で自社のブラウザ、端末、IdPが対象に含まれることを確認します。対象に含まれるなら検知結果を月次棚卸しへ組み込み、含まれない利用形態はCASB、端末管理、ブラウザ管理、利用者申告で補完します。
利用状況可視化後に情シスが取るべき4つのアクション
現状を把握した後は、未承認利用を減らしながら、業務で必要なAI活用の経路を用意します。禁止・許可の二択にせず、危険度、業務上の必要性、代替環境、利用者への説明をつなぐことで、隠れた利用を増やしにくい運用になります。
組織の状況別に決める対策の優先順位
最低限の対策は、専任の運用担当者や端末管理の範囲が限られる組織を想定します。許可済みAIサービス、入力禁止情報、例外申請窓口を明文化し、アンケートとIdPのOAuthアプリ一覧で初回棚卸しを行います。IdPの監査ログを取得できるなら、組織アカウントで認可されたアプリを優先して調査します。ログを取得できない場合は、申告結果と管理者が把握する契約情報を台帳化し、次の検知手段を選ぶための基礎情報にします。
標準的な対策は、Google WorkspaceやMicrosoft Entra IDを運用し、会社管理端末または主要SaaSのログを利用できる組織を想定します。OAuthスコープ、退職者アカウント、例外申請、月次棚卸しを運用に組み込みます。高度な対策は、管理ブラウザ、MDM・EDR、CASB・SSE、DLPを横断して運用できる組織を想定します。管理対象端末の通信を集約できれば、IdP連携では把握しにくい直接Webアクセスやブラウザ拡張機能も調査対象に含めます。集約できない利用経路は、検知できない範囲として台帳に残します。
1. 危険なAIツールのブロックと公式環境への案内
過剰な権限を持つ未許可のAIツールは、SaaS管理ツールやIdPの管理画面からOAuth連携を解除できます。これにより、当該AIサービスに対する組織アカウントの権限付与を取り消せます。ただし、OAuth連携の解除だけでは、従業員がWebブラウザから当該サービスへ直接アクセスすることまでは止められません。直接アクセスの制御は、SWG/SSE、DNSフィルタリング、管理ブラウザ、端末管理などの統制範囲に応じて分けて設計します。
利用停止の通知には、「検知された権限」「制限する理由」「停止日時」「公式AI環境または申請窓口」「業務継続に支障がある場合の連絡先」を記載します。公式環境が用意されている部門では、その環境への案内を併記します。代替手段を提供できない業務は、一定期間の例外申請と影響調査を行い、継続利用の可否を記録します。
2. 公式AI環境の整備と利用事例の共有
公式AI環境では、利用できるアカウント、入力してよい情報、ファイル添付の可否、外部連携、会話履歴の保存、管理者ログ、データ利用設定を明文化します。AIサービスの法人向けプランであっても、保持・学習・人手レビュー・外部共有の条件はサービスごとに異なるため、契約書、データ処理条項、管理コンソールの設定を確認した結果で入力ルールを決めます。
三菱UFJフィナンシャル・グループは、対話型AI「AI-bow」について、2023年11月に全行で利用を開始し、議事録作成、翻訳、アイデア出し、Excel作業の自動化などに対応していると紹介しています[4]。公開された事例を自社へ当てはめる際は、利用者数や削減時間だけを比較せず、対象業務、データ区分、社内システム連携、レビュー体制、利用者教育が自社の条件に合うかを見ます。
社内向け生成AIの展開事例を参照する場合も、公開された利用者数や作業時間の削減だけで再現性を判断しません。自社で事例共有を行う場合は、成功例だけでなく、誤回答の修正、レビュー手順、入力禁止情報、利用できなかった業務も合わせて記録します。
3. ダッシュボードを用いた利用分析と利用者支援
公式AIを導入した後は、利用状況をダッシュボードで確認します。確認する指標は、単純な利用回数だけではありません。承認済み環境への移行率、未承認アプリの新規検知数、高リスクOAuthスコープの残数、例外申請の処理日数、教育受講後の問い合わせ内容を追うと、統制と利便性の両方を確認できます。
デジタル庁は2026年4月24日、ガバメントAI「源内」の一部機能をオープンソース(OSS)として公開しました[6]。同庁の公開情報で、部署別の利用頻度分析や未利用層分析の実績までは確認できません。本記事では「源内」を利用分析機能の導入事例とは扱わず、公共領域でも生成AIの基盤・検証・公開に関する取り組みが進んでいる例として位置付けます。
民間企業の運用では、活用が進む部署のプロンプトをそのまま共有するのではなく、入力した業務データを除いたテンプレート、想定用途、出力の確認手順、利用できないケースをセットにします。監査ログを取得できる環境なら、テンプレート利用後の問い合わせや修正傾向を限定的に分析し、教育資料の更新へ反映します。
4. ガイドラインの更新と定期的な教育
AI技術の進化に合わせて、社内ガイドラインを定期的に見直します。ガイドラインには、利用できるサービスと契約プラン、入力禁止情報、出力の事実確認、著作権・秘密保持、外部共有、個人アカウント、ブラウザ拡張機能、APIキー、例外申請、違反時の連絡手順を含めます。
教育では、抽象的に「機密情報を入れない」と伝えるだけでなく、「顧客名を含む問い合わせ本文」「未公表の価格表」「ソースコード」「人事評価」「アクセスキー」をどの区分として扱うかを具体例で示します。部門の業務に公式環境が適合しないことが判明した場合は、利用者を一律に責めるのではなく、必要な機能、データの種類、利用頻度を例外申請から収集し、公式環境の整備または代替手段の選定へつなげます。
IdPを用いたアクセス制御の全体像は、SSO(シングルサインオン)の仕組みに関する記事でも確認できます。
▶ 関連記事: SSO(シングルサインオン)はどんな仕組み? 種類やメリット・選び方について解説 シングル サイン オン sso と は
▲ 未承認AIツール検知時における情シスの対処判断フロー
マネーフォワード Admina接続:ID連携・SaaS棚卸し機能でのシャドーAI検知フロー
多数のクラウドサービスが利用される環境では、SaaS管理プラットフォームを用いてアカウント、利用サービス、認可アプリを棚卸しする方法があります。ここではAdminaを例に、一般的なSaaS管理の運用手順と、製品固有の画面・連携可否を確認したうえで調査フローへ組み込む考え方を分けて解説します。
IDプロバイダ連携によるシャドーITの洗い出し
Adminaの公式案内では、Google WorkspaceやMicrosoft 365などの主要サービスとの連携を通じて、SaaS利用状況やアカウント情報を整理する機能を案内しています。Adminaを接続しただけで、すべての外部アプリ、個人契約、私物端末、APIキー利用を把握できるわけではありません。取得できる情報は、接続するIdPやSaaSのAPI・監査ログ、付与した権限、契約プラン、管理対象端末の範囲に左右されます。
検知対象の範囲が管理画面と公式機能資料で確認できる場合は、組織アカウントで認可された外部アプリ、利用中のSaaS、退職者アカウントを初回棚卸しの対象にします。確認できない利用形態は、アンケート、CASB・SSEのアクセスログ、MDM、ブラウザ管理で補完します。こうして検知経路ごとの見える範囲と見えない範囲を台帳へ残すと、未検知を製品の故障と誤認せずに運用できます。
OAuth権限の棚卸しと過剰権限への対応
OAuth連携を調査する際は、アプリ名だけでなく、読み取り、書き込み、メール送信、ファイル操作、オフラインアクセスなどのスコープを確認します。小規模なAIツールであっても、組織のファイル・メール・予定表に広い権限を持つ場合は、利用目的と権限が釣り合っているかを調べます。
Adminaの管理画面で権限情報や連携アプリの操作範囲を確認できる構成では、高リスクの連携を抽出して利用部門へ影響を照会します。業務に不要であることが確認できれば連携解除へ進みます。業務上必要な場合は、より限定的なスコープ、専用アカウント、承認済みの代替サービスへ切り替えられるかを検討します。退職者や異動者のアカウントは、IDライフサイクルの停止処理と外部サービス側のアカウント・トークン失効を結び付け、孤立アカウントとして残っていないかを確認します。
製品の利用可否を決める際は、Adminaの公式機能紹介、連携設定画面、対象SaaSの一覧、OAuth権限の取得項目、連携解除時の挙動を確認します。自社のIdP・SaaS・端末管理が対象に含まれ、必要なログを取得できるなら、初回棚卸しと月次レビューの基盤として利用できます。対象外の利用経路が多い場合は、SaaS管理だけに依存せず、CASB、MDM、ブラウザ管理、例外申請を組み合わせます。
Adminaを活用したIT資産全体の可視化に関する補足は、「SCS評価制度SaaS対応にIT資産可視化が不可欠な理由」の記事でも扱っています。
関連してSaaS管理プラットフォームの基本となるSMP(SaaS Management Platform)の機能や導入メリットも確認できます。
最初の30日で進める実施計画
開始から第1週は、情報システム、法務・個人情報保護、主要業務部門で対象データ区分と許可済みAIサービスを整理し、IdP管理画面からOAuthアプリ一覧を取得します。第2週は、ファイル操作・メール送信・オフラインアクセスなど高リスクのスコープを持つアプリを優先して、利用者、業務目的、代替手段を調査します。
第3週は、不要な連携の解除、公式環境への案内、例外申請の受付を行います。第4週は、未承認アプリ数、高リスク権限数、例外申請の内容、検知できなかった利用経路をレビューし、月次の担当者・閲覧権限・エスカレーション先を決めます。この順序なら、検知ツールを導入すること自体を目的にせず、可視化結果を是正と利用環境の改善へ結び付けられます。
▶ 関連記事: SMP(SaaS管理)とは?機能やIDaaSとの違い・事例を解説
よくある質問(FAQ)
Q:シャドーAIとは何ですか?
A:情報システム部門の許可を得ずに、従業員が個人の判断で業務に利用している生成AIサービスやAI機能のことです。リスクは、サービスごとのデータ保持・学習・共有条件、入力した情報の種類、付与したOAuth権限、利用端末によって変わります。
Q:生成AIの利用状況はどうやって把握しますか?
A:全社アンケート、通信ログを監視するCASB・SSE、Google WorkspaceやMicrosoft Entra IDなどのID基盤と連携してOAuth認可アプリや監査ログを整理するSaaS管理ツールを組み合わせます。IdPログで把握できるのは組織アカウントの認証・認可を中心とするため、個人アカウント、私物端末、未管理ブラウザ、APIキー利用は別の検知経路で補います。
Q:社内のAI利用を完全に禁止すべきですか?
A:一律禁止だけでは、私物端末や個人アカウントへ利用が移る可能性があります。機密情報を扱わない定型業務など、条件を満たす用途に公式の法人向けAI環境を用意できるなら、許可するサービス、入力できる情報、出力確認の方法を示して利用経路を一本化します。公式環境を用意できない業務は、利用目的とデータ区分を例外申請で確認し、承認・代替手段・停止のいずれかを記録します。
Q:Vercelのインシデントとはどのような事例ですか?
A:Vercel社は、2026年4月に公表したセキュリティ速報で、第三者AIツール「Context.ai」の侵害を起点に従業員のGoogle Workspaceアカウントが乗っ取られ、同社環境内で一部の非機密環境変数への不正アクセスが発生したと説明しています。本事例では、組織アカウントから外部アプリへ付与したOAuth認可を、アプリ名だけでなくスコープと利用者単位で棚卸しする判断につながります。
Q:ブラウザ拡張機能やAPIキー利用も検知できますか?
A:IdP連携型のSaaS管理だけでは把握できない経路があります。会社管理ブラウザの拡張機能一覧、MDM・EDRの端末情報、CASB・SSEのWebアクセスログを組み合わせると、検知できる範囲が広がります。対象外の端末や回線が多い場合は、利用申告で補完します。各手法の検知範囲と限界の詳細は、本記事「生成AIの利用状況を可視化する3つのアプローチ比較」セクションで整理しています。
全体像をハブ記事 シャドーAIとは?未承認ツールの5大リスクと情シスが実践すべきシャドーAI 対策完全ガイド で確認できます。
▶ 関連記事: シャドーAIとは?情報漏洩リスクと情シス向け検知・対策ガイド
まとめ
未承認の生成AI利用は、情報漏洩やコンプライアンス上の問題につながる可能性があります。ただし、利用実態を把握せずに一律で禁止するだけでは、個人アカウントや私物端末での利用を見逃すことがあります。アンケート、IdPのOAuth認可・監査ログ、SaaS管理、CASB・SSE、端末・ブラウザ管理を組み合わせ、検知できる範囲とできない範囲を分けて管理します。
Vercel社が2026年4月に公表したインシデントは、第三者AIツールに関する侵害が組織アカウントの乗っ取りと環境変数へのアクセスにつながった事例です。可視化後は、アプリ名だけでなくOAuthスコープ、利用者、扱うデータ、業務影響、代替環境の有無を確認し、解除、条件付き許可、例外審査、継続監視を使い分けます。デジタル庁の「源内」は利用分析の実績事例としてではなく、生成AIの基盤・検証・公開に関する取り組みの例として捉えます。
✅ IdPのOAuthアプリ一覧、監査ログ、会社管理端末の範囲を整理した
✅ 未承認AIサービスを、利用者・権限・データ区分・業務影響で分類した
✅ ファイル操作、メール送信、オフラインアクセスを含む過剰なOAuth権限を調査した
✅ 連携解除の前に、利用者への通知、代替手段、例外申請の手順を用意した
✅ 公式AI環境で利用できる契約プラン、入力可能な情報、出力確認のルールを明文化した
✅ 個人アカウント、BYOD、ブラウザ拡張機能、APIキー利用の検知方法を別途整理した
✅ 高リスクOAuthアプリは週次、全体の棚卸しは月次または四半期ごとに見直す担当を決めた
シャドーAI管理に関する機能の説明は、Adminaのシャドーai管理プラットフォームで確認できます。
本記事の内容に誤り等がございましたら、こちらからご連絡ください。
監修
Admina Team
情シス業務に関するお役立ち情報をマネーフォワード Adminaが提供します。
SaaS・アカウント・デバイスの管理を自動化し、IT資産の可視化とセキュリティ統制を実現。
従業員の入退社対応や棚卸し作業の工数を削減し、情報システム部門の運用負荷を大幅に軽減します。
中小企業から大企業まで、情シス・管理部門・経営層のすべてに頼れるIT管理プラットフォームです。





