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閉域網とは?仕組みやインターネットVPNの違いとの違い、種類、選び方などをわかりやすく解説

閉域網とは?仕組みやインターネットVPNの違いとの違い、種類、選び方などをわかりやすく解説

閉域網とは?仕組みやインターネットVPNの違いとの違い、種類、選び方などをわかりやすく解説

HC

Admina Team

2025/09/24

企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)が進む現代において、情報資産をいかに保護し、事業継続性を確保するかは経営における重要な課題です。閉域網は、通信事業者が提供する独立したネットワークであり、インターネットから物理的または論理的に分離されているため、第三者による不正アクセスや盗聴のリスクを大幅に低減できます。

この記事では、閉域網の基本的な仕組みから種類、そして自社に適したサービスの選び方までわかりやすく解説します。

閉域網とは

閉域網は、特定の利用者だけが接続できる閉じられたネットワーク環境を指します。読み方は「へいいきもう」、英語では「closed network」と訳されます。

閉域網は、企業の拠点間通信や機密情報を扱うシステムへのアクセス経路として利用されることが多く、情報漏洩対策として重要な役割を担っています。

閉域網の基本的な仕組み

閉域網は、通信事業者が独自に保有する通信設備を用いて構築されます。利用者は、契約した通信事業者が提供するアクセス回線を通じて、この閉鎖されたネットワークに接続します。データ通信はすべてこの網内で完結し、不特定多数が利用するインターネットを経由しません。これにより、通信内容が外部に漏れる危険性を最小限に抑えられます。物理的に独立した回線を使用する方式から、通信経路を論理的に分割してセキュリティを確保する方式まで、その実現方法は多岐にわたります。

インターネットVPNとの違い

インターネットVPNは、既存のインターネット回線上に仮想的なトンネルを作り、通信を暗号化する技術です。手軽に導入できる反面、通信品質はインターネット回線の混雑状況に影響を受けます。

一方、閉域網は通信事業者によって通信帯域の保証された、安定した速度と品質の維持できるネットワークを構築可能です。セキュリティ要件や求める通信品質のレベルが、両者を選択する際の判断基準となります。

閉域網の主な種類

閉域網にはいくつかの種類があり、それぞれに通信方式や特徴が異なります。企業のネットワークに求められるセキュリティレベル、拡張性、コストなどを考慮して、最適なサービスを選ぶことが重要です。ここでは代表的な閉域網サービスについて、その特性を解説します。

IP-VPN

IP-VPNは、通信事業者の閉域IP網を利用して拠点間を接続するサービスです。MPLSという技術で通信経路を論理的に分離し、顧客ごとに独立したネットワーク空間を提供します。通信品質が保証されており、安定した通信が可能です。また、多くの拠点を持つ企業でも比較的容易にネットワークを構築できる拡張性の高さも特徴です。セキュリティとコスト、パフォーマンスのバランスが良く、多くの企業で採用されています。

広域イーサネット

広域イーサネットは、地理的に離れた拠点をレイヤー2(データリンク層)で接続するサービスです。IP-VPNと異なり、使用できるプロトコルに制約が少なく、利用者が自社のポリシーに合わせて柔軟なネットワーク設計を行えるのが大きな特徴です。例えば、自社で利用したい特定のルーティングプロトコルをそのまま流用できます。IP以外の通信規格を扱いたい場合や、独自のネットワーク構成を維持したい場合に適した選択肢です。

専用線

専用線は、特定の2拠点間を物理的な一本の回線で直接結ぶサービスです。他の利用者の通信が一切混在しないため、閉域網の中でも最も高いセキュリティと通信品質を確保できます。ただし、その分コストは高額になり、3拠点以上を接続する場合は拠点ごとに回線契約が必要になります。金融機関の勘定系システムや、絶対に途絶が許されないサーバー間の接続など、特に厳格な要件が求められる場面で利用されます。

クラウド接続に特化した閉域網サービス

近年、主要なクラウドサービス(AWS、 Microsoft Azure、 Google Cloudなど)への接続に特化した閉域網サービスが登場しています。これらのサービスは、各クラウド事業者の接続拠点と自社拠点を閉域網でダイレクトに結びます。インターネットを経由するよりも安全かつ高速で安定したクラウド利用が実現します。マルチクラウド環境を構築する企業が増加する中で、安全なアクセス経路を確保する手段として不可欠な存在になっています。

閉域網を企業が導入するメリット

閉域網を導入することで、企業は単にセキュリティを高めるだけでなく、事業活動の安定化や効率化といった多くの効果を得られます。ここでは、閉域網がもたらす具体的なメリットを3つの観点から説明します。

第三者による侵入リスクを低減

閉域網の最大のメリットは、その高いセキュリティ性能です。インターネットから分離されたネットワークであるため、外部の攻撃者が直接侵入することは非常に困難です。これにより、標的型攻撃や不正アクセスといったサイバー攻撃のリスクを大幅に低減できます。顧客情報や技術情報といった機密性の高いデータを扱う企業にとって、この安全性は事業の根幹を守る上で欠かせない要素です。

安定した通信速度と品質の確保

業務で利用するアプリケーションや大容量のデータ通信には、安定したネットワーク環境が不可欠です。インターネットのように不特定多数で回線を共有する場合、時間帯によって通信速度が低下することがあります。閉域網では、通信帯域は契約形態やサービスレベルに応じて保証される場合があり、安定した速度と品質を維持しやすくなります。これにより、Web会議の音声途切れやシステム応答遅延の問題を軽減することが期待されます。

柔軟なネットワーク管理と運用

閉域網サービス、特にIP-VPNや広域イーサネットでは、ネットワークの構成や管理において高い柔軟性が得られます。例えば、トラフィックの種類に応じて通信の優先順位を設定するQoS(Quality of Service)機能を利用すれば、音声通話や基幹システムへのアクセスを優先させ、重要な業務通信の品質を保つことが可能です。また、拠点の増減にも迅速に対応できるため、事業の成長や変化に合わせたネットワーク環境の最適化が容易になります。

閉域網を選ぶ際の比較ポイント

自社にとって最適な閉域網サービスを導入するためには、いくつかの重要な観点からサービスを比較検討する必要があります。見た目のコストだけで判断するのではなく、将来的な事業展開まで見据えた上で、総合的に評価することが失敗しないためのポイントです。

セキュリティ要件

まず、自社が扱う情報の機密性や、業界で求められるセキュリティ基準を明確にすることがスタート地点です。例えば、個人情報や決済情報を扱うのであれば、論理的に分離されたIP-VPN以上のセキュリティレベルが求められます。さらに高度な機密性を要するなら、物理的に分離された専用線が選択肢となるでしょう。自社のセキュリティポリシーと照らし合わせ、どのレベルの閉域網が必要かを判断します。

通信の安定性と速度

日常業務で利用するアプリケーションやデータ量を洗い出し、必要な通信帯域を見積もります。特に、VoIP(IP電話)やWeb会議、大容量ファイルの送受信などを頻繁に行う場合は、帯域保証のあるサービスが適しています。通信事業者が提示するSLA(Service Level Agreement:品質保証制度)の内容を確認し、保証される速度や稼働率が自社の要求水準を満たしているかを見極めることが重要です。

コストと運用負荷のバランス

閉域網のコストは、初期費用と月額料金から構成されます。サービスの種類や帯域、拠点数によって大きく変動するため、複数の事業者から見積もりを取得して比較しましょう。同時に、ネットワーク機器の管理や監視を自社で行うのか、通信事業者のマネージドサービスを利用するのかも検討事項です。自社のIT担当者のスキルやリソースを考慮し、運用負荷とコストのバランスが取れたプランを選択します。

将来的な拡張性

事業は常に変化します。将来的な拠点の増加やクラウド利用の拡大、海外進出の可能性などを視野に入れ、ネットワークの拡張が容易なサービスを選ぶことが賢明です。例えば、特定のクラウドサービスへの接続性が高いか、新たな拠点をスムーズに追加できるか、といった点を確認しておきましょう。初期導入時の要件だけでなく、3年後、5年後を見据えた拡張性を持つサービスを選ぶことが、長期的なIT投資の成功に繋がります。

閉域網の活用事例と今後の動向

閉域網は、すでに多くの企業でその特性を活かした活用が進んでいます。また、テクノロジーの進化と共に、その役割も変化しつつあります。ここでは具体的な活用シーンと、今後の展望について解説します。

多拠点間のデータ連携

全国に支社や店舗を展開する企業では、各拠点にある販売管理データや顧客情報を本社のサーバーへ安全に集約するために閉域網が活用されています。IP-VPNなどを利用して全拠点を結ぶことで、インターネットを経由せずに機密データを連携できます。これにより、全社的なデータ分析や迅速な経営判断が可能になると同時に、各拠点における情報セキュリティレベルを均一に保つことができます。

クラウドサービスへのアクセス

IaaSやSaaSといったクラウドサービスの業務利用が一般化する中で、閉域網はオフィスとクラウド環境を安全に接続するための経路として重宝されています。特に、基幹システムをクラウドへ移行する際には、安定性とセキュリティを両立できる閉域網接続が標準的な選択肢となっています。これにより、従業員は社内にサーバーがあるのと同様の感覚で、安全かつ快適にクラウド上のリソースを利用できます。

ゼロトラスト・セキュリティとの連携

近年のセキュリティの考え方として、何も信頼しないことを前提とするゼロトラストが主流になりつつあります。閉域網は、ゼロトラスト・セキュリティを実現するための構成要素の一つとして位置づけられます。閉域網で安全な通信経路を確保した上で、さらにユーザー認証やデバイス認証を組み合わせることで、より強固な多層防御を構築します。閉域網は、境界を守るだけでなく、ゼロトラスト環境の土台となる安全なネットワークインフラを提供します。

まとめ

本記事では、閉域網の基本的な概念から種類、選び方、そして最新の活用動向までを解説しました。閉域網は、インターネットから隔離された安全な通信環境を提供し、企業の重要データをサイバー攻撃の脅威から保護します。特に、クラウド活用やテレワークが定着した現代のビジネス環境において、その役割はますます大きくなっています。IP-VPN、広域イーサネット、専用線など、それぞれ特性の異なるサービスの中から、自社のセキュリティポリシー、求める通信品質、コスト、そして将来の事業計画を総合的に判断し、最適なものを選択することが重要です。まずは自社のネットワーク要件を整理し、信頼できる通信事業者に相談することから、安全で安定した事業基盤の構築を始めてみてはいかがでしょうか。

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