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OSのサポート終了やセキュリティ対策に伴う計画的な端末更新であるPCリプレイスでは、全台を一律に4年で入れ替えることが目的ではありません。本記事で示す周期や費用の数値はあくまで一般的な目安であり、自社の資産台帳・障害記録・業務要件で補正することを前提としています。
法人向けPCの選定・運用管理を担う情報システム部門では、端末の利用年数、用途、故障対応、データ消去、次年度予算を別々に扱うと、更新漏れや突発対応が起こりやすくなります。法定耐用年数4年は有力な基準ですが、技術的な寿命や会計上の更新義務を示すものではありません。
そこで本記事では、PC買い替えサイクルを3年・4年・5年で比較し、法人パソコンのリプレイス時期を判定する基準、予算・ROIの作り方、購入・リース・DaaSの違い、モダンキッティングによる展開手順を実務順に整理します。

PCリプレイスとは
PCリプレイスとは、故障後に端末を交換するのではなく、OSのサポート状況、セキュリティ、性能、費用を基準に法人PCを計画的に更新する取り組みです。
本記事のポイント
法人PCの標準的な更新基準は4年ですが、開発用途は3年、固定用途やVDI端末は5年を検討できる場合があります。
法定耐用年数4年は減価償却のための年数であり、4年で必ず廃棄する技術的な期限ではありません。
リプレイス予算は端末価格だけでなく、故障対応、利用者の待機時間、キッティング、廃棄・データ消去まで含めて比較します。
AutopilotとIntuneを使える環境では、端末の直送と自動設定を組み合わせ、更新時の情シス工数を抑えられます。
事後交換は、故障や退職者発生のたびに必要な台数だけを手配する運用です。一方、計画的なPCリプレイスでは、資産台帳から更新対象を抽出し、調達、展開、回収、データ消去までを年度計画に組み込みます。
この一連の管理はPCライフサイクル管理、すなわちPC-LCMと呼ばれます。調達だけを外部委託しても、端末台帳、利用者割当、OS更新、故障交換、返却証跡が分断されていれば更新計画は安定しません。PCリプレイスは、端末の購入イベントではなく、資産管理とセキュリティ運用をつなぐ業務設計です。
2026年の法人PC市場
2026年は更新需要の反動と部材価格の上昇を前提に、早めに調達枠を確保する判断が必要な年です。
MM総研の予測としてPC Watchが紹介した数値では、2026年の国内PC出荷台数は前年比31.1%減の1,229万台、法人向けは同34.8%減の883万台となる見通しです。一方、PC Watchは2025年度の法人向けPC出荷台数が前年比33.6%増の1,349万1,000台で過去最高になったと報じています。Windows 10のサポート終了対応による更新需要が集中した後は、調達条件や価格の変動を見ながら、更新を平準化する必要があります。
また、TechTarget JapanはGartnerの2026年2月の予測として、2026年末までにDRAMとSSDを合わせた価格が2025年比で130%上昇し、PC平均販売価格が前年比17%上がる可能性を紹介しています。予測値であるため調達価格を固定的に見積もる根拠にはできませんが、翌年度へ先送りするだけで端末単価が下がるとは限りません。
法人PCの買い替えサイクルの判断基準
法人PCの買い替えサイクルは、一般事務端末を4年の標準とし、性能要求と利用場所が異なる端末だけを例外管理する方法が実務的です。
国税庁の耐用年数表に基づくパソコンの法定耐用年数は4年です。ただし、この年数は減価償却を計算するための基準であり、4年経過後の利用を禁止するものではありません。更新時期は、税務処理とは別に、OSのサポート、メーカー保守、バッテリー状態、故障履歴、業務影響を評価して決めます。
PC部品の一般的な寿命については、バッテリーを2〜3年、HDDを4〜5年とする目安が言及されることがあります。バッテリーは交換で延命できる場合もありますが、持ち出し端末で稼働時間が不足し、保守切れも近いなら、部分修理と更新後の運用負荷を比較します。
更新周期 | 税務・資産管理 | 故障・保守の考え方 | TCOへの影響 | 対象部門・推奨環境 |
|---|---|---|---|---|
3年 | 償却完了前の更新となるため、残存簿価と処分方法を経理と整理します。 | メーカー保証期間内での更新設計をしやすく、持ち出し端末のバッテリー劣化を抑えやすいです。 | 調達頻度は上がりますが、性能不足と障害対応を減らせます。 | 開発、設計、動画処理、モバイル利用が多い部門に向きます。 |
4年 | 法定耐用年数と整合しやすく、台帳と予算を年度単位で管理しやすいです。 | バッテリー劣化、保守満了、性能低下を計画更新で吸収しやすい期間です。 | 端末費用と運用負荷の均衡を取りやすいです。 | 一般事務、営業、管理部門の標準端末に向きます。 |
5年 | 償却後も利用できますが、資産台帳上は取得日と保守状況を継続管理します。 | 故障時の代替機、部品供給、OS対応を事前に用意しなければなりません。 | 初期費用の年割りは下がる一方、障害対応と待機時間が増える可能性があります。 | VDI接続専用、共有端末、固定デスクの軽作業端末に限定して検討します。 |
4年を標準に置く理由
4年周期は、減価償却、保守契約、端末の物理的な劣化を同じ計画に乗せやすいため、全社標準を決める際の出発点となりやすい目安です。ただし、実際の更新時期は端末の状態や用途によって前後するため、この周期をそのまま固定するのではなく、自社の資産台帳や障害記録で補正しながら運用します。
ASCIIは、情報通信系の読者を対象とした独自調査として、直近1年間における社外持ち出しPCの故障発生率の平均が4.4%であると紹介しています(出典:https://ascii.jp/elem/000/004/189/4189574/)。1,000台を導入する企業では年間平均44回の故障対応に相当する計算です。故障率だけで更新を決めることはできませんが、予備機、交換作業、利用者の待機、データ復旧までを含めて保守体制を設計する材料になります。
一方で、5年利用を一律に否定する必要はありません。VDIで処理をサーバー側へ寄せ、端末が業務アプリの表示と入力に限定される場合は、端末性能よりもOSのサポート可否、セキュリティエージェントの動作、保守部品の供給を優先します。これらを満たせない端末は、利用年数にかかわらず更新対象にします。
AI PCの評価条件
AI PCは用途別の検証結果が出ている場合に標準機候補へ入れ、全社一律の更新理由にはしません。
MicrosoftはCopilot+ PCを、40TOPSを超えるNPUを搭載するWindows 11 PCの区分として案内しています。Copilot+ PCの最小要件には、40TOPS以上のNPU、16GBのメモリ、256GBのストレージが含まれます。ローカルAI処理が業務で必要か、利用予定アプリがNPUを活用するか、機密データの処理場所を統制できるかを検証できれば、対象部門から導入判断を進めます。
NPU搭載PCを導入しても、クラウドAIの従量課金が自動的に下がるわけではありません。AIサービスの契約、アプリの処理方式、利用者の入力データ、社内ルールによってコストとセキュリティへの影響は変わります。対象部門で処理時間、利用回数、クラウド送信の有無を測定できない場合は、通常のWindows 11対応端末として評価し、AI効果を予算効果へ算入しません。
法人パソコンのリプレイス時期を見極めるサイン
法人パソコンのリプレイス時期は、危険性のある物理異常は即時交換し、性能低下や保守満了は次回計画へ組み込んで優先順位を付けます。
利用年数だけで端末を抽出すると、業務に支障がない端末まで一斉更新する一方、故障予兆のある端末を見落とします。資産台帳の取得日、OS、メモリ、保証期限に加え、ヘルプデスクのチケット件数と利用者の申告を重ねて判定します。
確認項目 | 主な状態 | 判断 | 情シスの初動 |
|---|---|---|---|
バッテリー膨張・筐体変形 | タッチパッドの浮き、底面の膨らみ、異常発熱がある状態です。 | 即時リプレイス対象です。 | 利用を止めて回収し、メーカーまたは保守窓口の指示に従います。 |
冷却ファン・HDDの異音 | ファンの異常音、HDDの回転音や断続的な異音がある状態です。 | 即時診断または代替機交換の対象です。 | データ保全を優先し、バックアップ状況を確認して交換判断をします。 |
フリーズ・予期せぬ再起動 | 業務アプリ利用中に停止や再起動が繰り返される状態です。 | 原因調査後、業務影響が継続するなら前倒し更新します。 | OSログ、メモリ、ストレージ、セキュリティ製品の競合を切り分けます。 |
性能・容量不足 | メモリ逼迫、ストレージ不足、Web会議や業務アプリの遅延がある状態です。 | 次回計画の優先更新対象です。 | 利用アプリ、空き容量、待機時間を記録して予算根拠にします。 |
OS・保守の期限 | OSのサポート終了、メーカー保守終了、セキュリティ製品の対象外が近い状態です。 | 期限前に更新または代替統制を決める対象です。 | 移行可否、隔離、ネットワーク制限、ESUなどの選択肢を評価します。 |
SSDと異音の切り分け
SSDは可動部を持たないため、通常はSSD自体が動作音を出しません。
異音の主な発生源は冷却ファン、HDD、光学ドライブなどです。SSD搭載機で音が聞こえる場合も、SSDの故障と決めつけず、ファンの回転数、筐体の振動、周辺機器、充電器を切り分けます。ただし、異音と同時にフリーズや認識不良が起きる端末は、利用者に使い続けさせず代替機へ切り替えます。
Windows 10終了後の対応
サポート終了OSは重大な是正候補として扱い、直ちに一律の違法・不適合と断定せず、業務影響と代替統制を評価します。
通常サポート終了後のWindows 10端末は、新たな脆弱性へのセキュリティ更新を通常の運用では受けられません。対象エディションや契約条件によっては拡張セキュリティ更新プログラムなどを選べる場合がありますが、恒久対策ではありません。業務アプリがWindows 11へ移行できるなら更新を優先し、移行できない場合は端末のネットワーク分離、利用者制限、アクセス制御、期限を定めた移行計画をセットで稟議に記載します。
▲ PCの状態や障害サインに応じたリプレイスの対応判断フロー
用途別の端末スペックと更新優先度
端末スペックはCPUの型番だけで一律に決めず、利用アプリ、データ保存量、モバイル利用、ローカル処理の有無でプロファイル化します。
「メモリ16GB、SSD 256GB」を全社員の必須条件にすると、用途によっては過剰調達になります。反対に、Web会議、複数のブラウザタブ、表計算、セキュリティエージェントを同時利用する部門で8GB端末を延命すると、利用者の待機時間と問い合わせが増えます。現行端末のメモリ使用率、ディスク空き容量、アプリの推奨要件を採取して標準を決めます。
利用区分 | 主な利用 | 端末判定の軸 | 更新優先度 |
|---|---|---|---|
一般事務・営業 | Web会議、ブラウザ、表計算、文書作成、SaaS利用です。 | 会議中のメモリ使用量、バッテリー稼働時間、ストレージ残量を確認します。 | 4年を基準に、性能不足や保守終了を前倒し要因にします。 |
開発・設計・制作 | 統合開発環境、仮想化、CAD、画像・動画処理などです。 | CPUコア数、メモリ、GPU、ローカル保存領域、ビルド時間を評価します。 | 3年周期または性能計測による前倒し更新を検討します。 |
固定デスク・共有端末 | 受付、帳票入力、VDI接続、限定業務アプリなどです。 | OS対応、周辺機器、保守、業務アプリの互換性を評価します。 | 5年利用も選択肢ですが、更新条件を台帳に明記します。 |
モバイル利用端末 | 外出先での会議、営業活動、現場作業などです。 | バッテリー、重量、耐久性、盗難時の遠隔ワイプを評価します。 | 3〜4年を基準にし、バッテリー状態で前倒しします。 |
性能測定の記録項目
性能不足を稟議根拠にするなら、利用者の印象ではなく、端末ごとの観測値と業務影響を記録します。
最低限記録する項目は、OSバージョン、CPU世代、メモリ容量、ストレージ使用率、保証終了日、月間の障害件数、利用アプリ、利用者が待機した場面です。例えば、Web会議中に画面共有や表計算が停止する端末は、発生日時と復旧に要した時間をチケットに残します。これにより、端末年数だけでは見えない更新優先度を比較できます。
Copilot+ PCの採用範囲
Copilot+ PCの調達仕様に「AI PC」とだけ記載するのではなく、必要なNPU性能(40TOPS超)、メモリ(16GB以上)、利用アプリ、データ処理方針を要件化できる部門に限って選定します。Intel系プロセッサではITmediaの2025年記事がCore Ultra 200VをCopilot+ PC対応プロセッサとして紹介しており、機種選定時の確認指標として参照できます。要件を定義できない場合は、通常のWindows 11対応端末として調達判断を行います。
法人パソコンのリプレイス予算とROIの作り方
法人パソコンのリプレイス予算は、端末単価ではなく、4年間などの利用期間に発生する総保有コストを新旧端末で比較して作成します。
経営層への稟議で「古くなったため更新する」とだけ説明すると、まだ動く端末をなぜ交換するのかが伝わりません。端末費、保守、キッティング、故障対応、利用者の待機、回収・消去費を同じ単位で並べます。更新台数は資産台帳の取得年月から抽出し、更新時期を迎える端末と前倒し対象を分けます。
TCOの算定式
TCOは、端末の取得費用に運用費用と業務損失を加え、売却額や残価があれば差し引いて算定します。
稟議では、次の式を年度別・部門別に展開します。
TCO=端末取得費+キッティング費+保守・修理費+ソフトウェア費+障害対応人件費+利用者待機損失+回収・データ消去費-残価・売却収入
障害対応人件費は「年間チケット件数×1件当たりの対応時間×担当者の時間単価」で算出します。例として、年間50件・1件平均1時間・時間単価4,000円なら年間20万円です。利用者待機損失は「遅延が発生した人数×1人当たりの年間待機時間×時間単価」で示します。例として、50人・年間10時間・時間単価3,000円なら年間150万円です。いずれも社内の人件費計算基準を用い、推測値ではなく実績チケットや利用者申告から集計します。これらを端末費と並べると、「4年未満更新と4年以上更新でどちらのTCOが低いか」を数値で示せます。
2018年時点の調査としてITmediaが紹介した数値では、4年未満で利用したPCの1台当たりコストは1,379ドル、4年以上では3,071ドルでした。古い調査であり、現在の端末価格や日本企業の人件費へそのまま適用はできません。しかし、端末価格よりも生産性低下の比率が大きくなり得る点は、稟議で確認すべき論点です。
稟議書の記載項目
稟議書は更新理由、対象台数、比較条件、未更新時のリスク、実行計画を一枚の判断表にまとめます。
項目 | 記載内容 | 判断への影響 |
|---|---|---|
対象端末 | 取得年月、OS、保証終了日、利用部門、用途、故障履歴を一覧化します。 | 更新対象の漏れと重複購入を防ぎます。 |
更新理由 | OSサポート、保守終了、性能不足、バッテリー、障害件数を端末群ごとに示します。 | 一律更新ではなく優先順位を説明できます。 |
比較案 | 購入、リース、DaaSごとに端末費、保守、展開、返却・消去費を比較します。 | 初期費用だけでない総額比較ができます。 |
未更新コスト | 故障対応時間、利用者待機、代替機、セキュリティ統制の追加費を記載します。 | 延命案とのTCO比較ができます。 |
実行計画 | 調達、検証、展開、旧端末回収、消去証明書取得までの期日と責任者を記載します。 | 予算承認後の実行可能性を示せます。 |
予算平準化の方法
更新対象を毎年分散させると、調達費用とキッティング負荷を年度ごとに平準化できます。
全社一斉更新が必要な事情を除き、取得年度または部門単位で端末群を分け、各年度に更新対象を割り当てます。例外として、OSサポート終了、脆弱性対応、保守終了が集中する端末は、通常の周期を待たずに別枠予算へ切り出します。次年度に更新する端末が確定したら、予備機、回収費、データ消去証明書、ライセンス移管も予算内に含めます。
購入・リース・DaaSの調達方式
調達方式は、初期費用の低さではなく、端末管理をどこまで自社で担うかと、更新周期を守れるかで選びます。
購入は端末仕様を柔軟に決めやすい一方、資産管理、故障時の交換、回収、廃棄を自社で設計します。リースは契約満了を更新の節目にしやすく、DaaSは端末に加えてキッティング、保守、回収をサービス範囲に含められる場合があります。サービス内容は事業者ごとに異なるため、代替機、オンサイト対応、データ消去証明書、途中解約の条件を見積書で比較します。
比較軸 | 購入 | リース | DaaS・LCMサービス |
|---|---|---|---|
初期費用 | 端末代金と設定費用が初年度に発生します。 | 月額または定期支払いへ分散できます。 | 月額費用に端末と運用サービスを含める契約があります。 |
端末選定 | 仕様、機種、保守を柔軟に選べます。 | リース会社と調達条件を調整します。 | 提供対象機種とサービス範囲の制約を受けます。 |
キッティング | 自社実施または外部委託です。 | 自社実施または委託範囲を契約します。 | 設定済み納品や直送に対応する契約があります。 |
故障・交換 | 保守契約と予備機の設計が必要です。 | 保守条件を個別に確認します。 | 代替機発送を含める契約があります。 |
返却・廃棄 | 回収、消去、リサイクルを自社管理します。 | 返却条件とデータ消去の責任分界を確認します。 | 回収・消去・証明書発行を含める契約があります。 |
会計処理 | 資産計上と減価償却を前提に検討します。 | 契約内容と適用会計基準によって判断します。 | 契約内容と適用会計基準によって判断します。 |
リースとDaaSを「必ずオフバランスになる」「必ず経費処理できる」と扱うことはできません。会計処理は契約実態、リース該当性、企業が適用する会計基準によって変わります。契約案で使用権資産や負債の計上が問題になる場合は、経理部門の判断を得た上で、購入案と同じTCO比較表へ戻します。
LCMサービスの費用対効果
LCMサービスは、端末費よりも調達・保守・廃棄に分散した情シス工数を減らせる場合に効果を測れます。
Sansan株式会社は、LCMサービス「UTORITO」と残価設定型リースを活用し、調達コストを15〜20%程度削減したと公表しています。この成果をそのまま他社へ当てはめることはできませんが、端末購入価格だけでなく、調達条件、残価、保守、返却プロセスを一体で見直す余地があることを示す事例です。
月額単価を比較する際は、端末、保守、キッティング、代替機、回収、データ消去の各項目が含まれるかを分解します。自社に既存のIntune運用やヘルプデスクがあり、外部サービスの範囲と重なるなら、重複分を除いたTCOで判断します。
▲ 購入・リース・DaaSの3方式におけるコストと管理負担の対比
モダンキッティングと廃棄の実行手順
更新台数が多い場合は、AutopilotとIntuneによる自動展開と、旧端末の回収・データ消去を同じプロジェクト計画で管理します。
手作業のキッティングでは、端末の開梱、OS設定、アプリ導入、ポリシー適用、梱包、発送を台数分繰り返します。拠点が多い企業や在宅勤務がある企業では、端末を情シスへ集めるだけで日程調整が発生します。モダンキッティングでは、端末を事前登録し、利用者の初回サインイン時に設定とアプリを適用します。
AutopilotとIntuneの展開工程
モダンキッティングは、端末の購入後ではなく、調達仕様と設計の段階から準備することで直送運用へつなげます。
要件整理:利用者区分、標準アプリ、管理者権限、ディスク暗号化、条件付きアクセス、周辺機器を定義します。
テナント設計:Intuneの構成プロファイル、コンプライアンスポリシー、アプリ配布、更新リングを設定します。
端末登録:メーカーまたは販売会社からハードウェアハッシュを取得し、Autopilotへ登録します。
検証:新規端末、既存端末、社外ネットワーク、低速回線などの条件で、初回サインインから業務開始までを確認します。
展開:端末を利用者または拠点へ直送し、案内書にサインイン、MFA登録、旧端末返却の順序を記載します。
回収:旧端末の受領、資産台帳の利用者変更、データ消去、証明書保管、リサイクルまでを完了させます。
株式会社ユーコット(UCCグループ)は、国内で使用していた約4,000台のPCを一斉刷新し、Windows Autopilotの活用で初期設定から業務環境の復旧が約30分で完了するケースがあったと公表しています。再現するには、アプリ配布、ID管理、ネットワーク、利用者向け案内を事前に整備する必要があります。
データ消去と資産台帳の証跡
旧端末は利用停止、データ保全、消去、回収証跡、台帳更新の順に処理し、廃棄だけを先行させません。
利用者データをOneDriveなどの承認済みストレージへ移行できるなら、移行完了を確認してから旧端末を回収します。ローカル保存が必要な業務では、部門責任者によるデータ保全確認を回収条件にします。その後、消去方式、消去日、端末シリアル番号、委託先、消去証明書番号を台帳に記録します。
経済産業省は、指定再利用促進事業者に対するパソコンの製品含有物質情報提供義務が2006年7月から追加されたと案内しています。環境対応と情報セキュリティを分けず、委託先のリユース・リサイクル工程とデータ消去工程を契約上で確認します。
▲ AutopilotとIntuneを活用したモダンキッティングの5段階プロセス
国内企業のPCリプレイス事例
PCリプレイスで起こる失敗パターン
PCリプレイスで失敗しやすいのは、更新年数だけを決めて、端末台帳、利用者データ、保守、予算根拠を後から合わせようとする進め方です。
TechTarget Japanが紹介する調査では、運用・管理部門の業務量について89.6%が増量傾向と回答しています。情シスの要員が増えても、手作業のキッティング、台帳更新、問い合わせ対応が増え続ければ、更新プロジェクトの品質は下がります。
延命端末の一律運用
「動くため使い続ける」という基準だけで延命すると、障害が出た端末から順番に緊急対応する運用になります。
延命する端末には、利用期限、対象業務、代替機、OS対応、保守可否、ネットワーク制限を台帳へ登録します。これらを定義できない端末は、5年利用の例外ではなく、次回計画の更新対象へ戻します。ITmediaは2018年時点の企業向けPC利用調査として、経年によるPCの修理率が3年で20%、4年で67%であったと紹介しています。調査時点が古く、現在の端末品質や利用環境にそのまま当てはめることはできませんが、利用年数が長くなるにつれて修理発生率が上昇し得る傾向を示す参考値として、更新計画の議論材料にできます。
Excel台帳だけの管理
Excel台帳だけで端末を管理すると、異動、貸与、故障交換、返却の反映遅れが更新対象の誤判定につながります。
台帳をすぐに置き換えられない場合でも、最低限、端末シリアル番号、利用者、取得日、OS、保証終了日、管理ID、廃棄日を必須項目に固定します。Intuneなどから取得できるOS、暗号化、最終チェックイン情報を自動連携できれば、台帳と実機の差分を毎月抽出します。自動取得できない項目だけを棚卸し対象に絞ると、手作業を減らせます。
展開後の回収漏れ
新PCの配布を完了条件にすると、旧PCが利用者の手元に残り、データ漏えいと二重資産計上の原因になります。
利用者への案内には、新PCの到着日、初回サインイン期限、旧PCの返却期限、返却キット、問い合わせ先を記載します。返却が確認できない端末は、利用者、所属長、資産管理担当へ段階的に通知し、回収完了まで台帳のステータスを「未回収」に保ちます。データ消去証明書を受け取った時点で初めて廃棄完了に変更します。
国内企業の事例では、端末更新の成果は機種変更そのものではなく、展開自動化と調達・保守の標準化によって生まれています。
アステラス製薬の全社展開
アステラス製薬は、3年ごとの標準PC更新と事前計画により、大規模展開を短期間で実施しています。
業種・規模:医薬品企業で、全社員が利用する標準PCが対象です。
導入時期:3年に一度の更新タイミングで実施しています。
課題:多数の端末を一定期間内に展開し、業務影響を抑える必要がありました。
施策:標準端末と展開プロセスを整備し、更新を計画的に実施しました。
成果:Lenovoの公開事例では、3カ月間で約9,100台の展開を完了したとされています。
この事例では、更新周期を決めるだけでなく、標準仕様と展開方法を事前に固定している点が再現条件です。端末ごとに例外アプリや管理者設定が残る環境では、同じ台数を同じ期間で展開できません。
Sansanの調達コスト最適化
Sansanは、端末の調達条件とライフサイクル管理を見直し、調達コストの削減につなげています。
業種・規模:クラウドサービスを提供する企業です。
導入時期:公開事例で示されたLCMサービスと残価設定型リースの活用期間です。
課題:端末を調達する際に、購入価格だけでなく更新後の回収や再調達まで含めたコスト管理が必要でした。
施策:LCMサービス「UTORITO」と残価設定型リースを活用しました。
成果:公開情報では15〜20%程度の調達コスト削減を実現したとされています。
調達コストを比較する際は、値引き率だけを評価しません。端末返却の条件、故障交換、データ消去、残価、台帳更新を同じ契約単位で比較できれば、部門別購入によるばらつきを減らせます。
政府機関の端末調達計画
政府機関でも端末を単発購入ではなく、利用環境の整備と借入を含む計画として扱っています。
デジタル庁は2024年8月に、ガバメントソリューションサービスの利用に係る端末の借入等に関する一般競争入札情報を公表しました。また、デジタル庁の広報は、GSS環境を2023年度に約3万人の政府職員へ導入し、2024年度以降にさらに10万人規模へ提供する計画を示しています。大規模な端末更新では、端末台数だけでなく、認証、ネットワーク、アプリ、運用窓口を一体で整備する必要があります。
リプレイス計画の実行チェックリスト
PCリプレイス計画は、調達前に台帳、利用要件、予算、展開、回収の責任者と完了条件を決めると実行段階の手戻りを減らせます。
時期 | 実施内容 | 完了条件 |
|---|---|---|
更新前年 | 資産台帳から取得日、OS、保証、利用者、故障履歴を抽出し、対象端末を分類します。 | 通常更新、前倒し更新、延命例外の台数と理由が確定しています。 |
予算編成前 | 購入、リース、DaaSのTCOを比較し、キッティング、保守、回収、消去費を含めます。 | 端末費だけでないROIと未更新コストが稟議に記載されています。 |
調達前 | 標準スペック、アプリ、Intuneポリシー、Autopilot登録、例外端末の扱いを確定します。 | 検証端末で業務アプリとセキュリティ要件を満たしています。 |
展開時 | 利用者へ初回設定、データ移行、MFA、旧端末返却の案内を配布します。 | 新端末の準拠状態と業務開始を確認しています。 |
回収後 | 旧端末を回収し、消去、証明書保管、台帳更新、リサイクルを実施します。 | 未回収端末と未消去端末が残っていません。 |
最初に確認する項目
最初の一歩は、資産台帳から更新対象の候補を抽出し、端末年数と業務影響を同時に確認することです。
購入またはリース開始から3年以上経過した端末を抽出します。
Windows 11対応可否、OSサポート、メーカー保守終了日を確認します。
障害チケット、バッテリー不良、性能低下、ストレージ不足がある端末を重ねます。
一般事務、開発、固定端末、モバイル端末へ用途別に分類します。
更新対象、延命対象、即時交換対象を分け、各区分に根拠と期限を付けます。
この一覧を作成できれば、4年周期を基本としながらも、業務に合わない一律更新を避けられます。次に、対象台数ごとのTCOと展開日程を作成し、予算と運用計画を同時に承認へ回します。
まとめ
法人PCのリプレイスは、4年を標準に置くと税務、資産管理、保守、予算をそろえやすくなります。ただし、開発・制作端末は3年、VDI接続や固定用途の端末は5年を選べる場合があり、利用年数だけで判断しません。
明日から取り組むなら、まず資産台帳から購入後3年以上の端末を抽出し、OSサポート、保証期限、故障履歴、利用部門を一覧化します。その一覧を基に、即時交換、次年度更新、延命例外へ分類し、端末費だけでなくキッティング、故障対応、回収・データ消去まで含めたTCOを稟議へ反映します。
本記事の内容に誤り等がございましたら、こちらからご連絡ください。
監修
Admina Team
情シス業務に関するお役立ち情報をマネーフォワード Adminaが提供します。
SaaS・アカウント・デバイスの管理を自動化し、IT資産の可視化とセキュリティ統制を実現。
従業員の入退社対応や棚卸し作業の工数を削減し、情報システム部門の運用負荷を大幅に軽減します。
中小企業から大企業まで、情シス・管理部門・経営層のすべてに頼れるIT管理プラットフォームです。




