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kintoneは何がすごい?できること・できないことと導入事例

kintoneは何がすごい?できること・できないことと導入事例

kintoneは何がすごい?できること・できないことと導入事例

kintoneは何がすごい?できること・できないことと導入事例

公開日

最終更新日

kintoneは、プログラミングを使わず、案件管理や問い合わせ管理、申請ワークフローなどの業務アプリを作れるクラウドサービスです。kintoneの何がすごいのかを一言で表すと、業務を最も理解している現場担当者が、改善案を短期間でシステムに反映できる点です。

一方、kintoneは会計や販売管理を最初から備えたERPではなく、導入するだけで業務が完成する製品でもありません。設計を誤ると、似たアプリの乱立やプラグイン費用の増加を招きます。本記事では、2026年に正式提供されたkintone AI、現在の料金コース、国内企業の数値付き事例、できないこと、失敗を防ぐ運用ルールまで、導入判断に必要な情報を整理します。

kintoneの特長やできること・できないことの違い、Excel業務からのスムーズな導入ステップを分かりやすくまとめて解説するインフォグラフィック。

kintone(キントーン)の概要と主要データ

kintoneとは、現場がノーコードで業務用のデータベースとワークフローを構築し、継続的に修正できるクラウド型業務改善プラットフォームです。

本記事のポイント

  • 導入実績:サイボウズは、2026年時点で42,000社以上がkintoneを導入していると発表しています。東証プライム市場上場企業の導入率は約33%と発表されています。

  • 現場主導の改善:フォーム、一覧、通知、権限、承認経路をプログラミングなしで組み合わせられます。

  • 拡張性:400種類以上のプラグイン・連携サービスと500社以上のオフィシャルパートナーが公開されています。

  • 導入時の前提:高度な会計処理や大規模な一括データ処理は、ERPや専用システムと分担します。

kintoneの基本構造

kintoneのアプリは、入力フォーム、データ一覧、グラフ、アクセス権、通知、プロセス管理、コメント欄を組み合わせて作ります。Excelファイルを読み込んでアプリの土台を作ることもでき、顧客台帳や案件表を共有可能なWebデータベースへ移行できます。

レコードごとにコメントを残せるため、数値や顧客情報と、それに関する確認事項を同じ場所で管理できます。変更履歴も確認できますが、すべての操作を無条件に追跡できるという意味ではありません。同一レコードを複数人が同時更新した場合には競合が起こり得るため、更新担当や承認状態をプロセス管理で分ける設計が必要です。

2026年時点の導入実績

サイボウズの2026年時点の公式発表では、kintoneの導入社数は42,000社以上、東証プライム市場上場企業の導入率は約33%です。自治体・省庁では500団体以上が導入し、これまでに作成されたアプリは3,324,000個を超えています。

指標

公表値

出典主体

時点

導入社数

42,000社以上

サイボウズ公式発表、2026年時点

東証プライム市場上場企業の導入率

約33%

サイボウズ公式発表、2026年時点

自治体・省庁の導入数

500団体以上

サイボウズ公式発表、2026年時点

プラグイン・連携サービス

400種類以上

サイボウズ公式パートナー情報、2026年時点

オフィシャルパートナー

500社以上

サイボウズ公式パートナー情報、2026年時点

また、kintoneのカスタマーセンターは、HDI-Japanの「2025年モニタリング格付け」で最高評価の三つ星を獲得しています。導入社数だけでなく、問い合わせ対応を含む運用支援も第三者評価の対象になっています。

市民開発を支える役割

市民開発とは、情報システム部門だけに開発を任せず、業務を理解する現場担当者が自分たちでアプリを作成・改善する取り組みです。kintoneでは、情シスがセキュリティ、共通マスター、作成権限を管理し、現場のアプリ責任者が項目や通知を修正する役割分担を設計できます。

この分担により、軽微な項目追加のたびにシステム改修を依頼する待ち時間を減らせます。ただし、全利用者へ無制限にアプリ作成権限を与える方式は、類似アプリと重複データを増やすため避けます。

▶ 関連記事: 【2026】無料Webデータベース5選!自作・作り方解説

kintoneが評価される主な理由と最新AI機能

kintoneが評価される理由は、業務アプリの作りやすさに加え、外部サービス、パートナー、ユーザーコミュニティまで含めて改善を続けられる点です。

現場で変更できるノーコード設計

入力フォームは、文字列、数値、日付、選択肢、添付ファイル、関連レコードなどの部品をドラッグ&ドロップして作ります。承認や対応状況はプロセス管理で表現でき、担当変更や期限到来を通知する設定も管理画面から行えます。

たとえば、Excelで管理していた問い合わせ表を移行する場合、受付日、顧客名、分類、担当者、回答期限、対応状況をフィールドとして配置します。「未対応」「対応中」「回答済み」の状態と担当者を設定すれば、一覧表と進捗管理を一つのアプリにまとめられます。

データと会話の一元化

kintoneでは、案件や問い合わせのレコードにコメントをひも付けられます。メールやチャットだけで議論すると、後から結論と対象データの対応を探す手間が発生しますが、レコード上で会話すれば確認経緯を業務データと一緒に残せます。

アクセス権は、アプリ、レコード、フィールドの単位で設定できます。営業担当には自分の案件だけを表示し、管理者には全部門を表示するといった制御が可能です。個人情報や人事情報を扱う場合は、閲覧権限だけでなく、CSV書き出し権限とアプリ管理権限も分離します。

400種類を超える拡張エコシステム

kintoneの強みは標準機能だけではありません。サイボウズは、2026年時点で400種類以上のプラグイン・連携サービスと、500社以上のオフィシャルパートナーを案内しています。

製品・サービス例

補完する業務

主な利用場面

krewData

アプリ間集計、データ加工、自動更新

売上明細から月次集計を作る場合や、複数アプリのデータを定期処理する場合

FormBridge

外部向けWebフォーム

kintoneアカウントを持たない顧客や市民から申請を受け付ける場合

kViewer

外部向けデータ閲覧

受付状況や限定した情報を社外へ公開する場合

PrintCreator

PDF帳票出力

見積書、請求書、報告書を所定のレイアウトで出力する場合

k-Report

帳票作成

kintoneのレコードから定型帳票を作る場合

連携サービスは、kintoneのAPIを通じてデータを登録、参照、更新します。外部連携を前提にする場合は、API連携の回数制限、認証方式、障害時の再実行方法まで要件に含めます。機能が実現できるかだけでなく、処理に失敗したデータを誰が検知して戻すかを決めると、運用開始後の二重登録を防げます。

ユーザーコミュニティによる知見共有

公式ユーザーコミュニティ「キンコミ」では、利用者同士がアプリ設計や社内定着の悩みを共有しています。「kintone hive」では、企業や団体の担当者が改善事例を発表しており、完成後の成果だけでなく、現場への説明やアプリ修正の経緯を学べます。

市民開発は、操作マニュアルを配布するだけでは定着しません。社内の推進担当者がキンコミやkintone hiveの事例を参照し、自社と近い業種の運用ルールを比較できれば、アプリ作成者だけが知識を抱える状態を避けられます。

2026年正式提供のkintone AI

サイボウズは、実験的機能を提供したkintone AIラボを経て、2026年6月にkintone AIを正式提供しました。標準で毎月一定量のAIクレジットが付与され、追加のAIオプション料金なしで対象機能を利用する方式です。

  • 検索AI:自然な日本語の質問から、複数アプリに蓄積された社内情報を検索します。

  • レコード一覧分析AI:一覧に含まれるデータを分析し、傾向や要点を文章で整理します。

  • スレッド要約AI:スペース内の長い議論を要約し、決定事項の把握を助けます。

  • アプリ作成AI:作りたい業務を対話形式で伝え、フォームの構成案を作ります。

  • アプリ設定レビューAI:作成したアプリの設定を確認し、改善候補を提示します。

  • プロセス管理設定AI:申請や承認の流れを基に、ステータスと担当者の構成を提案します。

AIが作ったフォームや分析結果は、そのまま本番運用へ反映せず、アプリ責任者が権限、必須項目、計算式、個人情報の扱いを確認します。毎月の正確なクレジット量や対象機能は契約条件によって判断に影響するため、管理画面や契約書で利用量を確認できれば業務別に上限を割り当て、確認できなければAIなしでも継続できる業務設計にします。

kintoneでできることと苦手な業務領域

kintoneは部門ごとに変化する情報管理や承認業務を得意としますが、高度な会計処理、大量データの複雑な一括処理、厳格な外部公開基盤は専門システムと分担します。

標準機能で対応しやすい業務

kintoneでできることは、単純な表の共有だけではありません。データベース、通知、アクセス権、コメント、集計グラフ、プロセス管理を組み合わせ、業務の受付から完了までを管理できます。

  • 顧客・案件管理:顧客情報、商談履歴、受注確度、次回対応日を共有します。

  • 問い合わせ管理:受付内容、担当者、回答期限、対応履歴を一元化します。

  • 申請・承認:稟議、経費申請、契約確認、休暇申請などの状態を可視化します。

  • 在庫・備品台帳:保管場所、数量、貸出先、棚卸し日を管理します。

  • 日報・報告書:現場からスマートフォンで写真や作業結果を登録します。

  • プロジェクト管理:課題、期限、担当者、関連資料、コメントを集約します。

  • FAQ・ナレッジ管理:質問、回答、分類、更新日、参照先を検索可能な状態で保存します。

業務別の適合性

導入可否は「kintoneで画面を作れるか」ではなく、法令、処理量、外部公開、内部統制を含む業務要件で判断します。

業務領域

適合性

判断理由

使い分け

案件・顧客管理

適している

項目や進捗が会社ごとに異なり、継続的な変更が多いため

標準機能を中心に構築

問い合わせ・申請管理

適している

担当、期限、状態、コメントをレコード単位で管理できるため

通知とプロセス管理を利用

外部向け受付フォーム

条件付き

標準機能だけでは不特定多数向けの入力画面に制約があるため

FormBridgeなどを連携

定型帳票のPDF出力

条件付き

複雑な帳票レイアウトは標準機能だけで完結しにくいため

PrintCreatorやk-Reportを連携

財務会計・税務

不向き

仕訳、決算、税制対応、会計監査を標準機能として備えた会計製品ではないため

会計システムを正本にして必要データのみ連携

大規模な販売・購買・生産管理

限定的

在庫評価や原価計算、複雑なトランザクション整合性が必要になるため

ERPを正本とし、周辺業務をkintoneで管理

大量データの複雑なバッチ処理

不向き

データ基盤や専用ETLと比べ、処理性能と再実行管理の設計負荷が高いため

データ基盤で処理し、結果だけを連携

厳格な外部公開サイト

条件付き

公開範囲、認証、可用性、アクセス集中への個別設計が必要なため

外部ポータルやWeb基盤とAPI連携

Excel・kintone・ERPの使い分け

Excelは個人での計算や一時的な分析、kintoneは複数人で更新する可変的な業務、ERPは全社共通の会計・販売・購買処理に向いています。

比較軸

Excel

kintone

ERP・基幹システム

主な用途

個人分析、試算、集計

部門業務、申請、案件管理

会計、販売、購買、生産

変更のしやすさ

高いが属人化しやすい

管理画面から変更しやすい

影響調査や改修が必要

複数人での更新

ファイル管理では競合しやすい

レコード単位で共有できる

統制された取引処理に適する

内部統制

個別設計が必要

権限とプロセスを設定可能

業務別の統制機能を備える

法改正対応

利用者側で対応

対象業務に応じて設計

製品側の更新対象になりやすい

kintoneを「低価格なERP」とみなすと、会計・在庫・監査要件をアプリごとに作り込む結果になり、保守負荷が増えます。ERPの前後に残るExcel業務、部門独自の申請、案件情報の収集をkintoneへ移す構成なら、両製品の役割を明確にできます。

kintoneが得意な業務領域と専門システム(ERP等)との役割分担

▲ kintoneが得意な業務領域と専門システム(ERP等)との役割分担

kintoneの料金プランとコース選定基準

API、プラグイン、kintone AIを使う企業はスタンダードコースを基準にし、標準機能だけで閉じる業務はライトコース、1,000ユーザー以上の全社統制はワイドコースで判断します。

2026年時点の料金と機能差

サイボウズの公式料金案内では、2024年11月の改定以降、ライトコースとスタンダードコースの最小契約数は10ユーザーです。以下は2026年6月時点で案内されている税別料金と主要な機能差です。

比較項目

ライトコース

スタンダードコース

ワイドコース

月額料金/1ユーザー

1,000円

1,800円

3,000円

最小契約数

10ユーザー

10ユーザー

1,000ユーザー

月額の最小ライセンス費

10,000円

18,000円

3,000,000円

アプリ数上限

200個

1,000個

3,000個

API・JavaScriptカスタマイズ

利用不可

利用可能

利用可能

プラグイン

利用不可

利用可能

利用可能

kintone AI

対象外

対象

対象

主な選定条件

標準機能だけで完結

外部連携や機能拡張が必要

大規模利用とガバナンスを重視

スタンダードコースを10ユーザーで契約した場合、ライセンス費は月額18,000円、年額換算で216,000円です。ライトコースとの差額は年96,000円ですが、後から外部フォームや帳票出力が必要になれば、ライトコースでは対応できず、コース変更を伴います。

導入総額に含める費用

料金比較では、kintone本体のライセンス料だけを見ないようにします。プラグイン、データ移行、アプリ構築、社員教育、運用保守を加えた総保有コストで稟議を作ります。

  • プラグイン・連携サービス費:外部フォーム、帳票、集計、バックアップなどの契約費です。

  • 初期構築費:業務整理、アプリ設計、権限設定、テストを外部へ委託する場合に発生します。

  • データ移行費:Excelの表記揺れ、重複、欠損を直して取り込む作業費です。

  • 運用保守費:問い合わせ対応、アプリ棚卸し、権限変更、プラグイン更新の工数です。

  • ストレージ費:PDFや画像を大量に保存する場合の追加容量または外部ストレージ費です。

たとえば月額20,000円のプラグインを二つ追加すると、年間費用は480,000円増え、10ユーザーのスタンダードライセンス年額216,000円を上回ります。導入前に必要機能を「標準機能」「必須プラグイン」「将来候補」に分けると、プラグイン費が予算を押し上げる時期を把握できます。

コース選定の判断フロー

コースは利用人数だけでなく、外部連携と全社統制の有無から選びます。

  1. 1,000ユーザー以上で全社利用し、性能ダッシュボードやアプリ関連図、権限分析を使うならワイドコースを検討します。

  2. API、JavaScript、外部フォーム、帳票出力、データ集計、kintone AIのいずれかが必要ならスタンダードコースを選びます。

  3. 標準機能だけで完結し、将来も外部連携を行わない業務ならライトコースで費用を抑えます。

  4. 要件が固まっていない場合は、無料体験でアプリと連携要件を洗い出し、プラグインが必要と判明した時点でスタンダードを前提に見積もります。

料金やAIの付与条件は時間とともに変わります。公式料金表で上記の条件を確認できればそのまま稟議額へ反映し、差異があれば公式料金表を正として年間費用を再計算します。

自社の用途と利用規模に応じたkintoneコース選定フロー

▲ 自社の用途と利用規模に応じたkintoneコース選定フロー

kintoneの導入効果と数値で見る実名導入事例

kintoneの導入効果は、転記時間、残業時間、処理工数、個別開発費など、導入前後で測定できる指標を置くと判断しやすくなります。

現場変更とデータ一元化による効果

kintoneのメリットは、散在するExcelや紙を一か所にまとめることだけではありません。現場が項目や通知を修正できるため、業務変更のたびに個別開発を発注する回数を減らせます。

  • 転記の削減:同じ顧客名や案件情報を複数の表へ入力する作業を減らします。

  • 進捗の可視化:未対応、対応中、承認待ちなどの状態を一覧化します。

  • 情報検索の短縮:担当者のメールや個人フォルダに分かれた履歴を検索可能にします。

  • 改修期間の短縮:入力項目、一覧、通知を管理画面で変更します。

  • 社外受付のデジタル化:連携サービスを使い、顧客や市民から直接データを受け取ります。

artience株式会社の全社業務改善

artience株式会社は、旧東洋インキSCホールディングスとして知られる製造業企業です。サイボウズの公式導入事例は、1,400名以上がkintoneを利用し、グループ内で530個を超えるアプリを運用していると紹介しています。

  • 業種・規模:製造業、kintone利用者1,400名以上、530アプリ超

  • 導入時期:公式事例公開時点で運用中です。導入開始年月は本稿で参照した公開情報から確認できません。

  • 課題:グループ内のワークフロー、案件管理、FAQなど、基幹システムの対象外となる業務が部門ごとに分散していました。

  • 施策:共通基盤としてkintoneを展開し、現場が業務アプリを作成する体制を整えました。

  • 成果:半年で11,000時間の業務時間を削減し、個別にシステム開発した場合との比較で約4,000万円のコストを圧縮しました。

この事例からは、大規模展開でも一つの巨大システムに集約するのではなく、共通ルールの下で業務単位のアプリを作る方法が読み取れます。11,000時間を半年の120営業日で単純換算すると、全体で1営業日あたり約92時間の削減です。

株式会社久世の仕入先管理とAI活用

業務用食材卸の株式会社久世は、1,100社を超える仕入先の情報管理と営業活動にkintoneを利用しています。サイボウズの公式事例は、手作業の統一とAI活用による定量成果を紹介しています。

  • 業種・規模:業務用食材卸、仕入先1,100社超を管理

  • 導入時期:公式事例公開時点で運用中です。導入開始年月は本稿で参照した公開情報から確認できません。

  • 課題:仕入先情報や営業ノウハウが分散し、手作業によるデータ統一と新人教育に時間がかかっていました。

  • 施策:仕入先管理と営業支援をkintoneへ集約し、蓄積した情報をkintone AIで検索・活用する運用を整えました。

  • 成果:データ統一に関する作業を見直し、年間1,000時間の残業を削減しました。公式事例は、kintoneに蓄積した仕入先情報をkintone AIで検索・活用する営業活動において成約率85%を達成した取り組みも紹介しています(対象件数・算出方法の詳細はサイボウズの公式導入事例ページを参照)。

AIの導入だけで成約率が上がったと断定するのではなく、参照できる営業情報が整備されていた点も分けて評価します。社内データの表記や分類が不統一なままでは、検索AIが適切な候補を見つけにくいためです。

コクヨ株式会社の請求書発行業務

コクヨ株式会社は、基幹システムの標準処理では対応しにくい特殊な請求書発行業務にkintoneを活用しました。サイボウズの公式事例は、フォーマット変換と承認を連携した結果を数値で示しています。

  • 業種・規模:文具・オフィス家具事業を展開する企業

  • 導入時期:公式事例公開時点で運用中です。導入開始年月は本稿で参照した公開情報から確認できません。

  • 課題:取引先ごとに異なる請求書形式への対応が必要で、基幹システム外の手作業が残っていました。

  • 施策:kintone上で必要データを管理し、フォーマットの自動変換と承認処理を連携しました。

  • 成果:対象となる請求書発行業務の工数を92%削減しました。

この事例は、基幹システムを置き換えるのではなく、基幹システムで処理しにくい例外業務をkintoneで補完した例です。標準化できる取引は基幹システム、取引先固有の処理はkintoneという分担が、改修範囲を限定しています。

製薬・自治体におけるデータ活用

塩野義製薬株式会社は、セントラルデータマネジメント構想の中で、プロジェクト活動の管理やBIツールと連携した環境データの可視化にkintoneを活用しています。成果は単純な削減時間だけでなく、部門がデータを蓄積・参照する共通基盤を持った点にあります。

岡山市役所や茅ヶ崎市役所では、保育園の内定通知や相談受付などのデジタル化にkintoneと外部フォーム連携が使われています。公式事例では、庁内利用だけでなく市民からの受付を含む業務にも拡張された取り組みが紹介されています。

kintone導入における主な失敗パターンと予防策

kintone導入の失敗は製品機能よりも、業務整理、アプリ所有者、作成権限、プラグイン管理を決めないまま利用範囲を広げることで起こります。

野良アプリの乱立とブラックボックス化

失敗原因:全利用者へ自由なアプリ作成権限を与えると、顧客台帳や案件管理など、似た目的のアプリが複数作られます。作成者の異動や退職後に計算式や連携先が分からなくなると、更新できない「野良アプリ」が残ります。

予防策:サイボウズが公開する「市民開発ガイドライン」と「kintoneガバナンスガイドライン」を基に、プラットフォーム管理者、アプリ作成者、業務責任者を分けます。アプリ台帳には名称、目的、責任者、利用部門、個人情報の有無、連携先、最終利用日を記録し、四半期ごとに棚卸しします。

ワイドコースのアプリ関連図や権限分析機能を使えるなら棚卸しへ組み込み、使えないコースでは管理用アプリに情報を登録します。ATTAZoo Governanceなどのガバナンスツールを契約する場合も、廃止を決める責任者と判定基準は社内で定義します。

プラグイン沼によるコスト増加

失敗原因:標準機能で不足するたびに個別のプラグインを追加すると、月額費用だけでなく、更新確認、問い合わせ窓口、競合テストの負担が増えます。複数のプラグインが同じ画面やイベントを変更すると、kintoneやプラグインの更新後に動作が変わる場合もあります。

予防策:導入前に機能を「業務継続に必須」「時間を短縮する」「あると便利」に分け、必須機能だけを初期導入します。複数アプリで共通利用できる集計機能はkrewDataなどへ集約し、契約更新月、管理者、障害時の代替手順をプラグイン台帳へ記録します。

非効率な業務のそのまま移植

失敗原因:紙やExcelの入力欄をすべて再現すると、使われていない項目や重複承認までシステム化されます。入力項目が増えた結果、現場からは「Excelより時間がかかる」と評価され、利用が止まります。

予防策:アプリを作る前に、入力者、利用目的、参照者、保存期間を項目ごとに確認します。使い道を説明できない項目は初期版から外し、一つの業務、一つの部門、必要最小限の入力欄で試験運用します。

入力負担だけが増える定着不全

失敗原因:経営層が見たい集計のためだけに現場へ入力を追加すると、担当者には直接の利点がありません。未入力が増えると管理者が催促し、kintoneとExcelの二重管理へ戻ります。

予防策:ルックアップ、自動計算、初期値、期限通知を使い、現場の転記や確認を減らします。「日報入力後に週報が自動集計される」など、入力者へ返る効果を初期版に一つ含め、推進担当者が月ごとの利用率と未入力率を確認します。

ゲストスペースの連携制約

失敗原因:社外の取引先と共有するゲストスペース内のアプリから、通常スペース側の顧客マスターを直接参照しようとすると、領域をまたぐ連携制約に当たります。設計後に判明すると、マスターの複製や外部連携の追加が必要になります。

予防策:サイボウズ公式ヘルプのゲストスペース仕様を基に、社外へ見せる情報と社内だけで扱う情報を先に分けます。同じゲストスペース内に参照用マスターを置けるなら権限を限定して配置し、置けないならAPI連携で必要項目だけを同期します。

添付ファイルによる容量逼迫

失敗原因:請求書、注文書、現場写真を原寸のまま添付すると、レコード数より先にストレージ容量を消費します。サイボウズの公式料金案内では、標準のディスク容量は契約ユーザー数に応じて算定され、既存案内では1ユーザーあたり5GBが基準です。

予防策:10ユーザーなら基準上の総容量は50GBになるため、月間ファイル数と平均サイズから到達時期を試算します。高解像度画像や長期保存する証憑が多い場合は、外部ストレージへ原本を保存し、kintoneには検索項目と参照情報だけを持たせます。ただし電子帳簿保存法が定める真実性・可視性の要件(タイムスタンプ付与や訂正削除履歴の保持など)は、国税庁の「電子帳簿保存法一問一答」と、利用する外部ストレージサービスの法令対応仕様を照合して確認します。要件を満たせないストレージを選んだ場合、税務調査で原本性を否定されるリスクがあります。

導入準備セルフチェックリスト

次の10項目のうち未決定が三つ以上ある場合は、全社展開ではなく一業務の試験運用から始めます。

確認項目

判断基準

1. 対象業務

転記、検索、承認待ちなど、解消する問題を一文で説明できる

2. 効果指標

処理時間、残業時間、紙枚数、未対応件数のいずれかを測定できる

3. 利用者

最小10ユーザーを含め、入力者と閲覧者を特定している

4. コース

API、プラグイン、AIの必要性からコースを選んでいる

5. 共通マスター

顧客コード、社員番号、商品コードの正本を決めている

6. 作成権限

アプリを作成、変更、廃止できる役割を分けている

7. アプリ責任者

異動後も引き継ぐ業務責任者を登録している

8. 連携管理

プラグインの費用、更新月、障害時の代替手段を把握している

9. データ保管

添付ファイルの容量、保存期間、削除基準を試算している

10. 廃止手順

CSV出力、証憑保管、アプリ停止、契約終了の順序を決めている

よくある質問

kintoneの導入前に生じやすい疑問へ、機能と運用の両面から回答します。

Q:kintoneでは何ができますか?

案件管理、問い合わせ管理、申請承認、日報、在庫台帳、プロジェクト管理などの業務アプリをノーコードで作れます。プラグインや外部サービスを加えれば、Webフォーム、PDF帳票、アプリ間集計にも対応できます。

Q:kintoneでできないことは何ですか?

高度な財務会計、複雑な原価計算、大量データの一括処理、不特定多数向けの厳格な公開サイトは標準機能だけでは完結しません。会計や基幹取引は専門システムを正本とし、kintoneは申請や案件情報など周辺業務に使います。

Q:kintoneとExcelの違いは何ですか?

Excelは個人の計算や一時的な分析に適し、kintoneは複数人が同じデータを更新する業務に適しています。kintoneではアクセス権、通知、変更履歴、コメント、承認状態をデータと一緒に管理できます。

Q:kintoneをやめた企業では何が問題になりますか?

利用が定着しない、プラグイン費用が膨らむ、既製の業務SaaSのほうが適合するといった理由があれば、kintoneをやめる判断は合理的です。利用率と総保有コストを測り、専用SaaSの標準機能で要件を満たせるなら移行し、満たせないならアプリ数とプラグインを減らして継続します。

Q:初期導入費用はいくらですか?

kintone本体には初期費用がなく、ライトコースは10ユーザーで月額10,000円、スタンダードコースは月額18,000円から利用できます。外部へ構築を依頼する場合やプラグインを利用する場合は、ライセンス料とは別に費用が発生します。

Q:解約したらデータはどうなりますか?

解約後にデータを継続利用することはできないため、契約期間中にCSVと添付ファイルを出力します。本稿で確認した公開情報からは一律の復旧期間を保証する現行仕様を確認できないため、解約後の復旧を前提にせず、移行先で件数と添付ファイルを照合してから契約を終了します。

Q:kintone AIがあればアプリ設計は不要ですか?

AIはフォームやプロセスの案を作れますが、アクセス権、法定保存期間、個人情報、承認責任までは業務責任者が決めます。AIの提案は検証用環境で確認し、実データを使った受け入れテスト後に本番へ反映します。

Q:サイボウズのほかの製品と連携できますか?

同じサイボウズが提供するGaroonなどと組み合わせ、ポータルやスケジュールと業務アプリを使い分けられます。連携範囲は契約コースと設定で変わるため、必要な画面遷移とデータ連携を試験環境で再現できれば導入し、再現できなければAPIまたはリンク連携へ切り替えます。

▶ 関連記事: サイボウズ「Garoon」とは?

kintone導入で現場主導の業務改善を進める第一歩

最初の一歩は、全社のExcelをまとめて置き換えることではなく、転記や確認待ちが発生している一業務を選び、無料体験で小さなアプリを作ることです。

時期

実施内容

完了条件

初日

改善対象のExcelまたは紙業務を一つ選ぶ

困り事と月間処理件数を説明できる

1週目

入力項目を必要最小限に絞ってアプリを作る

担当者がテストデータを登録できる

2〜4週目

一部の利用者で試験運用し、処理時間を測る

導入前後の時間と未入力件数を比較できる

2か月目

権限、通知、マスター、連携要件を見直す

アプリ責任者と変更手順が決まっている

3か月目

効果が出た業務だけを他部門へ展開する

削減時間がライセンス費と運用工数を上回る

30日間の無料体験では、見栄えよりも入力件数、処理時間、差し戻し件数を測ります。効果を数値で確認できれば対象者を増やし、確認できなければ入力項目と業務手順を修正してから再検証します。

リスクを抑えて定着させるkintone導入の5段階プロセス

▲ リスクを抑えて定着させるkintone導入の5段階プロセス

まとめ

kintoneは、現場担当者が案件管理や申請業務を自ら改善できる点に強みがあります。一方、ERPの代替として会計や大量処理まで担わせると、個別開発と保守負荷が増えます。まずは現在のExcel業務を一つ選び、処理時間、転記回数、未対応件数を測ったうえで無料体験へ移します。アプリ責任者と作成権限を決め、導入前後の数値で効果を確認できた業務から利用範囲を広げます。

本記事の内容に誤り等がございましたら、こちらからご連絡ください。

監修

Admina Team

情シス業務に関するお役立ち情報をマネーフォワード Adminaが提供します。
SaaS・アカウント・デバイスの管理を自動化し、IT資産の可視化とセキュリティ統制を実現。
従業員の入退社対応や棚卸し作業の工数を削減し、情報システム部門の運用負荷を大幅に軽減します。
中小企業から大企業まで、情シス・管理部門・経営層のすべてに頼れるIT管理プラットフォームです。