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生成AIの進化により、ビジネスにおける音声領域(TTS)は劇的な変化を遂げています。そのTTS分野で急速に存在感を高めているのがElevenLabsです。本記事では、ElevenLabsの基本機能から、情シス部門が押さえるべき商用利用の条件、スマホアプリ版の情報まで網羅しました。情シス担当者が押さえるべき活用法を解説します。
ElevenLabsとは
この記事でわかること
ElevenLabsは、人間らしい感情やイントネーションを再現できるアメリカ発のAI音声合成ツール(TTS)である
ビジネスでの商用利用には、月額5ドルのStarterプラン以上の契約が必須である
「Actor Mode」を利用することで、実在の声優に演技指導するような細かなディレクションが可能である
専用のスマホアプリ「ElevenReader」を使えば、外出先でもPDFやWeb記事を高音質で読み上げることができる
ElevenLabsとは、自然な感情やイントネーションを備えた音声を多言語で生成できるアメリカ発のAI音声合成プラットフォームです。
ElevenLabsはどこの国の企業?運営会社と信頼性
ElevenLabs(イレブンラボ)は、元GoogleのPiotr Dąbkowskiと元PalantirのMati Staniszewskiらによって2022年に設立されたアメリカの企業です。すでに巨額の資金調達を実施して盤石な財務基盤を築いており、公式サイトやWikipediaでも紹介されているように、各種ITメディアでもその革新的な技術が評価されています。エンタープライズ向けのシングルサインオン(SSO)連携など高度なセキュリティ機能も備えており、ビジネス用途での採用実績も増えています。
従来の音声合成(TTS)とElevenLabsの違い
これまでのテキスト読み上げ(TTS)技術は、録音された音素を機械的に繋ぎ合わせる方式が主流であったため、不自然な違和感が残りがちでした。対してElevenLabsは、膨大な音声データを学習したディープラーニングモデルを採用し、文脈に応じた自然なイントネーションや感情表現(笑い声、ため息、ささやきなど)を自動で付与します。最新の公式ドキュメントによれば、最も表現力豊かな「Eleven v3」モデルは74言語に対応し、リアルタイム応答や低遅延に特化した「Flash v2.5」モデルは32言語に対応しています。特定の話者の声質を保ったまま多言語展開できる点が最大の強みです。
ElevenLabsの料金プランと商用利用の条件
業務において安全に商用利用を行うためには、最低でも月額5ドルのStarterプラン以上の契約が必須です。
プラン別の料金と機能比較
ElevenLabsの料金体系は、毎月の生成文字数(クレジット)と利用できる機能の範囲によって細かく分かれています。用途や企業規模に合わせて最適なプランを選択してください。以下はElevenLabs公式の主要なプラン比較表です。
プラン名 | 月額料金(目安) | 月間生成文字数 | 商用利用 | 対象規模と主な機能 |
|---|---|---|---|---|
Free(無料) | $0 | 10,000文字 | 不可(要クレジット表記) | 個人のお試し用(基本機能、簡易クローニング) |
Starter | $5 | 30,000文字 | 可能 | 個人事業主・小規模チーム向け(Instant Voice Cloning) |
Creator | $22 | 100,000文字 | 可能 | 本格的なクリエイター向け(Professional Voice Cloning、高音質出力) |
Pro | $99 | 500,000文字 | 可能 | 中小企業向け(大容量の文字数、API利用制限の解除) |
Scale / Business | 要問合せ($330等) | 200万文字〜 | 可能 | 大企業・開発者向け(チーム共有、低遅延優先処理) |
YouTubeの収益化動画、企業のPR動画、自社製品への組み込みなど、あらゆるビジネス目的で利用する場合、無料プランではライセンス違反となります。社内向けの用途であっても、業務の一環として扱う場合は必ずStarterプラン以上を契約してください。
スマホで使えるアプリ版「ElevenReader」
個人が日常的にAI音声を楽しむためのツールとして、iOSおよびAndroid向けにスマホアプリ「ElevenReader」が無料で提供されています。このアプリは、PDF、Word文書、またはWeb記事のリンクを読み込ませるだけで、高品質なAI音声が自然なイントネーションで読み上げてくれる手軽に使えるリーダーアプリです。ただし、アプリ版はあくまで個人のリスニング用途に特化しており、音声データを業務利用として書き出すことには対応していません。
実践的な使い方と機能
管理画面からの簡単なテキスト入力やディレクションによって、プロレベルの音声が即座に生成可能です。
基本の使い方と音声サンプルの作り方
ElevenLabsの最も基本的な使い方は、管理画面の「Text to Speech」にテキストを入力して生成ボタンを押すだけです。「Voice Design」機能を使えば、性別、年齢、アクセントの強さをスライダーで調整し、世界に一つだけのオリジナル音声サンプルを数秒で作成できます。特に反響が大きい機能として、テキスト内に「(笑い声)」や「(ため息)」といったト書きを括弧書きで加えてみてください。AIが自動的に息遣いまで自然に再現するため、従来の読み上げソフトにはなかった自然さを確認できます。
イントネーションを操る「Actor Mode」の使い方
AI音声の大きな課題であった「細かい間や感情のコントロール」を完璧に解決するのが「Actor Mode」です。これは、ユーザー自身がマイクで話した演技を、AIへディレクションとして与える機能です。
Speech to Speech(またはActor Mode)のメニューを選択する
ベースとして出力させたい声優・ナレーターの音声モデルを選択する
自分の声で、希望する感情やイントネーションを込めてテキストを読み上げ、録音データをアップロードする
AIが指定した声質を保ちつつ、あなたの演技の「間」や「抑揚」を模倣して音声を出力する
実在の声優へ直接演技指導を行うのと同じ感覚で極めて自然な日本語音声を生成できるため、表現にこだわる動画クリエイターには必携の手法となっています。
自動吹き替え(Dubbing Studio)の使い方
グローバル展開を目指す企業にとって強力な機能が「Dubbing Studio」です。動画や音声ファイルをアップロードするだけで、元の話者の声質や感情を維持したまま、多数の言語に自動で吹き替えます。AIが自動で複数話者を分離検出し、タイムライン付きのスクリプトを生成するため、UI上で翻訳テキストの修正や発声タイミングの微調整が可能です。現地のナレーターを手配する外注コストをかけずに、自社のコンテンツを素早く多言語化できます。
業務における具体的なユースケースと情シス視点の導入メリット
社内ヘルプデスクの自動応答やeラーニング制作において、大幅な工数削減と品質向上を実現します。ここでは代表的な2つのシナリオを解説します。
社内FAQ自動応答(チャットボット)への活用
社内のカスタマーサポートやヘルプデスクの自動応答システムにAPI連携を活用することで、自然な音声での対応が可能になります。従来の機械的な音声ではなく、ElevenLabsの低遅延モデル(Flash v2.5など)を利用することで、ユーザーに違和感を与えず対応の満足度を向上させます。ElevenLabsの導入事例によれば、自然なAI音声アシスタントをFAQに導入した結果、定型的な有人対応への問い合わせ負担が軽減されたという報告もあります。音声品質が上がることで、利用者が途中で通話を切らずに自己解決できる割合が高まる点が強みです。
eラーニング教材やマニュアル動画の制作フロー
社内研修用のeラーニング教材や、製品の操作マニュアル動画を作成する際、プロのナレーターを手配する代わりにElevenLabsを利用する企業が急増しています。例えば、PC1台あたりの操作説明動画を作る場合、従来は録音とリテイクだけで平均2時間かかっていましたが、TTSを利用すればテキスト入力のみで数分で完了します。システム画面のアップデートに伴うコンテンツの更新時も、テキストを直すだけで即座に音声を再生成できるため、外注コストと制作期間の劇的な短縮が可能です。さらに、特定部門向けに専門用語を正しく発音させるための辞書登録(Pronunciation)機能も活用すれば、再編集の手間を大幅に省くことができます。
▲ 社内FAQ自動応答システムへのElevenLabs API連携構成
自分の声で収益化するVoice Library機能
Creatorプラン以上で自身の声をプラットフォームに登録すれば、利用量に応じた継続的な収益を得ることが可能です。
Voice Actor Payoutsの仕組み
ElevenLabsには「Voice Actor Payouts」という独自の収益化プログラムが用意されています。声優や一般ユーザーが自分の声のクローンをプラットフォームに提供し、他の有料プランユーザーがその声を使って音声を生成した際に、利用量に応じた現金報酬が支払われる仕組みです。一度高品質なモデルを登録しておけば、世界中のクリエイターに利用されるたびに自動的に利益が発生するため、自身の声を新たな資産として活用できます。
収益化を始めるための条件と手順
この機能を利用するには、以下の条件と厳格な審査をクリアする必要があります。
Creatorプラン(月額22ドル)以上の契約: 高精度のクローニング機能を利用して音声モデルを作成します。
高品質な学習データの用意: 公式ドキュメントの記載通り、ノイズのない環境で録音された、最適3時間(約2時間推奨)のクリアな単一話者の音声データが必要です。
Voice Captchaによる本人確認: 他人の声の無断利用や著作権侵害を防ぐため、指定されたプロンプトを制限時間内に読み上げ、学習データと本人が一致するか検証が行われます。
Stripeアカウントの連携: 報酬を受け取るための支払いシステムとの連携設定を行います。
本人確認と審査を通過した後、音声の提供期間を設定してVoice Libraryに公開することで、すぐに収益化をスタートできます。
▲ 自身の声で収益化する「Voice Actor Payouts」を始めるための3ステップ
導入時に情シスが検討すべきセキュリティとリスク管理
重大な情報漏えいを防ぐため、全社導入前には商用ライセンスの確保と学習データの除外設定を事前に確認・完了させておく必要があります。
音声の権利と不正利用対策
ElevenLabsは高い精度を誇る反面、なりすましによるディープフェイクのリスクも伴います。倫理的リスクを回避するため、社内規定でクローニング対象者を明文化し、必ず本人の書面による同意を得る運用を徹底してください。また、ElevenLabs公式が提供する「AI Speech Classifier」を活用すれば、自社ツールで生成された音声かどうかを判定でき、役員の声を悪用した詐欺電話などのリスクに対して一定の検証手段を持つことができます。
情シス向け導入チェックリストとよくある失敗
情報システム部門が導入を検討する際は、以下のチェックリストを活用して安全な運用環境を構築しましょう。
商用利用ライセンスの確認: 業務利用する全アカウントがStarterプラン以上になっているか。
学習データ除外設定(Privacy): 入力した機密テキストのオプトアウト設定が完了し、AIの再学習に利用されない設定になっているか。
アクセス管理とSSO連携: 退職者のアカウントが無効化されるよう、SAML等による統合認証が設定されているか。
ここで特に注意したい失敗例が「機密情報を扱う業務において、無料版で安易にテスト利用してしまうこと」です。IPAの「情報セキュリティ10大脅威 2026」 でも内部不正等による情報漏えいが上位に挙げられています。無料版では入力データが学習に利用される可能性があり、情シス部門がプランとルールを先に整備しておくことが、現場のシャドーIT防止につながります。
よくある質問
ElevenLabsの導入や運用に関して、よく寄せられる代表的な疑問について簡潔に回答します。
ElevenLabsはどこの国のサービスですか?
アメリカに本社を置くElevenLabs社が開発・運営しているサービスです。元Googleなどの機械学習エンジニアによって2022年に設立され、企業・クリエイター・個人開発者を中心に世界中で利用されています。
スマホアプリ版はありますか?
はい、個人のリスニング用途として「ElevenReader」という無料アプリがiOSおよびAndroid向けに提供されています。PDFやWeb記事を高品質なAI音声で自然に読み上げることが可能です。
ElevenLabsは無料で商用利用できますか?
いいえ、無料プランでの商用利用はライセンス違反となります。YouTubeの収益化動画や企業の販促物に利用する場合は、必ず月額5ドルのStarterプラン以上を契約してください。
日本語のイントネーションは不自然になりませんか?
最新の多言語モデル(Eleven v3など)では、極めて自然な日本語を生成できます。もし細かい違和感がある場合は「Actor Mode」を利用し、自身の話し方をディレクションとして与えることで調整可能です。
自分の声を登録して稼ぐことは誰でも可能ですか?
Creatorプラン以上の契約と、Stripeアカウントの登録があれば原則として誰でも可能です。ただし、厳格な本人確認(Voice Captcha)と事前審査があるため、他人の声を無断で登録して収益化することはできません。
まとめ
ElevenLabsは、従来の読み上げソフトの限界を超え、自然な感情表現と多言語対応を実現したAI音声プラットフォームです。社内のeラーニング動画制作やカスタマーサポートの自動化など、ビジネスにおける業務効率化に直結するツールです。ただし、商用利用におけるプラン選定や、機密情報を守るためのオプトアウト設定など、導入前に情シス部門で確認すべき点もあります。まずは月額5ドルのStarterプランを契約し、自社の非公開データを含まないマニュアルテキスト等を用いて、その音声品質と操作性をテスト導入してみることから始めてはいかがでしょうか。
✅ 導入に向けた次のアクション
✅ 業務利用にあたりStarterプラン以上を契約する
✅ 機密情報保護のためのオプトアウト設定を確認する
✅ 音声クローニング対象者の同意書・運用ルールを整備する
本記事の内容に誤り等がございましたら、こちらからご連絡ください。
監修
Admina Team
情シス業務に関するお役立ち情報をマネーフォワード Adminaが提供します。
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