>
>
最終更新日
企業のデジタル化とクラウドシフトが加速する中、「情報資産とは何か」を正確に定義し、適切に保護することが情報システム部門の最重要課題となっています。サイバー攻撃の高度化やシャドーITの増加により、従来のオンプレミスを中心とした管理手法だけでは組織を守り切ることが困難になっているためです。
本記事では、企業のITインフラやセキュリティを担う担当者に向けて、情報資産の定義や分類、一覧の作成方法といった基礎知識を整理します。さらに、2025年のISMS規格移行や2026年の法改正動向、そして現代の必須対策であるSaaS台帳運用やASM(攻撃対象領域管理)まで、最新の実務ノウハウを網羅的に解説します。

情報資産とは?定義と分類一覧
情報資産とは、企業が保有する顧客データやノウハウなどの情報、およびそれを処理・保管するITシステム全般を指す。
この記事でわかること
情報資産は「情報そのもの」と「情報システム」の両方を含む
2025年のISMS移行や2026年法改正に向けた管理体制の見直しが急務である
クラウド環境下ではSaaS台帳によるシャドーIT対策とASMが不可欠である
管理台帳の作成は「洗い出し→評価→対策→棚卸し」のサイクルで運用する
組織や企業が保有する重要な情報やデータは、すべて「情報資産」に該当します。これらを管理・活用するための技術やツールである「IT資産」も、広義の情報資産に含まれます。顧客データや業務プロセスの情報、知的財産など、組織の運営に欠かせないこれらの情報は漏洩や改ざんのリスクがあるため、厳格な保護が求められます。
情報資産の分類と具体例
情報資産は、大きく「情報」と「情報システム」の2つに分類されます。情報資産一覧を整理する際の参考にしてください。
分類 | 概要 | 具体例 |
|---|---|---|
情報(データ・ナレッジ) | 業務で扱うデータそのものや、形のない知的財産 | 顧客情報、従業員データ、財務諸表、設計図面、契約書、ソースコード、紙の文書、従業員のノウハウ |
情報システム(IT資産) | 情報を保管・処理・伝達するためのインフラや機器 | データベース、サーバー、PC、スマートフォン、USBメモリ、ネットワーク機器、SaaSなどのソフトウェア |
情報資産の3要素(CIA)
情報資産を適切に管理するためには、情報セキュリティの基本である機密性、完全性、可用性の3要素(CIA)を維持する必要があります。誰でもアクセスできる状態は機密性を損ない、データが欠損した状態は完全性を損ないます。逆に、セキュリティを強固にしすぎて業務に必要な時にシステムが使えない場合は可用性が低下している状態です。これら3つのバランスを取ることが情報資産管理の目的です。
▲ 情報資産の全体像と2つの主要な分類
情報システム担当者必見!2026年に向けた最新動向とサイバー脅威
2026年の法改正とISMS新規格への対応、および高度化するサイバー脅威への防衛が現代の情シス部門に求められる最優先事項である。
情報資産管理を取り巻く環境は、法規制とサイバー攻撃の両面で劇的に変化しています。過去の知識やルールのままでは、組織を重大なリスクにさらすことになります。
1. ISMS(ISO/IEC 27001:2022)移行期限と新管理策
情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)の国際規格は2022年に大幅に改訂され、既存取得企業の移行期限は2025年10月31日と定められています(ISMS適合性評価制度 移行方針参照)。この改訂では、現代のIT環境に合わせ「クラウドサービスの利用における情報セキュリティ」「脅威インテリジェンス」「データ漏えい防止(DLP)」など11の管理策が新たに追加されました。企業はこれに準拠する形で、情報資産管理台帳の見直しやリスク評価を再実施する必要があります。
2. 個人情報保護法の2026年改正動向(課徴金制度等)
日本の個人情報保護法は「3年ごと見直し」が義務付けられており、2026年の通常国会に向けた改正議論が進んでいます(個人情報保護委員会「個人情報保護法 いわゆる3年ごと見直し」参照)。特に注目すべきは、重大な情報漏洩や不適切なデータ利用に対する「課徴金制度」の導入検討です。これまで以上に経営に直結する重いペナルティが科される可能性があり、より精緻な情報資産管理体制の構築が急務となっています。
3. 中小企業に集中するランサムウェアとAIの脅威
警察庁の令和6年(2024年)統計によると、国内のランサムウェア被害報告のうち約63%が中小企業に集中しています(警察庁サイバー犯罪対策参照)。データを暗号化せずに窃取し公開を盾に脅迫する「ノーウェアランサム」も急増しており、侵入経路の多くは脆弱なVPN機器や不適切なリモートデスクトップ管理によるものです。また、IPAが発表した「情報セキュリティ10大脅威2026」では「AIの利用をめぐるサイバーリスク」が上位にランクインしており、生成AIを悪用した自動化攻撃への警戒が不可欠です。
クラウド時代の情報資産管理:SaaS台帳とASMによる対策
境界防御が通用しないクラウド時代においては、SaaS台帳を用いたシャドーITの可視化と、ASMによる外部公開資産の継続的評価が必須要件となる。
テレワークの定着や業務のSaaS移行により、企業の情報資産は社内ネットワークの外に点在するようになりました。これに対抗するため、最新の情報資産管理手法を取り入れる必要があります。
SaaS台帳の作成とシャドーITのガバナンス
情シス部門の許可を得ずに従業員が業務利用するクラウドサービス(シャドーIT)は、情報漏洩の大きな温床です。退職時のデータ持ち出しやアカウント放置を防ぐため、「会社で利用しているSaaS・クラウド台帳」を作成することが重要です。この台帳で管理者・利用者・保存情報を可視化し、アクセス制御を整備する。あわせて適切なルールを設けることで、利便性を損なわずにセキュリティを担保できます。
ASM(Attack Surface Management)の台頭
インターネット上に公開されている自社のIT資産(放置されたドメイン、テスト用Webサーバー、脆弱なVPN機器など)を、攻撃者の視点で発見し継続的に評価する手法が「ASM(攻撃対象領域管理)」です。経済産業省も導入ガイダンスを策定して推奨しており、「社内にある資産を守る」従来のアプローチから、「外部から見えている脆弱な資産を潰す」という積極的な防御へのアップデートが求められています。
▲ クラウド時代の対策:SaaS台帳とASMの役割の違い
情報資産管理で陥りやすい失敗パターンと解決策
ITツールを導入するだけで運用ルールや従業員教育が伴っていない場合、情報漏洩リスクは依然として解消されない。
情報資産管理を強化する際、多くの企業が陥りがちな失敗パターンが存在します。これらを事前に把握し、ツールと運用の両輪で対策を講じることが成功の鍵です。
失敗パターン1:情報資産管理台帳が形骸化している
監査や認証取得の目的だけで台帳を作成し、その後の更新が途絶えるケースです。退職者のPCや解約したクラウドサービスが台帳に残り続けると、インシデント発生時の初動対応に遅れが生じます。解決策として、IT資産管理ツールによる自動収集機能を活用し、手入力の手間を省きながら定期的な棚卸しをシステム化することが推奨されます。
失敗パターン2:セキュリティは情シス部門だけの責任だという勘違い
「セキュリティ対策はIT部門の仕事」という意識が他部門に蔓延していると、シャドーITやずさんなパスワード管理が横行します。情報資産の所有者は各業務部門であることを明確にし、定期的なセキュリティ教育を実施してセキュリティ意識を組織全体に根付かせる必要があります。
実務で使える情報資産管理台帳の作成手順
情報資産管理は、「洗い出し・分類」「リスク評価」「対策策定」「定期棚卸し」の4フェーズを繰り返すことで継続的に機能する。
実務の起点になるのが「情報資産管理台帳(情報資産目録)」の作成と運用です。以下の手順に従って実務を進めてください。
フェーズ1:洗い出しと分類(識別)
組織内に存在するデジタルデータ、紙媒体、IT機器、SaaSアカウントをすべてリストアップします。部署ごとにヒアリングシートを配布するか、IT資産管理ツールを用いたネットワークスキャンで情報を収集します。フェーズ2:リスク評価と重要度設定
洗い出した資産に対し、機密性・完全性・可用性の観点から重要度をランク付けします。例えば、「顧客のクレジットカード情報」は極めて重要度が高く、「公開済みのプレスリリース」は可用性は必要でも機密性の重要度は低くなります。フェーズ3:保護対策の策定と実施
重要度に応じて適切なセキュリティ対策を割り当てます。アクセス権限の制限、多要素認証(MFA)の導入、データの暗号化、定期バックアップなどを設定し、担当者と責任者を明示します。フェーズ4:継続的な監視と定期棚卸し
資産の増減や人事異動に伴う権限変更を台帳に反映させます。少なくとも半年に1回、あるいはシステム変更のタイミングで棚卸しを実施し、実態と台帳の乖離を防ぎます。
▲ 情報資産管理台帳を運用する4フェーズのサイクル
IT資産管理ツールの導入成功事例
専用の管理ツールを導入し、業務効率化とセキュリティ強化を両立させた企業の具体的な成果から、自社に最適な運用手法を学ぶことができる。
約6割の企業がIT資産管理ツールを導入しており、近年はクラウド型への移行が急速に進んでいます(出典:経済産業省 情報セキュリティ関連調査等による推計)。ここでは、国内企業の具体的な導入成功事例を紹介します。
事例1:株式会社TBSグロウディア(メディア・エンターテインメント業)
※本事例はインターコム社公開事例(2014年頃実施)をもとに紹介しています。
導入規模: PC計250台(Windows / Mac混在)
課題: 映像制作などでMac端末を利用するため、WindowsとMacを一元管理し、トラブル時のPC操作ログを追跡できる仕組みが必要だった。
施策・成果: 双方の操作ログを安定して収集できるツール(MaLion)を導入し、ログの社内開示を通じて不正行為の抑止力を向上。また、無許可PCのネットワーク接続防止やUSBデバイスの制御体制を確立し、情報持ち出しリスクを低減させた。
事例2:エイツーヘルスケア株式会社(医薬品開発受託業 / 伊藤忠商事グループ)
※本事例はエアー社公開事例(2018年発表)をもとに紹介しています。
導入規模: 1,300アカウント
課題: 先端医療に関わる高い機密性の情報資産を扱うため、メール誤送信対策を強化し、統一した送信ルールを徹底する必要があった。
施策・成果: クライアント型の誤送信対策ソフト(WISE Alert)を導入。外部宛先への送信時に警告を表示し、添付ファイルの自動ZIP暗号化に対応させることで、送信者自身でのチェックを徹底。サーバー不要で容易に導入でき、情報漏洩リスクを極小化した。
よくある質問
Q:情報資産とは何ですか?
A:情報資産とは、企業や組織が保有するあらゆる情報全般を指します。顧客情報や財務データといったデータそのものに加え、それを保存するパソコン、サーバー、USBメモリ、さらには紙の文書や従業員のノウハウまでもが含まれます。
Q:情報資産の具体例はどのようなものがありますか?
A:顧客の個人情報、従業員の給与データ、企業の財務諸表、取引先との契約書、ソフトウェアのソースコード、製品の設計図面などが代表的です。また、これらを処理するクラウドサービス(SaaS)のアカウントやネットワーク機器も含まれます。
Q:情報資産を洗い出し、分類する目的は何ですか?
A:組織がどのような情報を持っているかを正確に把握し、その重要度に応じたセキュリティ対策を効率的に適用するためです。すべての情報を同じレベルで守ることはコスト面で現実的ではないため、重要度に基づくメリハリのある管理が求められます。
まとめ
明日から取り組める情報資産管理の第一歩として、まずは自部門で利用しているPCやクラウドサービスの一覧化から始めてみましょう。サイバー攻撃と法規制の両面でリスクが増している今、情報資産管理はコスト項目ではなく経営の土台です。適切な管理体制は組織の信頼性を守り、業務効率の向上にも直結します。継続的な棚卸しと従業員教育を通じて、セキュアな情報資産管理体制を構築してください。
✅ 自部門で利用中のPC・SaaSを一覧化した
✅ 情報資産に重要度ランク(高・中・低)を付けた
✅ 半年に1回の棚卸しスケジュールを設定した
✅ 退職者アカウントの失効ルールを確認した
✅ 従業員向けのセキュリティ教育を計画した
本記事の内容に誤り等がございましたら、こちらからご連絡ください。
監修
Admina Team
情シス業務に関するお役立ち情報をマネーフォワード Adminaが提供します。
SaaS・アカウント・デバイスの管理を自動化し、IT資産の可視化とセキュリティ統制を実現。
従業員の入退社対応や棚卸し作業の工数を削減し、情報システム部門の運用負荷を大幅に軽減します。
中小企業から大企業まで、情シス・管理部門・経営層のすべてに頼れるIT管理プラットフォームです。






