>
>
公開日
※本記事は、AWSの導入・運用支援実績を持つクラウドコスト管理ツール「Admina」編集部が、公式ドキュメントおよび国内外の事例をもとに作成・監修しています。
AWSのクラウドサービス(Amazon Web Services)は、世界シェア首位のプラットフォームです。しかし、実際に導入するにあたっては「AWSのデメリット」や運用上の注意点を把握しておくことが欠かせません。本記事では、自社で利用中のAWSサービス一覧を見直したい担当者や、これからAWSを導入する企業に向けて、代表的なサービスの特徴や、ドル建て決済に伴うコスト増、複雑な料金体系といったリアルなデメリット、そして失敗を防ぐ対策を整理します。

AWSとは
本記事のポイント:
AWSは世界市場シェア28%を占める圧倒的No.1のクラウドプラットフォームである。
ドル建て決済による円安の影響や複雑な従量課金制度など、導入前に対策すべきデメリットが存在する。
セキュリティは「責任共有モデル」が原則であり、設定不備による情報漏洩を防ぐ自社対策が必須である。
Amazon Bedrockをはじめとする生成AIの普及に伴い、インフラのコスト最適化設計(倹約)を見直す機会が増えている。
AWS(Amazon Web Services)は、Amazonが提供している世界最大規模のクラウドコンピューティングサービスです。
AWSの詳細な基礎知識や他社クラウドとの比較については、別記事のAWSの基礎知識と他社比較で詳しく解説していますが、本記事では特にサービスカタログとしての機能と、導入時のデメリット・失敗回避策に特化して解説します。
Synergy Research Group(シナジー・リサーチ・グループ)が発表した2026年第1四半期の調査によると、世界のクラウドインフラ市場において、AWSは28%のシェアを獲得し世界首位を維持しています(Synergy Research Group)。また、総務省『令和6年版 情報通信白書』のデータでも、国内のIaaS・PaaS利用企業におけるAWSの利用率は50%を超えており(総務省 令和6年版 情報通信白書)、2位以下を大きく引き離しています。なお、本データは2024年時点の調査に基づくものです。最新動向については総務省の情報通信白書最新版を合わせてご参照ください。
AWSを利用するメリット
企業がクラウド化を進める中で、AWSが選ばれ続けるのにはいくつかの明確なメリットがあります。
初期費用が無料かつ従量課金制
AWSは、アカウント作成や初期のシステム構築費用が一切不要です。物理的なサーバーやネットワーク機器を調達するオンプレミス環境では、初期投資として数十万〜数千万円が必要ですが(参考:AWS クラウドエコノミクス)、AWSであればそれらのコストが一切かかりません。利用した分だけを支払う従量課金制のため、スモールスタートが可能です。
継続的な値下げによるコスト還元
AWSは2006年のサービス開始以来、継続的な値下げを実施してきました(AWS公式 What's New)。サービスの規模拡大に伴うスケールメリットをユーザーに還元する姿勢が一貫しており、長期的な運用においてもコスト低減が期待できます。
ITリソースの柔軟なスケーリング
ビジネスの成長やキャンペーンに伴う一時的なアクセス急増に合わせ、サーバーのスペックや台数を数クリックで変更可能です。不要になったリソースはすぐに縮小・削除できるため、無駄なコストを徹底的に排除できます。
世界水準のセキュリティと信頼性
AWSは、日本の政府情報システムのためのセキュリティ評価制度(ISMAP)や、国際的なセキュリティ規格(ISO 27017など)を数多く満たしています(ISMAPポータル・AWSコンプライアンスプログラム)。政府機関や金融機関がこぞってAWSを採用している事実が、その安全性の高さを証明しています。
AWSを利用するデメリットと企業が直面する課題
AWSには、実際の運用で多くの企業がつまずくデメリットがあります。米ドル決済による円安の直撃と、複雑に細分化された従量課金体系が代表的な障壁です。
ドル建て決済による「円安の直撃」
AWSの利用料金は原則として米ドル(USD)ベースで計算されます。そのため、近年の急激なドル高円安の影響により、AWS自体は値上げを行っていないにもかかわらず、日本円換算での支払額が大幅に跳ね上がってしまう事態が起きています。これは、オンプレミスや国内のクラウドサービス(さくらのクラウドなど)と比較した際、予算策定を難しくする深刻な要因です。
あまりに複雑すぎる料金体系
AWSのサービス数は200を超え(AWS製品一覧)、それぞれのサービスで時間課金、データ転送量、リクエスト数、プロビジョニングされたストレージ容量など、課金項目が細分化されています。このため、導入前に正確な月額費用を見積もることが極めて困難です。意図しないトラフィックの増加や設定ミスにより、想定外の高額請求(クラウド破産)が発生するリスクもあります。
請求代行(リセール)サービスに頼るデメリット
日本円での請求書払いや割引を受けるために、多くの企業が代理店経由での「請求代行サービス」を利用しています。一般的には、AWSのボリュームディスカウントを原資にした数%程度の割引が適用される場合が多いですが、代理店や契約内容によって手数料の有無や割引率は異なります(割引率の目安は代理店ごとに異なるため、契約前に必ず各代理店へ個別に確認することを推奨します。AWSパートナーの一覧はAWSパートナーネットワーク公式ページでご確認いただけます)。必ず契約前に手数料の有無やサポート範囲を確認してください。また、運用代行や技術サポートを付帯させたプランでは別途手数料や固定費が発生する場合があります。さらに「AWSの最新機能や仕様変更の反映が遅れる」「自社にAWSの運用ノウハウが蓄積されず、特定のパートナー企業に依存してしまう」といった課題も伴います。
AWSの代表的なサービスとは
AWSが提供する200以上のサービスのうち、多くの企業が最初に利用する代表的な基本サービスを解説します。それぞれの特徴に加え、実務でやりがちな失敗やコスト増の注意点も紹介します。
Amazon EC2(仮想サーバー)
Amazon EC2は、クラウド上にLinuxやWindowsの仮想サーバーを瞬時に構築できるサービスです。スペック変更や冗長化も容易に行えます。しかし、開発・テスト環境として立ち上げたEC2を、業務時間外である夜間や週末に稼働させたまま放置してしまう失敗が多発しています。不要な時間帯にサーバーを自動停止させる設定を怠ると、使っていない時間にも従量課金が発生し続け、無駄なコストを支払うことになります。
Amazon S3(ストレージ)
Amazon S3は、容量制限がなく極めて高い耐久性を誇るデータ保管用ストレージサービスです。静的ウェブコンテンツの配信から、システムバックアップまで用途別に利用されます。注意点として、S3はデータの蓄積量だけでなく、データの読み書き(リクエスト数)や外部への転送量に対しても課金されます。また、不要になった古いバックアップデータを長期間放置すると、容量が肥大化して費用が膨らみ続けるため、自動でデータを削除・移動する「ライフサイクルポリシー」の設定が不可欠です。
Amazon RDS(関係データベース)
Amazon RDSは、データベースの構築・保守・バックアップを自動化するフルマネージドサービスであり、クラウド管理におけるPaaSの一種に分類されます。RDSは管理負荷を大幅に削減できる反面、EC2に比べてベースの利用料金が高めに設定されています。不要なデバッグ用データベースや、本番環境と同スペックの開発環境を立ち上げたままにすると、インフラ費用が急増する要因となります。
AWS Lambda(サーバーレス実行)
AWS Lambdaは、プログラムを実行するためのサーバー管理を一切不要にするサーバーレスサービスです。リクエストやイベントが発生した瞬間にのみプログラムが実行され、実行時間(ミリ秒単位)のみ課金されるため非常に高効率です。注意が必要なのは、プログラムのバグによる「無限ループ」です。エラーハンドリングやタイムアウト制限を適切に設定していないと、一晩で数百万回の呼び出しが発生し、高額な課金が発生するリスクがあります(参考:AWS Lambda ベストプラクティス – AWS公式ドキュメント)。
AWS CLI(コマンド制御ツール)
AWS CLIは、コマンドライン(テキスト入力)を使って複数のAWSサービスを一元管理・自動化するためのユニバーサルツールです。CLIのコマンドを誤ると、一瞬で大量のリソースが削除されたり、設定が書き換えられたりする危険性があります。特に管理者権限(AdministratorAccess)を付与したアクセスキーの漏洩は、アカウント全体の乗っ取りに直結するため、権限の絞り込みと厳格なキー管理が求められます。
Amazon CloudWatch(監視・管理)
Amazon CloudWatchは、AWS上の各種リソースやアプリケーションの状態をリアルタイムで監視するサービスです。ログ収集やアラート通知、イベントの自動実行などを行えます。標準機能は無料枠がありますが、カスタムメトリクス(独自監視項目)の追加や、大量のログ出力を「CloudWatch Logs」へ転送し続けると、監視コストそのものが高騰してしまう「本末転倒」の事態を招くため、不要なログの出力レベルを調整する必要があります。
AWSサービス一覧
AWSは200種類以上のサービスを提供しており、それらを柔軟に組み合わせることで、さまざまなビジネスニーズに対応できます。ここでは、各分野における主要なサービス群を体系的に整理して紹介します。
分析
データの蓄積・処理・可視化をサポートするサービス群です。Amazon OpenSearch Serviceによる迅速なログ分析、データ統合(ETL)を自動化するAWS Glue、Amazon S3内のデータを標準SQLで分析できるAmazon Athenaなどが代表的です。さらに、機械学習を用いたデータ分析のAmazon EMR、BIツールであるAmazon QuickSight、ストリーミングデータをリアルタイム処理するAmazon KinesisやAmazon MSKなどを備えています。
アプリケーション統合
異なるシステムやサービスを密結合・粗結合で連携させます。ノンコードでSaaSと連携するAmazon AppFlow、イベント駆動型設計を実現するAmazon EventBridge、メッセージキューを管理するAmazon SQS、プッシュ通知を行うAmazon SNS、ワークフローを視覚的に定義するAWS Step Functionsなどがあり、システムの疎結合化に貢献します。
ブロックチェーン
信頼性の高い分散型取引ネットワークを構築します。ブロックチェーンネットワークを簡単にセットアップできるAmazon Managed Blockchainや、変更不可能な台帳を管理するAmazon QLDBが提供されています。実務での利用はまだ限定的なユースケースが中心ですが、企業間の取引記録や監査証跡の管理に活用されます。
ビジネスアプリケーション
業務効率化やコミュニケーションを円滑にするアプリケーション群です。クラウド型コンタクトセンターを数日で構築できるAmazon Connect、会議や通話を行うAmazon Chime、セキュアなチャットツールであるAWS Wickrなどが揃っています。
クラウド財務管理
コストを可視化し最適化を支援します。予算とアラートを設定するAWS Budgets、詳細な利用明細を出力するAWS Cost and Usage Report、費用分析を行うAWS Cost Explorer、定額利用で割引を適用するSavings Plansなどがあり、AWSのデメリットである「料金の不透明さ」に対処する必須ツールです。
コンピューティング
用途別のシステム環境に最適化された計算リソースを提供します。基本の仮想サーバーであるAmazon EC2、自動でサーバー台数を増減させるAmazon EC2 Auto Scaling、手軽に利用できる仮想プライベートサーバー(VPS)のAmazon Lightsail、サーバー管理不要のアプリケーションデプロイツールAWS App Runner、さらにオンプレミスと接続するAWS Outpostsなどがあります。
コンテナ
Dockerなどのコンテナ技術を用いた開発と運用を支援します。コンテナイメージを保管するAmazon ECR、AWS独自のコンテナ管理サービスAmazon ECS、Kubernetesを実行するAmazon EKS、サーバーレスでコンテナを実行するAWS Fargateなどが含まれ、モダンなマイクロサービス開発を支えます。
データベース
用途に合わせた各種データベースエンジンを利用できます。超高速なクラウド専用リレーショナルデータベースAmazon AuroraやAmazon RDS、NoSQL型のAmazon DynamoDB、ドキュメントデータベースのAmazon DocumentDB、インメモリキャッシュを提供するAmazon ElastiCacheなどが代表的です。
デベロッパーツール
コードのビルド、テスト、デプロイなどの開発工程を自動化します。統合開発環境のAmazon CodeCatalystやAWS Cloud9、CI/CDラインを構築するAWS CodeBuild、AWS CodeCommit、AWS CodeDeploy、インフラをコードで定義するAWS CDKなど、DevOps(開発と運用の融合)を加速させるツール群です。
エンドユーザーコンピューティング
安全なリモートワーク環境を構築します。クラウド上で稼働するデスクトップを提供するAmazon WorkSpacesや、ブラウザ経由でセキュアにアプリケーションを配信するAmazon AppStream 2.0があり、企業のセキュリティ強化と柔軟な働き方を両立します。
Webとモバイルのフロントエンド
Webやモバイルアプリのフロントエンド開発・ホストを簡略化します。API構築のAmazon API Gateway、アプリ開発プラットフォームAWS Amplify、リアルタイムのデータ同期を行うAWS AppSync、複数のコミュニケーション機能を提供するAmazon Pinpointなどを利用できます。
IoT
無数の物理デバイスをクラウドに安全に接続・制御します。デバイスを安全に接続するAWS IoT Core、エッジ環境でプログラムを実行するAWS IoT Greengrass、産業機器のデータを蓄積・分析するAWS IoT SiteWiseなどがあり、スマート工場やスマートビルの実現を支援します。
機械学習・生成AI
高度なAI技術をビジネスへ組み込みます。開発者が機械学習モデルを構築・訓練できるAmazon SageMakerに加え、近年急速に普及している生成AIサービス「Amazon Bedrock」が注目されています。Bedrockは、企業のセキュリティ要件を満たしたままで、外部の高性能な基盤モデル(AnthropicのClaudeなど)を利用してRAG(社内文書検索)やエージェント機能を迅速に実装できる強力なツールです。
マネジメントとガバナンス
大規模な環境を統制し、安定運用を担保します。複数アカウントを一元管理するAWS Organizations、標準的な統制環境を自動適用するAWS Control Tower、インフラ構成をコード化(IaC)するAWS CloudFormation、運用のベストプラクティスを提示するAWS Trusted Advisorなどが含まれます。
メディアサービス
動画コンテンツのエンコードから配信までをクラウド上で行います。スケーラブルなメディア変換を行うAmazon Elastic Transcoder、高品質なライブストリーミングを構築するAmazon Interactive Video Service、動画のパッケージ化と配信を最適化するAWS Elemental MediaConvertやAWS Elemental MediaLiveなど、高負荷な動画配信ビジネスを支える基盤が充実しています。
移行・転送
オンプレミスからAWSへの移行をスムーズに行います。サーバー移行を自動化するAWS Application Migration Service、データベースをダウンタイム最小限で移行するAWS Database Migration Service(DMS)、高速なデータ転送を行うAWS DataSyncなどがあり、企業のレガシーシステム刷新を支援します。
ネットワーキング・コンテンツ配信
安全で快適な通信インフラを構築します。仮想ネットワーク空間を構築するAmazon VPC、ドメインネームシステム(DNS)のAmazon Route 53、世界中へコンテンツを高速配信するCDNのAmazon CloudFront、専用線接続のAWS Direct Connect、VPN不要でセキュアにアクセスできるAWS Verified Accessなどがあります。
量子テクノロジー
次世代の量子コンピューティングの研究をサポートします。Amazon Braketを利用することで、さまざまな量子アルゴリズムをシミュレートしたり、実在する量子ハードウェア上でプログラムを実行したりして、最先端の技術検証を早期に開始できます。
ロボット工学
ロボット関連アプリケーションのシミュレーション環境の構築には、AWS Batchを活用することで、仮想空間内でのロボット動作試験をスケーラブルに実施し、テストや検証にかかる物理的な時間を大幅に短縮できます。なお、AWS RoboMakerは2025年9月10日をもってサービスを終了しており、AWSはAWS Batchなどの活用を代替として推奨しています。
人工衛星
宇宙ビジネスのインフラをクラウドで調達します。AWS Ground Stationは、物理的な地上アンテナを自前で持つことなく、人工衛星の制御やデータのダウンロード、処理をオンプレミスと比較して安価かつオンデマンドで実行できる革新的なサービスです。
セキュリティ・アイデンティティ・コンプライアンス
AWS環境における安全性を多層的に担保します。ユーザーの認証・アクセス管理(IAM)、認証情報を提供するAmazon Cognito、脅威検知のAmazon GuardDuty、機密情報を特定するAmazon Macie、ウェブアプリケーションへの攻撃を防ぐAWS WAF、一元的な管理画面となるAWS Security Hubなどがあります。
ストレージ
目的に応じた各種データ保管場所を提供します。EC2向けの高性能なブロックストレージであるAmazon EBS、共有ファイルシステムのAmazon EFSやAmazon FSx、低コストな長期保存(アーカイブ)用のAmazon S3 Glacier、物理的な転送デバイスであるAWS Snowファミリーなどを備えています。
AWS導入でよくある失敗パターンと実践的な対策
AWSを導入した企業の多くが、クラウドの特性を理解しないまま運用を開始し、手痛い失敗を経験しています。ここでは、実務上で特に多い3つの失敗パターンと、それを防ぐ具体的な対策を提示します。
失敗パターン①:クラウドだから「何もしなくても安全」という誤解(情報漏洩)
失敗例:Amazon S3(ストレージ)を社内共有用としてデフォルト設定のまま立ち上げたが、アクセス権限(IAM)の設計が甘く、インターネット経由で誰でも顧客データがダウンロードできる状態になっており、外部指摘で漏洩が発覚したケースです。
対策:AWSが提唱する「責任共有モデル」を正しく理解する必要があります。インフラ(物理サーバーやデータセンター自体)のセキュリティはAWSが保証しますが、クラウド「内」のデータ暗号化、アクセス権限設定、OSのパッチ適用などは100%ユーザー(自社)の責任です。「IAM(Identity and Access Management)」の設定は、職務に必要な「最小限の権限」のみを付与する原則(最小権限の原則)を徹底し、S3の「パブリックアクセスブロック」を必ず有効化してください。
失敗パターン②:テスト用リソースの消し忘れ(クラウド破産)
失敗例:検証のためにハイスペックなEC2インスタンスやNAT Gateway(通信ゲートウェイ)を一時的に立ち上げたものの、検証終了後に削除し忘れ、使用していないにもかかわらず、月数十万円の請求が届いて初めて発覚したケースです(このような予期せぬ高額請求の実態については、AWSサポート公式ドキュメントでリソース管理のベストプラクティスとして注意喚起がされています)。
対策:AWSアカウントを作成した直後に、必ず「AWS Budgets」を設定することが鉄則です。例えば「月間の予算上限を5万円」に設定し、実際の利用額や予測額がその80%を超えた時点で、管理者のメールアドレスやSlackへ即座にアラートが飛ぶセーフティネットを構築しましょう。使っていないリソースを自動検出する「AWS Trusted Advisor」も定期的にチェックしてください。
失敗パターン③:オンプレミスの構成をそのまま移行(コスト高騰)
失敗例:オンプレミスで稼働していたWEBサーバーと同じスペック(CPUやメモリ数)のまま、単純にEC2へリフト移行した結果、クラウド特有の従量課金の恩恵を受けられず、移行前よりインフラ費用が3割以上高くなってしまったケースです(リフト&シフト移行時のコスト最適化の重要性については、AWSクラウド移行公式ページでも指摘されています)。
対策:AWSの最高技術責任者(Werner Vogels)は、コストを意識した設計思想である「Frugal Architect(倹約するアーキテクト)」を提唱しています。移行時は単にサーバーを移す(リフト)だけでなく、クラウド向けに構成を最適化(シフト)することが不可欠です。例えば、夜間や週末など業務時間外にEC2を自動停止させる「スケジュールスケーリング」を導入することで、コンピューティングコストを大幅に削減できます(AWSコスト管理公式情報)。また、必要に応じてアクセス数に応じて自動増減するオートスケーリングや、サーバーレスアーキテクチャへの切り替えを検討しましょう。
▲ 責任共有モデルにおけるAWSとユーザー(自社)の責任範囲の対比
導入事例から学ぶAWSの活用効果
AWSを導入することで、実際に日本企業がどのような効果を得ているのか、具体的な事例を元に見ていきましょう。最新の生成AI活用からコスト削減まで、実務における具体的なアプローチが非常に参考になります。
事例①:株式会社竹中工務店(生成AI・Amazon Bedrockの活用)
業種・規模:建設業(大企業)
導入時期:2023年〜継続中
課題:建設業界における深刻な人手不足と、施工現場における各種データ(図面・マニュアル等)の検索・活用の非効率さを解消し、業務効率化と生産性を向上させる必要があった。
施策:建設デジタルプラットフォームの基盤としてAWSを採用。さらに、セキュリティを担保しながら、高性能な大規模言語モデルであるAnthropicの「Claude」などの外部AIモデルを利用できる「Amazon Bedrock」を迅速に導入した。
成果:施工現場を含む全社的なデータ検索や文書作成の自動化(RAG)が安全な環境下で実現。現場管理者の負担軽減とスピーディーな意思決定、および生産性の向上が進んでいる(AWS公式事例ページ)。
事例②:株式会社バンダイナムコエンターテインメント(円安に立ち向かうコスト削減)
業種・規模:エンターテインメント・ゲーム開発(大企業)
導入時期:2022年〜現在進行形
課題:急激なドル高円安の進行により、ドル建てであるAWSの利用料金が日本円換算で急騰し、インフラコストの抑制が極めて重要となっていた。
施策:数百ものAWSアカウントを横断的に分析。余剰スペックを最適化する「右サイズ化」を徹底したほか、データアクセス頻度に応じてストレージ料金を自動で最適化する「Amazon S3 Intelligent-Tiering」を導入。さらに、CPUを安価で高性能なARMベースの「AWS Graviton」プロセッサへ移行させた。
成果:ゲームのパフォーマンスを一切損なうことなく、ドル建てでのAWS利用コストを約30%削減することに成功。円安によるコスト上昇プレッシャーを完全に相殺した(AWS公式事例ページ)。
公的機関における実績:ガバメントクラウドにおける採用状況
AWSの信頼性の高さは、民間企業にとどまりません。デジタル庁が主導する「ガバメントクラウド」において、AWSは省庁や地方自治体の基幹業務システム移行先として広く採用されています(デジタル庁 ガバメントクラウド)。2026年3月には国内ベンダーであるさくらインターネットが全技術要件を満たし正式認定されたものの(さくらインターネット公式)、実績とセキュリティレベル、そして200を超える豊富なサービス群が揃っているAWSの存在感は、公的機関においても際立っています。
AWS導入・コスト最適化クイックチェックリスト
フェーズごとにコスト・セキュリティを定期的に確認することで、高額請求と情報漏洩の両方を防げます。
AWSの導入や見直しの際、読者の皆様が自社で今すぐ確認できる、実用的な「導入・コスト最適化クイックチェックリスト」を提供します。このリストに沿って運用を見直すだけで、高額な不要課金を回避し、セキュアな環境を維持できます。
フェーズ | チェック項目 | 具体的なアクション内容 | 期待される効果 |
|---|---|---|---|
導入検討時 | 責任共有境界の確認 | セキュリティ設定(IAMや公開範囲)は自社の責任で行う体制を構築しているか。 | 設定不備による機密データの外部流出を未然に防止。 |
開発・検証時 | AWS Budgetsの設定 | アカウント開設直後に、予算(例:月5万円)の上限アラートを登録しているか。 | 消し忘れリソースによる「クラウド破産」を早期検知。 |
運用時 | スケジュールスケーリング | 不要な夜間や休日に、EC2などの開発機を自動停止するスクリプトを仕込んでいるか。 | コンピューティングコストを大幅に削減可能。 |
運用時 | S3 Intelligent-Tiering | 長期間アクセスしていない古いバックアップデータを低コスト層へ自動移動させているか。 | ストレージコストの恒久的な最適化を実現。 |
運用時 | 最新プロセッサの検討 | 旧世代インスタンスから安価な「AWS Graviton」などへ移行する検証を行ったか。 | パフォーマンスを落とさずに最大30%程度のコストを削減。 |
▲ AWS導入から運用フェーズにおけるコスト・セキュリティ最適化の4ステップ手順
AWSのデメリットに関するよくある質問
以下のFAQで、AWSのデメリットに関する代表的な疑問を解説します。
Q:AWSの最大のデメリットは何ですか?
A:最大のデメリットは、ドル建て決済による「急激な為替(円安)の直撃」と、非常に複雑で細分化された「従量課金体系」です。日本円に換算した際の支払い額が予測しづらく、事前の予算確保やコスト見積もりが非常に困難という実務上の課題があります。
Q:AWSで高額請求(クラウド破産)を防ぐにはどうすればよいですか?
A:最も即効性がある対策は、AWSの利用開始直後に「AWS Budgets」を有効化することです。あらかじめ設定した月額予算の上限に近づいた際、メールやSlackにアラート警告を自動で飛ばす仕組みを導入することで、開発サーバーの消し忘れなどによる高額請求を即座に防ぐことができます。
Q:オンプレミスからAWSへ移行すると必ず安くなりますか?
A:いいえ、必ず安くなるとは限りません。オンプレミスの物理構成をそのままリフトする(EC2を24時間常時稼働させる)だけでは、かえって割高になります。移行にあたっては、不要な時間帯の自動停止(スケジュールスケーリング)や、サーバーレス(AWS Lambda)、マネージドDB(Amazon RDS)など、クラウド特有の強みを活かしたアーキテクチャ設計への移行(シフト)をセットで進める必要があります。
▲ AWS移行時にコスト削減を成功させるための意思決定フロー
まとめ
AWSは、世界28%のシェアを誇る信頼性の高いクラウドサービスです。しかし、米ドル決済による円安の影響や、設定ミスに伴う情報漏洩・高額請求といった実務的なデメリットもあります。これらを回避するためには、責任共有モデルを深く理解し、コストを自動管理する体制が求められます。さっそく今日、AWSの無料アカウントで「AWS Budgets」を設定し、予算上限アラートのセーフティネットを構築することから始めましょう。
✅ AWS Budgetsで月額上限アラートを設定した
✅ S3のパブリックアクセスブロックが有効になっているか確認した
✅ 夜間・休日のEC2自動停止スケジュールを設定した
✅ IAM権限が最小権限の原則に沿って設定されているか見直した
✅ AWS Trusted Advisorで不要リソースが残っていないか確認した
本記事の内容に誤り等がございましたら、こちらからご連絡ください。
監修
Admina Team
情シス業務に関するお役立ち情報をマネーフォワード Adminaが提供します。
SaaS・アカウント・デバイスの管理を自動化し、IT資産の可視化とセキュリティ統制を実現。
従業員の入退社対応や棚卸し作業の工数を削減し、情報システム部門の運用負荷を大幅に軽減します。
中小企業から大企業まで、情シス・管理部門・経営層のすべてに頼れるIT管理プラットフォームです。




