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2026年8月26日、SalesforceとAnthropicは戦略的パートナーシップの拡大「Claudeforce(クロードフォース)」を発表しました。ClaudeがSalesforceの顧客データ・業務ロジック・ガバナンスに直接アクセスして行動できるようになる取り組みで、情シスにとっては「Claudeの利用範囲がCRMの中核データにまで及ぶ」という新しい統制対象が生まれたことを意味します。本記事では、Salesforce公式ニュースルームの発表内容を一次情報として、Claudeforceの概要と、情シスが導入判断の前に確認すべきポイントを整理します。
Claudeforceとは?発表の背景と全体像
Claudeforceは、Claudeの推論能力とSalesforceの企業向けデータ・ワークフロー・ガバナンス基盤を統合し、業務がどこで行われていてもエージェント型の体験を安全に実行できるようにする取り組みです。Salesforceの決算発表(2026年度第2四半期決算)と同日に発表されており、両社にとって単なる技術連携ではなく事業戦略上の大きな節目と位置づけられています。
Salesforce公式リリースによれば、Claudeforceは「Claudeの知性と推論を、データ・ワークフロー・業務ロジック・アクション・ガバナンスを含むSalesforceの信頼できるエンタープライズ基盤と組み合わせる」拡大パートナーシップと説明されています。CEOのマーク・ベニオフ氏は「世界No.1のAIと世界No.1のCRMを組み合わせる」とコメントし、AnthropicのCEO兼共同創業者ダリオ・アモデイ氏は「企業が数十年かけてSalesforceに蓄積してきた顧客情報とビジネスコンテキストに対してClaudeを向け、実際の事業運営や成長に活用できるようになる」と述べています。
なお、SalesforceとAnthropicの提携自体は今回が初めてではなく、2024年9月のEinstein向けモデル提供開始、2025年10月の規制業界向け拡大(Agentforce 360基盤モデル化)を経て、今回のClaudeforceで一段と統合が深まった形です。
Salesforceのようなクラウド型CRMの基本的な機能や他社との違いについては、HubSpotの解説記事でも整理していますので、CRM全体像の確認にご活用ください。
提携の4つの柱
Claudeforceは単一の機能ではなく、4つの取り組みで構成される提携です。全体像を先に押さえることで、以降の各セクションの位置づけが分かりやすくなります。
Salesforce公式リリースが挙げる4本柱は次のとおりです。
Salesforce inside Claude:Claude内からSalesforceのデータ・機能を操作するプラグイン「Salesforce in Claude」
Claude inside Salesforce:AgentforceのAtlasリーズニングエンジンや、Amazon Bedrock経由でのTrust Boundary内利用
Slack:人とエージェントが協働する場としてのSlackにおけるClaudeの役割拡大
相互採用(Mutual Adoption):SalesforceがAnthropicの、AnthropicがSalesforceの、それぞれの製品を社内で採用し合う関係
情シス目線で重要なのは、この4本柱が「Claudeが外部から一時的にSalesforceのAPIを叩く」という従来型の連携ではなく、認証・権限・ガバナンスをSalesforce側の基盤に一本化する設計を志向している点です。次のセクション以降で、それぞれの柱を詳しく見ていきます。
Salesforce in Claude:37の事前構築済み営業スキルとその仕組み
Claudeforceの第一弾として提供されるのが「Salesforce in Claude」です。これは37種類の事前構築済み営業スキルを搭載したプラグインで、商談前の準備、案件の健全性レビュー、パイプラインレビューなどを、Claude上から直接Salesforceのライブデータに対して実行できます。
これらのスキルは、SalesforceとAnthropicが共同で設計したもので、汎用的なプロンプトをAPIにラップしただけのものではなく、Claudeの推論・エージェント的なツール利用・生成UIの能力を前提に構築されています。オンボーディング時には、Salesforce・Slack・その他Claudeに接続済みのコネクタから営業担当者の業務コンテキストを読み取り、案件やパイプラインを可視化したダッシュボードをClaudeが動的に生成する仕組みも含まれます。Claude自体の基本機能や日本語対応については、Claudeとは?の基本ガイドをご覧ください。
情シスにとって特に重要なのは権限管理の設計です。Salesforce in Claudeは、アクションを必ずSalesforce側にルーティングすることでビジネスルールが常に適用される仕組みになっており、管理者が一度接続設定を行えば、認証と権限は組織全体で一元管理されます。ユーザー個別のセットアップや、アカウントごとの権限再監査は不要とされています。これはSalesforce標準のロール・権限セット・共有ルールがそのままClaude経由の操作にも適用されることを意味しており、Claudeの利用範囲拡大に伴う権限設計の負荷を抑える設計と言えます。ただし「管理者が一度設定すれば終わり」という説明を鵜呑みにせず、実際にどのプロファイル・権限セットの範囲でClaudeの操作が許可されるかは、パイロット導入時に必ず自社のSalesforce管理者と一緒に検証することをおすすめします。
エージェント型AIが業務システムに対して直接アクションを取る際のリスクについては、OpenAIのエージェント暴走インシデントから学ぶ教訓の記事でも整理しています。Salesforce in Claudeのようにアクションを実行するプラグインを検討する際は、こうした事例も参考に、承認フローやロールバック手段を事前に確認してください。業務AIエージェント全体の選定基準については、ChatGPT Work・Gemini Spark・Claude Cowork比較記事もあわせてご参照ください。
Agentforceの中でのClaude活用:推論モデルとしての位置づけ
Claudeforceはプラグインの提供だけでなく、Salesforce製品の内部でClaudeを推論モデルとして利用する統合も含みます。Salesforce公式リリースによると、ClaudeはAgentforceの中でAtlasリーズニングエンジン向けの推論モデルとして利用可能になっており、Agentforce VibesとAgentforce Coworkerではデフォルトで、Agent Builderでも選択可能なモデルとして提供されています。
さらに、Amazon Bedrock経由でClaudeを利用することで、金融・医療などの規制業界を含む顧客が、Salesforce Trust Boundary内でデータとAIワークロードを保護しながらドメイン特化のAIを展開できるとされています。Amazon Bedrockの基本的な仕組みや料金体系については、Amazon Bedrockの解説記事でも整理しています。この点は2025年10月に発表された規制業界向け拡大パートナーシップの延長線上にあり、今回のClaudeforceで対象範囲がさらに広がった形です。
情シスとしては、「Claude」という同じモデル名でも、少なくとも2つの異なるデータフローが存在する点を整理しておく必要があります。
経路1:Salesforce in Claudeプラグイン経由 Claude側からSalesforceのデータ・機能にアクセスする経路です。Claude側のログ・利用ポリシーが関わります。
経路2:Agentforce内部での推論モデルとしての利用 Agentforceの中でClaudeが推論を行う経路です。Salesforce側のTrust Boundary・Agentforceのガバナンスポリシーが主に適用されると考えられます。
この2つは監査対象や責任分界点が異なるため、どちらの経路で自社のデータが動いているかを区別して把握することが重要です。Salesforce・Claude双方でどのような認証方式が使われるかについては、MCPのエンタープライズ導入ガイドで解説している認可アーキテクチャの考え方も参考になります。
Slackにおける役割拡大:Slackbot・Claude Tag・Slack Code
Claudeforceのもう一つの柱がSlackです。ClaudeはSlackのデフォルトモデルとなり、Slackbotによる個人の生産性向上、チームの意思決定を支援するClaude Tag、複数人でのコーディングを加速するSlack Codeの創設パートナーとしての役割まで、Slack体験の各レイヤーを支える存在と位置づけられています。
Salesforce公式リリースは、Slackbotが社内で年換算810万時間の生産性向上をもたらしており、これは前四半期比で2倍以上に増加した数値だと説明しています。これは主にSalesforce社内での利用実績としての数値であり、自社での効果を保証するものではない点に注意してください。
Slack上でAIボットやチャットボットの構築・統制を検討している場合は、Slackチャットボットの構築手法と選定基準の記事もあわせてご確認ください。SlackはSalesforceの子会社であるため、SlackのID管理・アプリ承認フローとSalesforceの権限管理は別の管理画面・別のポリシーで運用されている点も、統制設計上見落としやすいポイントです。
提供時期とロードマップ
Claudeforceは発表時点ですべての機能が一般提供されているわけではなく、段階的なロールアウトが計画されています。導入検討の優先順位づけには、この時間軸を踏まえることが欠かせません。
Salesforce公式リリースによると、Salesforce in Claudeは現在一部のパイロット顧客に提供されており、2026年9月にオープンベータでの提供開始が予定されています。追加の事前構築済みスキルは2026年後半から順次リリースされる見込みです。パイロット・オープンベータの段階では機能・価格・提供条件が変更される可能性がある旨もリリース内で明記されています。
情シスの観点では、正式なGA(一般提供)を待たずにパイロット段階で評価を始めるかどうかの判断が必要になります。パイロット段階のツールを本番のSalesforce環境に接続する場合は、サンドボックス環境での検証、影響範囲の限定、法務・セキュリティ部門への事前確認を組み合わせることをおすすめします。
情シスが確認すべき統制・ガバナンスのポイント
Salesforce in Claudeのようにエージェントが基幹CRMのデータに対して読み取り・更新・アクションを行うツールを評価する際は、機能の魅力だけでなく、権限・データ・監査の3つの観点から統制設計を確認することが重要です。
権限の粒度:Claude経由の操作がSalesforceの既存のプロファイル・権限セット・共有ルールをそのまま継承するのか、それとも別途Claude用の権限設定が必要になるのかを確認します。管理者が一度設定すれば全社員に自動で権限が及ぶ設計は運用負荷を下げる一方、意図しない権限の広がりがないか事前の設計レビューが欠かせません。
データフローと保存先:Claudeに渡されたSalesforceデータがどこに一時的に保存・処理されるか、モデルの学習に利用されないか、ログの保存期間はどの程度かを確認します。Amazon Bedrock経由でTrust Boundary内に閉じる構成なのか、Anthropic側のAPIを直接呼び出す構成なのかによって、データガバナンス上の扱いが変わります。
監査ログとロールバック:Claudeが実行したアクション(パイプライン更新、レコード変更など)がSalesforce標準の監査証跡に記録されるか、誤ったアクションを取り消す手段が用意されているかを確認します。
既存のシャドーAI統制との整合:営業担当者が個人契約のAIツールでSalesforceデータを扱っていないか、公式のSalesforce in Claude以外の経路でのSalesforceデータ持ち出しが起きていないかは、Salesforce in Claudeの導入とは別軸で継続的に確認が必要です。シャドーAIの検知・可視化については生成AI利用可視化ガイドで具体的な手法を解説しています。
Salesforceと同様に、ClaudeのAPI・MCP接続における権限管理を体系的に理解しておきたい場合は、Claude Enterprise認証管理ガイドもあわせてご参照ください。開発部門でClaude Codeを利用している場合の統制はClaude Codeの法人向けガバナンスガイド、最新モデルの企業導入観点はClaude Fable 5の企業向けガイドで解説しています。
導入前チェックリスト
パイロット参加や評価版の利用を検討する際は、以下の観点を事前に洗い出しておくと、限られた評価期間の中でも判断がぶれにくくなります。
自社のSalesforce Editionと権限モデル(プロファイル・権限セット・共有ルール)を棚卸しし、Claude経由の操作範囲を想定できているか
パイロット申込前に、法務・情報セキュリティ部門への確認プロセスを社内で定義できているか
評価対象を一部の部署・一部のオブジェクト(商談・案件など)に限定し、影響範囲をコントロールできる設計になっているか
Claude、Salesforce双方の既存契約(Claude Enterprise、Salesforce Trust Boundaryなど)とパイロット利用条件の関係を確認できているか
オープンベータ移行、追加スキルのリリースなど、今後のロードマップ変更を継続的にウォッチする担当・体制を決めているか
複数のSaaS・AIツールを横断してアカウント状況やOAuth連携を可視化する仕組みがあれば、Salesforce in Claudeのようなプラグインが実際にどの従業員にどこまで接続されているかを、Salesforce側の管理画面だけに頼らず横断的に把握しやすくなります。マネーフォワード Adminaの機能全体は、Admina by Money Forward のトップページからご確認いただけます。
よくある質問(FAQ)
Q. ClaudeforceとAgentforceは何が違いますか?
A. Agentforceは、Salesforceが提供するエージェント構築プラットフォーム自体を指します。Claudeforceは、そのAgentforceを含むSalesforceの各製品群(Agentforce、Slack、Data 360、Tableauなど)とClaudeを結びつける、より広い提携の名称です。ClaudeはAgentforce内でAtlasリーズニングエンジンの推論モデルとして利用される形になり、Agentforceを置き換えるものではありません。
Q. Salesforce in Claudeはどのプランで使えますか?
A. 本記事執筆時点(2026年8月)でSalesforce公式リリースには詳細な料金・プラン体系は明記されておらず、一部のパイロット顧客向けに提供され、2026年9月にオープンベータへ移行する予定とされています。料金・提供プランの詳細は、正式リリースに合わせて公式サイトで確認することをおすすめします。
Q. 情シスとして今すぐ対応が必要なことはありますか?
A. パイロットに参加する予定がなくても、自社の営業担当者が個人的にClaudeとSalesforceデータを組み合わせて利用していないか(シャドーAIの一形態)を確認しておくことは有効です。また、Slackが自社のワークスペースでClaude連携をすでに有効化しているかどうかも、管理者権限であわせて確認しておくとよいでしょう。
Q. AnthropicとSalesforceの提携はこれが初めてですか?
A. いいえ。2024年9月にEinstein向けにClaudeモデルが提供開始され、2025年10月には規制業界(金融・医療・サイバーセキュリティ・ライフサイエンス)向けにAgentforce 360の基盤モデルとしての採用が発表されています。Claudeforceは、これらの提携をさらに拡大・統合したものです。
まとめ
Claudeforceは、Claudeの推論能力とSalesforceの企業データ・ワークフロー・ガバナンスを統合する提携であり、Salesforce in Claude(37の事前構築済み営業スキル)、Agentforce内でのClaude活用、Slackにおける役割拡大という複数の取り組みで構成されています。提供はまだパイロット段階にあり、2026年9月のオープンベータ移行、2026年後半の追加スキルリリースといった段階的なロードマップが示されています。
情シスとしては、機能の目新しさだけでなく、権限の粒度・データフロー・監査ログ・既存のシャドーAI統制との整合という観点から、パイロット参加前に評価軸を整理しておくことが重要です。ClaudeとSalesforceそれぞれの認証・ガバナンス設計を理解しておくことで、正式リリース後の展開判断もスムーズになります。
本記事の内容に誤り等がございましたら、こちらからご連絡ください。
監修
Admina Team
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