All
SaaS管理
デバイス管理
セキュリティ対策
脅威・インシデント
IT基盤・インフラ
情シス業務・組織形成
AI / テクノロジー
プロダクト
イベントレポート
その他
ガバナンス

新着記事

もっと見る

>

>

拡散LLM「Celeris-1」とは?|速度の仕組みと情シスの導入判断

拡散LLM「Celeris-1」とは?|速度の仕組みと情シスの導入判断

拡散LLM「Celeris-1」とは?|速度の仕組みと情シスの導入判断

拡散LLM「Celeris-1」とは?|速度の仕組みと情シスの導入判断

公開日

トークンを1つずつ生成する自己回帰型が主流だったLLMの世界に、画像生成と同じ拡散(diffusion)方式で応答を組み立てる新しいモデルが登場しました。米Celeris Labsが2026年7月22日に公開した「Celeris-1」です。提供元の計測では出力速度が毎秒1,600トークン超と、既存の主要APIの4〜5倍に達するとされています。本記事では、Celeris-1の仕組みとベンチマークの読み方、そして情シスが自社での検証・導入を判断する前に確認すべき統制ポイントを整理します。

Celeris-1とは

Celeris-1は、応答速度に極端に振り切って設計された汎用の対話型LLMで、既存のOpenAI SDKからほぼそのまま呼び出せるAPI互換性を備えています。提供元であるCelerisは、AIエージェントや音声対話などレイテンシがそのまま体験の質に直結する用途に的を絞って、このモデルを開発したと説明しています。

Celeris-1はCeleris Labsにとって最初の公開モデルで、2026年7月22日に一般提供が始まりました。テキストに加え画像入力にも対応するマルチモーダルモデルで、コンテキストウィンドウは13万1,072トークンです。開発元がドキュメントで名言しているとおり、分類・ルーティング・情報抽出・スコアリング・クエリの言い換えといった、短く構造化された応答を高速に大量処理する用途を主眼に置いた設計になっています。長文の執筆や高度な推論が必要な生成タスクについては、公式ドキュメント自身が「別のモデルを使うことを推奨する」としており、万能の後継モデルではなく用途を絞った専用モデルという位置づけです。

Celeris運営元の法人格にも触れておきます。CelerisのプライバシーポリシーではCeleris自体が「Marqo Inc.が運営するブランド」であり、「Celeris Labsは独立して運営されるAI研究ラボ」と説明されています。Marqoはベクトル検索エンジンを手がけてきた企業で、Celeris LabsはTom Hamer氏・Jesse Clark氏(いずれもMarqoの共同創業者と報じられています)が立ち上げたチームとされています。新興のAI研究ラボである以上、企業としての実績やサポート体制は今後の情報開示を継続的に確認する必要があります。

なぜ「拡散LLM」はここまで速いのか

Celeris-1が高速な理由は、トークンを生成する仕組みそのものが従来型と根本的に異なるためです。GPTやGemini、Claudeなど現在主流のLLMは自己回帰(autoregressive)方式を採用しており、1トークンずつ、直前までの文脈をすべて踏まえて逐次生成するため、応答が長くなるほど生成時間が直線的に伸びる構造的な制約があります。

拡散(diffusion)方式はこれとは異なるアプローチを取ります。画像生成AIで使われてきた「ぼやけた画像を少数のステップで徐々に鮮明にしていく」仕組みを言語生成に応用し、応答全体の粗い下書きを少数の並列処理ステップで一括して磨き上げていきます。逐次的に1語ずつ確定する必要がないため、原理的にはステップ数を抑えたまま出力全体の解像度を高められる、という考え方です。Celeris-1は、この拡散方式を実運用に耐える品質と速度で成立させた数少ない事例のひとつとして紹介されており、同種の商用モデルとしては先行するmercury-2(Inception Labs)に次ぐ2例目の公開になります。

なお生成AI全般の技術動向を体系的に押さえておきたい場合は、MCPの仕様変更と情シスが押さえるべきポイントAIエージェント3ツール比較もあわせて参照すると、エージェント基盤全体の中でCeleris-1のような専用高速モデルがどこに位置づくかが把握しやすくなります。

ベンチマークで見る速度と精度、その読み方

数字だけを見れば圧倒的ですが、いずれも提供元自身が実施した計測であるという前提を外して評価するべきではありません。Celerisが公表した計測では、1,000トークン程度の長文プロンプトに対する出力速度が中央値で毎秒1,626〜1,664トークンに達し、これは同種の拡散モデルであるmercury-2(毎秒339トークン)の約4.8倍、GPT-5やGemini系の主要APIと比べても一桁違う水準とされています。応答が短い構造化タスクに限れば、p50レイテンシは158ミリ秒、最速では24ミリ秒での応答も観測されたと報告されています。精度面では、MMLU-Pro(5-shot、chain-of-thought、reasoning無効設定)で75.9%を記録し、GPT-5の81.9%にはおよばないものの、Gemini 2.5 Flashの73.0%は上回り、同じ拡散方式のmercury-2(63.7%)とは12ポイントの差をつけたとされています。

第三者機関であるArtificial Analysisの独立計測(2026年8月時点)では、Celeris-1は追跡対象80モデル中Intelligence Indexで12ポイント(順位40位、非推論モデル群の中央値11をやや上回る水準)、出力速度は毎秒2,173.6トークンで対象80モデル中1位という結果でした。入力価格は100万トークンあたり0.20ドル、出力価格は0.70ドルで、いずれも比較対象モデルの中央値よりやや安価と評価されています。速度に関しては提供元・第三者いずれの計測でも「圧倒的に速い」という結論は一致していますが、精度は「フロンティアモデルにわずかに劣る、平均をやや上回る水準」というのが両者に共通する評価です。

エージェントのループ処理においては、この速度差が積み重なって効いてきます。ルーティングや評価などの短い応答を10ステップ繰り返す場合、Celeris-1では合計1.5秒程度で完結する処理が、GPT-5では約20秒かかるという試算も紹介されています。エージェントの各ステップが「データベースへの問い合わせ並みの負荷」に収まるか、「ページの読み込み待ち並みの遅延」になるかは、エージェント全体のUXやコストに直結する論点であり、Adminaのシャドーコード運用や情シス向けエージェント統制の考え方と合わせて評価する価値があります。

想定される用途と、向かない用途

Celeris-1が力を発揮するのは、エージェントのループの中で何度も繰り返される「短く構造化された処理」であり、長文の企画書や複雑な戦略文書の一括生成には向いていません。公式ドキュメントが挙げる代表的な用途は次の4つです。

ステップ

期待される出力

運用上のチェックポイント

ツールルーティング

許可された1つのツール・経路の選択

未知のラベルを弾く仕組みが必要

構造化抽出

固定スキーマに沿ったJSON

型・必須フィールドの検証が必要

判定・スコアリング

範囲が定まったスコアと短い理由

人手ラベル付きデータでの精度校正が必要

クエリの言い換え

簡潔な検索・検索用クエリ

固有名詞・日付・制約条件の欠落に注意

逆に言えば、経営会議向けの資料作成や込み入った規程文書のドラフトなど、じっくり考えさせて質を担保したい生成タスクにこのモデル単体を割り当てるのは想定外の使い方です。実務での落としどころは「1モデルで全部を賄う」のではなく、企画・統合・最終判断が必要な重い処理には既存のフロンティアモデルを残し、繰り返し発生する軽い定型処理だけをCeleris-1のような専用モデルに任せる、という役割分担です。この考え方はClaude Coworkとほかの業務AIエージェントの比較で整理した選定基準とも重なる部分が多く、既存のエージェント基盤の設計方針と照らし合わせて検討することをおすすめします。

OpenAI互換APIが招く、導入前に見落としがちな統制リスク

Celeris-1の技術的な特徴以上に、情シスとして注視すべきなのはその「導入の手軽さ」です。CelerisのAPIはOpenAI互換の仕様で提供されており、開発者が既存コードのbase_urlをCelerisのエンドポイントに書き換え、APIキーを差し替えるだけで、社内のどのシステムからでも利用を始められます。開発元自身が「3行書き換えるだけ」と説明しているとおり、この手軽さは開発生産性の面では利点ですが、情シスの視点では「現場のエンジニアが正式な調達プロセスを経ずに、既存の業務システムやエージェント基盤に無断で組み込める」リスクと表裏一体です。同種の論点はSakana Namazuの記事でも扱ったとおり、OpenAI互換APIの普及そのものが新しいシャドーAI経路を増やしている構図です。

もう一点、料金プランの構成にも注意が必要です。Celerisの公式料金ページによれば、自己申込みで即日使える「Pay as you go」プランはUsage-based課金・ストリーミング・メールサポートまでが提供範囲で、SSOやSOC2、VPCデプロイといったエンタープライズ向けの統制機能は、個別契約が必要な「Enterprise」プランでのみ提供されるとされています。つまり、開発者が自己判断でサインアップして使い始められる入口のプランには、情シスが求める標準的なセキュリティ統制が備わっていない可能性が高いということです。プライバシーポリシーにも、APIへの入出力データを学習に利用するかどうかの明記はなく、この点はサポート窓口への個別確認が必要な状態です。

Celeris自体がまだ2026年7月に公開されたばかりの新興サービスであることも踏まえると、外部公開ファイルの検知機能シャドーIT検出機能を使って、まず「誰が・どの部署が・どんなデータを渡して」Celeris-1を試し始めているかを可視化するところから着手するのが現実的な一歩です。

料金プランとエンタープライズ機能の違い

料金体系はシンプルなトークン従量課金ですが、統制機能の有無はプランによって明確に分かれています。

項目

Pay as you go

Enterprise

入力価格

100万トークンあたり0.20ドル

個別見積り(ボリュームディスカウント)

出力価格

100万トークンあたり0.70ドル

個別見積り

認証・統制

記載なし

SSO・SOC2・VPCデプロイに対応

サポート

メールサポート

専任のソリューションエンジニア・SLA付き

申込方法

オンラインで即日開始

営業への問い合わせが必要

自己申込みプランの安さは、情シスの目にはむしろ「現場が個別に契約しやすい」という警戒シグナルとして映るはずです。全社導入や本番システムへの組み込みを検討する場合は、Enterpriseプランでの契約を前提に、SOC2報告書の開示可否や、VPCデプロイでリクエストが自社クラウド外に出ない構成にできるかどうかを、営業窓口に個別確認することを推奨します。コスト管理の観点では、SaaSコスト最適化の考え方にあるとおり、少額決済のSaaS・API利用ほど社内に散らばりやすく、後から棚卸しするコストの方が高くつくケースが多い点にも注意が必要です。

情シスの導入判断チェックリスト

Celeris-1のような新興・高速特化型のLLM APIを評価する際は、性能の速さだけでなく統制面の成熟度を合わせて確認することが判断の質を左右します。

  • 調達経路の統制:OpenAI互換のbase_url書き換えだけで利用開始できてしまうため、まず社内のAI利用ガイドラインで「新規LLM APIの利用は情シス・セキュリティ部門への事前申請を必須とする」旨を明文化し、周知する

  • データの扱い:入出力データが学習に利用されるか、ログの保存期間はどの程度かをサポート窓口またはDPAで確認する。個人情報・機密情報を扱う想定なら、Enterpriseプランでの契約とVPCデプロイの可否を必須条件にする

  • 用途の適合性:長文生成や高度な意思決定支援にこのモデル単体を割り当てていないか、対象業務がルーティング・抽出・スコアリングなど公式が想定する短い構造化タスクに収まっているかを確認する

  • 可用性とベンダーの実績:提供開始から日が浅く、単一ベンダー・単一APIでの提供に限られている点を踏まえ、本番の重要経路に組み込む前にPoCでの障害時挙動やレート制限の確認を行う

  • 既存のシャドーAI可視化シャドーIT検出機能などを使い、既に社内でCeleris-1のAPIキーが発行されていないかを定期的に棚卸しする

ガバナンス設計の全体像を確認したい場合は、Claude Enterpriseの権限管理ガイドコンプライアンス対応の機能ページも、新規AI導入時の統制項目を洗い出す上で参考になります。

類似の高速・軽量モデルとの位置づけ

Celeris-1を検討する際は、単独で評価するのではなく、同じ「高速・軽量・定型処理特化」の系譜にあるモデルと比較して位置づけを把握しておくと選定がぶれません。同種の拡散モデルであるmercury-2はCeleris-1が現時点で唯一比較できる同型モデルですが、速度・精度いずれもCeleris-1が上回るとされています。一方、自己回帰型の高速モデルであるGemini 2.5 Flash/3.5 Flash Liteは、既存のGoogleエコシステムとの親和性や実績の長さで優位性があります。国内での定型業務処理を重視するなら、日本語・日本の商習慣に最適化されたSakana Namazuのような選択肢も比較対象になり得ます。また、フロンティア級の推論性能を優先する場面ではGPT-5.6Claude Opus 5のような大型モデルとの役割分担を前提に設計するのが現実的です。

判断の軸を整理すると、「エージェントの反復処理を大量にさばく必要があり、かつ本番運用にはEnterpriseプランでの契約を前提にできる」場合はCeleris-1の検証価値が高く、「実績のあるベンダーでの統一運用を優先したい」「センシティブなデータを扱う定型処理が中心」という場合は、既存の主要モデルや国内モデルを優先する方が無難、という整理になります。

よくある質問(FAQ)

Q. Celeris-1はどのくらい速いのですか?

A. 提供元の計測では、長文プロンプトへの応答が中央値で毎秒1,600トークン超、短い構造化タスクではp50で158ミリ秒とされています。第三者機関のArtificial Analysisによる独立計測でも、追跡対象モデルの中で出力速度は最速クラスと評価されています。ただし提供元計測は自社実施である点、独立計測も測定条件によって変動しうる点は踏まえておく必要があります。

Q. 既存のOpenAI向けコードをそのまま使えますか?

A. Celeris-1のAPIはOpenAI互換仕様のため、base_urlの差し替えとAPIキーの設定だけで多くの場合は動作します。ただし挙動や出力の互換性は保証されないため、本番投入前に自社のユースケースで動作検証を行うことが推奨されます。

Q. Celeris-1に社内データを入力しても安全ですか?

A. 自己申込みのPay as you goプランでは、SOC2やVPCデプロイといった統制機能の提供が明記されていません。プライバシーポリシーにもAPI入出力データの学習利用有無についての明記がないため、機密情報や個人情報を扱う場合はEnterpriseプランでの契約とデータ取り扱いに関する個別合意を前提にすべきです。

Q. どんな業務に向いていますか?

A. 公式ドキュメントは、ツールのルーティング、構造化データの抽出、判定・スコアリング、検索クエリの言い換えなど、エージェントのループの中で繰り返し発生する短い処理を主な用途として挙げています。長文の生成や複雑な推論が必要なタスクには、別のモデルの併用が推奨されています。

Q. 情シスとして最初に何をすべきですか?

A. 社内のAI利用ガイドラインに、新規LLM APIの利用申請フローを明記した上で、シャドーIT検出機能などを使って既に利用が始まっていないかを可視化することが最初の一歩です。並行して、想定する用途がEnterpriseプランを前提にできるかどうかを、営業窓口に確認しておくとよいでしょう。

まとめ

Celeris-1は、拡散方式という新しいアーキテクチャで「エージェントのループ処理を高速化する」という明確な課題設定に応えたモデルであり、その速度面での優位性は提供元・第三者機関の双方の計測で裏付けられています。一方で、精度はフロンティアモデルにわずかに劣ること、想定用途が短い構造化タスクに限定されていること、そしてOpenAI互換APIゆえに現場主導でのシャドーAI利用が発生しやすいことは、情シスとして押さえておくべき前提です。特に、自己申込みのPay as you goプランにはSOC2やVPCデプロイなどの標準的な統制機能が含まれていない点は、性能の魅力とは切り離して評価する必要があります。導入を検討する際は、まず社内での利用実態を可視化し、対象用途を絞り込んだ上で、段階的に検証を進めることをおすすめします。

📋 WHITE PAPER

AI導入前 リスクアセスメントチェックリスト

AIツール導入・利用承認前に確認すべき5カテゴリー35項目の実務チェックリスト(PDF 10ページ+Excel 3シート)

AI導入前 リスクアセスメントチェックリスト
─ この資料の内容
  • データ・セキュリティ、コスト管理、ガバナンス、ベンダー、業務運用の5領域を網羅
  • 各項目に「確認の観点・証跡の例」を明示、その場で使える実務シート
  • マネーフォワード Adminaで効率化できる項目を一覧化
フォームを読み込んでいます...

本記事の内容に誤り等がございましたら、こちらからご連絡ください。

監修

Admina Team

情シス業務に関するお役立ち情報をマネーフォワード Adminaが提供します。

SaaS・アカウント・デバイスの管理を自動化し、IT資産の可視化とセキュリティ統制を実現。

従業員の入退社対応や棚卸し作業の工数を削減し、情報システム部門の運用負荷を大幅に軽減します。

中小企業から大企業まで、情シス・管理部門・経営層のすべてに頼れるIT管理プラットフォームです。