>
>
公開日
最終更新日
労務管理システムは、入退社、社会保険・雇用保険の手続き、年末調整、雇用契約、従業員情報の更新などをクラウド上で管理する仕組みです。紙やExcel中心の運用では、記入漏れの確認、転記、差し戻し、保管場所の管理に時間がかかり、法改正時には帳票や計算ルールの見直しも必要になります。
一方で、労務管理システムを導入しただけでは業務が自動化されるわけではありません。勤怠・給与計算との連携、従業員マスタの整備、権限設計、現場スタッフへの案内が不十分だと、CSVの二重入力や申請漏れが残ります。
本記事では、労務管理システムの比較で見るべき項目を整理し、製品ごとの適合条件、導入時の失敗例、企業事例まで解説します。まずは自社の手続き量と既存システムを棚卸しし、どこで手作業が発生しているかを明らかにすることから始めましょう。

労務管理システムとは
労務管理システムとは、従業員の雇用・社会保険・税・契約に関する情報と手続きを集約し、申請から書類作成、保管までを支援するシステムです。
本記事のポイント
労務管理システムは、勤怠管理や給与計算とは役割が異なり、従業員情報をつなぐ基盤として使います。
比較では機能数よりも、既存の勤怠・給与システムとのデータ連携と電子申請の対象範囲を優先します。
導入効果は、紙を電子化するだけでなく、申請経路と人事マスタを整理した企業で出やすくなります。
マイナンバーや給与情報を扱うため、権限・認証・操作ログを導入前に設計します。
労務管理の対象業務
労務管理の対象には、入社・退社、住所や扶養の変更、雇用契約、社会保険・雇用保険の資格取得喪失、年末調整、マイナンバーの収集・保管、給与明細の配付などがあります。従業員がスマートフォンやPCから直接入力し、担当者は進捗や不備を画面で確認する運用に変えることで、紙の配布・回収・転記を減らせます。
人事情報を一元管理できる点も特徴です。住所変更を労務システムで確定させ、そのデータを給与計算や緊急連絡先の管理に反映できれば、同じ情報を複数システムに入力する作業を抑えられます。
勤怠管理・給与計算システムとの違い
勤怠管理システムは、出退勤時刻、休憩、残業、休暇、シフトを記録し、労働時間を集計する仕組みです。給与計算システムは、勤怠実績と賃金規程を基に支給額、控除額、所得税、社会保険料を計算し、給与明細や法定調書を作成します。
これに対して労務管理システムは、従業員の属性情報と行政・社内手続きの流れを扱います。理想的な連携は、労務システムで取得した入社者の氏名、住所、扶養情報、雇用条件を給与計算へ渡し、勤怠システムの実績を給与計算へ渡す構成です。労務・勤怠・給与のいずれかを同一ベンダーで統一する方法だけが正解ではありません。既存の給与ソフトを継続する場合は、APIまたはCSVで何の項目を、いつ、どちらが正として連携するかを定義します。
クラウド型を選ぶ背景
クラウド型は、法改正に伴う帳票や計算ロジックの更新をベンダー側が提供し、拠点や自宅からも利用しやすい点が特徴です。デロイト トーマツ ミック経済研究所は「HRTechクラウド市場の実態と展望 2025年度版」で、2025年度のHRTechクラウド市場を1,689億7,000万円、うち労務管理クラウド市場を526億8,000万円と見込んでいます(同報告書の詳細は同研究所公式サイトで確認できます。数値は報告書の版・発行時点により異なる場合があります)。市場拡大の背景には、人手不足だけでなく、労務手続きの電子化と法改正対応の負担があります。
ただし、クラウド型でも電子申請できる帳票、連携できる健康保険組合、利用できる機能は契約内容によって異なります。自社で多い手続きを洗い出したうえで、対象帳票と提出先の対応状況が確認できれば候補に残し、確認できなければ従来の申請手順を併用する前提で工数を見積もります。
▲ 労務管理システムを中心としたデータ連携と周辺システム・関係者の構造
労務管理システム導入のメリット
労務管理システムのメリットは、情報収集・書類作成・進捗確認を一つの流れにまとめ、担当者と従業員双方の手作業を減らせる点です。
入社手続きと情報回収の効率化
入社時には、本人情報、住所、扶養親族、基礎年金番号、雇用条件、誓約事項などを回収します。紙やメール添付で回収すると、記入漏れがあった場合に担当者が個別連絡し、再提出された内容をExcelや給与ソフトに入力し直す作業が発生します。
システム上の入力フォームでは、必須項目の未入力や形式エラーを入力時点で検知できます。手続きごとに案内を送信し、未対応者だけを抽出して催促できるため、入社日直前の確認作業を減らせます。導入事例では、書類回収・転記に関する工数をおおむね50〜90%削減したとするベンダー公表事例が見られますが、これらはベンダーまたは導入企業が自社条件で公表した値であり、同じ効果を別の環境で再現できることを保証するものではありません。削減率は既存の紙業務量と対象範囲で大きく変わります。
電子申請と進捗管理
社会保険・雇用保険の一部手続きは、e-Gov等を通じた電子申請に対応しています。厚生労働省は、社会保険・労働保険分野の電子申請に関する案内を公開しており、事業主が電子申請を活用できる手続きと利用方法を示しています。e-Govの電子申請案内を参照すると、手続きごとに提出先や申請方法が異なることを確認できます。
労務管理システムでは、届出書の作成、申請状況の一覧化、差し戻し対応の記録をまとめられます。年金事務所やハローワークへ出向く回数を減らせる一方、電子申請に対応しない健康保険組合の独自様式や添付書類が残るケースもあります。その場合は、システムで従業員情報と進捗を管理し、提出だけは別経路にする運用が現実的です。
ペーパーレス化と従業員体験
Web給与明細、源泉徴収票、年末調整の申告フォームを活用すると、封入、仕分け、配付、再発行の業務を減らせます。オーケー株式会社は、SmartHRが公開する導入事例ページで、従業員約2万8,000人への給与明細配付作業を3日からゼロにしたと公表しています(SmartHR公式サイト「導入事例:オーケー株式会社」で内容を確認できます)。大量の店舗スタッフを抱える企業では、明細配付の紙代だけでなく、店舗ごとの仕分けや誤配付防止にかかる時間も削減対象になります。
従業員側も、過去の給与明細や源泉徴収票を必要なときに確認できるようになります。ただし、私用スマートフォンで閲覧する運用なら、端末紛失時の連絡ルール、共用端末でのログアウト、パスワード再発行の本人確認まで決めておく必要があります。
人事データの活用
従業員情報が整備されると、組織図、在籍者名簿、雇用区分、資格、異動履歴などを人事施策にも利用できます。たとえばタレントマネジメントの仕組みと連携する場合、労務側で確定した所属や雇用区分を人材配置・評価の基礎データにできます。
ただし、人事データを活用する範囲を広げるほど、閲覧できる人を増やす必要があるとは限りません。部署長には部下の所属・連絡先だけを表示し、給与・マイナンバー・健康情報は人事労務の限定担当者に絞る、といった権限分離が必要です。
労務管理システムのデメリットと注意点
労務管理システムには初期設定、データ移行、継続費用、利用定着という負担があり、業務設計をせずに導入すると二重管理が残ります。
初期費用と継続コスト
クラウド製品は買い切り型ソフトより初期投資を抑えられる場合がありますが、月額利用料、初期設定支援、電子申請、年末調整、給与明細、マイナンバー保管などが別料金になることがあります。従業員数に応じて単価が変わる契約では、採用増加時の費用も試算対象です。
料金比較では月額だけで判断せず、「初期費用」「最低利用料金」「必要なオプション」「年末調整期だけ増える作業」「データ移行支援」の5項目を合算します。月額が安くても、必要な帳票や外部連携がオプション外なら、別ツールや手作業が増えて総コストが上がります。
データ移行とマスタ整備
導入時に最も時間を使いやすいのは、従業員マスタの整備です。氏名の表記揺れ、旧住所、退職者の残存、所属コードの不統一、扶養情報の更新漏れがあると、移行後に給与・勤怠との突合で不整合が起きます。特に、労務システム、勤怠、給与計算の三つで社員番号が違う状態は、連携エラーの原因になります。
移行対象を「在籍者」「休職者」「過去の明細・帳票」「退職者の保存データ」に分け、どのシステムを正本にするかを先に決めます。たとえば現行給与ソフトの社員番号を正本にするなら、労務・勤怠側も同じ番号に合わせます。番号を採番し直す場合は、旧番号との対応表を保存し、切替月の給与結果を旧環境と照合します。
現場定着と操作支援
店舗、工場、建設現場、物流拠点などでは、業務用PCを常時使わない従業員もいます。管理者がPCでしか操作できない設計を選ぶと、本人入力が進まず、最終的に本社が代行入力することになります。
スマートフォンで入力できるか、メールアドレスを持たない従業員へ案内できるか、多言語表示が必要かを確認します。QRコードで入力画面へ案内する仕組みが必要な場合は、QRコード経由で情報収集できるHybRidのような製品も候補になります。トライアルでは人事担当者だけでなく、店舗責任者や短時間勤務者にも実際に入力してもらい、ログイン・本人確認・差し戻し操作で止まらないかを検証します。
個人情報とマイナンバーの管理
マイナンバー、給与、扶養、健康診断関連の情報は、漏えい時の影響が大きい情報です。個人情報保護委員会は、特定個人情報の適正な取扱いに関するガイドラインを公開し、利用目的の特定、安全管理措置、委託先の監督などを示しています。個人情報保護委員会のガイドライン一覧を基に、社内の取扱規程と委託先管理を整理します。
ISMS認証やプライバシーマークは選定材料の一つですが、それだけで個別サービスの安全性や自社運用を保証するものではありません。二要素認証、IPアドレス制限、権限の細分化、操作ログ、保存データの暗号化、退職者アカウントの停止、委託先の再委託方針を確認し、監査ログを取得できるなら限定検証で権限設計を確認します。取得できない場合は、閲覧権限をさらに限定し、管理者操作の記録を別途残す運用にします。
労務管理システムの機能と法改正対応
労務管理システムは、定型手続きの自動化だけでなく、法改正に伴う制度変更を継続的に反映できるかで評価します。
基本機能の全体像
主な機能は、従業員情報の収集・管理、入退社手続き、雇用契約書の作成・締結、社会保険・雇用保険の電子申請、年末調整、Web給与明細、マイナンバー管理、各種申請ワークフローです。製品によっては、住所変更や扶養変更の申請を起点に、必要な届出書の候補を表示する機能もあります。
雇用契約では、雇用形態、契約期間、更新有無、賃金、就業場所、業務内容、労働時間などを労働条件通知書に反映します。契約書を電子化する場合も、労働条件の明示内容、本人への交付方法、締結証跡の保存場所を労務担当と法務担当で整理します。
育児・介護休業法への対応
2025年4月および10月に施行された育児・介護休業法の改正では、子の看護等休暇の対象拡大、残業免除の対象拡大、育児期の柔軟な働き方を実現するための措置などが盛り込まれました。厚生労働省は、改正内容と事業主向け資料を育児・介護休業法の改正案内で公表しています(内容は法令改正により更新されるため、同ページで最新版を確認してください。対象帳票や施行時期が自社の運用と合っているかで、システム設定の優先順位が変わります)。
制度対応では、休暇残日数を管理できるかだけでなく、時間単位休暇、短時間勤務、所定外労働の制限、テレワークなどの勤務区分を勤怠・給与へ正しく渡せるかが焦点です。労務システムの申請フォームだけを変更しても、勤怠側の集計区分や給与側の控除計算が旧設定のままなら運用は完結しません。
社会保険と子ども・子育て支援金への備え
社会保険の適用範囲や保険料に関する制度変更は、短時間労働者の加入判定、給与控除、届出実務に影響します。2026年4月に開始した子ども・子育て支援金制度や、社会保険適用拡大に関する制度変更は、法令・政省令や保険者からの正式な案内を基準に設定します。制度の詳細はこども家庭庁が公開する案内ページおよび厚生労働省の保険者向け通知で確認でき、企業規模要件や拠出額が自社に該当するかによって給与控除の設定変更範囲が変わります。
制度の対象時期や企業規模要件は改正内容で変わり得るため、システム選定時には「法改正時の更新方法」「更新の提供時期」「給与計算ソフトへの反映範囲」をベンダーへ確認します。更新が確認できれば設定変更とテスト計算へ進み、確認できなければ切替月だけ手計算による検算工程を残します。
予防労務とAI活用
近年は、蓄積した勤怠・申請データを基に、残業上限への接近、連続勤務、年次有給休暇の未取得、提出期限超過を事前に知らせる機能が増えています。これは問題が起きた後に帳票を整えるのではなく、管理者に早めの確認を促す「予防労務」の考え方です。
AIによる書類チェックや問い合わせ支援を使う場合でも、扶養判定、社会保険の資格取得日、割増賃金の算定など、法的判断をAIに任せ切りにはできません。AIが不備候補を抽出し、人事労務担当者が原本や根拠資料を確認して確定する役割分担にします。勤怠の運用設計を見直す際は、勤怠管理システムの選定ポイントも併せて確認すると、労務・勤怠間のデータ連携を設計しやすくなります。
労務管理システムの比較ポイント
労務管理システムの比較では、機能の多さではなく、自社の手続き・連携・権限・利用者に適合するかを同じ軸で評価します。
比較表で見る選定軸
以下の表は、製品デモや見積もり取得時に使える比較軸です。料金や対応帳票は改定されるため、公開情報と見積書の両方で確認し、比較表には確認日を残します。
比較項目 | 確認する内容 | 判断への影響 |
|---|---|---|
対象業務 | 入退社、身上変更、年末調整、給与明細、マイナンバー、雇用契約 | 不足機能がある場合は別システムまたは手作業が残ります。 |
電子申請 | e-Gov対応帳票、健康保険組合の様式、申請状況確認、添付書類 | 自社で頻繁に使う届出が対象外なら申請業務は削減できません。 |
連携方式 | 勤怠・給与・会計とのAPI連携、CSV形式、連携頻度、エラー通知 | 自動連携できなければCSV加工と突合作業が増えます。 |
従業員の操作 | スマートフォン対応、招待方法、多言語、代理入力、差し戻し画面 | 現場で本人入力できるかが定着率を左右します。 |
セキュリティ | 二要素認証、権限、ログ、暗号化、データ保管場所、委託先管理 | 給与・マイナンバーを扱う範囲に応じて必要な統制が変わります。 |
料金体系 | 初期費用、月額、最低料金、オプション、従業員増加時の単価 | 必要機能を含む年間総額で比較できます。 |
支援体制 | 導入支援、問い合わせ窓口、操作研修、法改正時の案内 | 専任担当者が少ない企業では移行リスクを下げられます。 |
電子申請の対応範囲
「電子申請対応」と表示されていても、全帳票・全保険者に対応するとは限りません。健康保険・厚生年金の届出、雇用保険の届出、労働保険年度更新、健康保険組合独自の申請では、対応状況が異なるためです。
比較時は、直近12カ月で実施した届出を一覧にし、件数の多い順に10件程度を選びます。その届出について、帳票作成、電子送信、添付、差し戻し、控え保管までシステム内で完結するかを確認します。上位の届出が完結するなら導入効果を見込みやすく、対象外が多いなら電子申請機能を主な選定理由にしない判断ができます。
外部システムとの連携
API連携は便利ですが、「連携できる」という説明だけでは不十分です。連携方向、同期のタイミング、更新競合時の優先元、退職者データの扱い、エラー時の通知先まで確認します。たとえば住所変更を労務システムで承認した後、給与システムに翌日反映されるのか、即時反映されるのかで、給与締め日前の運用が変わります。
既存の給与システムを継続する企業は、給与ベンダーが公開する連携実績を確認し、検証環境で従業員10〜20名分のデータを実際に送受信します。社員番号、所属、雇用区分、給与支給形態、扶養、通勤費などを比較し、一件でも不一致があれば変換ルールを決めてから本番移行します。
選定前のチェックリスト
候補を3社程度に絞ったら、次の項目を埋めて比較します。
月間の入退社件数、扶養変更件数、年末調整対象人数を把握したか
利用中の勤怠・給与・会計・ID管理システムと連携方法を確認したか
電子化したい届出を10件程度に絞り、対応状況を確認したか
管理者、現場責任者、一般従業員ごとの必要な操作を整理したか
マイナンバー・給与情報の閲覧者と退職時の権限停止手順を決めたか
初年度費用だけでなく、2年目以降の年間費用を比較したか
移行後1回目の給与締め、年末調整、算定基礎届の運用責任者を決めたか
おすすめの労務管理システム比較
おすすめの労務管理システムは、単体機能の優劣ではなく、現在使っている勤怠・給与ソフトと将来広げたい人事業務で絞り込みます。
主要製品の比較
以下は公開情報を基にした代表的な製品の整理です。掲載製品は国内主要クラウド労務製品の中から公開情報で比較軸を確認できたものを対象としており、網羅的な一覧ではありません。料金・対応機能・連携先は従業員数、契約プラン、オプション、導入支援の有無および時点によって変わるため、各社の公式サイトまたは見積書で最新情報を確認してください。確認した内容と契約プランが一致すれば候補に進み、差異がある場合は選定軸を調整します。非公開または個別見積もりの製品は要問合せと記載しています。
製品 | 主な強み | 適合しやすい条件 | 料金体系 | 注意点 |
|---|---|---|---|---|
SmartHR | 労務手続き、人事データベース、周辺人事機能 | 労務データを人事評価や従業員サーベイにも広げたい場合 | 要問合せ | 必要機能と契約プランの範囲を見積もりで確認します。 |
オフィスステーション | 社会保険・労働保険手続き、電子申請、機能の選択導入 | 帳票・電子申請を中心に段階導入したい場合 | 要問合せ | 利用するオプションと保険者対応を確認します。 |
freee人事労務 | 給与計算、勤怠、人事労務のシリーズ連携 | freee会計や給与を利用中、または統合を進める場合 | プラン別料金 | 既存給与ソフトからの移行範囲を先に決めます。 |
マネーフォワード クラウド社会保険 | 社会保険手続きとクラウド給与等の連携 | マネーフォワード クラウド製品を中心に運用する場合 | プラン別料金 | 必要な周辺サービスを含む総額を比較します。 |
ジンジャー人事労務 | 人事・勤怠・給与の共通データベース | 人事関連データをシリーズで一元化したい場合 | 要問合せ | 導入対象モジュールと連携順序を整理します。 |
ジョブカン労務HR | 労務、勤怠、給与などのシリーズ連携 | ジョブカン勤怠管理・給与計算を利用中の場合 | プラン別料金 | Web給与明細など周辺機能の契約範囲を確認します。 |
HRBrain 労務管理 | 入退社、年末調整、従業員データ、人材管理との連携 | 労務を起点に人材データ活用へ進みたい場合 | 要問合せ | 必要な人材管理機能を分けて見積もります。 |
COMPANY | 大規模組織向けの統合人事・給与・勤怠管理 | 複雑な組織・承認経路・人事制度を持つ場合 | 要問合せ | 導入設計の期間と体制を確保します。 |
単品導入に向く製品
既存の勤怠・給与ソフトを維持し、まず入退社や社会保険手続きを電子化したい場合は、SmartHR、オフィスステーション、クラウドハウス労務、HRBrain 労務管理、e-AMANO人事届出サービス、HybRidなどの労務機能を中心に比較します。
SmartHRは、労務手続きと人事データベースを起点に、従業員情報を人事施策へ活用したい企業に向きます。SmartHRは公式サイト(smarthr.jp)のトップページ等で登録社数8万社超と公表しており、労務管理クラウドの出荷金額シェアについても複数年の実績を案内しています(公表値は時点により変わるため、同社公式サイトで最新値を確認してください)。一方で、導入候補にする際は、利用予定の人事評価・サーベイ機能まで含めるかを決めないと、費用比較が曖昧になります。
オフィスステーションは、社会保険・労働保険の帳票や電子申請を軸に、年末調整、給与明細などを選択しやすい構成です。エフアンドエムはオフィスステーションの公式サイトで利用社数5万5,000社超、継続率99.6%と案内しています(数値は時点により更新されるため、同社公式サイトの最新情報を確認してください)。社会保険手続きを多く扱う場合は、自社の健康保険組合と頻出帳票への対応が確認できれば候補に残ります。
HybRidは、メールアドレスを持たない従業員にもQRコードで入力を案内できる点が特徴です。短期雇用やアルバイト採用が多く、本人情報の回収経路に課題がある場合に比較対象になります。クラウドハウス労務は、業務フローに合わせた手続き設計を重視する企業で検討しやすい製品です。
シリーズ連携に向く製品
給与計算、勤怠、人事情報を同じシリーズでまとめたい場合は、freee人事労務、マネーフォワード クラウド社会保険、ジンジャー人事労務、ジョブカン労務HR、奉行Edge 労務管理電子化クラウドなどを比較します。データ連携の設定を減らせる一方、既存製品からの移行範囲が大きくなります。
freee人事労務は、給与計算と労務手続きを同じサービス群で扱いたい場合に比較しやすい製品です。会計、給与、勤怠をすでに利用している企業なら、従業員マスタの連携範囲を確認して候補を絞れます。マネーフォワード クラウド社会保険も、給与や年末調整などの同シリーズを使う企業で連携効果を検討しやすい選択肢です。
ジョブカン労務HRは、ジョブカン勤怠管理・給与計算とつなげることで、データ転記を抑える構成を取りやすい製品です。給与明細を含む給与業務の比較では、ジョブカン給与計算の機能と選び方も参照すると、労務側だけでは見えない運用範囲を整理できます。
COMPANYと社労夢Company Editionは、複雑な組織構造、大量の人事異動、多段階承認、グループ企業管理などを抱える企業で検討されることが多い製品です。大規模向け製品は設定の自由度が高い反面、設計を複雑にしすぎると保守負担が増えます。現行業務をそのまま再現するのではなく、共通化できる申請・承認ルールを先に決める必要があります。
導入で起きやすい失敗と防止策
労務管理システム導入の失敗は、製品機能の不足よりも、現行業務を整理せずに設定と移行を始めることで起こります。
業務フローを変えない失敗
紙の申請書をそのまま画面に置き換え、承認者や添付書類、確認項目を増やし続けると、従業員には使いにくいシステムになります。たとえば住所変更で、同じ住所を3回入力させ、紙の申請書も提出させる運用では、電子化の意味がありません。
導入前に、申請ごとに「誰が入力するか」「誰が承認するか」「何を証跡として残すか」「どのシステムへ連携するか」を一枚に整理します。法令上必要な確認と、慣習で残っている押印・回覧を分け、慣習部分は削減します。
価格または機能だけで決める失敗
低価格だけで選ぶと、年末調整、電子申請、API連携、権限管理が後から必要になった際に追加コストや手作業が生じます。反対に、多機能な製品を選んでも、設定担当者がいなければ利用されない機能が増えます。
選定では「初年度に必須の機能」「2年以内に使う可能性が高い機能」「使わない機能」に分けます。必須機能が不足する候補は外し、将来機能は追加契約や連携で対応できるかを比較します。この順序なら、機能数の多さではなく業務上の優先順位で判断できます。
データ連携を検証しない失敗
勤怠、給与、労務の間でAPI連携が使えるとしても、項目定義が合わなければエラーになります。雇用区分の名称、所属コード、社員番号、締め日、退職日などの扱いが異なると、CSV加工や手入力が残り、担当者の確認負担が増えます。
本番移行前に、入社、住所変更、扶養変更、休職、退職の5パターンをテストします。連携後の給与計算結果と旧システムの結果が一致すれば本番対象を広げ、不一致なら変換ルール・更新順序・責任者を修正します。テストを省略して年末調整や給与締めで初めて使う進め方は避けます。
権限設計を後回しにする失敗
労務システムでは、管理者に広い権限を付与すると運用開始は早くなりますが、給与やマイナンバーを必要以上に閲覧できる状態になりがちです。異動・退職後もアカウントが残れば、不正閲覧や誤操作のリスクが続きます。
役割を「人事労務の管理者」「給与担当」「部門管理者」「一般従業員」「外部専門家」に分け、画面・項目・ダウンロードの可否を決めます。月次で退職者と異動者のアカウントを見直す担当者を決めれば、運用開始後の権限肥大化を防げます。
▲ 自社の運用環境と目的に合わせた労務管理システムの選定フロー
労務管理システムの導入手順
労務管理システムは、要件整理、連携検証、従業員への展開を順番に進めると、切替後の混乱を抑えられます。
導入の5段階
現状業務の棚卸し
入退社、扶養変更、年末調整、給与明細、電子申請について、年間件数、担当者、利用帳票、所要時間、差し戻し理由を記録します。ここで月8時間かかっている作業が見えれば、導入後に月2時間まで減らせたかを検証できます。要件と優先順位の決定
必須帳票、電子申請、勤怠・給与連携、スマートフォン対応、セキュリティ要件を決めます。すべてを初回導入に含めず、入退社と従業員情報から始め、年末調整などを後続フェーズにする方法もあります。候補製品の比較と運用テスト
比較表を使い、実データを匿名化したうえで入力、承認、差し戻し、CSV出力、API連携を試します。デモ画面を見るだけで決めず、現場利用者にも操作してもらいます。データ移行と権限設定
社員番号、所属コード、雇用区分を統一し、在籍者データを移行します。並行して、閲覧権限、二要素認証、退職者アカウント停止、操作ログの確認手順を設定します。段階導入と定着確認
一部部署または一部手続きで先行運用し、問い合わせ内容とエラーを集めます。運用が安定したら対象を広げ、1回目の給与締め・年末調整後に工数と不備率を見直します。
導入時の役割分担
人事労務部門だけで導入を進めると、給与・勤怠・アカウント管理との接続で後戻りしやすくなります。人事労務は業務要件と帳票、人事情報の正しさを担当し、経理または給与担当は締め日・控除・明細の整合性を担当します。情シスは認証、ID連携、アクセス権限、端末・ネットワーク条件を担当します。
社労士へ手続きを委託している場合は、誰がシステムへ入力し、誰が電子申請し、誰が控えを保管するかを契約範囲と合わせて決めます。社労士用アカウントに必要以上の従業員情報を表示しないよう、閲覧範囲も設定します。
従業員向け案内の内容
従業員への案内は、ログインURLだけでは不足します。利用開始日、初回ログイン方法、入力期限、スマートフォン利用の可否、問い合わせ先、パスワードを忘れた場合の手順、私用端末を使う場合の注意を一枚にまとめます。
現場スタッフが多い企業では、初回案内後の未登録者率を毎週確認します。未登録者が多い拠点には、現場責任者向けの短い説明会やQRコード付き案内を追加します。全社展開前に登録率と申請完了率を測ることで、単にアカウントを配っただけの状態を防げます。
▲ 失敗を防ぐ労務管理システム導入の5段階プロセス
国内企業の導入事例と効果
導入事例では、製品名よりも、どの業務を対象にしてどの手作業をなくしたかを見ると、自社で再現できる効果を判断しやすくなります。
オーケー株式会社の給与明細電子化
小売業のオーケー株式会社は、約2万8,000人の従業員を対象にSmartHRを導入し、給与明細の配付作業を3日からゼロにしたとSmartHRの導入事例で公表しています。店舗数や従業員数が多い企業では、給与明細を印刷して各拠点へ配送し、現場で配付する工程自体が大きな業務になります。
この事例から読み取れるのは、Web給与明細の効果は紙代だけではない点です。誤配付、配付遅延、店舗責任者の仕分け作業も削減対象になります。同様の業務がある場合は、現在の印刷枚数、封入時間、配送費、店舗での配付時間を計測し、電子化後の削減対象を具体化します。
バロックジャパンリミテッドの入社手続き
アパレル企業の株式会社バロックジャパンリミテッドは、全国約300店舗、従業員約1,000人の体制でSmartHRを導入し、入社手続きにおける書類回収期間を半減したとSmartHRが公開する導入事例ページで紹介されています(SmartHR公式サイト「導入事例:バロックジャパンリミテッド」で詳細を確認できます)。店舗採用では、入社予定者と本社の距離があり、書類の郵送・返送待ちが入社準備の遅れにつながります。
このケースでは、入社手続きの電子化を単体業務で終わらせず、従業員データを人事評価やサーベイへ広げる基盤として使っています。採用・配置・評価を別々に管理している企業は、まず入社時の情報収集項目を標準化し、後から使う人事データの品質を上げる進め方ができます。
ベストロジ三重の属人化解消
運輸・物流業の株式会社ベストロジ三両は、従業員約600人の労務業務で紙のハンコリレーや情報管理の属人化に課題を抱え、労務システム導入後に労務業務の負担を約60%削減したと、導入したシステムのベンダーが公開する事例ページで公表しています(数値はベンダー公表値であり、自社環境での再現を保証するものではありません)。物流業では拠点・勤務形態が多く、申請書の回収や承認状況の把握が本社業務を圧迫しやすい傾向があります。
再現のポイントは、単に紙をPDFにするのではなく、申請者、承認者、期限、未対応者を一覧で追えるようにすることです。承認待ちをメールで確認する業務が残る場合は、ワークフローの通知先と代理承認ルールを見直します。
有限会社オオタ設備の勤怠・給与連携
建設・設備業の有限会社オオタ設備は、クラウド勤怠・労務の活用により、毎月の出勤簿確認と賃金計算にかかる時間を約3時間短縮した事例として、導入したシステムのベンダーが公開する事例ページで紹介されています(数値はベンダー公表値であり、自社環境での再現を保証するものではありません)。少人数の企業でも、締め日前後に担当者へ作業が集中する場合、月3時間の削減は年間36時間になります。
ただし、この効果は勤怠の入力ルールが守られ、打刻漏れが締め日前に解消されることが前提です。勤怠データが確定しないまま給与計算に流れる運用では、システムを導入しても確認作業は減りません。締め日の数日前に打刻漏れを通知し、本人または所属長が修正する期限を設定します。
まとめ
労務管理システムの比較では、製品の知名度や月額料金だけでなく、自社で多い手続き、既存の勤怠・給与システムとの連携、従業員が実際に入力できる環境、個人情報の権限設計を基準にします。
まずは直近1年間の入退社、扶養変更、社会保険届、年末調整、給与明細配付にかかった時間を棚卸しし、手作業が多い業務を一つ選びます。その業務について、必要帳票、電子申請、連携項目、利用者の操作を比較表に記入してください。候補製品はデモだけで決めず、入社・変更・退職の実データを使った小規模な運用テストを行うと、導入後の二重入力や定着不良を防ぎやすくなります。
本記事の内容に誤り等がございましたら、こちらからご連絡ください。
監修
Admina Team
情シス業務に関するお役立ち情報をマネーフォワード Adminaが提供します。
SaaS・アカウント・デバイスの管理を自動化し、IT資産の可視化とセキュリティ統制を実現。
従業員の入退社対応や棚卸し作業の工数を削減し、情報システム部門の運用負荷を大幅に軽減します。
中小企業から大企業まで、情シス・管理部門・経営層のすべてに頼れるIT管理プラットフォームです。




