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Admina Team
2025/02/20
WAF(Web Application Firewall)とは、ウェブアプリケーションを保護するためのセキュリティ対策の一つです。近年、ウェブサイトへの攻撃が増加しており、特にSQLインジェクションやクロスサイトスクリプティング(XSS)などの手法が悪用されています。WAFはこれらの脅威からウェブアプリケーションを守るために設計されており、リアルタイムでトラフィックを監視し、不正なアクセスを遮断する役割を担っています。
本記事では、WAFの基本的な仕組みや種類、他のセキュリティ対策との違いについて初心者の方にもわかりやすく解説します。
WAFとは
WAFはWebアプリケーションファイアウォールの略称で、主にWebアプリケーションを保護するためのセキュリティシステムです。WAFは、Webアプリケーションへの通信を監視し、不正なアクセスや攻撃からアプリケーションを守る役割を果たします。
具体的には、WAFはWebアプリケーションへの通信である、HTTPリクエストとレスポンスを解析し、悪意のある攻撃を防ぐためのルールに基づいて動作します。Webアプリケーションへの通信を制御することで、SQLインジェクションやクロスサイトスクリプティング(XSS)などの典型的な攻撃手法からの防御が可能になります。
WAFの必要性
近年、インターネットを通じた情報の流通が増加する中で、Webアプリケーションへの攻撃も増えてきました。
株式会社サイバーセキュリティクラウドの調査によると2024年における自社サービスで検知したWebアプリケーションへのサイバー攻撃の総攻撃数が1日あたり約330万回であるとされています。
このような情勢の中で、WAFは企業や団体にとって欠かせないセキュリティ対策となってきています。
WAFの仕組み
WAFは、Webアプリケーションファイアウォールの略称であり、Webアプリケーションに特化したセキュリティ対策の一つです。WAFは、Webアプリケーションへの通信を監視し、悪意のある攻撃からアプリケーションを保護する仕組みを提供します。具体的には、以下のようなプロセスを通じて機能します。
リクエストの解析
WAFは、ユーザーからのリクエストが Webサーバーに到達する前に、リクエストの内容を解析し、脅威と見なされるパターンを特定します。例えば、SQLインジェクションやクロスサイトスクリプティング(XSS)などの攻撃手法について、予め設定されたルールに基づいて評価します。このように、WAFはリクエストの内容をWebアプリケーションに到達する前にチェックを行うことで、事前にリスクを軽減するのです。
ルールセットによる防御
WAFは、予め定義されたルールセットに基づいて動作します。ルールセットは、一般的な攻撃手法に対抗するためのものであり、企業ごとにカスタマイズ可能です。例えば、不適切な入力を禁止するルールや、特定条件の利用者を排除するルールなどがあります。ルールセットを用いて、異常な動作や不審な活動を自動的に検出し、防止することができます。
応答の監視とフィルタリング
WAFは、Webサーバーからの応答(HTTPレスポンス)も監視します。攻撃者がWebアプリケーションの挙動を自身の利益のために悪用する試みを未然に防ぐため、WAFはWebサーバーが利用者に応答(レスポンス)したデータをフィルタリングし、機微な情報の漏洩を防止します。この監視機能は、アプリケーションのセキュリティだけでなく、全体的なパフォーマンス向上にも寄与します。
学習と適応
最新のWAFは、機械学習を活用して攻撃パターンの学習を行います。攻撃パターンを学習することにより、攻撃手法が進化する中でも、WAFは新たな脅威に適応し続けることができます。実際、システムが過去のデータを分析し、正常な通信と悪意のある通信を識別する能力は、セキュリティの向上に大いに役立っているのです。
このように、WAFは多層的な防御モデルを構築しており、リクエストからレスポンスまでの全過程をとおしてWebアプリケーションを保護する強力なツールであることがわかります。
WAFの導入メリット
WAF(Web Application Firewall)の導入は、システムのセキュリティ向上や運用の効率化に大きなメリットがあります。特に、オンラインビジネスが急増している現代において、これらの利点はますます重要性を増しています。
まず、WAFを導入することで、Webアプリケーションに対する攻撃から保護することが可能です。具体的には、SQLインジェクションやクロスサイトスクリプティング(XSS)といった一般的な脅威から防御するための高度なルールセットを有しています。Webアプリケーションに対する攻撃から保護することで、特に顧客情報を扱う企業にとっては、データ漏洩のリスクが大幅に減少します。ある調査によれば、データ漏洩が発生した企業は、平均して数百万ドルの損失を被ることがあるため、対策は不可欠です。
運用の効率化
次に、WAFはシステム運用の効率化にも寄与します。通常、Webサーバーのセキュリティ対策には多くの時間とリソースが必要ですが、WAFを利用することで煩雑な設定や監視を自動化することが可能です。具体的には、自動学習機能を持つWAFでは、トラフィックのパターンを分析し、脅威を自動的に検知し対応するため、人手を介さずリアルタイムでの防御が期待できます。WAFの導入により、運用負荷が軽減され、開発やビジネスの本業に専念できる環境が整います。
規制遵守の支援
また、WAFは規制遵守にも大いに役立ちます。例えば、個人情報保護法やPCI DSS(Payment Card Industry Data Security Standard)など、さまざまな法令がWebアプリケーションの安全性を求めています。WAFは、これらの規制に適合したセキュリティ対策機能を提供し、企業が法令遵守を果たす手助けが可能です。規制遵守の支援も非常に重要で、規制に違反すると多額の罰金が科せられる可能性があります。
さらに、WAFの導入は企業の信用向上にも寄与します。顧客に対して安全なサービスを提供しているという信頼感は、競争が激しい市場での差別化要因のひとつです。顧客が安心して購入やサービス利用を行える環境を整えることで、ビジネスの成長をサポートすることができます。
このように、WAFの導入は多岐にわたる利点をもたらします。セキュリティの底上げ、運用の効率化、規制遵守、顧客との信頼関係の構築など、さまざまな観点から企業にとって非常に価値のある投資であると言えるでしょう。

WAFの種類
ホスト型
ホスト型WAFは、特定のホストサーバーにインストールされ、インストールされたサーバー上で特定のウェブアプリケーションを保護する仕組みです。このタイプのWAFは、通常、アプリケーションに直接関連した脆弱性に対応するために最適化されています。
ホスト型WAFの最大の特徴は、アプリケーションに密着しているため、柔軟な設定が可能であることです。柔軟な設定が可能になることで、特定のアプリケーションの要件に特化したセキュリティポリシーを適用できます。例えば、SQLインジェクションやクロスサイトスクリプティング(XSS)といった、アプリケーション特有の攻撃に対する防御が一層強化されるでしょう。
この方式にはいくつかの利点がありますが、同時に考慮すべき課題も存在します。初めに、ホスト型WAFはアプリケーションサーバー上で同時に稼働するため、サーバーのリソースを消費します。そのため、システム全体のパフォーマンスに影響を与える可能性があります。また、複数のアプリケーションを配置しているサーバーには、それぞれ独自のWAFを導入する必要があり、管理が煩雑になることも課題のひとつです。
実際の導入例としては、企業のECサイトや情報ポータルサイトの保護が挙げられます。これらのウェブアプリケーションは、特にユーザー情報を大量に扱うため、高度なセキュリティが求められます。ホスト型WAFを導入することで、特定のアプリケーションへの特異な攻撃に対する防御を強化することができ、結果として信頼性と安全性を向上させることができます。
サービス型
サービス型WAFは、クラウドベースで提供されるWebアプリケーションファイアウォールの一種です。このモデルの特徴は、インターネットを介して簡単に利用でき、初期投資を抑えられる点にあります。
サービス型WAFは、主にサブスクリプション形式で料金が設定されており、ユーザーは必要に応じてスケーラブルにリソースを利用可能です。スケーラブルにリソースを利用可能なため、小規模な企業でも大規模なセキュリティ対策を導入することが容易になります。
このタイプのWAFは、管理がアウトソースされるため、企業はインフラ管理やセキュリティ対策の専門知識を持たなくても、安心して利用することが可能です。プロバイダーが常に最新の脅威情報を収集し、データベースに反映させるため、自社での運用コストを削減する優位性があります。
さらに、サービス型WAFは、さまざまなセキュリティ機能を提供します。例えば、DDoS攻撃対策やSQLインジェクション防止、クロスサイトスクリプティング(XSS)の防御機能など、幅広い防御機能が統合されており、企業はさまざまな脅威に対して多面的な防御を構築することが可能です。
加えて、サービス型WAFは設定するためのインターフェース(画面)が直感的で使用しやすいものが多く、利用経験の少ない人でも設定や運用がスムーズに行えます。これにより、WAFの導入ハードルを下げることができ、多くの企業での利用が進んでいます。
このように、サービス型WAFは、利用する企業にとって手軽さと高いセキュリティ機能を同時に提供する選択肢となっており、ますます多くの企業に受け入れられています。
ゲートウェイ型
ゲートウェイ型WAFは、Webアプリケーションへの通信を監視し、セキュリティを強化するための重要なツールです。このタイプのWAFは、リアルタイムでデータの流れを管理し、外部からの攻撃に対する防御を強化します。
ゲートウェイ型は、通常、ネットワークの入り口に配置される装置を使用し、すべてのHTTP/HTTPS通信を解析します。これにより、不正なリクエストや攻撃を検知し、適切な対応を行うことができます。この仕組みは、特に企業のインフラを保護し、データ漏洩やWebサイトの改ざんなどのリスクを低減するために有効です。
ゲートウェイ型WAFの特徴を以下に説明します。
まず、ゲートウェイ型は、アプリケーション層のセキュリティを提供します。これにより、一般的な攻撃パターン、例えばSQLインジェクションやクロスサイトスクリプティング(XSS)に対して強力な防御を実施します。また、セキュリティポリシーの設定や更新が簡単に行えるため、迅速に最新の脅威に対応することが可能です。
さらに、ゲートウェイ型WAFは、トラフィックの監視だけではなく、ログの保存や分析機能も備えています。これにより、攻撃の兆候を早期に察知し、将来的な対策を策定するための重要なデータを提供します。
このように、ゲートウェイ型WAFは、企業のWebアプリケーションを安全に保つために非常に重要な役割を果たしています。その利点は、単に攻撃を防ぐだけでなく、全体的なセキュリティ体制を強化する点にあります。導入を検討する際は、自社のニーズに応じた適切な設定やカスタマイズが鍵となります。
WAFとFWの違い
WAF(Web Application Firewall)とFW(Firewall)は、どちらもネットワークのセキュリティを向上させるための重要な要素ですが、その役割には明確な違いがあります。
WAFは主にウェブアプリケーションに対する攻撃を防ぐために設計されており、HTTP/HTTPS通信を分析して、不正なリクエストや攻撃をブロックします。一方で、FWはネットワーク全体のトラフィックを監視し、アクセス制御や不正アクセスの防止に焦点を当てています。本項では、これら二つのセキュリティツールの具体的な違いについて詳しく見ていきます。
機能の違い
WAFは、特にウェブアプリケーションの脆弱性(例えば、SQLインジェクションやクロスサイトスクリプティング)を狙った攻撃からの保護に特化していることが特徴です。WAFは、OSI参照モデルにおけるアプリケーション層で機能し、データがウェブサーバーに到達する前に有害なリクエストを検出し、排除します。
一方、FWは、OSI参照モデルにおけるネットワーク層やトランスポート層で動作し、IPアドレスやポート番号に基づくトラフィックの制御を行います。FWは主に外部から内部ネットワークへ向けたトラフィックの監視をし、許可されたアクセスだけを通過させる役割を果たします。
保護対象の違い
WAFが中心となるのは、ウェブアプリケーションがホストされているサーバーおよびその通信です。ウェブサイトやAPIなど、その内容にアクセスするユーザーからのリクエストを通じて、アプリケーションの脆弱性を狙った攻撃から守ります。これに対し、FWはネットワーク全体のトラフィックに対する防御を行い、外部からの攻撃を含むさまざまな脅威から組織のデータを保護します。
設定と管理の違い
FWはIPアドレスやポート、プロトコルといったネットワーク領域でのルールを設けて通信を制御します。対してWAFはFWよりもアプリケーションの特製に依存した、より細かい範囲での制御が必要になるため、アプリケーションに関する専門的な知識やスキルが求められます。FWの管理は比較的直感的ですが、WAFに関しては精密な調整が不可欠です。
このように、WAFとFWはそれぞれ異なる役割と機能を持っています。セキュリティ戦略を立てる際には、これらの違いを理解し、自社のニーズに最適な対策を選択することが重要です。

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WAFとIPSの違い
WAF(Web Application Firewall)とIPS(Intrusion Prevention System)は、どちらもセキュリティ対策として重要な役割を果たしますが、それぞれの目的や機能は異なります。本項では、両者の違いについて詳しく解説します。
目的の違い
まず、WAFとIPSの目的の違いについて説明します。WAFは主にWebアプリケーションに対する攻撃を防ぐために設計されています。具体的には、SQLインジェクションやクロスサイトスクリプティング(XSS)といったWeb特有の脅威に対処します。一方でIPSは、ネットワーク全体に対する攻撃を検知して防ぐことを主な目的とし、不正アクセスをリアルタイムで防止する役割を担っています。
アプローチの違い
次に、アプローチの違いにも注目してみましょう。WAFは、HTTP/HTTPS通信に対する分析を行うことで攻撃を阻止します。具体的には、通信の内容を解析し、ルールに従ってリクエストを許可または拒否します。
対して、IPSはネットワーク全体の通信を監視し、攻撃の兆候を検知した場合に自動的に対処を行う仕組みになっています。例えば、一般的な攻撃手法に用いられる特定の通信パターンを検出し、検出内容に基づいてリアルタイムでトラフィックを遮断することができます。
対象となる脅威の違い
対象となる脅威も大きな違いの一つです。WAFは主にWebアプリケーションに特化した攻撃から保護するため、アプリケーションレベルの脅威に対する防御が強化されています。対して、IPSはネットワーク層で発生する幅広い脅威を防ぐことができ、ウイルス、ワーム、ボットネット攻撃を含む多岐にわたる脅威に対応しています。
実装場所の違い
また、実装される場所にも違いがあります。WAFは通常、アプリケーションの前面に配置されることで、Webアプリケーションへの通信を最初に受信します。これにより、アプリケーションに向かうHTTPリクエストをフィルタリングし、正当なものだけを通過させます。
対してIPSはネットワーク内の特定のポイントに配置され、通信の流れを監視します。これにより、ネットワーク全体の安全を確保する役目を果たします。
このように、WAFとIPSはそれぞれ異なる観点からセキュリティを提供しており、その違いを理解することで、どちらも効果的に活用し、より安全な環境を構築するための参考にしていただければと思います。
まとめ
WAF(Web Application Firewall)は、ウェブアプリケーションを狙った悪意ある攻撃から保護する上で重要な役割を担います。WAFを導入することで、データ漏洩やサービスの停止といったリスクを軽減し、ビジネスの信頼性を向上させることが可能です。
WAFの提供形態には、ホスト型、サービス型、ゲートウェイ型など、さまざまな種類が存在するため、企業のニーズに最適な選択ができます。WAFを活用することで、オンラインビジネスの安全性を高めることができるので、今後の導入をぜひご検討ください。
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