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最終更新日
2025/07/16
現代のビジネス環境において、機密情報の適切な管理は、企業の競争力維持、ひいては存続そのものに直結する重要な経営課題と言えるでしょう。機密情報とは、企業活動において秘密保持義務の対象となる情報や、顧客情報のようなものも含まれます。ひとたび情報が漏洩すれば、金銭的な損失だけでなく、長年かけて築き上げた社会的信用を一瞬にして失いかねません。
機密情報とは、企業の競争力や信頼性を支える重要な資産であり、は機密情報として厳重に管理されるべきです。この記事では、機密情報の定義から具体的な管理手法、そして万が一の漏洩インシデント発生時の対応まで詳しく解説します。
機密情報とは
企業活動における機密情報とは、一体何を指すのでしょうか。機密情報とは、企業活動において特に重要な情報を指します。ここでは、法的な定義から実務上の分類までを掘り下げ、なぜその保護が企業にとって不可欠なのかを明らかにします。
機密情報には、以下のような情報が含まれます。具体的には、顧客データ、技術ノウハウ、営業戦略、財務情報などが挙げられます。
機密情報の法律上の定義
機密情報という言葉自体を直接定義する法律はありませんが、法的に最も重要な概念が不正競争防止法で保護される営業秘密です。営業秘密として法的な保護を受けるためには、「秘密管理性」「有用性」「非公知性」という3つの要件を満たす必要があります。秘密情報と営業秘密は、契約や法律によって定義や管理方法が異なります。「秘密管理性」は情報が秘密として管理されていること、「有用性」は事業活動に役立つ技術上または営業上の情報であること、そして「非公知性」は一般的に知られていない状態にあることを指します。また、秘密保持義務の対象となる秘密情報と区別して管理することも重要です。
機密情報と個人情報の違い
機密情報は個人情報と混同されがちですが、定義が異なります。個人情報保護法が定める個人情報は、生存する個人に関する情報で、氏名や生年月日などにより特定の個人を識別できる情報です。一方、機密情報は企業の競争力に関わる情報全般を指し、個人を特定しない技術情報や財務データも含まれます。ただし、企業の重要な顧客情報のようなものは、個人情報であり、かつ企業の機密情報でもあるという、両方の性質を併せ持つ情報も多数存在します。
機密情報のレベル分け
実務上、機密情報は一つの括りではなく、その重要度に応じてレベル分け(格付け)して管理されます。以下のような分類が一般的です。
具体的には、「極秘」「秘」「社外秘」といった分類が一般的です。「極秘情報」は、具体的には漏洩した場合に会社に壊滅的な損害を与える最高レベルの情報です。「秘情報」は、具体的には経営に重大な影響を及ぼす情報です。「社外秘情報」は、具体的には関係者以外への開示を禁じる情報といった定義です。
機密情報はレベル分けすることで、情報の重要度に応じた適切な管理・取り扱いルールを適用することが可能になります。
機密情報の種類
企業が日々取り扱う情報の中には、外部に知られてはならない「機密情報」が数多く存在します。機密情報とは、企業が保有し、秘密として管理されている情報全般を指し、その内容や重要度によってさまざまな種類に分類されます。ここでは、機密情報の代表的な種類や、実際の取り扱いポイントについて解説します。
まず、機密情報に含まれる具体的な例としては、設計図やマニュアル、顧客名簿、企画書、従業員の個人情報などが挙げられます。これらはデータや書類として保存されているものだけでなく、会議や打ち合わせなどで口頭で伝えられる情報も機密情報に該当する場合があります。企業が保有する情報の全体像を把握し、どの情報が機密情報に含まれるのかを明確にすることが、情報の取り扱いの第一歩です。
機密情報は、その重要度に応じて3つのレベルに分類されることが一般的です。
レベル1:社内での共有は制限されていないものの、社外への持ち出しは禁止されている情報(例:議事録、顧客リスト、見積書、製品企画書、営業企画書など)。
レベル2:社内でも一部の従業員のみがアクセスできる情報(例:人事情報、契約書、新規開発商品・サービス情報など)。
レベル3:経営層や管理部門など、極めて限定された人物のみがアクセス可能な最高機密情報(例:新製品設計図、研究開発データ、極秘プロジェクト情報、公表前の財務データなど)。
また、機密情報の種類としては「秘密情報」「営業秘密」「個人情報」などが挙げられます。秘密情報は、秘密保持契約(NDA)などに基づき、保持義務の対象となる情報です。営業秘密は、不正競争防止法で定義されており、秘密管理性・有用性・非公知性の3要件を満たす情報が該当します。個人情報は、氏名や生年月日、住所、顔写真、メールアドレスなど、個人を識別できる情報であり、企業が保有する従業員や顧客の個人情報も機密情報の一部として厳重に管理されるべきです。
機密情報の取り扱いにおいては、まず企業が保有する情報の重要度を定義し、社内で共有することが管理の効率化とリスク軽減につながります。情報システムにおけるアクセス権限の設定や、取引先企業から預かった情報の取り扱い規程の整備、不要になった情報の適切な廃棄方法の徹底など、実務的な対策が欠かせません。
機密情報の漏洩は、企業にとって金銭的損失や信用失墜など、甚大な被害をもたらす可能性があります。漏洩の原因は、従業員による故意の持ち出しや外部からの不正侵入、従業員の過失など多岐にわたります。企業は、記録媒体の持ち込み制限やアクセスコントロール、情報共有時のセキュリティ対策、持ち出しが容易に分かるオフィスレイアウトの工夫、従業員のITリテラシーとセキュリティ意識の向上など、あらゆる角度から対策を講じる必要があります。
万が一、機密情報が漏洩してしまった場合には、速やかに状況を把握し、被害の範囲や拡散状況を検証した上で、漏洩した情報の拡大を防ぐ措置を講じることが重要です。さらに、法律に基づいた適切な手続きやマスコミ対応など、損失を最小限に抑えるための行動が求められます。必要に応じて、機密情報漏洩対応やバックオフィス構築の経験が豊富な弁護士に相談することも有効な手段です。
このように、機密情報の種類や取り扱い方法を正しく理解し、企業全体で情報の重要度に応じた管理体制を構築することが、情報漏洩リスクの低減と企業価値の維持に直結します。
機密情報が漏洩する原因
どれほど厳重に管理しているつもりでも、機密情報漏えいのリスクをゼロにすることは困難です。その原因は悪意ある攻撃だけでなく、従業員が情報の取り扱いを誤った場合にも、機密情報の漏えいが発生することがあります。実際に情報が漏えいした場合、企業は法的な罰則や損害賠償を請求されるリスクもあります。過去には、従業員が情報を持ち出したことで重大な漏えいが発生し、企業が損害賠償を請求されるケースも発生していた。本項では、漏えいを引き起こす主要な原因を分析します。
情報の漏えいを防ぐためには、従業員が日常的にセキュリティ意識を高め、漏えいを防ぐために具体的な対策を講じることが重要です。
人的要因による漏洩
情報漏洩の最も一般的な原因は、組織の内部、つまり人に起因するものです。従業員が機密情報を取り扱う際の意識や行動が、漏洩リスクに大きく影響します。これには、金銭的な利益や私的な恨みから情報を不正に持ち出す「悪意」あるケースと、単純なミスや知識不足による「過失」のケースがあります。例えば、退職時に顧客データを持ち出す行為は前者であり、機密情報が含まれたUSBメモリの紛失や、宛先を間違えたメールの誤送信は後者の典型例です。どちらのケースも、従業員一人ひとりの情報セキュリティに対する意識の欠如が根底にあると言えるでしょう。
技術的要因による漏洩
テクノロジーの進化は、情報管理を効率化する一方で、新たな脅威も生み出しています。特定の企業や組織を狙い撃ちにする「標的型攻撃メール」や、システムを暗号化して身代金を要求する「ランサムウェア」など、サイバー攻撃の手口は年々巧妙化・悪質化しています。サイバー攻撃によって企業のネットワークに侵入され、サーバーに保管されている機密情報が盗まれるケースも発生しています。機密情報の漏えいを防ぐためには、最新のセキュリティ対策を継続的に実施することが不可欠です。そのため、ファイアウォールやウイルス対策ソフトの導入だけでは防ぎきれない、高度な攻撃への備えが不可欠です。
機密情報の漏洩による罰則
機密情報の漏洩は、単なる信用の問題だけでは済まないケースもあり、法的な罰則が科される可能性もあるため、注意が必要です。機密情報の漏えいによって、損害賠償を請求されるケースも少なくありません。例えば、不正競争防止法の営業秘密を不正に取得・使用・開示した個人には、10年以下の懲役もしくは2000万円以下の罰金、またはその両方が科され、法人に対しても5億円以下の罰金が科される可能性があります。
また、漏洩した情報が個人情報を含む場合、個人情報保護法に基づき、国からの命令に違反すると行為者には1年以下の懲役または100万円以下の罰金、法人には1億円以下の罰金が科されます。
企業が実践すべき機密情報の管理体制
機密情報を守るためには、包括的かつ多層的な防御体制を構築することが不可欠です。企業が機密情報を取り扱う際には、漏えいを防ぐために多層的な対策を講じる必要があります。ここでは、企業が実践すべき具体的な管理体制について、それぞれの側面から詳しく解説していきます。
情報の格付け(レベル分け)
効果的な管理体制の第一歩は、社内に存在する情報をその重要度に応じて分類、すなわち「格付け(レベル分け)」することです。前述の「極秘」「秘」「社外秘」のように情報のレベルを定義し、どの情報がどのレベルに該当するのかを明確にします。情報の格付けを行うことで、全ての情報を一律に最高レベルで管理する非効率を避け、情報の価値に応じたコスト効率の良いセキュリティ対策を講じることが可能になります。格付けは、情報管理の羅針盤となる重要なプロセスです。
物理的管理:アクセス制限と監視体制の構築
情報セキュリティの基本は、まず物理的なアクセスをコントロールすることから始まります。機密情報を保管するサーバー室や資料保管庫などは、施錠管理を徹底し、ICカードや生体認証システムを導入して、権限を持つ者しか入室できないように制限します。また、防犯カメラを設置して入退室を記録・監視することも、不正行為の抑止力として有効です。紙媒体の機密文書については、保管場所を限定し、キャビネットは必ず施錠するなど、アナログながらも確実な対策が必要です。
技術的管理:ITツールを活用した多層防御
サイバー攻撃をはじめとする技術的な脅威に対しては、ITツールを駆使した多層的な防御策が効果を発揮します。ネットワークの入口にはファイアウォールやIDS/IPS(不正侵入検知・防御システム)を設置し、個々のPCには最新のウイルス対策ソフトを導入します。重要なファイルは暗号化したり、データの操作履歴を記録するアクセスログ管理ツールを導入したりすることも重要です。ITツールを活用した多層防御により、万が一不正アクセスが発生した際にも、被害の拡大を防ぎ、原因を迅速に特定することが可能になります。
人的管理:従業員教育と規程の整備
あらゆるセキュリティ対策の成否は、最終的にそれを利用する人の意識と行動にかかっています。そのため、全従業員を対象とした定期的な情報セキュリティ研修の実施は不可欠です。機密情報の重要性や漏洩リスク、具体的な取り扱いルールなどを繰り返し教育し、組織全体のセキュリティリテラシーを向上させます。また、機密情報の取り扱いに関する規程を明確に定め、入社時や退職時に機密保持に関する誓約書を取り交わすなど、ルールに基づいた運用を徹底させることが、内部からの情報漏洩を防ぐための基盤となります。
機密情報が漏洩した場合の対応フロー
どれだけ万全の対策を講じていても、情報漏洩の可能性を完全に排除することはできません。万が一、機密情報が漏えいした場合には、迅速な対応が求められます。情報が漏えいした際や機密情報の漏えいが発生した場合に備え、事前に定めておくべき対応フローの要点を解説します。
迅速な初動対応
情報漏洩の疑いを検知した場合、最も重要なのは迅速な初動対応です。まずは、漏洩の可能性があると判断されたネットワークやサーバーを、他のシステムから物理的または論理的に切り離し、被害の拡大を食い止めます。同時に、情報システム部門やセキュリティ担当者を中心とした緊急対策チームを招集し、状況の把握と対応方針の決定にあたります。初動対応でのスピード感が、その後のダメージコントロールの成否を大きく左右するため、迅速な初動対応が必要です。
事実調査と原因究明
被害拡大防止措置と並行して、漏洩した情報の種類や範囲、漏洩の原因などを特定するための詳細な調査を開始します。サーバーのアクセスログやPCの操作履歴などを解析し、いつ、誰が、どのようにして情報を外部に送信したのかを突き止めます。必要であれば、外部の専門調査機関の支援を仰ぐことも検討すべきです。正確な事実関係の把握は、関係者への適切な説明責任を果たす上でも、再発防止策を講じる上でも不可欠となります。
関係各所への報告と再発防止策の策定
調査によって事実関係が明らかになったら、法令の定めに従って、個人情報保護委員会などの監督官庁や警察、そして何よりも被害を受けた可能性のある顧客や取引先に対して、速やかに報告と謝罪を行います。透明性の高い情報開示は、失われた信頼を回復するための第一歩です。そして、今回のインシデントで明らかになった脆弱性や管理体制の不備を徹底的に洗い出し、具体的かつ実効性のある再発防止策を策定・実行します。この一連のプロセスを真摯に行うことが、企業の危機管理能力の証明となるのです。
まとめ
機密情報の管理は、もはや情報システム部門だけの課題ではなく、全社的に取り組むべき経営の最重要課題です。本記事で解説したように、法的な定義や個人情報との違いの理解から、情報のレベル分け、そして物理的・技術的・人的な管理体制の構築、さらには漏洩時の罰則や対応フローの確立まで、取り組むべきことは多岐にわたります。これらの対策を地道に、そして継続的に実践していくことこそが、企業の貴重な資産と信頼を守り、激しい競争を勝ち抜くための基盤となるでしょう。
本記事の内容に誤り等がございましたら、こちらからご連絡ください。
監修
Admina Team
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