>
>
最終更新日
2026/01/20
企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)推進に伴い、業務で利用されるクラウドサービスは急増しています。しかし、導入の容易さゆえに管理が煩雑になり、利用実態のないライセンスへの支払いや、退職者のアカウント残存といった課題を抱える企業は少なくありません。本記事では、情報システム部門(情シス)が実施すべきSaaS棚卸しの具体的な進め方と、コスト削減・セキュリティ向上を両立させる管理のポイントを網羅的に解説します。
SaaS棚卸しとは
SaaS棚卸しとは、社内で契約・利用されているすべてのSaaS(クラウドサービス)を可視化し、アカウント数、利用状況、契約金額、管理権限を網羅的に照合・整理する業務プロセスです。 IT資産管理の一環として、台帳上の情報と実際の利用環境を一致させ、IT投資の最適化とガバナンスの強化を図ることを目的としています。
SaaS棚卸しが今求められる背景
多くの企業でSaaS導入が加速した結果、ライセンスの重複や未利用アカウントの放置が目立ち始め、ITコストの肥大化が経営課題となっているためです。
従来のオンプレミス型ソフトとは異なり、SaaSは部門単位で容易に導入できるため、全社的な利用実態を情シスが把握しきれないケースが増えています。
ITコストの肥大化と不透明性
サブスクリプション型の料金体系であるSaaSは、利用者が一人増えるごとに月額費用が発生します。管理が不十分な状態では、誰がどのサービスを使っているか不明確になり、利用実態のない「休眠アカウント」に対しても継続的にコストを支払い続ける事態を招きます。これを是正し、IT予算を最適化するためには定期的な棚卸しが不可欠です。
散在する契約情報の集約
SaaSは支払い方法がクレジットカード決済や請求書払いなど多岐にわたるため、契約情報が各部署に散らばりがちです。棚卸しを通じて契約主体や更新日、支払い金額を一箇所に集約することで、契約更新の漏れを防ぎ、ボリュームディスカウント(一括契約による割引)の交渉材料を得ることが可能になります。
SaaS棚卸しを行うべき3つの主要な理由
SaaS棚卸しを適切に実施することで、コスト削減、セキュリティリスクの低減、そして内部統制の強化という3つの大きなメリットを享受できます。
これらの成果は情シスの貢献度を社内に示す重要な指標となります。
1. ライセンス費用の最適化
利用実態のないアカウントを解約することで、無駄なサブスクリプション費用を直接的に削減できます。
複数の調査結果によると、企業が契約しているSaaSライセンスの約30%〜50%が十分に活用されていない、あるいは重複していると報告されています(BetterCloud・Gartner 2025年調査では20-30%のSaaS支出が未使用または重複ツールに浪費、Zyloの2025 SaaS Management Indexでは53%のライセンスが30日間で未使用という結果が出ています)。棚卸しによって「ログイン実績が一定期間ないユーザー」を特定し、ライセンスを回収・解約することで、年間で数十万〜数百万円単位のコストカットを実現できるケースは珍しくありません。
2. セキュリティレベルの向上
退職者のアカウント削除漏れを特定し、外部からの不正アクセスや情報漏洩のリスクを最小限に抑えます。
SaaSは場所を問わずログインできる利便性がある反面、退職者のIDが残っていると、悪意の有無に関わらず元従業員が社内データにアクセスできてしまいます。実際、日本国内の調査では情報システム部門の約64%が「退職者や異動後のSaaSアカウントを適切に管理できていない」と回答しており、88%の担当者がSaaS管理不備によるセキュリティリスクを実感しています。棚卸しを通じて最新の従業員名簿とアカウントリストを厳密に照合することは、企業を守るための防波堤となります。
3. コンプライアンスと内部統制の遵守
どのサービスにどのようなデータが保存されているかを把握し、法令遵守(コンプライアンス)の体制を整えることができます。
個人情報保護法や各種業界ガイドラインに基づき、適切なデータ管理が求められる中、「どのSaaSに個人情報が含まれているか」を把握していない状態は重大なリスクです。SaaS利用企業には、個人データの安全管理が図られるよう監督義務があり、クラウドサービス利用時には委託先の監督義務が適用されます。棚卸しにより、データの保管場所と管理責任者を明確にすることは、健全な経営体制の証明に繋がります。
実践!SaaS棚卸しを進める5つのステップ
SaaS棚卸しは、「全件リストアップ」「情報の集約」「実態の精査」「是正」「運用化」という順序で進めることで、漏れなく効率的に実施できます。
以下に、情シス担当者が明日から実践できる具体的な手順をまとめます。
STEP 1:社内SaaSの全件リストアップ
まずは、社内で利用されている可能性のあるサービスをすべて洗い出します。
管理台帳に載っているものだけでなく、以下のルートから情報を収集するのが確実です。
経理データとの照合: 法人カードの決済履歴や請求書から、ソフトウェアベンダーへの支払いを確認します。
SSO(シングルサインオン)ログの確認: Microsoft Entra ID(旧Azure AD)やGoogle Workspaceと連携しているアプリを確認します。
各部署へのヒアリング: 現場の担当者に、業務で使用しているツールをアンケート形式で回答してもらいます。
STEP 2:SaaS管理台帳の作成と情報の集約
洗い出した情報を、Microsoft Excel(エクセル)やGoogle スプレッドシート(Spreadsheet)に整理し、一元管理できる状態にします。
台帳には最低限、以下の項目を盛り込みましょう。
項目 | 内容 |
|---|---|
サービス名 | 正確な名称(例:Zoom, Slackなど) |
契約プラン | フリー版、Pro版、エンタープライズ版など |
契約者・部署 | 支払いの責任を持っている部署 |
アカウント数 | 現在の契約ライセンス数 |
更新日 | 契約が自動更新される日付 |
月額/年額費用 | 発生しているコスト |
STEP 3:アカウント利用状況の確認と照合
台帳の情報と、実際のサービス内でのアクティビティを照らし合わせます。
多くのSaaSでは、管理画面から「最終ログイン日時」をCSV形式などでエクスポートできます。これを従業員名簿(人事データ)とVLOOKUP関数等で突合し、以下のユーザーを抽出します。
すでに退職しているユーザー
過去90日以上ログインがないユーザー
同じユーザーが別々のアカウントで重複登録されているケース
STEP 4:不要なライセンスの削減と契約変更
抽出された「不要なアカウント」を削除し、契約ライセンス数を適正な数へ減らします。
また、複数の部署でバラバラに契約している同種のSaaS(例:異なるWeb会議ツールなど)がある場合は、一方に集約することでプラン料金を下げたり、管理コストを削減したりする検討を行います。
STEP 5:継続的な棚卸しルールの策定
棚卸しを一度きりのイベントにせず、定期的なルーチン業務として組み込みます。
例えば「四半期に一度」など実施時期を決め、人事異動のタイミングに合わせてアカウント削除を行うフローを徹底します。また、新規でSaaSを導入する際の「申請・承認フロー」を設けることで、把握漏れが発生しにくい仕組みを構築します。
SaaS管理を効率化する手法の比較:Excel管理 vs 専用ツール
管理対象のサービスが20個を超える場合や、従業員が100名以上の規模では、手動管理の限界が来るため専用ツールの活用が推奨されます。
自社のフェーズに合わせて最適な管理手法を選択しましょう。
手動管理(Excel/スプレッドシート)
メリット: 追加のシステム投資が不要。少数のSaaSであれば柔軟に対応可能。
デメリット: データの更新が手動のため、すぐに情報が古くなる。ログイン履歴の確認に膨大な工数がかかる。
適した企業: スタートアップや、利用サービスが限定的な中小企業。
SaaS管理ツール(SaaS Management Platform / SMP)
メリット: 各SaaSとAPI連携し、利用状況やコストを自動で可視化できる。退職者アカウントの検知もリアルタイムに近い形で行える。
デメリット: ツール自体の導入コストと運用工数が発生する。
適した企業: 中堅〜大企業、またはSaaSを積極的に導入している成長企業。
比較項目 | Excel/スプレッドシート | SaaS管理ツール |
|---|---|---|
初期費用 | 0円 | 数万円〜 |
更新の自動化 | 不可 | 可能 |
コスト削減効果 | 見逃しが発生しやすい | 最大化しやすい |
セキュリティ | 管理者のスキルに依存 | 自動検知で強化 |
情シスがSaaS棚卸しを円滑に成功させるポイント
SaaS棚卸しは他部署との連携が必要なため、情シス側から積極的な情報提供とメリットの提示を行うことが成功の鍵となります。
1. 現場の負担を最小限にする
現場の担当者に「すべての利用実態を詳細に報告してほしい」と依頼しても、多忙な中では後回しにされます。情シス側で可能な限り経理データやSSOログから情報を下調べし、「このリストに間違いがないか確認してほしい」という形式で依頼するのがスムーズです。
2. コスト削減分をアピールする
棚卸しの結果、どれだけのコストが削減されたかをレポートにまとめ、経営層や各部門長に共有しましょう。「棚卸しによって年間◯◯万円の予算が浮いた」という実績は、情シスのプレゼンスを高め、次なるIT投資(新しいツールの導入やセキュリティ強化)の承認を得やすくします。
3. スモールスタートで実績を作る
最初からすべてのフリーソフトまで把握しようとすると挫折します。まずは「高額なライセンス費用がかかっている上位5サービス」に対象を絞って棚卸しを行い、運用フローを確立してから徐々に対象を広げていくのが現実的なアプローチです。
継続的なSaaS管理で、健全なIT環境を維持する
SaaS棚卸しは、一度実施して終わりではなく、継続してこそ真の価値を発揮します。可視化されたデータに基づき、無駄を排除し、必要なツールに必要なだけ投資する。このサイクルを回すことで、情シスは単なる「管理部門」から、企業のビジネス成長を支える「戦略的なITパートナー」へと進化できます。適切な棚卸しを通じて、安全で効率的なSaaS利用環境を構築していきましょう。
まずは、自社が契約しているSaaSの中から「最もライセンス費用が高いツール」を1つ選び、その管理画面から「過去90日間ログインしていないユーザー数」を確認してみてください。そこに見つかった無駄なライセンスの数が、棚卸しを開始する強力な動機付けになるはずです。
SaaS棚卸しを効率化するなら「マネーフォワード Admina」
手動での棚卸しやアカウント管理に限界を感じている、未使用ライセンスの特定に時間がかかりすぎる、退職者アカウントの削除漏れが不安——こうしたSaaS管理の課題や日々の運用工数にお悩みなら、SaaS管理プラットフォームの活用がおすすめです。 SaaS管理プラットフォーム「マネーフォワード Admina」は、連携するだけでSaaSの利用状況を可視化し、管理業務を効率化します。
■豊富な連携と管理の自動化で工数削減
連携数No.1水準のSaaSと連携し、誰が何を使っているかを即座に可視化します。さらに入退社に伴うアカウント発行・削除も自動化できるため、手作業によるミスをなくし、情シスの業務時間を大幅に削減します。
■継続的なコスト最適化を実現
未利用アカウントや重複契約の把握、利用率の分析により、無駄な支出を継続的に抑制できます。契約更新の見直し機会も逃しにくくなります。
■セキュリティを堅実に強化
退職者のアカウント削除漏れやシャドーIT、外部公開ファイル検出機能により、セキュリティインシデントのリスクを着実に低減します。SOC2 Type2報告書も取得しており、安心してご利用いただけます。
まずは14日間の無料トライアルで、Adminaの効果をご体感ください。
本記事の内容に誤り等がございましたら、こちらからご連絡ください。
監修
Admina Team
情シス業務に関するお役立ち情報をマネーフォワード Adminaが提供します。
SaaS・アカウント・デバイスの管理を自動化し、IT資産の可視化とセキュリティ統制を実現。
従業員の入退社対応や棚卸し作業の工数を削減し、情報システム部門の運用負荷を大幅に軽減します。
中小企業から大企業まで、情シス・管理部門・経営層のすべてに頼れるIT管理プラットフォームです。





