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Admina Team
2025/08/12
現代のビジネスにおいて、クラウドサービスの活用は事業成長の原動力です。しかし、その利便性の一方で、情報漏洩やサイバー攻撃といった重大なセキュリティリスクが存在している点にも注意が必要です。従来のオンプレミス環境とは異なるクラウド特有のリスクを正しく理解し、適切な対策を講じなければ、事業の継続に重大な影響を及ぼしかねません。
本記事では、クラウドセキュリティの基本的な考え方から、具体的な脅威、そして2025年現在の最新対策まで、企業のセキュリティ担当者が知るべき要点を体系的に解説します。
クラウドセキュリティとは
クラウドセキュリティとは、クラウドコンピューティング環境をサイバー攻撃や情報漏洩などの脅威から保護するための一連の技術、対策、管理体制のことです。アクセス制御、データ暗号化、脅威検知、コンプライアンス遵守など、多岐にわたる領域を対象とします。オンプレミス環境と異なり、物理的なサーバー管理を必要としない代わりに、クラウド特有の保護策が求められます。
クラウド利用における主要なセキュリティリスク
クラウド環境の利便性を最大限に引き出すには、まず特有のリスクを把握することが不可欠です。ここでは、企業が直面する代表的なセキュリティリスクを3つ紹介します。
設定ミスによる情報漏洩
クラウドにおけるセキュリティインシデントの中で、最も頻繁に見られる原因が設定ミスです。例えば、ストレージ(Amazon S3など)のアクセス権限を誤って「公開」にしてしまい、機密情報が誰でも閲覧可能な状態になるケースが後を絶ちません。こうした単純なヒューマンエラーが、大規模な情報漏洩につながる危険性をはらんでいます。
不正アクセスとアカウント乗っ取り
クラウドサービスの管理コンソールやアカウント情報は、攻撃者にとって価値の高い標的です。脆弱なパスワードの使用や、多要素認証(MFA)の未設定、退職者のアカウント放置などが原因で不正アクセスを許し、アカウントが乗っ取られる危険性があります。これにより、データの改ざんや削除、さらなる攻撃の踏み台にされる可能性があります。
共有環境における脆弱性
クラウドは多くのユーザーがリソースを共有するマルチテナント環境です。クラウド事業者側で高度な分離技術が用いられていますが、ハイパーバイザーなどの基盤部分に脆弱性が発見された場合、他のユーザー環境へ影響が及ぶ可能性もゼロではありません。自社の管理範囲だけでなく、プラットフォーム全体の動向にも注意を払う必要があります。
クラウドセキュリティにおける責任共有モデルとは
クラウドセキュリティを考える上で、絶対に欠かせないのが「責任共有モデル」という考え方です。これは、セキュリティを確保する責任を、クラウドサービスを提供する事業者と、それを利用するユーザー企業とで分担するという概念です。
クラウド事業者の責任範囲
クラウド事業者は、データセンターの物理的なセキュリティや、サーバー、ストレージ、ネットワークといった「クラウドの基盤そのもの」のセキュリティに責任を負います。例えば、AWSやGoogle Cloud、Microsoft Azureといった事業者は、堅牢なインフラを維持し、ハイパーバイザーなどのソフトウェアを安全に保つ役割を担います。
ユーザー(利用者)の責任範囲
一方、ユーザーは「クラウド上で扱うもの」に対するセキュリティ責任を負います。具体的には、OSやミドルウェアの脆弱性管理、導入するアプリケーションの安全性、データの暗号化、アクセス権限(IAM)の適切な設定、ファイアウォールの構成などが該当します。クラウドを安全に使うためには、ユーザー側の積極的な対策が不可欠です。

クラウドセキュリティを実現するための具体的な対策
クラウド環境を保護するためには、多層的なアプローチが求められます。ここでは、現代のクラウドセキュリティにおいて中核となる具体的な対策を紹介します。
ID・アクセス管理(IAM)の徹底
「誰が」「何に」「どこまで」アクセスできるかを厳密に管理するIAM(Identity and Access Management)は、セキュリティの基本です。最小権限の原則に基づき、従業員には業務に必要な最低限の権限のみを付与します。また、多要素認証(MFA)を全ての管理者アカウントと特権ユーザーに義務付けることで、不正アクセスを効果的に防ぎます。
データの暗号化
データは、保管時(Data-at-Rest)と転送時(Data-in-Transit)の両方で暗号化することが標準的な対策です。クラウドサービスが提供する暗号化機能を活用するだけでなく、暗号化キーの管理をユーザー側で行うなど、より高度なセキュリティ要件にも対応できます。これにより、万が一データが外部に流出しても、中身を解読されることを防ぎます。
CSPMによる設定ミスの自動検出
CSPM(Cloud Security Posture Management)は、クラウド環境の設定を継続的に監視し、設定ミスやポリシー違反を自動で検出・修正するソリューションです。広範囲なクラウドサービスの設定を目視で確認するのは非現実的であるため、CSPMの導入は設定ミスによるリスクを低減させる上で極めて効果的です。
CWPPによるワークロード保護
CWPP(Cloud Workload Protection Platform)は、サーバーインスタンスやコンテナ、サーバーレスといったクラウド上のワークロードを保護することに特化したソリューションです。脆弱性スキャン、マルウェア対策、不正侵入検知などの機能を提供し、OSやアプリケーションレベルでのセキュリティを強化します。
クラウドセキュリティの最新トレンド
クラウド技術の進化とともに、セキュリティの考え方も常にアップデートされています。ここでは、2025年現在、特に注目されているトレンドを紹介します。
CNAPP
CNAPP(Cloud-Native Application Protection Platform)は、開発から本番運用までのライフサイクル全体でクラウドネイティブアプリケーションを保護するための統合プラットフォームです。CSPMの「設定監視」とCWPPの「ワークロード保護」の機能を包含し、両者を連携させることで、より包括的で効率的なセキュリティ管理を実現します。
DevSecOpsの浸透
DevSecOpsは、開発(Dev)、セキュリティ(Sec)、運用(Ops)を統合し、ソフトウェア開発の初期段階からセキュリティを組み込むアプローチです。CI/CDパイプラインにセキュリティスキャンを自動で組み込むことで、手戻りを減らし、迅速かつ安全なアプリケーションリリースを可能にします。クラウドネイティブな開発が主流となる中で、その重要性は増しています。
AIを活用した脅威インテリジェンス
AIや機械学習をセキュリティ対策に活用する動きが加速しています。膨大なログデータやトラフィックをAIが分析し、未知の攻撃や異常な振る舞いをリアルタイムで検知します。人の手では発見が困難な高度な脅威に対抗するため、AI駆動型のセキュリティ監視は今後の標準的なアプローチとなるでしょう。

クラウドセキュリティ製品・サービスの適切な選び方
自社に適したセキュリティソリューションを選ぶことは、対策の成否を分ける重要なプロセスです。以下のポイントを参考に、慎重に検討を進めましょう。
自社のクラウド環境との互換性
クラウドセキュリティ製品・サービスを選ぶ際に、まず確認すべきは導入を検討している製品が自社で利用しているクラウドサービス(AWS、 Azure、 Google Cloudなど)や、マルチクラウド環境に対応しているかという点です。また、コンテナやサーバーレスといった特定の技術スタックを保護できるかも重要な選定基準となります。
運用負荷とサポート体制
高度な製品を導入しても、それを使いこなせる体制がなければ意味がありません。自社のセキュリティチームのスキルレベルや人員を考慮し、運用負荷が過大にならないかを見極めることが大切です。また、インシデント発生時に迅速な支援を受けられるよう、提供元のサポート体制や実績も十分に確認しましょう。
コンプライアンス要件への対応
自社が準拠すべき業界規制やプライバシー保護法(ISMS、PCI DSS、GDPR、個人情報保護法など)に対応できるかも、製品選定の重要な要素です。特定の認証レポートや監査証跡を容易に出力できる機能があると、コンプライアンス対応の工数を大幅に削減できます。
まとめ
クラウドセキュリティは、もはや単なるIT部門の課題ではなく、ビジネスの継続性を左右する経営課題です。本記事で解説したように、「責任共有モデル」を正しく理解し、IAMの徹底といった基本対策から、CSPMやCNAPPといった最新ソリューションの活用まで、計画的に進めることが求められます。
クラウドのメリットを安全に享受し、事業をさらに飛躍させるために、本記事で得た知識を自社のセキュリティ戦略の見直しと強化に役立ててください。
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