All
SaaS管理
デバイス管理
セキュリティ対策
脅威・インシデント
IT基盤・インフラ
情シス業務・組織形成
AI / テクノロジー
プロダクト
イベントレポート
その他
ガバナンス

新着記事

もっと見る

>

>

固定IPアドレスのメリット・デメリット|手動設定や代替案も解説

固定IPアドレスのメリット・デメリット|手動設定や代替案も解説

固定IPアドレスのメリット・デメリット|手動設定や代替案も解説

固定IPアドレスのメリット・デメリット|手動設定や代替案も解説

公開日

最終更新日

【用途別の読み方】この記事は「固定グローバルIP」「LAN内のプライベートIP固定」「代替策」という三つの判断軸で構成しています。LAN内のプリンター・カメラだけを固定したい場合は「LAN側の固定プライベートIP」と「DHCP予約の設定」が該当します。SaaSの接続元制限を検討中であれば「接続元IP制限による攻撃面の縮小」と「用途別の選定フロー」で判断材料が得られます。公開サーバーやリモートワーク構成を設計中なら「リモートワークの固定エグレス構成」と「2026年の固定IPコストとゼロトラスト代替策」に進むと費用・冗長化・ZTNAの比較ができます。各節は独立して参照できるため、すでに理解している箇所は読み飛ばして構いません。

固定IPアドレスのデメリットを正しく判断するには、インターネット側の固定グローバルIPと、社内LAN側のプライベートIP固定を分ける必要があります。前者は接続元IP制限やサーバー公開に使えますが、契約費用と攻撃面が増えます。後者はプリンターやIPカメラを見つけやすくする反面、端末ごとの手動設定はIP重複と保守工数を招きます。

2026年に向けては、AWSのパブリックIPv4有料化、IPv4 over IPv6のポート制約、VPN機器を狙う攻撃も無視できません。固定IPのメリットだけでなく、DHCP予約、固定エグレスIP、ZTNAを含めて、費用・安全性・運用負荷を比較します。

固定IPアドレスのメリット・デメリットと、手動設定・DHCP予約・ZTNAなどの代替案による運用見直し手順を解説するインフォグラフィック。

固定IPアドレスとは

固定IPアドレスとは、特定の回線またはネットワーク機器に、継続して同じIPアドレスを割り当てる運用です。

本記事のポイント

  • WAN側の固定グローバルIPは、ISPとの契約やクラウド側の割り当てによって決まります。

  • LAN側の固定プライベートIPは、端末での手動設定またはルーターのDHCP予約で実現します。

  • IPアドレスによる接続元制限は認証の代替ではなく、MFAや端末確認と組み合わせる補助統制です。

  • 端末数が増えるほど、手動設定よりDHCP予約やIPアドレス管理のほうが変更に強くなります。

WAN側の固定グローバルIP

固定グローバルIPは、インターネット上から識別できる変わらないアドレスです。ISPから割り当てられる固定IPv4や固定IPv6、クラウドのパブリックIPv4、SASEの固定エグレスIPなどが該当します。SaaSのIP許可リスト、拠点間VPN、DNSで名前解決する公開サーバーの宛先に利用されます。

固定グローバルIPを契約しても、そのアドレスをPCへ直接入力するとは限りません。一般的なオフィスではルーターのWAN側に割り当て、複数の社内端末はNATを介して同じグローバルIPから通信します。テレワーク端末の送信元も固定したい場合は、オフィスVPN、クラウドプロキシ、ZTNA、SASEなどへ通信を経由させます。

LAN側の固定プライベートIP

プライベートIPは、社内や家庭のLAN内だけで利用するアドレスです。IPv4では10.0.0.0/8、172.16.0.0/12、192.168.0.0/16が代表的な範囲です。ネットワークプリンター、NAS、IPカメラ、アクセスポイント、複合機など、ほかの端末から継続して呼び出すIPデバイスに固定アドレスを割り当てます。

LAN内のIP固定には、端末自身へアドレスを入力する静的割り当てと、DHCPサーバーがMACアドレスに基づいて毎回同じIPを配るDHCP予約があります。どちらも結果は同じように見えますが、ネットワーク変更時の作業量が異なります。DNSやゲートウェイを一括変更したい環境ではDHCP予約のほうが管理しやすい設計です。

固定IPv4・固定IPv6・固定エグレスIPの区別

「固定IPが必要」という要望だけでは、契約すべきサービスを決められません。取引先SaaSの許可リストがIPv4だけに対応しているなら固定IPv4が必要です。IPv6でサーバーを公開するなら固定IPv6とIPv6ファイアウォールを設計します。なお、ISPが提供する「固定IPv6」には、単一のIPv6アドレスを固定する方式と、固定されたIPv6プレフィックスを委任してLAN内で複数アドレスを構成する方式があります。前者は特定の宛先として使い、後者は社内のIPv6アドレス体系を安定させる目的で使います。ISPへの申込時にどちらの方式かを確認し、用途に合った方式を選びます。社員がどこから接続しても同じ送信元にしたいだけなら、拠点回線ではなくクラウド側の固定エグレスIPが候補です。

固定したい対象

主な方式

代表用途

確認結果による判断

オフィス回線の出口

ISPの固定グローバルIPv4

SaaSのIP許可リスト、拠点間VPN

SaaSがIPv4のみなら固定IPv4、IPv6も登録可能なら両方式を比較

社内の機器

DHCP予約または端末手動設定

プリンター、NAS、IPカメラ

DHCP予約に対応するなら予約、非対応機器だけ手動設定

クラウド資源

パブリックIPv4、ロードバランサー

公開API、Webサーバー

直接公開が不要ならプライベート化し、入口を集約

リモート端末の出口

VPN、プロキシ、SASEの固定エグレスIP

場所を問わないSaaS接続

拠点経由が単一障害点になるならクラウド経由へ分散

固定IPアドレスと動的IPアドレスの違い

固定IPは宛先や接続元を継続して識別したい通信に適し、動的IPは一般的なWeb利用や管理対象外の端末に適します。

固定IPと動的IPの比較

動的IPアドレスは、ISPやDHCPサーバーが利用可能なアドレスを自動で割り当てる方式です。再接続のたびに必ず変わるわけではありませんが、同じアドレスが継続する保証はありません。固定IPはアドレス変更を前提にしないため、DNS、ファイアウォール、監視、機器へのショートカットを安定させられます。

比較項目

固定IPアドレス

動的IPアドレス

アドレス

契約または設定を変更するまで原則一定

再接続、リース更新、構成変更で変わる可能性あり

代表用途

IP許可リスト、VPN、サーバー、IPデバイス

Web閲覧、一般PC、スマートフォン、来客用Wi-Fi

直接費用

ISPオプションやクラウド利用料が発生

回線やDHCPの基本機能に含まれることが多い

管理負荷

台帳、重複防止、変更管理、監視が必要

自動配布により端末側の作業が少ない

外部からの到達性

ファイアウォール等の条件を満たせば継続接続しやすい

アドレス変更に備えて動的DNSなどが必要

主なリスク

攻撃対象の固定化、追加費用、設定の属人化

許可リスト切れ、監視先の変動、公開用途との不一致

IPアドレス自動取得のデメリット

IPアドレスの自動取得は一般PCには合理的ですが、サーバーやIPデバイスでは接続先が変わる可能性があります。プリンタードライバーが古いIPを参照して印刷できない、監視ソフトがカメラを見失う、NASの共有先が切れるといった障害につながります。

一方、ホスト名による名前解決が安定している環境では、すべての端末を固定する必要はありません。クライアントPC、スマートフォン、来客端末は自動取得のままにし、固定の宛先として利用する機器だけをDHCP予約へ切り替えると、アドレス消費と管理工数を抑えられます。

IPアドレス変更のデメリット

グローバルIPが変わると、取引先SaaSの許可リスト、クラウドのファイアウォール、DNSレコード、監視サービスの登録先が古いアドレスを参照し、業務が停止する場合があります。LAN内のIP変更では、プリンターポート、監視設定、バックアップジョブ、機器管理台帳の修正が発生します。

変更前に依存先を洗い出せるなら計画変更として扱い、DNSのTTL短縮、許可リストの新旧併記、疎通試験の順で切り替えます。依存先を洗い出せない場合は、ログから通信先を確認する観測期間を設けてから変更します。単にアドレスを変更して障害発生後に修正する進め方は避けます。

組織規模別の管理方式

管理台数が増えるほど、端末への個別入力から集中管理へ移行したほうが障害復旧を早められます。

組織規模

適する管理方式

運用の基準

50名未満

ルーターのDHCP予約と資産台帳

固定対象をプリンター、NAS、カメラ等に限定

50〜300名

集中DHCP、VLAN、IPアドレス管理表

申請・承認・廃止の担当者と期限を設定

300名超

IPAM、NAC、冗長DHCP、SASE

複数拠点を共通ポリシーと監査ログで管理

固定IPアドレスと動的IPアドレスの特性と主な用途の対比

▲ 固定IPアドレスと動的IPアドレスの特性と主な用途の対比

固定IPアドレスのメリットと活用効果

固定IPのメリットは、通信先の安定化と接続元ネットワークの絞り込みです。IPアドレスによる接続制限はMFA・端末認証・最小権限と組み合わせる補助条件であり、本人認証の代替にはなりません。以降の各メリットはこの前提のうえで読んでください。

接続元IP制限による攻撃面の縮小

固定グローバルIPをSaaSやクラウドの許可リストへ登録すると、登録外ネットワークからの通信を入口で拒否できます。管理画面をインターネット全体へ公開する構成と比べれば、ログイン試行を受ける範囲を狭められます。取引先が固定接続元IPを契約条件にしている場合にも利用できます。

ただし、送信元IPはユーザー本人を証明しません。同じオフィス、VPN、プロキシを利用する端末は同一IPに見え、侵害された端末からの通信も許可されます。「送信元認証」と表現されることがありますが、実際にはネットワーク条件による接続制限です。ID、MFA、端末証明書、最小権限、ログ監視を残したまま追加します。

サーバーと拠点間通信の安定化

公開サーバーの宛先が固定されれば、DNSレコードや外部監視サービスを安定して設定できます。拠点間VPNでは相手側ゲートウェイを指定しやすく、接続先アドレスが変わるたびに設定を更新する作業を減らせます。機器や回線を二重化する場合は、固定IPを一つ持つだけでなく、経路切り替え後も同じサービスへ到達できる設計が必要です。

クラウドでは各サーバーへ個別にパブリックIPv4を付けるより、ロードバランサー、NAT Gateway、リバースプロキシなどに入口と出口を集約すると、課金対象と公開面を減らせます。固定IPの数を増やす前に、どの通信が外部公開を必要とするかを分けると判断しやすくなります。

IPアドレス手動設定のメリット

プライベートIPを手動設定するメリットは、DHCPサーバーが利用できない状態でも、管理用PCからルーター、スイッチ、カメラなどへ既知のアドレスで接続できる点です。初期設定用ネットワーク、隔離ネットワーク、DHCP非対応の産業機器では、IP割り当てを手動にする合理性があります。

プリンターやIPカメラを固定すると、監視システムや印刷ポートから同じ宛先を参照できます。IPデバイスのメリットは、LANを使って映像・音声・制御データを統合でき、離れた場所から一元管理しやすいことです。既存の有線・無線LANを利用できる場合は、専用配線を減らせます。

DHCP予約による固定化のメリット

DHCP予約は、端末のMACアドレスと配布IPをルーターまたはDHCPサーバーで対応付ける方式です。端末側は自動取得のままなので、ゲートウェイやDNSを変更するときに中央から配布できます。設定一覧を一か所で確認でき、IPアドレスの手動設定より重複を防ぎやすい点も利点です。

比較軸

端末の手動設定

DHCP予約

端末側作業

各端末でIP、マスク、DNS等を入力

自動取得のまま利用

集中管理

台帳との突合が必要

DHCP管理画面に集約

ネットワーク変更

端末ごとの再設定が発生

配布条件を中央で変更

DHCP停止時

設定済み端末は通信を継続しやすい

リース更新や新規接続に影響

適する対象

DHCP非対応機器、初期設定、隔離環境

プリンター、AP、カメラ、一般的なLAN機器

固定IPアドレスのデメリットと失敗パターン

固定IPアドレスの主なデメリットは、継続費用、攻撃対象の固定化、設定変更の複雑化、IP重複、単一障害点の発生です。

固定グローバルIPの追加コスト

ISPの固定IPは、通常の回線料金とは別にオプション料、初期設定料、対応ルーター費用が発生する場合があります。複数アドレスを割り当てるプランは、利用可能なアドレス数と契約上のブロック数が一致しないこともあります。ネットワークアドレスやブロードキャストアドレスを予約する方式では、契約数のすべてを機器へ付与できません。

料金だけでなく、ファイアウォール設定、監視、脆弱性対応、障害時の切り分けも運用費です。100台の端末を年1回、1台10分で手動確認すると約16.7時間かかります。情シスの作業単価を1時間4,000円として試算すれば、年間約6万6,800円です。DHCP予約やIPAMで一括確認できるなら、この手作業を削減できます。

攻撃対象が変わらないリスク

固定IPは長期間変わらないため、公開ポートや機器の種類を継続して調査されやすくなります。しかし、固定IPだけで侵害が発生するわけではありません。危険度は、外部公開ポート、機器の脆弱性、認証方式、パッチ適用、監視、アクセス権限で決まります。動的IPでも公開設定や脆弱性が残っていれば安全ではありません。

IPAは「情報セキュリティ10大脅威 2025」で、組織向け脅威の第1位にランサム攻撃による被害、第3位にシステムの脆弱性を突いた攻撃を挙げています。固定IPを許可リストに使う場合も、MFA、端末管理、脆弱性修正、ログ監視を省略する理由にはなりません。

IPデバイスのデメリット

IPカメラ、プリンター、センサーなどのIPデバイスは管理しやすい反面、初期パスワード、古いファームウェア、不要な管理ポートが残りやすい点がデメリットです。インターネットへ直接ポート転送すると、検索エンジンやスキャンによって管理画面を発見される可能性があります。

IPデバイスは業務PCと同じネットワークへ無条件に置かず、VLANやファイアウォールで通信先を制限します。クラウド管理だけを使う機器なら外部からLANへ入るポートを開けず、必要なアウトバウンド通信だけを許可します。サポートが終了した機器は固定IPを変えるだけでは保護できないため、隔離または交換の対象です。

手動設定によるIP重複と属人化

端末で手動固定したアドレスがDHCPの配布範囲に含まれていると、別端末へ同じIPが配られて競合する場合があります。競合時は通信が断続的になり、再起動すると一時復旧するなど、原因を見つけにくい症状が出ます。台帳へ記録せずに空いて見えるアドレスを使う運用は避けます。

ネットワークのゲートウェイやDNSを変更した際も、手動設定端末だけ古い情報が残ります。固定対象が10台程度なら台帳で追えますが、50台を超えるなら集中DHCPへ移し、300台を超えるならIPAMと変更履歴を組み合わせる設計が現実的です。

スマートフォン・私物端末のIP固定の注意点

iOSやAndroidのWi-Fi設定で静的IPを入力した場合、そのSSIDにのみ設定が適用され、ゲートウェイやDNSが変更されると通信不能になる場合があります。また、プライベートWi-Fiアドレス機能によってMACアドレスが変わると、DHCP予約との対応が外れます。業務用SSIDはMDMでWi-Fi設定を配布すると一括管理でき、MDMで管理できない私物端末では固定IP割り当てを接続制御の根拠にしない構成を選びます。

送信元IP制限だけに頼る失敗

許可されたオフィスやVPN内の端末が侵害されると、攻撃通信も許可IPから到達します。NISTはSP 800-207「Zero Trust Architecture」(nvlpubs.nist.gov)で、ネットワーク上の場所や資産の所有関係だけを理由に暗黙の信頼を与えない考え方を示しています。IP許可リストは入口を狭める補助条件として機能しますが、以下の統制をIP制限で代替することはできません。

  • MFA(多要素認証)の有効化

  • 管理者アカウントの個人割り当てと共有排除

  • 端末の健全性確認(MDM・端末証明書)

  • 最小権限の付与とアクセスログの監視

固定IP経路の単一障害点

全社員の通信をオフィスの固定IPルーターへ集めると、回線、ルーター、電源のどれか一つが止まっただけでSaaSへ接続できなくなります。これがSPOF、つまり単一障害点です。通信量の集中によって遅延も発生します。

業務停止を許容できない場合は、回線とルーターを二重化し、切り替え後の出口IPもSaaSへ事前登録します。二つのIPを登録できないSaaSなら、クラウド型エグレスIPを共通出口にする設計へ切り替えます。

2026年版のIPv6 IPoEと固定IPの選び方

IPv6 IPoEでも固定IPを利用できるサービスはありますが、IPv4 over IPv6の方式、割り当て仕様、利用可能ポート、対応ルーターをセットで判断します。

IPoEとIPv4 over IPv6の関係

IPoEは、主にIPv6インターネットへ接続する方式です。IPv4サイトへ接続するため、IPv4パケットをIPv6網上で運ぶIPv4 over IPv6が併用されます。代表的な方式にはMAP-EとDS-Liteがありますが、これらは固定IPサービスの名称ではありません。

MAP-Eの一般的な共有型サービスでは、一つのグローバルIPv4を複数契約者で共有し、利用者ごとに使えるポート範囲を分けます。DS-Liteでは、事業者側の装置でアドレス変換を行う構成が一般的です。この場合、利用者が任意の受信ポートを開けられず、外部から自社機器へ接続する用途に合わないことがあります。

「IPoEでは固定IPが使えない」という誤解

IPoEそのものが固定IPを禁止しているわけではありません。ISPが固定IPv4、固定IPv6、専用のトンネル終端、ポート制限のない接続メニューを提供し、ルーターがその仕様に対応していれば利用できます。反対に、共有IPv4の一般プランを契約しただけでは、従来のPPPoE固定IPv4をそのまま移行できない場合があります。

固定IPv4が必要な理由がSaaSの許可リストだけなら、受信ポートを開ける機能は不要です。固定された出口IPv4を提供できれば要件を満たします。自社サーバー公開や拠点間VPNの着信が必要なら、固定性に加えて利用可能なポート、NAT、VPNパススルー、MTU、冗長化を確認し、条件を満たせば移行します。満たさなければPPPoE併用、別回線、クラウド終端を選びます。

対応サービスとルーターの判断項目

ISPへの確認は、固定IPの有無だけで終わらせません。次の項目を一度に提示すると、用途に合わない契約を避けられます。

  1. 固定されるのはIPv4、IPv6プレフィックス、または両方のどれか

  2. IPv4は占有か共有か、受信ポートを任意に利用できるか

  3. 接続方式、認証方式、ルーターへ投入する設定情報

  4. 利用予定ルーターの機種名とファームウェア版が動作確認対象か

  5. 複数固定IPの割り当て方法と、利用可能な実アドレス数

  6. 回線障害や機器交換後も同じアドレスを引き継げるか

  7. 逆引きDNS、フィルタリング、ログ、サポート範囲の有無

OCNビジネスのインターネット接続サービス案内では、接続サービスごとに提供条件が分かれています。NTTコミュニケーションズの公式案内で対象回線と申込可能なメニューを確認し、固定IPv4と受信ポートの両方が必要なら両条件を満たすメニュー、出口固定だけなら固定エグレスを含む方式へ絞ります。

IPv6普及率データの読み方

GoogleのIPv6統計(google.com/intl/en/ipv6/statistics.html)は、Googleサービスへアクセスした利用者のうちIPv6を使った割合を国別・日次で掲載しています。同ページの「Per country/territory IPv6 adoption」で日本を選ぶと時系列グラフを確認できます。2025年から2026年にかけての日本の表示値はおおむね50〜60%台で変動していますが(参照日により異なるため、判断時に最新値を確認してください)、この数字はGoogleサービス利用者側の観測であり、企業ネットワーク内トラフィック全体や全ISPの導入率を直接表す統計ではありません。

IPv6比率が高いことだけを理由に、IPv4固定IPを廃止する判断はできません。取引先SaaS、VPN、監視サービスがIPv6へ対応しているかを棚卸しし、全依存先が対応していればIPv6中心へ移行します。IPv4限定の依存先が残るなら、必要な出口だけIPv4を保持します。従来記事で参照されていたGartnerのIT情報ページには企業内IPv4比率を裏付ける公開統計がないため、本記事では根拠の確認できない比率を採用していません。

2026年の固定IPコストとゼロトラスト代替策

2026年の固定IP運用では、回線オプション料だけでなく、クラウドのIPv4課金、VPN保守、冗長化、端末管理を総コストに含めます。

AWSのパブリックIPv4課金

AWSは2024年2月1日から、使用中・アイドル状態を問わず確保しているすべてのパブリックIPv4アドレスに対して、1アドレス1時間当たり0.005米ドルを課金しています。AWSはパブリックIPv4課金の公式発表で対象と開始日を説明し、Amazon VPCの公式料金表で現行単価を掲載しています。

1か月を730時間として計算すると、1アドレスは3.65米ドルです。1ドル150円で換算すれば月約548円、年約6,570円です。10個を常時利用すると年約6万5,700円になり、NAT Gateway、ロードバランサー、データ転送などの料金は別に発生します。為替で円換算額は変わるため、社内試算では米ドル単価と採用レートを併記します。

固定IP方式別のコスト構造

ISPの料金は回線種別、地域、IP数、サポートによって異なるため、根拠のない一律相場ではなく、同じ比較軸で見積もります。

方式

直接費用

追加運用

適する要件

ISP固定IPv4

回線料、固定IPオプション、対応ルーター

拠点機器、電源、障害対応、冗長化

拠点間VPN、オフィス出口、受信通信

AWSパブリックIPv4

1IP当たり0.005米ドル/時

セキュリティグループ、監視、パッチ

クラウド資源の公開、NAT、固定宛先

クラウド固定エグレスIP

ID料金と固定出口オプション、料金は要問い合わせの場合あり

IdP連携、端末エージェント、ポリシー

リモート端末からSaaSへの固定送信元

自前の出口ノード

仮想サーバー、パブリックIP、通信料

OS更新、冗長化、鍵管理

小規模検証、限定された管理通信

Cloudflare Zero Trustの固定エグレスIP

CloudflareはDedicated Egress IPの公式ドキュメントで、Gatewayを経由する通信に専用の出口IPを適用する仕組みを説明しています。社員がオフィス外にいても、対象通信をクラウドへ経由させれば、取引先からは登録済みの固定IPに見せられます。

この方式は拠点回線へのヘアピン通信を減らせますが、固定エグレスIPだけでゼロトラストが完成するわけではありません。IdPによる認証、MFA、端末状態、アプリ単位のポリシー、ログ保存を組み合わせます。対象SaaSがIP許可リストを要求し、端末エージェントと監査ログを運用できるなら限定部門から検証し、運用できないなら拠点VPNの冗長化を先に整えます。

Tailscaleと出口ノード

Tailscaleは端末間に暗号化されたメッシュネットワークを構成し、出口ノードを指定するとインターネット通信をそのノードから出せます。固定IPを持つクラウドVMを出口ノードにすれば、少人数の管理者が許可リスト型システムへ接続する用途に利用できます。

ただし、出口ノードのOS、パブリックIP、帯域、冗長化は利用企業側の管理対象です。1台だけでは単一障害点になります。全社員のWeb通信を処理するなら、帯域設計、フェイルオーバー、ログ、サポートを備えたSASEと比較し、少人数の管理通信だけなら自前ノードを候補に残します。

VPN機器を狙う攻撃への対策

警察庁は「令和6年におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等」(2025年公表、npa.go.jp)で、ランサムウェア被害222件を確認しています。感染経路を調査できた115件のうち、VPN機器からの侵入が63件で55%、リモートデスクトップからの侵入が36件で31%でした。固定IPを使う境界機器を置くだけでは、脆弱性を突く侵入を防げません。

VPNを維持する場合は、インターネットから見える管理画面を閉じ、サポート中のファームウェアへ更新し、MFAとログ監視を有効にします。更新できない機器ならIP制限の追加で延命せず、交換またはZTNAへの移行対象にします。

固定IPアドレスの活用シーンと企業事例

固定IPは、相手システムが送信元IPを要求する場面と、LAN内の機器を安定して参照する場面に絞ると費用対効果を説明しやすくなります。

リモートワークの固定エグレス構成

社外端末の送信元をオフィスの固定IPにするには、Wi-Fiアクセスポイントを設定するだけでは成立しません。端末からオフィスVPNへ接続してインターネット通信をオフィスから出す、またはクラウドプロキシやSASEを経由する経路設計が必要です。

構成は「端末認証→VPNまたはZTNA→固定出口→SaaS」の順です。SaaS側では固定出口を許可リストへ登録し、IdP側ではMFAと条件付きアクセスを有効にします。固定IPは接続元ネットワークを限定し、ユーザー本人と端末の確認はIdPと端末管理が担当します。

OCNのIPoE対応サービスを使う構成例

OCNの法人向けインターネット接続を使う企業では、PPPoEからIPoEへ移行しながら、SaaSの許可リスト用に固定された出口IPを維持する構成が候補になります。実際の提供方式、固定IP数、対応ルーター、受信ポートは契約メニューで異なるため、出口固定だけならその条件、サーバー公開も行うなら着信条件まで見積書へ明記します。

切り替え効果は「速度が必ず何倍になる」とは表現できません。移行前後で業務時間帯の遅延、パケットロス、SaaS応答時間、VPNスループットを同じ条件で測定します。混雑がPPPoE網終端に起因し、IPoE移行後に指標が改善すれば通信品質面の効果として記録できます。

メルカリのTailscale活用事例

Tailscaleは公式の顧客事例で、日本企業の株式会社メルカリによる開発環境へのアクセス管理を紹介しています。メルカリは、ネットワーク上の場所だけに依存せず、IDを基準に開発者と対象リソースの接続を管理する用途でTailscaleを採用しています。

この事例は、取引先SaaS向けの固定エグレスIP導入とは目的が異なります。固定IPをすべての認証に使うのではなく、開発者とリソースの接続にはIDベースのメッシュ接続を使い、固定IPが必須の外部サービスだけ出口ノードへ集約する設計の参考になります。公式事例が削減率や削減金額を公開していない項目は、定量成果として扱いません。

IPカメラとIoT機器の活用

IPカメラやIoT機器では、LAN内のアドレスを固定すると、録画サーバー、監視ツール、保守端末が同じ宛先を参照できます。PoE対応スイッチを使えば、LANケーブルで通信と給電をまとめられる機器もあります。

外部から映像を確認するためにカメラへ直接ポート転送する構成は避けます。メーカーのクラウド中継、VPN、ZTNAのいずれかを使い、カメラ用VLANから業務PCへの通信を遮断します。保存期間と画質から帯域・容量を計算し、障害時にも録画を継続する必要があればレコーダーとストレージを冗長化します。

用途別の選定フロー

  1. 相手SaaSがIP許可リストを必須としている場合は、必要なIPバージョンと登録可能数を確認します。

  2. 社員がオフィスだけで利用するならISP固定IP、社外でも利用するならVPNまたはクラウド固定エグレスを比較します。

  3. 外部から着信するサーバーがある場合は、占有IPv4、ポート、DNS、ファイアウォールを設計します。

  4. LAN内のプリンターやカメラだけを固定する場合は、ISP契約を変更せずDHCP予約を使います。

  5. 固定IPが本人確認の代わりになっている場合は、MFAと端末認証を先に追加します。

リモートワークにおける固定エグレス(出口)IPを経由したSaaSアクセス構成

▲ リモートワークにおける固定エグレス(出口)IPを経由したSaaSアクセス構成

固定IPアドレスの取得と手動設定の手順

固定IPの設定は、現行情報の保存、固定対象の選定、DHCP予約、手動設定、疎通確認、ロールバックの順で進めます。

グローバル固定IPの取得準備

最初に「固定したい対象」を要件票へ記入します。SaaSの接続元、VPNゲートウェイ、公開サーバー、社内機器では選ぶ方式が異なります。ISPへは、回線ID、利用場所、必要なIP数、IPv4またはIPv6、受信通信の有無、利用ポート、ルーター型番、冗長化条件を伝えます。

固定IPの割り当て情報を受領したら、IPアドレスだけでなく、プレフィックス、ゲートウェイ、DNS、認証情報、接続方式、開通日、障害窓口を構成管理へ登録します。既存IPを許可リストで使っている場合は、新旧IPを一定期間併記できれば段階切り替え、併記できなければ停止時間を設定して一斉切り替えを行います。

設定前のバックアップと未使用アドレス確認

LAN内の手動設定では、変更前に現在のIP、サブネットマスク、デフォルトゲートウェイ、DNS、DHCP有効・無効を控えます。Windowsではコマンドプロンプトの「ipconfig /all」、macOSではネットワーク設定画面または「networksetup -getinfo Wi-Fi」で確認できます。

次にルーターまたはDHCPサーバーで配布範囲を確認します。例えば192.168.10.100〜192.168.10.200を自動配布しているなら、台帳で未使用と確認した192.168.10.10などを手動設定用に分けます。アドレスの応答がないことだけでは未使用を断定できません。電源が切れている機器もあるため、DHCPリース、ARPテーブル、資産台帳を突合します。

DHCP予約の設定

DHCP予約に対応する機器では、端末の手動設定より先に予約を試します。管理画面で対象機器のMACアドレス、予約するIP、ホスト名を登録し、端末のIP取得設定は自動のままにします。既存リースが残っている場合は再接続またはリース更新を行います。

  1. 対象機器の有線LANまたはWi-FiのMACアドレスを特定します。

  2. DHCP管理画面で予約IPと機器名を登録します。

  3. 予約IPが配布範囲や別の固定機器と競合していないか確認します。

  4. 端末を再接続し、予約したIPが付与されたことを確認します。

  5. 台帳へMACアドレス、IP、設置場所、用途、管理者、廃止予定日を記録します。

MACアドレスが変わる端末では予約が外れるため、ランダム化機能の扱いを決めます。社給端末をMDMで管理できるなら業務SSIDの設定を統一し、私物端末ではMACアドレスによる固定割り当てをアクセス認証として使いません。

Windows 11の手動設定

MicrosoftはWindows 11のTCP/IP設定変更手順を公開しています。DHCP予約を使えない機器だけ、次の手順で静的割り当てに変更します。

  1. 「スタート」から「設定」、「ネットワークとインターネット」を開きます。

  2. 「イーサネット」または「Wi-Fi」を選び、「IP割り当て」の「編集」を開きます。

  3. 「手動」を選択してIPv4をオンにします。

  4. IPアドレス、サブネットプレフィックス長、ゲートウェイ、優先DNS、代替DNSを入力します。

  5. 保存後にゲートウェイ、DNS、業務システムの順で疎通を確認します。

プレフィックス長24は、一般的な255.255.255.0に相当しますが、社内設計が必ず24とは限りません。控えた現行値またはネットワーク設計書と一致しない場合は入力を止め、正しいセグメントを特定してから再開します。

macOSの手動設定

AppleはmacOSのTCP/IP設定変更手順を公開しています。画面名はmacOSの版によって変わる場合がありますが、設定項目は共通です。

  1. Appleメニューから「システム設定」、「ネットワーク」を開きます。

  2. 対象のWi-FiまたはEthernetを選び、「詳細」を開きます。

  3. 「TCP/IP」でIPv4の構成を「手動」に変更します。

  4. IPv4アドレス、サブネットマスク、ルーターを入力します。

  5. 「DNS」でDNSサーバーを設定し、「完了」、「適用」の順で反映します。

疎通確認とロールバック

設定後は、同一セグメント、デフォルトゲートウェイ、DNS、インターネット、業務アプリの順に確認します。IPアドレスへ到達できるのにホスト名で接続できない場合はDNS、LAN内には届くのに外へ出られない場合はゲートウェイやルーティングを確認します。

  • 自分のIP、サブネット、ゲートウェイが設計書と一致している

  • ゲートウェイへ到達できる

  • 社内DNSで業務用ホスト名を解決できる

  • 外部DNSとインターネットへ到達できる

  • プリンター、NAS、カメラ、SaaSが通常どおり動作する

  • 監視、バックアップ、許可リストに新しいIPが反映されている

通信できなければ、保存した値へ戻すかIP割り当てを自動へ戻します。ロールバックで復旧した場合は、IP重複、プレフィックス、ゲートウェイ、DNS、VLAN、ファイアウォールを一項目ずつ切り分けます。

固定IPアドレスの安全な取得・設定を進める5段階の手順

▲ 固定IPアドレスの安全な取得・設定を進める5段階の手順

よくある質問

固定IPの料金、IP重複、IPv4課金、IPoE、代替策について、実務で判断しやすい形で回答します。

Q:固定IPアドレスを手動設定するメリットは何ですか?

A:DHCPがない環境でも機器へ同じアドレスで接続でき、プリンター、IPカメラ、ネットワーク機器の管理先を固定できます。DHCP予約が使える場合は、端末側を自動取得のまま固定できるため、通常は予約のほうが変更管理に適します。

Q:IPアドレスを固定したらインターネットにつながらない原因は何ですか?

A:IP重複、サブネットの誤り、デフォルトゲートウェイやDNSの入力ミスが主な原因です。いったん自動取得へ戻して復旧するなら、DHCP配布範囲と未使用アドレスを確認してから再設定します。

Q:AWSのIPv4有料化は固定IPだけに影響しますか?

A:AWSはパブリックIPv4アドレスに1時間当たり0.005米ドルを課金しており、Elastic IPという名称の固定IPだけに限定されません。不要なパブリックIPv4を外し、ロードバランサーやNATへ集約するとアドレス数を減らせます。

Q:IPv6 IPoEでは固定IPv4を使えませんか?

A:IPoEでもISPが対応メニューを提供し、ルーターが仕様に対応していれば固定IPv4を利用できます。共有型のMAP-EやDS-Liteでは受信ポートに制約がある場合があるため、固定性だけでなく占有・共有、利用可能ポート、着信要件を確認して方式を決めます。

Q:固定IPを使わない代替策はありますか?

A:社内機器にはDHCP予約、リモートアクセスにはZTNAやメッシュVPN、SaaSの許可リストにはクラウド固定エグレスIPを利用できます。相手システムが固定IPv4を必須としている場合は、固定IPを完全に廃止せず、必要な出口だけへ集約します。

まとめ

固定IP運用を見直す最初の一歩

固定IPアドレスは、固定グローバルIP、固定エグレスIP、LAN内の手動設定、DHCP予約に分けて判断します。まず社内の固定IP、許可リスト、VPN、プリンター、IPカメラを棚卸しし、用途・管理者・依存先を台帳へ記録します。LAN機器はDHCP予約へ寄せ、MFAのないIP制限は認証を追加します。次に不要なクラウドIPv4を削減し、拠点経由が単一障害点ならZTNAやクラウド固定エグレスIPを限定部門で検証する流れが、明日から着手できる改善策です。

本記事の内容に誤り等がございましたら、こちらからご連絡ください。

監修

Admina Team

情シス業務に関するお役立ち情報をマネーフォワード Adminaが提供します。
SaaS・アカウント・デバイスの管理を自動化し、IT資産の可視化とセキュリティ統制を実現。
従業員の入退社対応や棚卸し作業の工数を削減し、情報システム部門の運用負荷を大幅に軽減します。
中小企業から大企業まで、情シス・管理部門・経営層のすべてに頼れるIT管理プラットフォームです。