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DaaSとは?メリット・デメリットと失敗しない選定基準

DaaSとは?メリット・デメリットと失敗しない選定基準

DaaSとは?メリット・デメリットと失敗しない選定基準

DaaSとは?メリット・デメリットと失敗しない選定基準

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【読み分けガイド】 経営・稟議担当の方は「DaaSのメリット」「費用とTCOの評価」を先にご覧ください。インフラ・情シス設計担当の方は「DaaS環境の構成要素」「DaaSのデメリットと失敗パターン」「DaaS導入後の運用設計」が設計判断に直結します。PoC推進担当の方は「DaaS導入前のPoCチェックリスト」から読み始めると効率的です。

DaaSは、パソコンに業務データやアプリケーションを個別に配置する運用から、クラウド上の仮想デスクトップを集中管理する運用へ移行する選択肢です。テレワーク端末の統制、入退社時のアカウント発行、PC調達の長期化に課題を抱える情報システム部門では、導入効果を検討する場面が増えています。

一方で、DaaSは導入すれば自動的に安全・低コストになる仕組みではありません。ローカルドライブ転送、クリップボード、印刷などの機能を許可した場合、端末側に情報が残る可能性があります。この挙動はDaaS製品やポリシー設定によって異なります。採用製品のドキュメントで「ローカルドライブリダイレクト」「クリップボードリダイレクト」「プリンターリダイレクト」の既定値と制御方法を確認し、許可する場合は監査ログで持ち出しを追跡できるか併せて確認します。また、通信品質や電源管理が不十分なら利用者の不満や想定外の請求につながります。仮想デスクトップの基本も踏まえながら、DaaS環境とは何か、どの条件で採用できるかを実務目線で整理します。

DaaS(クラウド型仮想デスクトップ)の概要、導入におけるメリットやデメリット、失敗しないための選定基準と具体的な設計ポイントをわかりやすくまとめた解説用のインフォグラフィック。

DaaSとは

本記事のポイント

  • DaaSは、デスクトップ基盤の調達・保守をクラウド側へ移し、利用者には画面操作環境を配信する仕組みです。

  • VDIとの違いは、主に基盤の所有者、初期投資、運用分担、拡張時の調達リードタイムにあります。

  • DaaSのメリットは端末統制と展開速度ですが、通信・アプリ互換性・従量課金をPoCで検証しなければ効果は確定しません。

  • 選定時は機能適合性、TCO、セキュリティ、サポートを点数化し、利用者の業務別に判断します。

DaaSはDesktop as a Serviceの略で、読み方は「ダース」です。クラウド内で稼働するWindowsやLinuxの画面を、PC、シンクライアント、対応ブラウザなどから表示・操作します。利用者が扱うのは画面、キーボード、マウス操作が中心であり、処理やデータ保存の多くはクラウド側で実行されます。Microsoft Azure上のAzure Virtual DesktopやAWS上のAmazon WorkSpacesは、クラウド仮想デスクトップサービスの例として広く言及されます。ただし、提供形態や責任分界は製品ごとに異なるため、各サービスの公式仕様書で個別に確認します。

DaaS環境の構成要素

DaaS環境は、仮想マシンだけで完結せず、ID管理、ネットワーク、データ保存、監視を含めて設計します。一般的には、利用者を認証するID基盤、仮想デスクトップのイメージ、ユーザープロファイル、ファイル保存先、インターネットまたは閉域ネットワーク、運用ログで構成します。ユーザーごとの設定をプロファイルコンテナとして分離すると、共通アプリをマスターイメージで更新しながら個人設定を維持しやすくなります。

クラウド上のデスクトップへ接続するため、利用場所を問わず使えるとは限りません。対応端末、端末準拠状況、多要素認証、接続元IP制限、回線品質、アプリケーションの動作条件を満たす利用者だけに接続を許可する設計が前提です。OS、Microsoft 365、ID基盤の契約関係を切り分けて整理すると、見積もりと責任分界が明確になります。Azure Virtual Desktopの構成と責任分界については、Azure Virtual Desktopの解説記事でOS・ライセンス・ID基盤ごとの担当範囲を確認できます。

VDIとシンクライアントの相違点

一般的な整理として、VDIは仮想デスクトップ基盤という技術・構成を指す用語として用いられ、DaaSはクラウド事業者がその基盤をサービスとして提供する形態を指すことが多いです。ただし、両者の定義は資料や製品によって異なるため、比較検討時は各製品の仕様書で用語の意味を個別に確認します。自社データセンターにVDIを構築する場合は、サーバー、ストレージ、ネットワーク、冗長化設備を自社または委託先で保有・運用します。一方のDaaSは、クラウド事業者が基盤の多くを担い、企業は利用者環境、ポリシー、アプリケーション、ID連携を中心に管理します。

シンクライアントは、端末側の保存・処理を抑え、サーバー側やクラウド側の環境を利用する端末または運用方式です。DaaSをシンクライアントから使うことはありますが、両者は同義ではありません。既存PCをDaaS接続端末として使うことも、シンクライアントからオンプレミスVDIを使うことも可能です。

比較項目

DaaS

オンプレミスVDI

シンクライアント

位置付け

クラウド型の仮想デスクトップサービス

自社構築する仮想デスクトップ基盤

端末または端末運用の考え方

基盤の保有

クラウド事業者が提供

自社または委託先が保有

単独では基盤を持たない

初期投資

抑えやすく、利用料中心です

設備・構築費が先行します

端末調達費が発生します

運用負荷

物理基盤の保守を減らせます

容量計画や保守更新が必要です

端末設定・交換運用が必要です

拡張速度

契約・設定後に増減しやすいです

設備の空き容量と調達に左右されます

端末在庫と接続先に左右されます

なお、デスクトップ仮想化の市場は変化しています。ITR(アイ・ティ・アール)は、2022年度の国内DaaS市場の売上金額が前年度比11.9%増の366億9000万円であったとIT Leadersに発表しています(IT Leaders掲載記事)。数値は調査時点のものであり現在の市場規模を示すものではありませんが、クラウド型デスクトップが独立した選定対象として扱われていることを示す参考情報です。現在の市場規模はITRの公式発表で確認できます。

▶ 関連記事: 【図解】AVDとは?Windows 365との違いや活用法を解説

DaaSと従来のVDI(オンプレミス)における主な違いの比較

▲ DaaSと従来のVDI(オンプレミス)における主な違いの比較

DaaSのメリット

DaaSのメリットは、デスクトップ環境を標準化しながら、利用者の増減と端末統制に対応しやすくなる点です。

キッティングと更新作業の集約

物理PCを中心に運用すると、調達後にOS設定、業務アプリ導入、パッチ適用、資産登録、発送、故障交換が発生します。DaaSでは共通アプリを含むマスターイメージを更新し、利用者に新しい環境を配信する運用へ切り替えられます。端末交換時も、利用者が同じアカウントで仮想デスクトップに接続できれば、端末固有の復旧作業を減らせます。

AWSが公開する国内事例では、DaaSへの移行と同時に端末・アカウント・業務アプリの標準化を進めた結果として管理工数の大幅削減が報告されています。PCごとに例外設定を残したまま移行した場合、同等の効果は得られません。詳細は「国内企業の導入事例」の章を参照してください。

端末紛失時の情報統制

DaaSでは、業務データを仮想デスクトップ、社内ファイルサーバー、または承認済みクラウドストレージへ置き、接続端末に恒常的なデータを残さない設計を取りやすくなります。端末の盗難・紛失時には、アカウント停止やセッション切断でアクセス経路を遮断しやすく、端末回収を待たずに初動対応を進められます。

ただし、「DaaSなら端末にデータが残らない」と断定するのは誤りです。ローカルドライブのリダイレクト、ファイルダウンロード、コピー&ペースト、印刷、USBデバイス転送、ブラウザのキャッシュなどを許可した場合、情報が端末側へ持ち出される余地があります。ただし各機能の制御方式や既定値はDaaS製品ごとに異なるため、採用製品の仕様書で個別に確認します。機密情報を扱う部門では、これらの制御と多要素認証を組み合わせ、監査ログで例外利用を追跡できる構成にします。クラウドセキュリティの基本対策と合わせて、端末・ID・データの三層でポリシーを設計します。

利用者増減への対応

DaaSは、採用、プロジェクト開始、拠点開設、季節変動などに合わせてデスクトップを増減しやすい点が利点です。オンプレミスVDIでは、ピーク利用者数に合わせたサーバー・ストレージの調達が必要になり、余剰能力を抱えやすくなります。Microsoftが公開するNECの事例では、Azure Virtual Desktop導入後に新しいデスクトップモデルを提供するまでの期間が大幅に短縮されたと報告されています(詳細は「国内企業の導入事例」の章を参照)。

短期利用者向けに標準デスクトップを発行し、契約終了時にアカウントとプロファイルを削除する運用を定義できるなら、DaaSは特に適合します。一方、全員が高性能GPUを常時必要とする業務では、利用時間と必要スペックを分けずに契約すると費用が膨らむため、利用者を同一モデルへ一律に割り当てない設計が必要です。

▶ 関連記事: クラウドセキュリティとは?対策と仕組みを分かりやすく解説

DaaSのデメリットと失敗パターン

DaaSのデメリットは、ネットワーク依存、従量課金の変動、端末ポリシーの設定漏れ、既存業務との互換性に集約されます。

通信遅延と帯域不足

画面転送型のDaaSでは、回線の遅延、ジッター、パケットロス、Wi-Fiの混雑が操作感に直接影響します。文字入力や表計算だけなら問題が出なくても、複数画面、高解像度、Web会議、動画再生、CAD、音声認識を加えると必要な帯域と処理能力が変わります。TeamsやZoomなどを仮想デスクトップ内で利用する場合は、音声・映像の最適化方式が利用可能か、接続端末側で処理するリダイレクトに対応するかを検証対象に含めます。

よくある失敗は、本社回線でだけ快適に動くことを確認して全社展開することです。在宅回線、モバイル回線、地方拠点、社外Wi-Fiを含む利用パターンで遅延と切断率を測定し、基準を満たす利用者だけに展開します。業務停止が許容できない部署では、回線障害時の連絡手段、代替端末、ローカルで継続できる作業範囲を事前に定義します。ネットワーク混雑の原因と対策も踏まえ、回線増強だけでなく接続経路を分ける設計を検討します。

従量課金と固定費の増加

初期投資を抑えられることと、総保有コストが必ず下がることは別です。双日テックイノベーションは自社コラム記事で、Azure Virtual DesktopとAmazon WorkSpacesの料金体系を比較しています。ただし、各サービスはプラン・リージョン・契約条件によって課金方式が異なり、一方が「月額従量課金のみ」や「月額固定のみ」に限られるわけではありません。料金体系はリージョンや契約時期により変わるため、実際の見積もりにあたってはAzure公式料金表およびAmazon WorkSpacesの公式料金ページで最新の条件を照合してください。照合の結果、固定料金が選択できるリージョン・プランが存在しない場合は、従量課金のみを前提に試算します。サービス料金に加え、仮想マシン、ストレージ、ネットワーク転送、バックアップ、監視、ID、サポート、運用委託、既存ライセンスを含めて比較します。

たとえば100人が月20営業日、1日8時間利用する想定では、延べ稼働時間は月16,000時間です。実際の請求額は同時接続数、自動停止の設定、課金単位によって変わるため、延べ時間をそのまま請求時間とみなして試算しないことが前提です。常時起動の構成と、夜間・休日に停止する構成では請求額が変わります。利用ログから同時接続数、平均稼働時間、ピーク時間帯を集計できるなら従量課金の限定検証に進み、稼働時間を統制できないなら固定料金または停止自動化を含む設計で比較します。外貨建てのクラウドサービスでは為替変動も予算差異の要因になるため、月額単価だけで稟議を作る方法は避けます。

アプリケーションと周辺機器の非互換

レガシーアプリケーション、USBドングル、シリアル接続機器、スキャナー、プリンター、音声機器、GPUを使う業務は、DaaS移行で障害になりやすい領域です。アプリが仮想環境で動作しても、印刷の帳票崩れ、USB転送の切断、ICカード認証、マクロ実行、ライセンスサーバー接続で業務が止まることがあります。メーカーが仮想デスクトップ環境での動作を保証しているか、対象OSとバージョンを確認できれば対象業務に含め、保証外なら物理PCを残すか代替方式を用意します。

Windows 10やWindows 11のライセンスをBYOL(持ち込みライセンス)でAmazon WorkSpacesに適用する場合、Microsoftのライセンス条件を満たすためにAmazonデータセンターの専有ハードウェア上で実行される構成が必要になることがあります。ただし、ライセンス込みの提供プランや別の構成では異なる場合があります。見積もり前にAmazon WorkSpacesの料金ページの「Bring Your Own License」項目と、AWSのライセンスモビリティガイダンスで専有ハードウェア(Dedicated Hosts)要件の有無を照合します。専有ハードウェアが必要なプランでは1時間あたりの単価が共有プランと異なるため、試算を二パターン作成して比較します。

責任分界と障害対応の曖昧化

DaaSではクラウド事業者、販売パートナー、ネットワーク事業者、ID管理者、アプリ担当、利用部門に運用が分かれます。障害発生時に「どこが原因か」を切り分けるログと連絡経路がなければ、復旧時間が長くなります。サービス稼働率だけを見るのではなく、認証、名前解決、VPN、プロファイル、ファイルサーバー、業務アプリまで含めて障害切り分け表を作成します。

契約終了時のデータ取り出し、バックアップ保持期間、削除証跡、監査ログの保管先も同じ表に記載します。ログをAPIまたはCSVで取得できるなら既存の監視・SIEMへ集約し、取得できないなら管理画面の定期確認を担当者と頻度まで定める運用へ切り替えます。

DaaSの提供形態と利用方式

DaaSの提供形態は、ネットワーク分離の深さと運用モデルの違いを軸に選び分けます。具体的には、基盤をクラウド事業者と共有するか論理分離するか専有するか、および情シスが担う設計・運用範囲の広さで三つに区分されます。なお、以降で示す「パブリッククラウド」「バーチャルプライベートクラウド」「プライベートクラウド」の3区分は、ITトレンドなどが選定説明上の整理として用いる分類であり、業界共通の製品規格や契約上の定義ではありません。実際のサービスごとにネットワーク分離の実装と責任分界が大きく異なるため、候補製品の公式仕様書でネットワーク構成と管理境界を個別に照合します。

パブリッククラウドDaaS

パブリッククラウドDaaSは、パブリッククラウド上の共通サービスを利用する方式です。利用開始や台数増減の速さを重視し、標準的な業務アプリを多くの利用者へ提供したい場合に適しています。クラウド側の標準機能に合わせて設計するため、個別のネットワーク構成やハードウェア要件が強い場合は制約を確認します。

バーチャルプライベートクラウドDaaS

バーチャルプライベートクラウドDaaSは、クラウド内の論理的に分離されたネットワーク領域を利用する方式です。既存の社内ネットワーク、ファイアウォール、業務システムとの接続を設計しながら、クラウドの拡張性も確保したい場合に検討します。ネットワーク設計、名前解決、接続監視の責任範囲が広がるため、標準型より情シスの設計・運用項目は増えます。

プライベートクラウドDaaS

プライベートクラウドDaaSは、特定企業向けの専用性が高い環境を用意する方式です。厳格なネットワーク分離、既存設備との密接な連携、独自の運用要件がある場合に候補になります。その代わり、初期構築、変更、増設に要する時間と費用を個別に見積もる必要があります。ITトレンドは、DaaSの提供形態としてプライベートクラウド、バーチャルプライベートクラウド、パブリッククラウドの3種類を紹介しています。

提供形態

適合しやすい条件

運用上の特徴

確認が必要な事項

パブリッククラウド

短期間で標準環境を展開したい場合

基盤運用を抑えやすいです

標準仕様、リージョン、接続制御

バーチャルプライベートクラウド

既存システムと安全に接続したい場合

ネットワーク設計の自由度があります

閉域接続、DNS、監視分担

プライベートクラウド

専用要件や個別統制を優先する場合

個別設計・個別運用が増えます

構築期間、増設条件、保守範囲

永続型と非永続型のデスクトップ

永続型は、利用者ごとに割り当てたデスクトップへ設定やアプリ変更を保持する方式です。個別設定や開発ツールが多い利用者に向きますが、イメージの統制と障害復旧に手間がかかります。非永続型は、ログオフ後に標準イメージへ戻す方式で、コールセンターや定型業務のように共通環境を使う部署で管理を標準化しやすくなります。

個人設定が必要な業務であっても、プロファイルとユーザーデータをデスクトップ本体から分離できるなら、非永続型を優先して検討します。分離できないアプリや個別設定が業務継続の前提なら、永続型または物理PCを含めた混在運用を選びます。展開方式にはフルクローン、リンククローン、ネットワークブートがあり、更新のしやすさとストレージ消費が異なります。

自社の要件に合わせたDaaS提供形態の選択フロー

▲ 自社の要件に合わせたDaaS提供形態の選択フロー

DaaS製品の選定基準

DaaS製品は、機能適合性、費用とTCO、セキュリティ、サポートを共通の評価表で採点すると、部門ごとの印象論を減らせます。

機能適合性の評価

最初に、利用者を業務パターンで分類します。文書作成・メール中心の標準利用者、複数モニターやWeb会議を多用する利用者、CAD・動画・解析を扱う高負荷利用者、USB機器や特殊アプリを使う利用者では、必要なCPU、メモリ、GPU、画面数、周辺機器転送が異なります。全利用者に高性能モデルを割り当てると費用が膨らみ、標準モデルだけで統一すると利用者の生産性を損ないます。

PoCでは、同時接続数、ログオン時間、アプリ起動時間、ファイル操作、印刷、会議、画面共有を業務シナリオ単位で測定します。性能基準を「速い・遅い」という感想で終わらせず、「月末処理を含むExcel操作を通常回線で完了できる」「会議中に音声断が発生しない」といった業務完遂の可否で判定します。

費用とTCOの評価

TCOでは、DaaSの利用料だけでなく、OS・アプリのライセンス、ストレージ、ネットワーク、バックアップ、監視、ヘルプデスク、端末更新、移行作業、教育費を加算します。既存PCを継続する場合の購入・保守・キッティング・交換・廃棄費用も同じ期間で並べます。料金はリージョン、契約、稼働時間、性能構成で変動するため、公開価格だけから年間費用を断定しません。

DaaS候補の評価では、機能適合性・費用TCO・セキュリティ・サポートの4軸を共通の評価表に並べると、部門ごとの印象論を減らせます。各軸の配点は自社の優先事項に合わせて設定します。

セキュリティと統制の評価

セキュリティ評価では、SSO、多要素認証、条件付きアクセス、端末準拠判定、特権管理、操作ログ、管理者ログ、保存データの暗号化、バックアップ、脆弱性対応、インシデント連絡を確認します。個人情報や機密情報を扱うなら、データ保存リージョン、委託先の監査報告、ログの保管期間、契約終了時の消去方法まで評価対象に含めます。

デジタル庁が2025年5月に公開した方針案(デジタル庁・クラウド利用方針案2025年5月)には、政府情報システムがガバメントクラウドを利用しない場合はISMAPまたはISMAP-LIUのクラウドサービスリストに登録されたサービスを原則として選定する考え方が示されています。同文書では、クラウドを利用する政府情報システムのデータセンターについて国内設置を基本とする方針も記載されています。この方針案は政府情報システムを対象としたものであり、民間企業に同じ基準が一律に適用されるわけではありません。ただし、国内保管や第三者評価を契約条件として検討する際に、整理の参考として参照できます。方針の最終内容は正式決定後の文書で照合します。

サポートと運用分界の評価

サポートは受付時間だけでなく、障害時に誰がどこまで調査するかで比較します。クラウド基盤、仮想デスクトップ、ID、ネットワーク、業務アプリ、端末の担当を一覧化し、一次切り分けの窓口とエスカレーション時間を確認します。24時間稼働の部署では、平日日中だけの支援で業務継続できるかを、障害発生時の体制から逆算します。

候補のリストアップから契約までの期間は、DaaSでは特殊アプリ、閉域接続、GPU、複数拠点を含む案件ほど長くなります。まず標準利用者のPoCを先行させ、例外利用者は別トラックで評価すると、選定全体の期間を短縮しやすくなります。

失敗を防ぐDaaS導入・選定の5つのステップ

▲ 失敗を防ぐDaaS導入・選定の5つのステップ

DaaS導入前のPoCチェックリスト

PoCでは、利用者が実際に業務を完遂できるか、運用担当が継続管理できるか、費用を統制できるかの三点を同時に検証します。

利用者と業務の確認項目

PoC対象者は、標準的な事務作業だけでなく、Web会議利用者、複数画面利用者、特殊アプリ利用者を含めます。経理の月次処理、営業の顧客管理、コールセンターの通話、設計部門のCADなど、失敗できない業務をシナリオとして用意します。ログオン、アプリ起動、ファイル保存、印刷、会議参加、画面共有、ログオフまでを一連で測定し、利用者アンケートだけで合否を決めません。

  • ☐ 対象アプリが仮想環境と対象OSで動作保証されているか

  • ☐ USB、ICカード、プリンター、スキャナー、音声機器を接続できるか

  • ☐ 複数モニター、解像度、クリップボード、ファイル転送の要件を満たすか

  • ☐ ユーザープロファイル、ブラウザ設定、Office設定をログオン後も維持できるか

  • ☐ 障害時に利用者が業務を継続できる代替手段があるか

特殊機器や保証外アプリの動作が確認できれば対象部署を拡大し、確認できなければ物理PCを残す混在構成へ切り替えます。全社一律の移行を前提にすると、少数の例外業務が全体の導入を止めるためです。

ネットワークと認証の確認項目

ネットワークは平均速度だけでなく、遅延、ジッター、パケットロス、VPN経由時の挙動、拠点ごとのピーク時間を確認します。自宅・拠点・モバイル回線など、実際に利用する場所で測定します。認証では、SSO、多要素認証、端末の準拠状況、アカウント無効化後の接続遮断、管理者権限の付与・剥奪を試験します。

  • ☐ 利用者数が増えた時間帯に接続遅延や切断が発生しないか

  • ☐ Web会議中の音声、映像、画面共有が業務要件を満たすか

  • ☐ 社外端末からの接続を端末準拠・多要素認証で制御できるか

  • ☐ ローカル保存、コピー、印刷、USB転送を部署別に制限できるか

  • ☐ 認証、接続、管理操作のログを必要な期間保持できるか

監査ログを既存基盤へ集約でき、退職者アカウントの停止試験でも接続遮断を確認できた場合は、本番のアクセス設計へ進みます。ログの取得範囲や端末統制を満たせない場合は、対象データを限定するか、別の接続方式を採用します。

費用と運用の確認項目

費用検証では、PoC期間中の実測稼働時間と、利用者が必要とする性能を記録します。電源停止の自動化を設定した場合は、始業時の起動待ちと夜間停止が想定どおりに動くかも確認します。Azure Virtual Desktopの自動スケーリングをRunbookで構成する場合、実行環境やRunbookの種類によって最大実行時間に制限が設けられることがあります。実装前にMicrosoft Learnの公式ドキュメントで対象プランの制限値を確認し、制限を超える処理が想定される場合は処理を分割する設計を選びます。

  • ☐ ユーザー別・モデル別の稼働時間と同時接続数を取得できるか

  • ☐ 夜間、休日、長時間未使用時に自動停止できるか

  • ☐ ストレージ、バックアップ、ネットワーク転送を含む請求を把握できるか

  • ☐ マスターイメージ更新後にロールバックできるか

  • ☐ 一次対応、二次対応、ベンダー連絡の担当と時間帯が定義されているか

PoCの合格条件は開始前に文書化します。例えば、標準利用者の主要業務を完了できること、指定した端末制御が有効であること、月額予算の試算根拠を取得できることを条件にします。条件を満たした利用者群から段階展開し、未達の利用者群は原因別に再検証すると、全社展開後の手戻りを減らせます。

DaaS導入後の運用設計

DaaS導入後は、イメージ更新、ID管理、利用状況監視、障害対応を運用手順として固定すると、環境のばらつきを抑えられます。

マスターイメージとプロファイルの管理

共通アプリやOSパッチは、検証用イメージ、本番用イメージの順に反映します。更新後に業務アプリの起動、印刷、ログオン、Web会議、ファイルアクセスを確認し、問題が起きた場合に直前のイメージへ戻せるよう世代管理します。利用者のデスクトップへ直接アプリを追加する運用を認めると、原因調査と更新が難しくなるため、例外申請と期限を設けます。

ユーザープロファイルには、ブラウザ設定、Office設定、アプリ設定、個人データが混在しやすくなります。プロファイル容量の上限、保存先、バックアップ、破損時の復旧手順を決め、業務データはプロファイルではなく承認済みストレージへ保存するルールにします。これにより、非永続デスクトップでも利用者設定とデータ管理を両立しやすくなります。

アカウントライフサイクルの管理

入社、異動、休職、退職、委託開始、委託終了に合わせて、ID、グループ、ライセンス、仮想デスクトップ、共有フォルダ権限を連動させます。人事情報または申請ワークフローと連携できる場合は、所属変更を起点に権限を自動変更します。連携できない場合は、毎月のアカウント棚卸しで、人事台帳、ID、DaaS利用者、管理者権限を突き合わせます。

退職日を過ぎても有効なアカウントが残る状態は、DaaSの利便性をそのまま不正アクセスの経路に変えます。退職予定者のアカウント停止日時が人事情報から取得できるなら自動停止にし、取得できないなら申請期限と担当者を決めた手動停止へ切り替えます。

可用性と事業継続の設計

クラウド事業者の障害、回線障害、ID基盤障害、誤ったイメージ配信、ランサムウェアは、それぞれ復旧手順が異なります。復旧目標時間と復旧目標時点を業務ごとに定め、どのデータをどこから復元するか、誰が復旧判断をするかを整理します。DaaS基盤だけが復旧しても、認証やファイルサーバーが使えなければ業務は再開できません。

公共機関向けの調達仕様や調達ガイドラインの中には、災害や緊急時にクラウドサービス経由でクライアント環境を職員へ提供する構成を想定したものがあります。DaaSを平時の端末代替だけでなく、非常時の一時利用環境として設計する考え方は、民間企業の事業継続計画でも参考になります。災害時に利用するなら、平時から接続訓練とアカウント有効化手順を実施し、非常時だけ初めて使う環境にしないことが必要です。

国内企業の導入事例と市場動向

国内企業の事例では、DaaSは単なるテレワーク対策ではなく、調達期間の短縮と運用負荷の見直しを目的に導入されています。

東京反訳株式会社の導入事例

東京反訳株式会社は、文字起こし・反訳サービスを手がける企業です。Amazon Web Servicesが公開した事例によると、同社は2020年4月にAmazon WorkSpacesを47名の全社員へ順次拡大展開しました。公開事例では従業員規模は47名の展開対象として確認でき、全社的なリモートアクセス環境の整備が課題でした。

同社はAmazon WorkSpacesを利用して仮想デスクトップを提供し、管理方法を見直しました。その結果、管理工数を従来の3分の1に削減したとAmazon Web Servicesは紹介しています。課題を「PCをクラウドへ置き換えること」だけに限定せず、全社員に展開できる標準環境と管理手順を整備した点が、成果につながった要素です。

NECの導入事例

NECは、仮想デスクトップの新しいモデルを提供するまでの時間短縮を課題としていました。Microsoftが公開した事例では、NECは従来、新しい種類の仮想デスクトップ提供に企画段階から約1年を要していたと説明しています。対象利用者数や導入時期の詳細は、この公開事例の範囲では確認できません。

NECはAzure Virtual Desktopを活用し、高負荷モデルを約3か月、CADモデルを約2か月でリリースできるようになりました。Microsoftの事例では、サプライチェーンが正常な状態でもハードウェア調達とデータセンターのラック確保に約4か月を要していた点も示されています。高性能デスクトップを必要な部署へ素早く提供したい企業では、物理設備の調達期間を比較項目に加える根拠になります。

市場データと導入判断

国内のDaaS市場規模やベンダーシェアについては、IDC JapanやMM総研などの調査機関が定期的にレポートを発行しています。参考値として、IDCは2020年の国内クライアント仮想化導入率を27.7%(金融分野は52.3%)と発表し(ASCII.jp掲載記事)、ITRは2022年度の国内DaaS市場売上を前年度比11.9%増の366億9000万円と発表しています(IT Leaders掲載記事)。数値は各調査の時点・範囲に依存するため、現時点の市場規模や順位は各調査機関の最新レポートで照合します。

製品名や市場順位だけで候補を決めると、自社のネットワーク、既存アプリ、データ保管要件との不整合を見落とします。標準的な事務作業、短期利用者、災害時の代替環境では、迅速な発行と標準化を重視します。特殊周辺機器、個別カスタマイズ、厳格な閉域接続が中心なら、提供形態と運用分担を先に絞り込んでから製品を比較します。

まとめ

DaaSは、クラウド上の仮想デスクトップを利用する仕組みです。端末統制、キッティング作業の集約、利用者増減への対応といった効果は、通信品質、端末制御、アプリ互換性、電源管理、運用分界を適切に設計した場合に得られます。設計や運用の前提が整わなければ、これらの効果は自動的には実現しません。

明日から着手するなら、利用者を標準業務・高負荷業務・特殊機器利用業務に分け、各業務で使うアプリ、周辺機器、接続場所、必要なデータを一覧化します。その一覧を基にPoCの対象者と合格条件を決め、機能適合性、TCO、セキュリティ、サポートの4軸で候補を比較すると、DaaS導入の判断を具体化できます。

本記事の内容に誤り等がございましたら、こちらからご連絡ください。

監修

Admina Team


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