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スニッフィングとは?手口・やり方と企業の最新ゼロトラスト対策

スニッフィングとは?手口・やり方と企業の最新ゼロトラスト対策

スニッフィングとは?手口・やり方と企業の最新ゼロトラスト対策

スニッフィングとは?手口・やり方と企業の最新ゼロトラスト対策

公開日

スニッフィング(sniffing)は、ネットワーク上の通信を密かに傍受する極めて検出が困難なサイバー攻撃です。気づかないうちに重要な認証情報や機密データが盗まれ、最終的には大規模なランサムウェア攻撃や不正送金などの重大な被害に繋がります。

本記事では、スニッフィングの基本的な仕組みや具体的なやり方、最新の手口を解説するとともに、PCI DSS v4.0.1の完全義務化に伴う暗号化要件の変更や、Wi-Fi 7時代の新たな脅威(Evil Twin攻撃など)といった最新動向を網羅します。さらに、企業の情シス(情報システム部門)が明日から実践できる、暗号を復号しないNDRなどの最新ゼロトラスト対策について専門的な視点から分かりやすく解説します。

スニッフィングの仕組みや最新の攻撃手口、そして企業が取るべきゼロトラスト対策を解説するインフォグラフィック。

スニッフィング(パケット盗聴)とは

本記事のポイント

  • スニッフィングはネットワーク上の通信を盗み見る「受動的」なサイバー攻撃であり、なりすまし(スプーフィング)や中間者攻撃(MitM)の足がかりとして悪用されます。

  • 現代の手口は高度化しており、Wi-Fi 7普及の裏で発生する「Evil Twin(悪魔の双子)攻撃」や、BitLocker暗号鍵を物理的に奪取する「TPMバススニッフィング」などが企業の現実的な脅威となっています。

  • 「HTTPSやWPA3、BitLockerがあるから100%安全」という考えは誤解であり、暗号化メタデータの露出や偽アクセスポイントといった技術的な死角への認識が不可欠です。

  • 現時点の最適解は、PCI DSS v4.0.1準拠の多層暗号化(ファイル・DBカラム層)+TLS 1.3下でも復号不要なNDRの組み合わせ。「侵入前提」のゼロトラスト設計が不可欠です。

なぜ今、スニッフィングが危険なのか。それは「侵入されていること自体に気づけない」という点にあります。企業の防壁の内側から、気づかぬうちに機密が吸い上げられていく——この脅威の本質を理解することが、有効な対策の第一歩です。

スニッフィングとは、ネットワーク上を流れるデータを監視・取得し、情報を密かに抜き取る「パケット盗聴」の手法です。インターネットや社内ネットワークで送受信されるメール、ファイル、資格情報などのすべてのデータは、「パケット」と呼ばれる細かな単位に分割されて通信網を行き交っています。スニッフィング攻撃は、このパケットをWiresharkなどのネットワーク解析ツール(パケットスニッファ)を用いて捕捉し、解析することで中身を盗み出します。これらのツールは本来、ネットワーク管理者が通信障害の調査やトラフィック分析に用いる正当なものですが、悪意あるハッカーによって盗聴目的で悪用されています。

受動的スニッフィングと能動的スニッフィングの違い

スニッフィングのやり方は、通信への干渉度合いによって「パッシブ」と「アクティブ」の2種類に分類されます。

  • パッシブ(受動的)スニッフィング(受動的攻撃):同一のハブ(リピーターハブ)などで構成された共有ネットワークにおいて、ただ静かにデータを傍受するシンプルなやり方です。自ら不要なパケットを送ることがないため、受信者や送信者に攻撃を察知されにくいという大きな特徴があります。

  • アクティブ(能動的)スニッフィング(能動的攻撃):スイッチングハブで構成された近年の高度なネットワーク環境をターゲットとするやり方です。ネットワークへ偽のパケットを能動的に流し、通信機器の宛先情報を書き換える(ARPポイズニングなど)ことで、ターゲットの通信パケットを強制的に自身の攻撃用端末を経由させ、情報を盗み出します。

スプーフィングや中間者攻撃(MitM)との定義上の違い

スニッフィングと混同されやすい技術用語として「スプーフィング(なりすまし)」や「中間者攻撃(MitM:Man-in-the-Middle)」が挙げられます。これらは独立した別々の脅威ではなく、攻撃者が標的の機密情報を手に入れるための「一連の攻撃フェーズ」として組み合わせて実行される関係にあります。各攻撃の定義や役割の違いを、以下の比較表に整理しました。

用語

攻撃の基本的な定義

攻撃の能動性

実務における役割と具体例

スニッフィング(Sniffing)

ネットワーク上を流れるパケットを「盗み見る(盗聴)」する行為。

受動的(基本的にデータ改ざんはせず観測に徹する)

暗号化されていないパスワードの窃取。侵入先のトラフィック動向を監視する。

スプーフィング(Spoofing)

IPアドレスやMACアドレス、DNS情報を偽装して「他者になりすます」行為。

能動的(パケット内の偽装データを意図的に送信する)

正規のルーターや端末のふりをして、ターゲットのパケット宛先を攻撃者自身に向ける。

中間者攻撃(MitM)

通信を行う二者間の間に攻撃者が割り込み、通信全体を支配する攻撃。

能動的(通信の遮断・中継・改ざんなどを伴う)

スプーフィングによって通信を中継させ、スニッフィングで情報を盗みつつ、改ざんしたデータを送信する。

つまり、スニッフィングは「情報を盗聴する要素技術」であり、その盗聴環境を整えるために「スプーフィング(偽装)」でルートを書き換え、最終的に「中間者攻撃」としてデータを自在にコントロールするのが、サイバー攻撃における典型的なアプローチです。

高度化するスニッフィングのやり方・手口

現代のハッカーによるスニッフィングは、暗号化通信の仕組みを強制的に格下げさせたり、デバイスの物理的接触から暗号鍵を奪取したりする最新手法へシフトしています。

Webサイトの常時SSL化や社内通信の暗号化が進んだ現在、単に「Wiresharkを立ち上げて流れる平文パケットをキャプチャする」だけでは機密情報を盗むことは難しくなりました。しかし、攻撃者側も暗号化の壁を迂回する極めて高度なやり方を確立しています。情シスが把握しておくべき主要な最新手口を4つ解説します。

① SSLストリッピング(HTTPSダウングレード攻撃)

SSLストリッピングは、ユーザーが安全なHTTPS接続を確立しようとするタイミングで通信に介入し、強制的に暗号化されていないHTTP接続へ「フォールバック(格下げ)」させる攻撃です。

攻撃者が通信の中間者(MitM)となり、ユーザーとの間はHTTP(平文)で接続させつつ、攻撃者と目的のサーバー間のみ正規のHTTPSで暗号化して通信します。ユーザー側からはサイトが正常に稼働しているように見えますが、入力したログイン情報などは暗号化されずに中継地点の攻撃者にスニッフィングされてしまいます。

② TPMバススニッフィング(物理的なBitLockerキーの奪取)

Windows 10からWindows 11への社内PCプレイスが進む中、企業の標準対策として普及しているのが「TPM 2.0 + BitLockerによるディスク暗号化」です。しかし、2025〜2026年のセキュリティ業界では、この暗号化を物理的に突破するTPMバススニッフィング(物理パケットスニッフィング)の脅威が強く警戒されています。

これは、PCが盗難された際、筐体をこじ開けてメインボード上のCPUと独立型TPMチップを結ぶ高速シリアルバス(SPIバスなど)に、わずか10〜20ドル程度で購入できる市販の小型解析機(Raspberry Pi Picoなど)を直接接続する手法です。PCを起動する際、TPMチップからCPUへと BitLockerの「復号鍵」が伝送される一瞬(実証デモでは起動開始から43秒)を物理的にスニッフィングするだけで、難なく復号鍵を平文で盗み取られます。PCが手元から離れた場合、通常のディスク暗号化だけではデータを守りきれない「思わぬ穴」として対策が急がれています。

③ Wi-Fi環境における「Evil Twin(悪魔の双子)攻撃」

公共Wi-Fiを悪用したやり方として依然として猛威を振るっているのが、「Evil Twin(悪魔の双子)」と呼ばれる偽装アクセスポイントの設置です。

攻撃者は、カフェ、空港、ホテルなどで実在する正規のSSID(Wi-Fi名)や、時にはMACアドレスまで完全に模倣した「偽のアクセスポイント」を稼働させます。ユーザーが誤ってこの偽Wi-Fiに接続すると、端末を流れるすべてのパケットが攻撃者のコントロール下に置かれ、通信データを丸ごとスニッフィングされるだけでなく、偽のログイン画面に誘導されて認証情報を搾取されます。また、日本国内では、災害時に開放される無料Wi-Fi「00000JAPAN(ファイブゼロジャパン)」を模倣したスニッフィング・なりすましへの懸念も指摘されています。

④ AI(LLM)セッションへのパケットベース・サイドチャネル攻撃

暗号化された通信からでもAIとの対話内容を盗み出す、最新のサイバー攻撃です。生成AI(LLM)へのプロンプト入力やAIからの回答データが強力に暗号化されていても、送信されるパケットの「長さ(サイズ)」や「送信されるタイミング」という外形のメタデータを傍受・解析することで、AIが生成しているテキストのトークン(言葉)の内容を推測・復元してしまう手口です。データそのものがHTTPS等で暗号化されていても、暗号パケットのパターン分析によって機密が特定されるリスクが証明され、Cloudflare等のプロバイダーがデータ量を等質にするパディング(詰め物)の実装を検討・対応するきっかけとなったとされています。

SSLストリッピング(HTTPSダウングレード攻撃)における通信の構成図

▲ SSLストリッピング(HTTPSダウングレード攻撃)における通信の構成図

スニッフィングによる具体的な被害事例と経営リスク

スニッフィングによる通信傍受は、初期段階で発覚しづらく潜伏期間が長期化するため、巨額の課徴金やランサムウェアの侵入、最大で実刑判決を伴う司法問題へと発展します。

スニッフィングによってパスワードや資格情報が1つでも外部に漏れると、企業は甚大な経営ダメージを被ります。近年、国内外で発生した実際のインシデント事例と経営リスクのリアリティを解説します。

オーストラリアの複数空港におけるEvil Twin実刑事件(2025年11月判決)

公共スペースでのWi-Fi偽装によるスニッフィングが、社会および司法にどれほどの重大リスクをもたらすかを示す決定的な事例です。オーストラリア連邦警察(AFP)は、主要な国内線機内や、パース、メルボルン、アデレードの空港にて「悪魔の双子」と呼ばれる偽アクセスポイントを設置し、利用者の通信をスニッフィングしていた男(Michael Clapsis・44歳)を逮捕・起訴しました。容疑者は利用者がWi-Fiに接続した際に、偽の認証ページを介してSNSやメールのログイン情報を盗み見て、プライベートなデータへ不正アクセスを行っていました。この悪質なパケットスニッフィングの罪により、2025年11月、被告には懲役7年4カ月の実刑判決(5年間は仮釈放なし)が言い渡されました(AFP公式発表)。公共Wi-Fiの脆弱性を突くスニッフィングは、身近でありながら重い厳罰に処される犯罪です。

SKテレコムの事例:BPFDoorの3年間潜伏と平文保存の代償

韓国の通信最大手SKテレコムのインシデントでは、約2,700万件にのぼるモバイル加入者の機密データ(USIMの識別番号やIMEI等)が外部に流出した可能性が明らかになりました(韓国科学技術情報通信部(MSIT)等の公表に基づく)。原因は、同社の社内サーバーに「BPFDoor」と呼ばれる極めてステルス性の高いパケットスニッファ(通信傍受マルウェア)が約3年間にわたって潜伏していたことでした。攻撃者は境界防御を突破した後にこのマルウェアを配置し、暗号化されないまま社内を流れていた平文パケットを単に傍受(スニッフィング)するだけで、顧客情報を容易に盗み出しました。この長期の潜伏とデータベース内の暗号化不足は、同社に当局による制裁・損害補償請求リスクと深刻なブランド毀損をもたらしました。

Orangeの事例:国家支援型グループによるインフラ傍受

フランスの大手通信キャリアOrangeでも、高度なインフラシステムに対する不正侵入が発覚しています。これは個人情報を狙った一般的なサイバー犯罪とは異なり、国家支援型の高度標的型攻撃グループが通信プロバイダーのバックボーンに割り込んでスニッフィング(通信盗聴)を実行し、特定の標的ユーザーの通話やデータ通信の内容を長期間監視することを主目的としていたと見られています。国家安全保障に関わるような深刻なスニッフィングは、通信インフラそのものを脅かす存在となっています。

データで見る「金銭目的サイバー攻撃」とランサムウェアへの連鎖リスク

Verizonの「データ侵害調査報告書(DBIR)」をはじめとする各セキュリティ機関の調査によると、現代のデータ漏洩やサイバー犯罪において、その発端や動機が「金銭的目的」から開始されている割合は85%以上に上ります。攻撃者にとって、スニッフィングは被害企業の「特権アカウント」や「管理者ID」を割り出すための最初の足がかりにすぎません。

警察庁が公表した「サイバー空間をめぐる脅威の情勢等に関する資料」(令和6年)においても、ランサムウェアを用いた「二重脅迫」の手口が依然として高い脅威レベルを維持していることが示されています。スニッフィングによって認証情報が傍受されると、境界内部へ侵入したハッカーがそのままシステム全体の管理者権限を乗っ取り、ランサムウェアを仕掛け、業務の完全停止と引き換えに数億から数十億円規模の身代金を要求する凶悪なインシデントに直結します。

Evil Twin(悪魔の双子)攻撃による情報窃取のステップ

▲ Evil Twin(悪魔の双子)攻撃による情報窃取のステップ

スニッフィング対策における「よくある誤解」と失敗パターン

「社内LANだから安全」「HTTPS・WPA3・BitLockerを使っていれば大丈夫」という表面的な思い込みが、スニッフィングの最も深刻な脆弱性を引き起こします。

企業の情シス担当者が陥りがちな「4つの典型的な誤解」と、それによって引き起こされる失敗パターンを技術的な観点から詳述します。

誤解①:「すべての社外アクセスをHTTPS化しているから、傍受されても絶対に安全である」

現実:HTTPSは中身を暗号化しますが、通信の接続先やパケット数などの『メタデータ』は露出しています。

常時HTTPS化(常時SSL/TLS)は通信保護の基本ですが、これだけでは完全ではありません。通信を行っている相手先ドメイン(SNI領域)やDNS問い合わせ内容、送信されたパケットサイズやパケットの送信頻度などは暗号化されないことが多く、これらをスニッフィングされることで、どのサーバーにどのようなパターンの情報を送ったかという「トラフィック解析(振る舞い分析)」を容易に行われます。

また、偽のルート証明書をインストールさせるマルウェアを端末に仕込まれたり、HTTPS接続の暗号化を解除する「SSLストリッピング」攻撃に対しては、HTTPSのみの実装では無効化されます。強制的にHTTPS接続を確立させる「HSTS(HTTP Strict Transport Security)」の登録や、DNS自体を暗号化する「DoH(DNS over HTTPS)」を組み合わせていなければ、スニッフィングの死角を防ぐことはできません。

誤解②:「オンプレミス(社内LAN)の内側なので、パケットを傍受される心配はない」

現実:境界防御を一度すり抜けたマルウェアにとって、暗号化されていない内部通信は格好の標的です。

ファイアウォールの内側を「安全地帯」と信じ込み、社内データベースやAPI連携、管理コマンドのやり取りを暗号化せずにHTTPやTelnetで行う設計は極めて危険です。SKテレコムのBPFDoorによる潜伏事例のように、何らかの攻撃経路で社内のサーバーや端末1台が感染した場合、攻撃者はそこを拠点にアクティブ/パッシブスニッフィングを展開します。社内を流れる顧客情報や未暗号化のパスワードは、ファイアウォールの性能に関係なく、内部から容易に奪い去られます。

誤解③:「最新のWPA3規格を採用したWi-Fiであれば、傍受は絶対に不可能である」

現実:WPA3は事前共有キーの解析には強いですが、ハッカー自作の「偽アクセスポイント(Evil Twin)」への誘導は防げません。

WPA3は事前共有キーの辞書攻撃を防ぐSAE技術を導入しており、WPA2よりも通信傍受に非常に強い設計になっています。しかし、前述の「Evil Twin(悪魔の双子)攻撃」は、WPA3などの規格そのものをクラッキングするのではなく、「同一のSSIDと設定を模した『偽のルーター』を攻撃者が用意し、そこにユーザー自ら接続させる」やり方を取ります。偽のアクセスポイントに直接接続した時点で、攻撃者側が通信の復号化に必要な鍵を持っているため、WPA3であっても中身は完全にスニッフィングされてしまいます。

誤解④:「BitLocker(ディスク暗号化)を設定してあれば、PCを紛失・盗難されても安心である」

現実:PC起動前のPIN設定を省いている場合、TPMバススニッフィングによって約43秒で復号鍵を奪われます。

多くの企業が「BitLockerを導入すれば紛失時もデータの持ち出しを防げる」と信じています。しかし、ユーザーの利便性を最優先するために「起動時にPIN(起動前パスワード)を入力させず、TPMチップによる自動復号のみでWindowsログイン画面まで進む」設定になっている場合、前述の物理的な「TPMバススニッフィング攻撃」の格好の標的となります。PCの内部にアナライザなどの安価な機材を物理接触させて起動されるだけで、TPMからCPUにキーを転送する一瞬のバス通信を傍受され、BitLockerは完全に破られます。ディスク暗号化を無効化されるこの手口に対し、多要素やPINコードがない環境は極めて危険なセキュリティの空白地帯です。

スニッフィングを防ぐための具体的な対策と最新ソリューション

これからのスニッフィング防衛は、PCI DSS v4.0.1への追従や「通信を復号しないNDR」など、侵入されることを前提としたゼロトラストアーキテクチャの確立が必要です。

通信がスニッフィングされることを念頭に置いた、2025〜2026年最新の高度な防衛策と、国内企業での実践的な導入・成功事例を詳しく紹介します。

1. PCI DSS v4.0.1準拠に見るファイル・DBレベルの個別暗号化

クレジットカード業界のセキュリティ基準「PCI DSS v4.0.1」の要件の多くは、2025年3月31日をもってベストプラクティスから完全移行・義務化されました。この新基準では、スニッフィング(通信およびメモリスニッフィング)対策を大幅に強化する設計が求められています。

  • 要件3.5.1.2(ディスク暗号化への不十分性の指摘):クレジットカード番号(PAN)を保存する際、「BitLockerなどのOS機能による『ディスク全体暗号化』」だけでは不十分とされ、より高いレイヤーである「ファイル単位」や「データベース(DB)のカラム(項目)単位」での個別の暗号化が必須となりました。OS起動中は暗号化が解かれているため、ディスク暗号化だけでは通信やプロセスのメモリスニッフィングからデータを保護しきれないためです。

  • 要件4(伝送データの強力な保護):公開ネットワーク、および信頼された内部ネットワークの一部を流れる伝送データに対し、TLS 1.2(推奨はTLS 1.3)以上の強力な暗号化の実装が完全に義務付けられました。

2. TLS 1.3環境に対応する「暗号を復号しないNDR」へのシフト

従来は、通信経路の途中で一度SSLを復号(SSLプロキシ等で復号)して中身のスニッフィング検査を行い、不正プログラムが含まれていないかを確認していました。しかし、TLS 1.3やHSTS、DoHなどの高度な暗号化規格が普及した2025〜2026年現在、途中で通信を復号して中身をチェックすることは技術的に極めて困難であり、プライバシー保護の観点からも避けられる傾向にあります。

このため、最新のゼロトラスト・ネットワークアプローチでは、「通信を一切復号せず、暗号化されたままのメタデータ(パケットサイズ、通信間隔、頻度、宛先など)をAI・機械学習で分析し、不審な振る舞いやランサムウェアの兆候を検知するNDR(Network Detection and Response)」へと急速に主導権がシフトしています。これにより、暗号化を保護しながらも、不審なスニッフィング活動や侵入後の異常動作を高い精度で自律検知できるようになります。

国内企業におけるゼロトラスト導入の成功事例

日本国内の先進企業では、スニッフィングや侵入後の通信傍受、ランサムウェア被害を根絶するため、すでにゼロトラスト型セキュリティを本格稼働させています。

【導入事例①】大手グループ企業:EDRとNDRの一括導入による「侵入前提」の対策

  • 業種・規模:製造・流通、複数の関連子会社を抱える国内大手グループ(デジタル庁「民間企業におけるゼロトラスト導入事例」等より)

  • 導入時期:2024年〜2025年

  • 課題:従来型のファイアウォールを中心とした境界防御やアンチウイルスソフトでは、一度ネットワーク内部に侵入された後の脅威(ランサムウェアの横展開、内部通信のスニッフィング等)を検知できないという強い課題感がありました。

  • 施策:グループ全体にエンドポイント監視のEDRを配備すると同時に、ネットワーク全体の不審なトラフィックをAI監視する「NDR」を一括導入。

  • 成果:パケットを直接復号せずにメタデータをリアルタイムで機械学習解析する仕組みを構築。攻撃者が通信スニッフィングを試みたり、不正に別サーバーへ接続しようとする初期の兆候を「目的が実行される前」に検知し、自律的に通信を即座に遮断できる体制を確立しました。

【導入事例②】グリー株式会社:ゼロトラストデータ保護による「資格情報スニッフィング」の無効化

  • 業種・規模:インターネットサービス/ゲーム事業、従業員数 約1,500名規模(Rubrik公式導入事例参照)

  • 導入時期:2023年〜2024年

  • 課題:最悪のサイバー攻撃(社内システム不正侵入やランサムウェア)を受けてマスターバックアップデータが削除・暗号化された場合でも、速やかに事業を復旧できるレジリエンス(弾力性・回復力)の確保が急務でした。

  • 施策:ゼロトラストデータ保護ソリューション「Rubrik」を全社規模で導入。書き換え不可能(Immutable)なファイルシステムでのバックアップ隔離や、多要素認証(MFA)を厳格に適用。

  • 成果:万が一、攻撃者がネットワーク上で資格情報をスニッフィング等で盗み出したとしても、バックアップデータそのものの検出や暗号化、削除、流出を物理的に不可能にするゼロトラスト防御環境を実現。万が一のランサムウェア発動時でも迅速かつ安全なバックアップ復元力を担保しました。

【実用部品】スニッフィング対策 実践チェックリスト

2026年現在の最新技術(Wi-Fi 7、ZTNA)に対応した、自社ネットワークのスニッフィング対策実践チェックリストです。自社の現状の見直しにお役立てください。

チェック項目

対策の目的と詳細

☐ 常時SSL化とHSTSの完全実装

自社Webサイトの全ページを常時HTTPS化し、さらにHSTSを設定することで、SSLストリッピング(HTTPSダウングレード攻撃)をブラウザ側で自動的に防いでいるか。

☐ 内部通信のエンドツーエンド個別暗号化

社内LAN内のデータベース接続やAPIの呼び出しを平文(HTTP等)で行わず、PCI DSS v4.0.1準拠に則り、データベースのカラム層やファイル層での個別暗号化を徹底しているか。

☐ Wi-Fi 7規格とWPA3暗号化の適用

最新のWi-Fi 7規格(IEEE 802.11be)環境の順次展開、および標準設定でのWPA3暗号化を強制し、出張時のセキュリティ担保や、パブリックフリーWi-Fiでの通常業務を禁止しているか。

☐ 起動前PIN設定およびZTNAの導入

PC盗難によるTPMバススニッフィング対策として、BitLockerに「起動前PIN」を強制設定しているか。また、社外からのアクセスはWi-Fiの暗号化に依存せず、ZTNAによる暗号化カプセル通信を徹底しているか。

☐ NDRによる暗号化パケットの振る舞い監視

TLS 1.3環境に適合した、通信を復号しないNDR等のパケットメタデータ解析ソリューションを導入し、不審なパケットキャプチャや横展開の挙動を24時間体制で監視できているか。

☐ 多要素認証(MFA)の全面適用

万が一、スニッフィングなどによってパスワード等の認証資格情報を窃取された場合でも、不正ログインを成立させない多要素認証を全社システムに導入しているか。

ディスク全体暗号化(不十分)とファイル・DBカラム個別暗号化(推奨)の比較図

▲ ディスク全体暗号化(不十分)とファイル・DBカラム個別暗号化(推奨)の比較図

よくある質問

スニッフィングに関するよくある疑問や、検索クエリに基づいた質問を解消し、自社の対策強化に役立てましょう。

Q:スニッフィングとスプーフィングの違いは何ですか?

A:スニッフィングはネットワーク上のデータを「盗聴・傍受」する行為です。一方、スプーフィングは送信元のIPアドレスなどを偽装する「なりすまし」の行為であり、攻撃者が特定のパケットを手元に中継しやすくするための前段としてスプーフィングを実行することが多くあります。

Q:スマートフォンでもスニッフィングの被害に遭う危険性はありますか?

A:はい、十分にあります。特にカフェや空港など、暗号化設定が不十分、あるいは攻撃者の用意した悪魔の双子(Evil Twin)と呼ばれる偽のフリーWi-Fiにスマホを接続してしまった場合、アプリの認証情報や個人データを簡単に傍受されます。

Q:NDRとEDRは何が違うのですか?スニッフィング対策にはどちらが有効ですか?

A:EDR(Endpoint Detection and Response)はPCやサーバーなどの端末上の不審な挙動を監視・検知するソリューションです。一方、NDR(Network Detection and Response)はネットワーク全体を流れるパケットのメタデータを分析し、端末をまたぐ横展開や外部への不審な通信を検知します。スニッフィング対策としては、侵入後の内部通信の異常を捉えるNDRが特に有効であり、EDRと組み合わせることで多層的な防御体制を構築できます。

まとめ

本記事では、スニッフィングの仕組みや手口から、Wi-Fi 7普及期の「Evil Twin攻撃」、ディスク暗号化を物理的にすり抜ける「TPMバススニッフィング」といった最新の脅威、さらにはPCI DSS v4.0.1移行義務化やNDR導入といった最新のゼロトラスト対策までを解説しました。

スニッフィングは被害が発生していることを検知しにくい極めて巧妙な攻撃であり、「社内ネットワークだから安全」「HTTPSだから大丈夫」といった従来の認識では、企業の重要資産を守りきることはできません。まずは以下の「明日から取り組める最初の一歩」から、自社のセキュリティレベルを高めていくことを推奨します。

自社WebサイトのHSTSが有効になっているか確認する
社内LANの重要データベース通信やAPI連携が平文(HTTP/Telnetなど)になっていないか棚卸しし、通信の暗号化を個別に実施する
自社のモバイルPCにおけるBitLocker運用で「起動前PIN(プリブートPIN)」が設定されているかチェックする
オフィスのWi-Fi環境が最新のWPA3、あるいは最新のWi-Fi 7に対応しているか機器を確認し、フリーWi-Fiでの接続時はZTNAやVPNでの通信保護を徹底する
最新の暗号化環境に対応した、パケットを復号しない「NDR」によるネットワーク継続監視の導入・検討を進める

本記事の内容に誤り等がございましたら、こちらからご連絡ください。

監修

Admina Team

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