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最終更新日
2025/12/08
サイバーセキュリティとは、サイバー攻撃の脅威から、コンピュータやネットワーク、データなどを守るための技術や対策全般です。私たちの生活やビジネスがデジタル技術と密接に結びついた現代において、その重要性はかつてないほど高まっています。
本記事では、情報セキュリティの基本から、企業や個人が直面する具体的なセキュリティリスク、そして明日からすぐに実践できる対策方法までわかりやすく解説します。
サイバーセキュリティとは
サイバーセキュリティとは、コンピュータシステム、ネットワーク、データを不正アクセスや攻撃から保護するための技術や対策全般を意味します。単にウイルス対策ソフトを導入するだけでなく、組織のルール作りや人々の意識向上までを含む、総合的な取り組みを指す言葉です。
サイバーセキュリティの目的は、情報の「機密性」「完全性」「可用性」という3つの要素(CIAトライアド)を維持することにあります。
機密性(Confidentiality):認められた人物のみが情報を閲覧・利用できる状況を維持すること。
完全性(Integrity):情報が不当に書き換えられたり、損なわれたりしない状態を維持すること。
可用性(Availability):許可された人が必要な時にいつでも情報にアクセスできる状態を保つこと。
これらの要素を脅かす、不正アクセス、情報漏洩、データの改ざん、サービス停止といった脅威から、組織や個人の重要な資産を守ることが、サイバーセキュリティの根本的な役割です。
情報セキュリティとの違い
「サイバーセキュリティ」と「情報セキュリティ」は、厳密には対象とする情報の範囲に違いがあります。情報セキュリティが紙媒体を含む全ての情報資産を保護対象とするのに対し、サイバーセキュリティはデジタルデータに特化した対策です。
つまり、サイバーセキュリティは、広義の情報セキュリティの中でも、特に現代のIT社会に不可欠なサイバー空間(デジタル領域)の安全を守るための専門分野と位置づけられます。
サイバーセキュリティが重視される理由
サイバーセキュリティの重要性が高まっている理由は、社会全体のデジタル化(DX)にあります。ビジネスにおけるクラウドサービスの利用拡大、リモートワークの常態化、そしてIoT(モノのインターネット)デバイスの普及により、私たちの生活や経済活動はサイバー空間への依存度を増し、それに伴い新たなリスクが生まれています。
DX推進による攻撃対象の拡大
あらゆるモノがインターネットに繋がるようになったことで、攻撃者が狙うことのできる「入口(アタックサーフェス)」が爆発的に増加しました。従来は社内ネットワークで保護されていたシステムがクラウドに移行し、自宅や外出先からアクセスする機会が増えたことで、防御すべき範囲が格段に広がっています。
サプライチェーン攻撃の増加
近年、セキュリティ対策が強固な大企業を直接狙うのではなく、取引先の中小企業などを経由して侵入する「サプライチェーン攻撃」が増加しています。自社の対策だけでなく、取引先を含めたサプライチェーン全体でのセキュリティレベル向上が求められています。
AIなどを悪用した脅威の巧妙化
AI(人工知能)などの最新技術を悪用したサイバー攻撃は年々巧妙化・自動化しており、従来の手法だけでは防御が困難になっています。例えば、AIを用いて極めて自然な日本語のフィッシングメールを大量に生成するなど、攻撃の質と量が飛躍的に向上しています。
代表的なサイバー攻撃の手法と目的
サイバー攻撃には多種多様な手口が存在しますが、その目的は大きく分けて「金銭の窃取」「情報の窃取」「業務の妨害」に集約されます。本項では、特に代表的な攻撃手法をいくつか紹介します。
マルウェアによる攻撃
マルウェアとは、デバイスやシステムに害を及ぼすことを目的として作られた不正なソフトウェアの総称です。
コンピュータウイルスはマルウェアの一種であり、他にも様々な種類が存在します。特に近年、被害が深刻化しているのがランサムウェアです。ランサムウェアは、感染したコンピュータのファイルを暗号化して使用不能にし、元に戻すことと引き換えに身代金(Ransom)を要求する手口です。
ウイルス:プログラムの一部を改ざんし、自己増殖することで感染を広げます。
ワーム:ネットワークを介して、独立して自己増殖します。感染元となるファイルが不要で感染力が非常に高いのが特徴です。
トロイの木馬:無害なプログラムを装ってシステムに侵入し、内部から情報を盗んだり、別のマルウェアを呼び込んだりします。
スパイウェア:ユーザーの情報を密かに収集し、外部の攻撃者に送信します。キーボードの入力履歴や個人情報を盗み見ます。
ランサムウェア:感染したコンピュータのファイルを暗号化して使用不能にし、元に戻すこと(復号)と引き換えに身代金(Ransom)を要求します。近年、企業にとって最も深刻な脅威の一つです。
標的型攻撃・フィッシング詐欺
標的型攻撃は、特定の組織や個人を狙い撃ちにし、機密情報などを盗み出すことを目的とした攻撃です。攻撃者はターゲットを周到に調査し、業務に関係があるかのような巧妙なメール(標的型攻撃メール)を送りつけ、ウイルスに感染させようとします。
一方、フィッシング詐欺(Phishing)は、不特定多数に対して、実在する金融機関や有名企業を装った偽のメールやSMSを送りつけ、偽サイトに誘導してIDやパスワード、クレジットカード情報などを盗み取る手口です。
不正アクセスと脆弱性を狙った攻撃
不正アクセスとは、アクセス権限のない他人のIDやパスワードを使って、不正にシステムやサービスにログインする行為です。推測しやすいパスワードを設定していたり、複数のサービスで同じパスワードを使い回していたりすると、被害に遭うリスクが高まります。
また、OSやソフトウェアに存在する設計上のミスやプログラムの不具合である脆弱性(セキュリティホール)を悪用した攻撃も後を絶ちません。ソフトウェアのアップデートを怠っていると、脆弱性が放置されたままになり、攻撃者に侵入の隙を与えてしまいます。
DoS/DDoS攻撃によるサービス妨害
DoS攻撃(Denial of Service attack)やDDoS攻撃(Distributed Denial of Service attack)は、標的のウェブサイトやサーバーに対して大量のアクセスやデータを送りつけ、システムを過負荷状態にすることでサービスを停止に追い込む攻撃です。業務妨害を目的として行われます。
企業が取り組むべきサイバーセキュリティ対策
企業のセキュリティ対策は、「技術」「組織」「物理」の3つの側面から総合的に実施することが重要です。
【技術的対策】セキュリティツールの導入
技術的対策は、サイバー攻撃をシステム的に防御・検知するための基盤となります。
ファイアウォール:ネットワークの出入口に設置し、不正な通信を遮断する。
アンチウイルスソフト:既知のマルウェアを検知・駆除する。
WAF(Web Application Firewall):Webアプリケーションの脆弱性を狙った攻撃からWebサイトを守る。
EDR(Endpoint Detection and Response):PCやサーバー(エンドポイント)の操作を監視し、マルウェア感染後の不審な挙動を検知・対応する。
資産管理・脆弱性管理ツール:社内のIT資産(PC、サーバー、ソフトウェア)を把握し、脆弱性を管理する。
これらのツールを適切に組み合わせることで、多層防御を実現することが重要です。
【組織的対策】セキュリティポリシーの策定と従業員教育
どれだけ高度な技術を導入しても、それを使う人の意識が低ければ、セキュリティは確保できません。
セキュリティポリシーの策定:情報資産の取り扱いに関する社内統一のルール(基本方針、対策基準、実施手順)を定め、全従業員に周知徹底します。ISMS(情報セキュリティマネジメントシステム)などの認証を取得することも、対外的な信頼性向上に繋がります。
従業員教育の実施:全従業員を対象に、セキュリティ研修や標的型攻撃メール訓練などを定期的に実施し、セキュリティ意識とインシデント(事故)発生時の対応能力を高めます。
インシデント対応体制の構築:万が一セキュリティ事故が発生した際に、迅速かつ適切に対応するための専門チーム(CSIRT:Computer Security Incident Response Team)を設置し、報告・連絡・相談のフローを明確にしておきます。
【物理的対策】物理的な情報資産の保護
デジタル情報だけでなく、情報が保存されている物理的な機器や場所を守ることも重要です。
入退室管理:サーバールームや執務エリアなど、重要な情報資産がある場所への入退室をICカードや生体認証で管理し、権限のない人物の立ち入りを防ぎます。
デバイス管理:PCやUSBメモリなどの記憶媒体の持ち出し・持ち込みに関するルールを定め、紛失・盗難による情報漏洩を防ぎます。私物デバイスの業務利用(BYOD)に関するルールも明確化が必要です。
個人ができる身近なサイバーセキュリティ対策
サイバーセキュリティ対策は企業や組織のみが実施できるわけではなく、個人でも実施可能です。少しの注意と簡単な設定で、個人でできるセキュリティレベルは格段に向上します。以下の5つのステップを今日から実践してみましょう。
1. パスワードの管理を徹底する
パスワードは、あなたのアカウントを守るための最も基本的な対策です。安易なパスワードは、空き巣にドアの鍵を渡しているのと同じです。
複雑で推測されにくいものにする:英大文字・小文字・数字・記号を組み合わせ、10文字以上に設定しましょう。名前や誕生日などは避けてください。
サービスごとに異なるパスワードを設定する:パスワードの使い回しは絶対にやめましょう。一つのサービスからパスワードが漏洩すると、他のサービスにも芋づる式に不正ログインされてしまいます。
パスワード管理ツールを利用する:多くの複雑なパスワードを覚えるのは困難です。信頼できるパスワード管理ツール(アプリ)を使えば、安全に管理できます。
2. ソフトウェアを常に最新の状態に保つ
ソフトウェアのアップデートは、発見された脆弱性を修正するための重要な作業です。
お使いのパソコンやスマートフォン、インストールしているアプリケーションのOSやソフトウェアは、常に最新バージョンに保ちましょう。先延ばしにせず、更新通知が来たら速やかにアップデートを実行する習慣が大切です。
3. 不審なメールやURLを開かない
緊急性の高い警告やお得すぎる話には、まず疑いの目を向けることが、フィッシング詐欺などから身を守る第一歩です。
送信元のメールアドレスが正規のものか確認する。
本文に不自然な日本語がないか確認する。
安易に添付ファイルを開いたり、リンクをクリックしたりしない。
少しでも怪しいと感じたら、メール本文のリンクからではなく、公式アプリやブックマークした公式サイトからアクセスして情報を確認しましょう。
4. 多要素認証(MFA)を設定する
多要素認証(MFA:Multi-Factor Authentication)は、不正ログインに対する極めて強力な防御策です。
これは、IDとパスワードによる「知識情報」に加えて、スマートフォンアプリに表示される確認コードなどの「所持情報」や、指紋・顔認証などの「生体情報」を組み合わせて本人確認を行う仕組みです。たとえパスワードが外部に流出した場合でも、第三者による不当なログインを確実に抑止できます。多くのオンラインサービスで無料で設定できるので、必ず利用しましょう。
5. 公共Wi-Fiの利用に注意する
カフェや駅などで提供されている無料の公共Wi-Fi(フリーWi-Fi)は、通信が暗号化されていない場合があり、通信内容を盗聴されるリスクがあります。
暗号化方式が「WPA2」や「WPA3」など安全なものか確認する。
公共Wi-Fi利用中は、ネットバンキングや重要な情報の送受信は避ける。
VPN(Virtual Private Network)を利用して通信を暗号化すると、より安全性が高まります。
まとめ
本記事では、サイバーセキュリティの基本的な意味から、その重要性、具体的な攻撃手法、そして企業や個人が実践すべき対策について解説しました。
今回紹介した対策は、決して難しいものばかりではありません。日々の少しの心がけと正しい知識が、あなた自身と組織の大切な情報を守る盾となります。本記事を参考に、ご自身のセキュリティ対策を今一度見直し、安全で快適なデジタルライフを送るための一歩を踏み出してください。
本記事の内容に誤り等がございましたら、こちらからご連絡ください。
監修
Admina Team
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