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サイバー攻撃のリアルタイム可視化ツールと自社対策【2026】

サイバー攻撃のリアルタイム可視化ツールと自社対策【2026】

サイバー攻撃のリアルタイム可視化ツールと自社対策【2026】

サイバー攻撃のリアルタイム可視化ツールと自社対策【2026】

公開日

最終更新日

世界地図上を無数の線が飛び交うサイバー攻撃のリアルタイム可視化サイトは、脅威を直感的に理解するうえで役立ちます。一方、そこに表示されるのは各運営者の観測網が捉えた世界規模の傾向であり、自社サーバーや端末への攻撃状況ではありません。

自社を守るには、端末、ネットワーク、クラウド、メール、IDのログを収集し、EDRやXDR、SIEMで相関分析する仕組みが必要です。Web公開システムでは、WAFやDDoS対策サービスの監視情報も組み合わせます。

この記事で確認したこと(確認日: 2026年3月24日):国内外の無料可視化サイトの提供状況、サイバー対処能力強化法の関連資料、2025年の国内導入統計、公開済みの国内企業事例を確認し、情シス部門が実行できる対処手順に整理しました。法令・統計・製品仕様は随時更新されるため、各一次資料(内閣官房・NICT・JIPDEC・IPA各公式サイト)で最新情報を確認し、内容に変更があれば自社の対応手順へ反映してください。

サイバー攻撃のリアルタイム可視化によるマクロ監視と、端末やクラウドなどの自社資産を一元管理するミクロ監視を組み合わせたセキュリティ対策のステップを解説するインフォグラフィック。

サイバー攻撃のリアルタイム可視化とは

サイバー攻撃のリアルタイム可視化とは、自社や世界で観測された不審通信を即時に整理し、攻撃の兆候、経路、影響範囲を判断できる形に変換する手法です。

本記事のポイント

  • 無料の攻撃マップは世界や日本のマクロな傾向を示すもので、自社の被害有無は判定できません。

  • 自社への攻撃はEDR、XDR、SIEM、WAF、クラウド監査ログなどを組み合わせて可視化します。

  • DDoS攻撃は通信量、パケット数、接続元、応答時間を平常時と比較するとリアルタイムに検知できます。

  • 検知ツールだけでは運用が滞るため、SOC、MDR、SOARと承認フローまで一体で設計します。

可視化の対象と目的

可視化の対象は、インターネット上の無差別スキャンから、特定企業を狙った認証突破、端末感染、社内での横移動、情報持ち出しまで多岐にわたります。画面上に攻撃元と攻撃先を表示するだけではなく、「どの資産で、誰のIDが、どの操作を行い、業務にどの程度影響するか」まで結び付けることが自社防御の目的です。

IPアドレスから推定した国や地域は、攻撃者の所在地と一致するとは限りません。踏み台サーバー、VPN、ボットネットが使われるほか、送信元IPアドレスを偽装できる攻撃もあります。地図上の国名だけで遮断を判断せず、通信先、ポート、プロセス、認証履歴、脅威情報を合わせて評価します。

国内統計から見た監視の必要性

情報通信研究機構は「NICTER観測レポート2025」(NICT公式サイトで公開)で、NICTERの大規模ダークネット観測網が2025年に捉えたサイバー攻撃関連通信について集計結果を報告しています。公開時点のレポートでは約7,010億パケット・前年比2.2%増という数値が示されていますが、レポートの改訂や確認時期によって数値が変わる場合があるため、NICT公式サイトで最新版を参照してください。この数値は国内企業が実際に受けた攻撃件数ではなく、未使用IPアドレスに届いた広域スキャンなどの観測量です。それでも、インターネット接続機器が常時探索されている実態を把握する材料になります。

JIPDECの「企業IT利活用動向調査2025」(JIPDEC公式サイトで公開)では、国内企業の導入状況について集計結果が報告されています。公開時点の調査ではSIEM・XDR導入率28.5%・導入予定含め57.4%、ファイアウォール57.8%という数値が示されており、ログを横断して検知する仕組みが次の標準的な対策として検討されている状況が読み取れます。ただし、調査の母数・対象企業・設問定義によって数値の解釈が変わるため、JIPDEC公式サイトで調査概要を確認したうえで自社の位置付けを判断してください。

サイバー対処能力強化法の対象範囲

サイバー対処能力強化法、いわゆる能動的サイバー防御関連法については、内閣官房公式サイト(cas.go.jp)で関連資料を確認できます。公開資料では2025年5月の成立、主要部分の2026年10月1日施行と説明されていますが、施行範囲や時期は政令・告示によって変わる場合があるため、内閣官房の最新資料で条文・政令を確認したうえで自社対応を判断してください。政府は、官民の情報共有、一定条件下での通信情報利用、攻撃元サーバーの無害化措置などを通じ、重大なサイバー攻撃を兆候段階から抑える枠組みを整備します。

インシデント報告などの法的義務は、国が指定する重要な社会基盤を担う事業者が中心です。一般企業やすべての取引先に、同法だけを根拠とした24時間監視義務が直接課されるわけではありません。一方、指定事業者が委託先や接続先を含めてリスクを管理すれば、一般企業にも契約、調達基準、事故連絡条件を通じた対策要請が及びます。取引先からログ保存期間や報告期限が示されているなら契約要件に合わせ、示されていないなら自社のインシデント対応計画を基準に体制を整えます。

サイバー攻撃をリアルタイムで可視化する仕組み

リアルタイム可視化は、世界の傾向を見るマクロ監視と、自社のログを分析するミクロ監視を分け、DDoS監視と外部公開資産の把握を追加すると実務で使える構成になります。

マクロな脅威動向の可視化

マクロ可視化では、ハニーポット、未使用IPアドレス、スキャンセンサー、セキュリティ製品の検知情報を運営者が収集します。取得した時刻、送信元、宛先、ポート、攻撃種別を世界地図や時系列グラフに変換し、無差別スキャンやマルウェア活動の増減を表示します。

観測結果はセンサーの設置地域や利用製品の構成に左右されます。あるマップで攻撃が少なく見えても、その国や企業が安全だとは判断できません。複数マップを脅威教育や傾向把握に使い、自社への影響は自社ログで検証するのが正しい役割分担です。

ミクロな自社環境の可視化

ミクロ可視化では、端末のEDRログ、ファイアウォールやVPNの通信ログ、DNS問い合わせ、メール、ID認証、クラウド監査ログ、WAF、業務アプリケーションの操作履歴を収集します。SIEMやXDRは形式の異なる記録を正規化し、時刻、ユーザー、端末、通信先をキーとして関連付けます。

ログ収集元

主に確認できる事象

見落としやすい点

EDR・端末

不審なプロセス、ファイル変更、外部通信

未導入端末や停止中のエージェント

認証基盤・SaaS

不正ログイン、権限変更、API利用

サービスアカウントと共有ID

ネットワーク・DNS

大量通信、危険ドメイン、横移動

暗号化通信の内容や拠点外の端末

メール・WAF

フィッシング、攻撃URL、Web脆弱性の悪用

転送先メールや監視対象外ドメイン

クラウド監査ログ

設定変更、鍵の作成、データへのアクセス

ログ未有効化、短い保存期間

全体像を捉える「マクロ可視化」と、自社を守る「ミクロ可視化」の違い

▲ 全体像を捉える「マクロ可視化」と、自社を守る「ミクロ可視化」の違い

DDoS攻撃のリアルタイム可視化

DDoS可視化では、帯域使用量を示すbps、1秒当たりのパケット数であるpps、接続要求数、送信元の分散、HTTPステータス、サーバー応答時間を監視します。平常時の基準値から急増した通信を検知し、NetFlowやIPFIX、ロードバランサー、CDN、WAF、クラウド事業者のログを同じ時系列に並べます。

大量のUDPやSYNパケットが回線を埋めるネットワーク層の攻撃と、検索やログインなど負荷の高いURLを繰り返すアプリケーション層の攻撃では見る指標が異なります。回線帯域が先に飽和すると自社機器へログが届かないため、上流の通信事業者やDDoS対策サービスのテレメトリも監視対象に含めます。無料の世界地図にDDoSらしい線が表示されても、自社サーバーへの影響はこれらの数値で判断します。

点から線への攻撃ストーリー化

従来の監視画面は「ログイン失敗」「不審ファイル作成」といった個別アラートを点として表示していました。XDRやAIを取り入れたSOCでは、フィッシングメールの受信、認証情報の窃取、端末感染、別サーバーへの横移動、クラウドからの情報取得を一つのタイムラインにまとめます。

生成AIは大量ログの要約、関連アラートの説明、調査クエリの作成を補助できますが、出力が正しいとは限りません。隔離やアカウント停止を実行する前に、根拠ログ、対象資産、業務影響を担当者が検証し、承認条件を満たした場合だけ対処へ進めます。

ASMによる外部露出資産の可視化

Attack Surface Management、略してASMは、インターネットから見える自社のドメイン、IPアドレス、クラウド、VPN機器、証明書、公開ポートを継続的に発見する仕組みです。情シスが把握していない検証サーバー、買収先のドメイン、設定を誤ったストレージも探索対象になります。

ASMは脆弱性を発見する役割を持ちますが、端末内部の挙動は監視しません。ASMで入口を把握し、WAFや脆弱性管理で入口を減らし、EDR・XDRで侵入後を捉える構成にすると死角を減らせます。

自社ログの収集からSIEM/XDR分析、SOC判断、SOAR対処までをつなぐ可視化・防御の全体構成図

▲ 自社ログの収集からSIEM/XDR分析、SOC判断、SOAR対処までをつなぐ可視化・防御の全体構成図

サイバー攻撃の種類と2026年の最新対策

2026年の自社対策では、生成AIを使った攻撃、非人間ID、シャドーAI、ランサムウェア、DDoSを別々に捉えず、多層防御と継続監視でつなげます。

生成AIを悪用した攻撃

攻撃者は生成AIを使い、自然な日本語のフィッシングメール、取引先を装う文章、音声や映像の偽装を短時間で大量に作れます。AIが攻撃を自動化したという理由だけで、既存のウイルス対策がすべて無効になるわけではありません。ただし、文章の不自然さだけに依存した教育や既知ファイルだけを見る検知では対応範囲が狭くなります。

IPAの「情報セキュリティ10大脅威 2026」(IPA公式サイトで公開)組織編では、「AIの利用をめぐるサイバーリスク」が選出されています。IPAは同資料で初選出と説明していますが、選出基準や年度ごとの改訂状況はIPA公式サイトで最新版を確認してください。対策では、メール認証、URLと添付ファイルの検査、多要素認証、送金や機密情報開示の別経路確認、端末の振る舞い検知を重ねます。

非人間IDとシャドーAIのリスク

非人間IDは、APIキー、サービスアカウント、ワークロードID、AIエージェントが利用する認証情報です。人間の退職管理だけを整備しても、期限のないAPIキーや過大な権限が残れば攻撃者の侵入口になります。利用者、用途、権限、有効期限を台帳に記録し、保管先を秘密情報管理基盤へ集約します。

会社が許可していない生成AIへ従業員が業務情報を入力するシャドーAIも可視化対象です。アクセスを一律に遮断するだけでは個人端末へ利用が移るため、利用可能なサービス、入力禁止情報、ログ取得範囲を明示します。承認済みAIの監査ログを取得できるならSIEMへ連携し、取得できないなら機密業務での利用対象から外します。

ランサムウェアと横移動への対策

ランサムウェアは、VPNや公開サーバーの脆弱性、窃取されたID、メールなどから侵入し、管理者権限を奪って複数端末へ広がります。EDRは端末上の暗号化や不審プロセスを捉え、XDRはメール、ID、端末、クラウドの関連を分析します。ただし、エージェント未導入端末、ログ不足、設定不備があれば検知できません。

EDR・XDRは多層防御の一部です。脆弱性修正、多要素認証、ネットワーク分離、管理者権限の制限、オフラインを含むバックアップ、復旧訓練と組み合わせます。アラート発生後に判断する担当者がいない時間帯があるなら、その時間帯をMDRの監視範囲に含めます。

DDoSとWeb攻撃への対策

DDoSでは、攻撃を完全に止めることより、正規利用者の通信を維持しながら悪性通信を上流で吸収する設計が現実的です。CDN、DDoS防御、レート制御、オートスケールを組み合わせ、アプリケーション層の攻撃にはWAFのルールとアクセスログを使います。

普段のピーク通信量、許容応答時間、回線上限を計測していなければ異常判定の基準を作れません。月次平均だけでなく、キャンペーンや給与日など業務上のピークを基準値に含め、通信量の増加と売上・ログイン件数が連動しない場合を調査対象にします。

EDR・XDR・SIEMの役割分担

EDRは主に端末、XDRは複数のセキュリティ領域、SIEMは幅広いログの保管と相関分析を担います。製品名だけで選ばず、自社で取得できるログと対応権限を起点に選定します。

仕組み

主な対象

適する条件

単独利用時の限界

EDR

PC・サーバー

端末の不審挙動と侵入後対応を優先する場合

メールやクラウドの全体像が分断される場合がある

XDR

端末・メール・ID・クラウド・ネットワーク

対応製品のログを横断して攻撃経路を追う場合

連携対象外の製品は十分に見えない

SIEM

各種システムのログ

異なるベンダーの記録を保管・検索する場合

検知ルールと日々の調整に工数がかかる

ASM

外部公開資産

未把握のサーバーや公開ポートを探す場合

社内端末の侵入後挙動は確認できない

サイバー攻撃をリアルタイムで可視化できる無料サイト【2026年版】

無料のサイバー攻撃リアルタイム可視化サイトは、観測方式と得意分野が異なるため、表示の派手さではなくデータの出所を基準に使い分けます。

2026年3月24日時点で公式公開ページを確認できた代表的な4サイトを整理します。いずれも特定の観測網や製品テレメトリに基づくため、世界中の攻撃を漏れなく表示するものではありません。

サイト

運営主体

主な観測データ

適した用途

主な限界

NICTERWEB

情報通信研究機構

ダークネットに届くパケット

国内研究機関の観測統計やポート傾向の把握

実利用中の自社IPへの通信は表示しない

Kaspersky Cyberthreat Real-Time Map

Kaspersky

同社製品などの脅威テレメトリ

脅威種別や国別傾向の教育

同社の観測範囲による偏りがある

Check Point Live Cyber Threat Map

Check Point Software Technologies

同社の脅威観測データ

地域別の攻撃傾向の把握

表示された線が個別企業への攻撃を意味しない

Fortinet Threat Map

Fortinet

FortiGuardの観測データ

マルウェアや脆弱性悪用の傾向把握

自社のFortinet機器の管理画面ではない

NICTERWEB

NICTERWEBは、情報通信研究機構が研究目的で運用するサイバー攻撃観測・分析システムです。ダークネットと呼ばれる未使用IPアドレス空間へ届くパケットを観測し、Atlas、Cube、Stats、Top10などの画面で地理的分布、時系列、送信元、宛先ポートの傾向を表示します。

未使用アドレスへの通信は、探索活動や設定ミスを捉えやすい一方、通常のWebサイトや社内端末で起きた攻撃を示すものではありません。朝会で前日との増減や狙われたポートを共有し、自社に同じ種類の公開機器がないかをASMの台帳で照合する使い方ができます。

Kaspersky Cyberthreat Real-Time Map

Kasperskyのマップは、同社が取得したマルウェア、Web、メール、ネットワーク関連の検知情報を3D地球儀上に表示します。脅威種別を色で分けて確認できるため、非技術部門への説明や研修の導入に使いやすい構成です。

表示件数はKaspersky製品の利用状況や観測基盤の影響を受けます。国別順位を、その国の攻撃能力や安全性の順位として扱ってはいけません。社内教育では「攻撃が常時発生している」という説明に限定し、自社の感染有無はEDRやメールログで判定します。

Check Point Live Cyber Threat Map

Check Pointのマップは、世界地図上に攻撃の流れや脅威統計を表示します。短時間に複数地域で攻撃が観測される様子を示せるため、経営会議や従業員研修でサイバー攻撃の規模感を共有する材料になります。

地図上の始点と終点は、攻撃者本人と最終的な被害企業を確定する情報ではありません。自社との関連を調べる場合は、公開IP、時刻、ポートなどを自社のファイアウォールやWAFの記録と照合できることが前提です。

Fortinet Threat Map

Fortinetのマップは、FortiGuard Labsの観測情報に基づき、マルウェア、ボットネット、脆弱性悪用などの脅威傾向を表示します。世界のどの地域で特定カテゴリの活動が目立つかを俯瞰する用途に向いています。

この公開マップは、自社に設置したFortinet製品の管理画面とは別物です。自社への通信、遮断結果、機器負荷を調べるには、自社機器やクラウド管理基盤のログを確認します。公開マップを見て遮断ルールを直接変更すると、正規通信まで止めるおそれがあります。

社内教育での活用方法

無料サイトは、全社員研修の冒頭で1分程度表示し、「見えているのは観測網の一部」「自社への攻撃判定には使えない」という二点を同時に伝えると誤解を抑えられます。その後、自社で実際に受信したフィッシングの匿名化例や、EDR訓練アラートの画面へ切り替えると、世界の傾向と日常業務の行動を結び付けられます。

無料の可視化サイトと自社セキュリティ対策の決定的な違い

無料マップは脅威の存在を知る教育・調査ツールであり、自社防御は自社資産のログを根拠に検知、判断、封じ込めまで実行する運用です。

比較軸

無料のグローバルマップ

自社のセキュリティ監視

観測範囲

運営者のセンサーや製品利用環境

自社が登録した端末、ネットワーク、クラウド、ID

主な目的

世界・日本の傾向把握、社内教育

自社への侵入検知、影響調査、対応

個社判定

原則として不可

ログと資産情報がそろえば可能

自動対処

不可

連携製品、権限、承認フローがあれば可能

観測バイアス

センサー配置や製品利用率の影響が大きい

未管理資産やログ未取得領域が死角になる

運用担当

閲覧者による傾向確認

情シス、SOC、MDR、システム管理者

SOC・MDR・SOARの役割

SOCは、アラート監視、分析、優先順位付け、関係者への連絡、対応支援を担う組織または運用機能です。社内組織の場合も外部サービスの場合もあります。MDRは、顧客環境の検知と対応を継続的に提供するサービスであり、EDRだけに限定されません。

SOARは、複数ツールを連携し、定めた手順を自動実行するための基盤です。導入しただけで端末隔離が自動化されるわけではなく、EDRやID基盤との接続、API権限、実行条件、例外、承認者、復旧手順をプレイブックに設定します。誤検知時に業務停止の影響が大きい資産は承認後に隔離し、一般端末は高確度条件を満たした場合に自動隔離するなど、資産区分で動作を変えます。

アラート疲れを防ぐ運用設計

SOC運用者を対象とした調査では、毎週届くアラートのうち調査できる割合が50~59%にとどまると回答した担当者が一定数存在することが複数の調査で報告されています。一次情報の特定が困難なため、自社のアラート処理率を実測し判断基準として用いることを前提に以下を読み進めてください。可視化ツールを増やすだけでは、未処理アラートが積み上がり、重大な兆候が埋もれます。

対策は、アラート件数を担当者の努力で処理することではありません。端末、ユーザー、通信先が同じアラートを一つの案件に束ね、業務資産の重要度、検知確度、攻撃の進行段階で優先順位を付けます。繰り返し発生する低リスク通知は抑制し、高リスクかつ手順が確立した処理はSOARへ移します。夜間の一次分析を担当できないなら、その時間帯と対象製品を明示してMDRへ委託します。

自社環境に合わせた選定基準

選定では製品の検知項目数より、必要なログを取得できるか、誰が何分以内に対応できるかを確認します。次の表を埋めると、EDR、XDR、SIEM、MDRのどこが不足しているかを判断できます。

確認項目

判断材料

判断への反映

資産とOS

PC、サーバー、モバイル、クラウド、OTの台数と種類

対応外OSがあれば別の監視手段を追加

既存ログ

メール、ID、DNS、WAF、クラウド監査ログの取得可否

API連携できれば自動収集、できなければ対象を絞ってCSV運用

監視時間

夜間・休日の担当者と連絡先

空白時間があればMDRの対応時間に含める

対応権限

端末隔離、ID停止、通信遮断を実行できる部署

権限がSOCにない場合は承認期限と代行者を設定

証跡保管

ログの保存期間、保存場所、検索速度

調査期間より短ければ保管延長または外部保管を選択

責任分界

検知、一次分析、隔離、復旧、報告の担当

契約外の工程は社内手順として担当者を固定

データ管理

ログの保管国、個人情報、委託先アクセス

社内規程を満たせなければ保存範囲や提供方式を変更

自社に最適なセキュリティ監視体制を決める意思決定フロー

▲ 自社に最適なセキュリティ監視体制を決める意思決定フロー

無料のグローバル攻撃マップと自社セキュリティ監視の役割と対応能力の比較

▲ 無料のグローバル攻撃マップと自社セキュリティ監視の役割と対応能力の比較

サイバー攻撃のリアルタイム情報を活用する方法

リアルタイム情報は、検知後のトリアージ、証跡保全、影響範囲調査、封じ込め、復旧、報告を時系列で決めておくと業務上の判断に使えます。

導入前の自己診断チェックリスト

次の項目で未確認が一つでもあれば、その項目が監視や初動の死角になります。特に資産台帳と連絡先は、製品選定より先に整備します。

  • [ ] 管理対象のPC、サーバー、モバイル、ネットワーク機器、SaaS、クラウド資産を台帳化しています。

  • [ ] ASMなどを使い、外部から見えるドメイン、IPアドレス、公開ポートを把握しています。

  • [ ] EDRエージェントの未導入端末と停止端末を定期的に抽出しています。

  • [ ] ID、メール、DNS、VPN、WAF、クラウドの監査ログを取得し、保存期間を記録しています。

  • [ ] 夜間・休日を含む一次連絡先、代行者、経営報告先を定めています。

  • [ ] 端末隔離、ID停止、通信遮断の実行者と承認者を決めています。

  • [ ] 隔離前にメモリー、時刻、プロセス、通信、認証の証跡を保全する手順があります。

  • [ ] 取引先、クラウド事業者、保険会社、法務、広報への連絡条件を定めています。

  • [ ] バックアップから復旧し、業務データの整合性を確認する訓練を実施しています。

  • [ ] 生成AI、APIキー、サービスアカウントを資産台帳と権限棚卸しの対象に含めています。

検知後24時間の対応タイムライン

以下は一般的な情報システムを想定した初動例です。人命や設備停止に影響するOT、医療、交通などの環境では、事前に定めた安全手順を優先します。

経過時間の目安

担当者の行動

判断基準と注意点

0~15分

アラート受領、時刻記録、資産台帳照合、担当者招集

重要資産、高権限ID、外部通信を伴う場合は優先度を上げる

15~60分

関連ログ収集、誤検知確認、影響範囲の仮説作成

単一アラートだけでなく、同一ID・端末・通信先を検索する

1~4時間

証跡保全、端末・ID・通信の封じ込め、委託先連絡

隔離による業務影響と拡大リスクを比較し、承認条件に従う

4~24時間

侵入経路調査、脆弱性修正、認証情報変更、復旧判断

侵入原因が残った状態で端末をネットワークへ戻さない

24時間以降

監視強化、関係者報告、再発防止、ルール調整

契約、法令、個人情報、取引先条件に応じて報告要否を判断する

トリアージと証跡保全

最初に確認するのは、対象資産の重要度、アラートの検知根拠、攻撃が継続しているか、他端末へ広がっているかの四点です。EDRの画面だけでなく、認証ログ、DNS、プロキシ、メール、クラウド操作履歴を同じ時刻帯で検索します。時刻同期がずれている場合は、各システムの差分を記録してからタイムラインを作成します。

証跡には、元ログ、検知ルール、プロセスツリー、ハッシュ値、通信先、ログイン履歴、担当者が行った操作を含めます。画面のスクリーンショットだけでは検索や再解析が難しいため、改変されにくい保管先へ元データを保存し、取得日時と取得者を記録します。

隔離前の影響評価と承認

感染が疑われる端末をネットワークから隔離すると拡散を抑えられますが、無条件の隔離は業務停止や証跡消失を招きます。サーバーを強制停止すればメモリー上の情報が失われ、製造設備や医療機器の通信を遮断すれば安全や操業に影響する場合があります。

  1. 対象が一般端末、重要サーバー、OT機器のどれに該当するかを資産台帳で判定します。

  2. 攻撃継続、外部送信、横移動の有無を確認し、隔離しない場合の拡大リスクを評価します。

  3. 揮発性データを取得できるなら保全後に隔離し、取得を待つ間に被害が拡大するなら通信制限を先行します。

  4. 重要サーバーはサービス単位の遮断や負荷分散先への切り替えを検討し、全面停止以外の選択肢を比較します。

  5. 事前承認条件を満たせばSOCが実行し、条件外なら指定された責任者が期限内に判断します。

DDoS発生時の影響確認

DDoSが疑われる場合は、監視画面の攻撃件数ではなく、回線利用率、pps、同時接続数、エラー率、応答時間、正常利用者の成功率を確認します。回線が飽和しているなら通信事業者側での遮断や迂回を優先し、WebサーバーのCPUだけが上昇しているならCDN、キャッシュ、WAF、レート制御を調整します。

遮断ルールは送信元国だけで決めません。正規顧客の地域、API連携先、決済サービスへの影響を評価し、短い有効期限を付けて適用します。攻撃終了後はルールを放置せず、誤遮断と再発の有無をログで検証します。

段階的な導入タイムライン

期間は調達手続きや資産数で変わるため、月数を固定せず完了条件で区切ります。次のフェーズへ進む条件を明確にすると、ツールだけ導入して運用が残る状態を防げます。

フェーズ

実施内容

完了条件

現状把握

資産、公開サービス、ログ、担当者、委託先の棚卸し

所有者不明の資産と監視対象外領域が一覧化されている

限定検証

代表端末とクラウドへEDR・XDR・SIEM連携を適用

検知、連絡、証跡保全、隔離、復旧を一巡できる

対象拡大

全管理端末、拠点、SaaSへ展開し、例外を記録

未導入率とログ欠損率を継続計測できる

運用最適化

誤検知調整、SOAR化、MDR連携、訓練

高優先度アラートの対応時間と未処理数を月次評価できる

リアルタイム情報を活用したインシデント検知から復旧・報告までの5段階プロセス

▲ リアルタイム情報を活用したインシデント検知から復旧・報告までの5段階プロセス

自社のサイバー攻撃をリアルタイム可視化するシステム導入事例

国内事例では、ツールの機能だけでなく、監視対象の規模、社内外の役割分担、自動対処までの範囲を確認すると自社への転用可否を判断できます。

ここでは2026年3月24日時点で、ベンダーまたは導入企業の公開資料から内容を確認できる事例に限定します。公開資料で導入時期や削減率を確認できない項目は、未公開として記載します。

キヤノンマーケティングジャパン株式会社のXDR・MDR連携

業種・規模:IT・キヤノン製品関連事業を展開しています。ESET PROTECT MDRの公式導入事例ページでは、監視対象として社内約23,000台のエンドポイントという数値が紹介されていますが、公開資料の内容は更新される場合があるため、同ページで最新の記載を確認してください。
導入時期:公開資料では具体的な導入年月を確認できません。
課題:大規模な端末環境では、高度な検知製品から生じるアラートを社内担当者だけで継続分析する負荷が高くなります。
施策:XDRによる複数データの可視化とMDRによる監視・分析を組み合わせ、社内担当者と外部専門家の役割を分けました。
成果:約23,000台規模の端末を一元的な監視対象とし、自社だけで高度検知ツールを常時運用する構成を避けています。公式資料で具体的な対応時間やコスト削減率は公表されていないため、効果を数値化して比較することはできません。

パーソルキャリア株式会社の脅威モデリング

業種・規模:人材サービス企業です。対象システム数や端末台数は公開資料で確認できません。
導入時期:公開資料では具体的な開始年月を確認できません。
課題:既存の防御策だけでは、攻撃者がどの経路を選び、どの資産が事業上のリスクになるかを横断的に整理しにくい状態でした。
施策:GMOサイバーセキュリティ byイエラエの公式導入事例ページでは、同社の支援を受けた脅威モデリングの実施と、攻撃者視点での想定経路・対策状況の整理が紹介されています。詳細は同社公式の導入事例ページで確認してください。
成果:潜在的な攻撃経路を可視化し、攻撃を受けてから対応する運用から、事前に弱点と優先順位を特定する運用へ移行しました。公開資料では削減時間や検知率などの数値成果は確認できません。

金融機関系システム開発会社のWebARGUS導入

業種・規模:金融機関系のシステム開発会社で、顧客企業名とサーバー台数は公式導入事例で非公開です。
導入時期:公開資料では具体的な導入年月を確認できません。
課題:Webサーバーの改ざんを検知した後、人手で復旧する方式では、公開停止時間と対応費用が増える課題がありました。
施策:デジタル・インフォメーション・テクノロジーのWeb改ざん瞬間検知・瞬間復旧ソリューション「WebARGUS」を導入しました(DIT Securityの公式製品・事例ページで詳細を確認できます)。
成果:DIT Securityの公式製品・事例ページでは、改ざん検知後に0.1秒未満で正常な状態へ自動復旧する仕組みとして紹介されています。この数値は同社資料に基づくものであり、実際の動作環境や製品バージョンによって異なる場合があるため、DIT Securityの公式ページで最新の仕様を確認してください。なお、この機能はWebコンテンツ改ざんへの復旧を対象としており、認証情報の窃取や端末感染など他のサイバー攻撃全般を同時間内に解決するものではありません。

事例から読み取れる導入判断

約23,000台のような大規模環境では、端末数に比例してアラートと例外対応が増えるため、MDRとの役割分担が判断材料になります。公開サービスの改ざんが事業停止へ直結する場合は、検知後の連絡だけでなく自動復旧の適用範囲を確認します。攻撃経路や優先順位が整理されていない場合は、製品追加より先に脅威モデリングと資産棚卸しを行います。

導入事例の数値を自社へそのまま当てはめてはいけません。監視対象、対応時間、連携製品、社内権限が一致するなら限定検証へ進み、一致しないなら不足する工程を自社運用または別サービスで補います。

よくある誤解と失敗パターン

リアルタイム可視化が機能しない主因は、無料マップの役割誤認、アラート過多、資産棚卸し不足の三つであり、いずれもツール追加だけでは解決しません。

失敗パターン

原因

生じる問題

具体的な対策

無料マップで自社リスクが分かると誤解する

マクロ観測と自社ログを混同する

自社への侵入や情報持ち出しを判定できない

無料マップは教育用とし、EDR、WAF、認証、クラウドのログで自社を監視する

アラート疲れで放置される

初期設定の通知を精査せず、担当者と優先順位を決めない

重大アラートが低リスク通知に埋もれる

相関分析、抑制ルール、優先度、対応期限を設定し、定型処理をSOAR、空白時間をMDRへ移す

棚卸し不足で死角から侵入される

未管理端末、旧VPN、検証クラウド、APIキーを把握していない

監視製品を導入しても対象外資産に気付けない

ASM、MDM、クラウド資産情報を突合し、所有者不明資産を停止または管理対象へ移す

やってはいけない自動隔離

高いリスクスコアが付いたという理由だけで、基幹サーバーやOT機器を即時停止する設計は避けます。リスクスコアは判断材料であり、業務影響や安全性を保証する数値ではありません。一般端末、高権限端末、重要サーバー、OT機器に分け、どの条件なら自動実行し、どの条件なら人の承認を挟むかを事前に決めます。

導入しただけで終わる運用

検知ルール、資産台帳、担当者、連絡先は環境の変更に合わせて古くなります。月次で未処理アラート数、誤検知率、初動時間、エージェント未導入率、ログ欠損率を確認し、閾値を超えた項目に担当者と期限を設定します。評価指標がなければ、管理画面が稼働していても実際の対応力は測れません。

監視対象外のシャドーIT

事業部が独自契約したSaaS、個人が作成したクラウド環境、放置されたサブドメインは、情シスのログ収集対象から外れやすい資産です。SSO、経費データ、DNS、証明書透明性ログ、ASMの発見結果を突合し、所有者を特定できれば管理対象へ登録します。所有者も業務用途も確認できなければ、通信とデータを保全したうえで停止判断へ進めます。

よくある質問

無料サイトの限界、DDoSの見分け方、アラート過多、法制度への対応について、検索時に生じやすい疑問へ簡潔に回答します。

Q:無料のサイバー攻撃マップで自社への攻撃を確認できますか?

A:原則として確認できません。無料マップは運営者の観測網が捉えたマクロな傾向を表示するため、自社への攻撃はファイアウォール、WAF、EDR、認証、クラウドのログで判定します。

Q:日本へのサイバー攻撃をリアルタイムで見られるサイトはありますか?

A:NICTERWEBでは、NICTのダークネット観測網が捉えた通信を地図や統計で確認できます。ただし、日本企業の被害件数や自社への直接的な攻撃を表示するサイトではありません。

Q:DDoS攻撃はリアルタイムで可視化できますか?

A:回線帯域、pps、同時接続数、送信元分布、エラー率、応答時間を平常値と比較すればリアルタイムに可視化できます。回線が飽和する攻撃では、自社機器のログだけでなく通信事業者、CDN、DDoS対策サービスの監視情報も使います。

Q:アラートが多すぎて対処できない場合の解決策は何ですか?

A:同じ端末、ID、通信先に関する通知を一つの案件へ束ね、資産重要度と検知確度で優先順位を付けます。定型的な処理はSOARへ移し、社内に監視できない時間帯があるなら、その時間帯の一次分析と対応をMDRの契約範囲に含めます。

Q:EDRやXDRを導入すれば攻撃を防げますか?

A:すべての攻撃を防げるわけではありません。未導入端末やログ不足は死角になるため、脆弱性管理、多要素認証、バックアップ、WAF、ASM、SOCまたはMDRと組み合わせます。

Q:攻撃を検知したら端末をすぐ隔離すべきですか?

A:一般端末で攻撃継続が確認できる場合は隔離を優先します。重要サーバーやOT機器では、証跡消失、業務停止、安全への影響を評価し、事前に決めた承認手順に従って通信制限または隔離を選びます。

Q:能動的サイバー防御関連法によって一般企業にも監視義務が生じますか?

A:同法の報告義務などは指定された重要社会基盤事業者が中心で、すべての一般企業に一律のリアルタイム監視義務を課すものではありません。ただし、取引先から事故報告期限やログ保存条件が契約で示された場合は、その条件を自社の運用手順へ反映します。

Q:無料サイトは社内でどのように活用できますか?

A:研修や経営会議で、攻撃が継続的に観測されている事実を説明する用途に使えます。「自社の感染状況ではない」と明記し、その後に自社の訓練結果や監視指標を示すと誤解を防げます。

リアルタイムでサイバー攻撃(不審な挙動)を検知した後の対処フロー

▲ リアルタイムでサイバー攻撃を検知した後の対処フロー

まとめ

サイバー攻撃のリアルタイム可視化では、無料マップで世界や日本の傾向を理解するマクロ監視と、自社の端末・ID・ネットワーク・クラウドを守るミクロ監視を分けて考えます。EDRやXDRを導入するだけでは、未管理資産と未処理アラートは解消しません。

明日から始める最初の一歩は、公開中のドメイン、IPアドレス、VPN、クラウド、端末、APIキーを一つの台帳へまとめることです。その後、取得できるログ、夜間の担当者、隔離権限、証跡保全手順を確認し、空白部分をASM、MDR、SOARで補います。無料マップは教育に使い、自社の安全性は必ず自社ログと対応結果で判断します。

本記事の内容に誤り等がございましたら、こちらからご連絡ください。

監修

Admina Team

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