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日々巧妙化し、増加し続けるサイバー攻撃。日本にいる私たちも、企業 or 個人を問わず、常にその見えない脅威に晒されています。その脅威をわかりやすく確認できる方法が、サイバー攻撃をリアルタイムで可視化する技術です。世界中で発生している攻撃が、いつ、どこから、どこへ向かっているのかを地図上で視覚的に把握できます。IPアドレスの情報を活用することで、攻撃元や攻撃先を地図上にプロットし、攻撃の流れをリアルタイムで可視化し、詳細な分析が可能です。
この記事では、サイバー攻撃のリアルタイムサイトの仕組みから、効果的なセキュリティ対策への活かし方、そして誰でも無料で利用できる最新のツールまで、分かりやすく解説します。これらのツールを使えば、サイバー攻撃の動向をリアルタイムで把握することが可能になります。

サイバー攻撃のリアルタイム可視化とは
この記事でわかること
2026年10月施行予定の「能動的サイバー防御法」により、サプライチェーン全体へのリアルタイム監視要求が広がりつつある
無料の可視化マップ(マクロ)と、自社環境を守るセキュリティ対策(ミクロ)は根本的に役割が異なる
国内のインシデントは1日平均1.5件発生しており、無差別な攻撃パケットの観測数は過去最多を更新している
自社防衛にはリアルタイムの検知だけでなく、SOCやMDRによる24時間体制の対処フローも欠かせない
サイバー攻撃のリアルタイム可視化とは、ネットワークや端末への不審な通信・挙動を検知して脅威の全体像を視覚的に把握するプロセスです。
近年のサイバー脅威は極めて激化しています。2025年5月に成立した「能動的サイバー防御法(サイバー対処能力強化法)」は2026年中の本格施行が予定されており(出典:内閣官房 国家サイバー統括室(NCO))、日本のセキュリティ政策は攻撃を受けてから対処する受動的なものから、攻撃の兆候を平時から監視・無害化するアクティブ・サイバー・ディフェンスへと大きくシフトします。これにより、基幹インフラ事業者だけでなく、そこへつながる中小企業やIT委託先といったサプライチェーン企業全体にセキュリティ対策の強化が波及しています。
トレンドマイクロ社が2026年1月に発表した調査によると、2025年の1年間に国内で公表されたセキュリティインシデントは559件に上り、1日平均約1.5件のペースで深刻な被害が公表されています(出典:トレンドマイクロ)。また、情報通信研究機構(NICT)の「NICTER」が2025年に観測したサイバー攻撃関連通信は、過去最多の約7,010億パケット(前年比2.2%増)に達したとNICTの公表データ(NICTERレポート)は示しています。このように常態化する脅威を早期に検知し、企業経営や業務の継続性を守るうえで、リアルタイムでの可視化は今や当然の前提となっています。
※本記事は、情報セキュリティ分野での実務経験を持つ専門家(CISSP・情報処理安全確保支援士(登録セキスペ)資格保有者)の監修のもと作成しています。監修者の詳細プロフィールは編集部にお問い合わせください。
サイバー攻撃をリアルタイムで可視化する仕組み
リアルタイム可視化は、観測対象の範囲によって「マクロの可視化」と「ミクロの可視化」の2種類に大別されます。マクロとミクロの違いを混同すると、対策が的外れになります。
マクロ(世界全体)の可視化
世界中に分散配置された「ハニーポット(おとりシステム)」やスキャンセンサーが受信した不審な通信データを集約し、地球儀や世界地図のグラフィック上にプロットする仕組みです。主に国家間での大規模なDDoS攻撃の発生状況や、新種のマルウェアによる無差別なスキャン活動など、グローバルな「攻撃トレンド」を鳥瞰(ちょうかん)するのに適しています。
ミクロ(自社環境)の可視化
自社内のエンドポイント(PC、サーバー)やローカルネットワーク、クラウド環境の稼働ログを収集・分析し、リアルタイムに異常な挙動を検知する仕組みです。外部からの不正アクセスや、特定企業を標的にした潜入、マルウェアの社内拡散といった「自社への直接的な脅威」を特定し、速やかな対処に繋げるための実務的な可視化を指します。
▲ 全体像を捉える「マクロ可視化」と、自社を守る「ミクロ可視化」の違い
サイバー攻撃の種類と2026年の最新対策
昨今の攻撃はAI技術の急速な発展に伴い、さらに高度化しています。IPA(情報処理推進機構)が発表した「情報セキュリティ10大脅威 2026」組織編では、初めて「AIの利用をめぐるサイバーリスク」がランクインしました(出典:IPA 情報セキュリティ10大脅威 2026)。具体的な手口と必要な対策は以下の通りです。
AIを悪用した高度な攻撃手法
攻撃者は生成AIを活用し、不自然な表現のない「完璧な日本語」を用いた巧妙なフィッシングメールを作成するほか、ディープフェイク動画を用いた詐欺を仕掛けています。さらに、自律動作する「AIエージェント」が実務に活用されるようになった2026年現在、AIの挙動を狂わせるプロンプトインジェクションや、連携するAPIを乗っ取る高度な攻撃が発生しています。こうした攻撃は従来のシグネチャ型検知では捉えきれないため、振る舞い検知を備えたツールとの組み合わせが不可欠です。
ミクロ監視(EDR/XDR)による自社対策
AIによる攻撃は既存の定義ファイル型ウイルス対策ソフトでは検知できません。そのため、PCやサーバーなどのエンドポイントで挙動を監視する EDR(Endpoint Detection and Response)や、ネットワーク・クラウドまで統合的に可視化・監視する XDR(Extended Detection and Response)の導入が急務となっています。EDR/XDRを導入すれば、侵入後の不審な動きを即座に検知し、被害の拡大を食い止められます。
EDRとXDRの主な違いを整理すると、EDRはエンドポイント単体の挙動監視に特化しているのに対し、XDRはネットワーク、メール、クラウドなど複数のレイヤーを横断して相関分析を行います。自社の環境規模やクラウド利用状況に応じて、どちらが適切かを選定することが求められます。
サイバー攻撃をリアルタイムで可視化できる無料サイト【2026年最新稼働版】
世界中のサイバー空間で発生しているマクロな脅威動向は、信頼できるセキュリティ機関や企業が運営する無料の可視化サイトから把握できます。現在も安定してサービスを提供している代表的な4つのマップを紹介します。
NICTERWEB
日本の情報通信研究機構(NICT)が運営する、サイバー攻撃統合分析プラットフォームです。ダークネット(未使用のIPアドレス)に届く不審なパケットをリアルタイムで3Dグラフィック化して表示します。日本をターゲットにしたポートスキャンやマルウェアの活動状況が最も正確にわかるため、国内のトレンド把握に最適です。画面左パネルでは攻撃元国の統計、右パネルでは攻撃種別の内訳をリアルタイムで確認でき、情シス担当者が朝のブリーフィングに活用するケースも増えています。NICTERWEBのダークネット観測システムからアクセスできます。
Kaspersky Cyberthreat Real-Time Map
セキュリティ大手のKaspersky社が運営する、視覚的に極めて美しい可視化サイトです。3Dの地球儀上に、同社製品がリアルタイムで検知したウイルス、ネットワーク侵入、スパムなどの脅威が流れ星のように描画されます。各国の脅威ランキングなども直感的に確認できます。右上のフィルター機能で脅威カテゴリを絞り込めるため、ランサムウェアの活動状況だけを追うといった使い方も可能です。詳細はKaspersky Cyberthreat Real-Time Mapの可視化サイトをご覧ください。
Check Point Live Cyber Threat Map
イスラエルのセキュリティ企業であるCheck Point社が提供しています。世界地図上でリアルタイムに展開されている攻撃の様子を線で結んで表示するほか、特定の国を標的とした攻撃の統計情報を参照できます。シンプルなインターフェースが特徴で、画面下部のスコアボードから直近24時間の攻撃件数上位国を素早く把握できます。詳細な状況はCheck Point Live Cyber Threat Mapの脅威状況表示から確認可能です。
Fortinet Threat Map
Fortinet社が運営する可視化サイトで、マルウェア、ボットネット、エクスプロイト(脆弱性攻撃)などの最新データをリアルタイムに表示します。洗練されたグラフィックデザインにより、グローバルな脅威の偏りや、現在どの地域でどのような攻撃が集中しているのかを俯瞰するのに役立ちます。情報はFortinet Threat Mapのグローバル観測データより閲覧できます。
無料の可視化サイトと自社セキュリティ対策の決定的な違い
無料のグローバル可視化マップと、企業が自社のビジネスを守るための実務的なセキュリティ対策には、目的と機能において決定的な違いがあります。
無料マップは全体トレンドの「デモ画面」に過ぎない
無料で公開されている世界地図の脅威マップは、世界全体の無差別な攻撃トレンドを可視化したデモ画面であり、自社のネットワーク状況とは一切無関係です。自社を名指しで狙う「標的型攻撃」や、取引先の脆弱なシステムを経由して侵入を図る「サプライチェーン攻撃」といった巧妙な侵入は、これら無料のグローバルマップ上には表示されません。
「SOC」と「MDR」を使わないと運用が回らない理由
自社専用の監視システム(EDR、XDR、SIEMなど)を導入し「怪しい通信が画面上で赤く表示された」としても、それを24時間365日体制で監視し、即座に「通信を遮断する」「感染PCを隔離する」といった対応が取れなければ意味がありません。社内の情報システム部門や少人数の担当者がすべての監視と緊急対応をこなすのは現実的ではありません。そのため、インシデントの可視化と並行して、自動防御アクション(SOAR)の組み込みや、外部の専門家集団が24時間体制で監視と即時隔離を行う「SOC(セキュリティーオペレーションセンター)」や「MDR(Managed Detection and Response)」の活用を推奨します。
▲ 自社に最適なセキュリティ監視体制を決める意思決定フロー
サイバー攻撃のリアルタイム情報を活用する方法
自社のセキュリティ体制を点検し、段階的にリアルタイム可視化を強化していくための「自己診断チェックリスト」と、導入までの「推奨タイムライン」を以下にまとめました。
セキュリティ体制自己診断チェックリスト(5項目)
[ ] 1. 資産の可視化:社内で使用している全PCやモバイル端末、サーバー、SaaSアカウントが漏れなくリストアップされ、管理されているか。
[ ] 2. エンドポイントの監視:ウイルス対策ソフトだけでなく、侵入後の挙動をリアルタイムに検知する「EDR」を全端末に導入しているか。
[ ] 3. 24時間監視体制:夜間や休日を含め、不審な挙動が検知された際に即時対応できる監視体制(自社運用、またはMDRの契約)があるか。
[ ] 4. 緊急時の対処フロー:インシデント検知時、具体的にどのネットワークからどの端末を「物理的に隔離」するか、手順書が整備されているか。
[ ] 5. 組織内のセキュリティ教育:生成AIを悪用した高度なフィッシングメールや詐欺の手口について、従業員への定期的な周知や訓練を行っているか。
セキュリティ可視化の強化タイムライン
フェーズ | 期間目安 | 主な実施内容 | 期待できる効果 |
|---|---|---|---|
STEP 1:現状把握と可視化 | 1ヶ月目 | ・社内デバイスやネットワークの棚卸し | セキュリティの「死角」を排除し、全社的な危機意識を高める |
STEP 2:防御ツールの導入 | 2〜3ヶ月目 | ・EDR / XDRなどのミクロ監視ツールの選定とテスト導入 | 侵入された場合でも、不審な挙動をリアルタイムで検知・封じ込める体制が整う |
STEP 3:運用・監視の自動化 | 4ヶ月目以降 | ・外部SOC / MDRサービスとの連携による24時間監視の稼働 | 属人化を防ぎ、夜間・休日でも自動、あるいは専門家による即時対応が維持される |
自社のサイバー攻撃をリアルタイム可視化するシステム導入事例
多くの日本企業が、高度なセキュリティ環境を構築するために、リアルタイムでの可視化・防御ソリューションを実務に導入しています。ここでは代表的な3社の事例を紹介します。なお、各社の導入製品および運用実績はベンダーの公式導入事例等で確認できますが、以下に記載する具体的な導入開始年については一次情報による裏取りが完全ではないため、参考情報としてご参照ください。
事例1:ローム株式会社
半導体・電子部品製造業のグローバル展開企業であるロームは、全世界に展開する大量の端末(エンドポイント)における脅威状況を統合的かつリアルタイムに把握できていないという課題を抱えていました。
そこでEDR製品「Cybereason」を導入し、全世界の全デバイスにおける不審な挙動を一元監視する体制を構築しました(導入時期:2020年頃、運用中。Cybereason公式導入事例)。これにより、すべての端末で発生した不審なイベントをリアルタイムに検知・解析できるようになり、従来の受動的な事後対応から先手を打つ高度なセキュリティ体制へと転換しています。
事例2:ジャパンマリンユナイテッド株式会社
造船業・数千名規模のジャパンマリンユナイテッドでは、モバイル端末やクラウドサービスなど多岐にわたるシステム環境が並立し、少数の情報システム要員では24時間体制の監視が極めて困難という状況が続いていました。
XDR(Cybereason)を導入し、エンドポイントからネットワークに及ぶシステム全体を一元的な管理コンソールで可視化することで対応しました(導入時期:2021年頃、運用中。Cybereason公式導入事例)。「以前は複数のツールを行き来していましたが、今は一画面で状況を把握できるので、早期発見のスピードが大きく変わりました」と担当者は語っています。限られた人員でありながら、高度な統合的監視網を省力化して維持することに成功しています。
事例3:JFEスチール株式会社
鉄鋼業・数万名規模のJFEスチールは「DX with Security」を掲げる中、これまでインターネットから遮断していた工場(OT環境)のPCのデジタル化に伴い、侵入をリアルタイムで防御しつつ安定稼働させる仕組みが必要になりました。
エンドポイント防御製品「AppGuard」を2023年より段階的に導入(運用中)し、PC内のプロセスの挙動を監視して未知のウイルスや悪意ある起動プロセスを即座にブロックする体制を整えました。インターネットに接続する工場のPCやオフラインの重要設備において、過検知のないリアルタイム自動防御を実現し、安定操業と高水準なセキュリティ可視化を両立しています。
よくある質問
Q:無料のサイバー攻撃マップは自社のセキュリティ対策に使えますか?
A:いいえ、無料のグローバル攻撃マップは世界全体の無差別攻撃トレンド(マクロ動向)を示すデモ画面に過ぎないため、自社の直接的なセキュリティ対策には使えません。自社を狙う標的型攻撃やサプライチェーン経由の侵入を可視化するためには、EDRやXDR、SIEMなどの「自社専用の監視システム」を導入する必要があります。
Q:リアルタイムに攻撃を検知した後はどう対応すべきですか?
A:検知した後は、速やかに該当するデバイスをネットワークから物理的または論理的に隔離し、被害の拡大を防ぐアクションを起こす必要があります。自社で24時間365日の迅速な判断や操作を行うことが難しい場合は、隔離を自動化するSOAR機能の実装や、専門家が代行して対処してくれる「MDR(マネージドEDR)」サービスの導入を推奨します。
Q:能動的サイバー防御法の本格施行により中小企業は何をすべきですか?
A:大企業や基幹インフラ事業者から信頼されるサプライチェーンの一員であり続けるため、まずは自社環境のセキュリティ状況(利用デバイス、SaaS、アクセスログ等)を可視化・管理してください。攻撃の踏み台にされないよう、ウイルス対策ソフトをEDRへアップグレードし、緊急時の連絡体制や対処手順の整備から着手してください。
▲ リアルタイムでサイバー攻撃(不審な挙動)を検知した後の対処フロー
まとめ
サイバー攻撃が巧妙化し続ける現代において、脅威のリアルタイムな可視化はビジネスの継続性を守るための大前提です。無料の世界規模マップを俯瞰してグローバルなトレンドを理解したら、次は「自社を守るためのミクロの可視化」へと一歩を踏み出してください。自社が保有するデバイスやアカウントの棚卸しから着手し、不審な挙動を検知して即時対応できる監視体制の構築に向けた点検を進めましょう。
✅ 社内デバイス・SaaSアカウントの棚卸しを実施する
✅ ウイルス対策ソフトをEDRへアップグレードする
✅ 緊急時の隔離手順・連絡フローを文書化する
✅ SOC/MDRサービスの比較検討を開始する
本記事の内容に誤り等がございましたら、こちらからご連絡ください。
監修
Admina Team
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