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社内ネットワーク構築では、初期の機器費用を抑えても、回線の過剰契約、設定変更の都度発生する作業費、障害対応の社内工数によって総コストが膨らむことがあります。ネットワークコストは、購入時の見積額ではなく、導入後3〜5年程度の運用を含めて比較する考え方が実務的です。
この記事では、LAN・無線LAN・WAN回線・セキュリティ・保守を分けて費用を確認し、自社に必要な構成を絞り込む方法を解説します。インターネットVPN、IP-VPN、専用線、SD-WANの月額相場も比較し、社内稟議や相見積もりで使えるチェックリストを掲載します。

ネットワークコストとは
ネットワークコストとは、拠点間接続、インターネット接続、クラウド接続、リモートアクセス、セキュリティ、運用保守を維持するための総保有コストです。
本記事のポイント
ネットワーク構築費用は、機材費・工事費・設定費・保守費・回線費を分けて比較します。
WAN回線は安さだけで選ばず、通信品質、拠点数、クラウド利用、障害時の業務影響で選びます。
低コスト化では、不要な帯域や重複した保守契約を整理し、情シスの運用工数も費用として計算します。
NaaSや運用委託は初期投資を平準化できますが、契約期間と設定変更費まで含めて比較します。
費用は、購入時に発生するCAPEXと、月額で支払うOPEXに分けて整理します。CAPEXにはルーター、スイッチ、無線アクセスポイント、UTM、ラック、LANケーブル、配線工事、設計・設定作業が含まれます。OPEXには回線利用料、クラウド型セキュリティのライセンス、保守契約、監視サービス、設定変更、障害時のオンサイト対応が含まれます。
さらに見落としやすいのが、情シスの運用負荷です。月額保守費が安くても、障害切り分けや設定変更を社内だけで抱える契約では、実質的なネットワークコストが増える場合があります。
コスト構造の分類
予算表では、初期費用と月額費用を混在させず、少なくとも「回線」「機器」「工事」「ライセンス」「保守」「社内工数」の6項目に分けます。総務部門が稟議を作成する場合も、この区分で初年度費用と次年度以降の費用を分けると、複数案の比較条件をそろえやすくなります。例えば、無線アクセスポイントを安く導入しても、PoE給電に対応したスイッチや配線が不足していれば、後から機器交換と施工が必要になります。
クラウド型のネットワークサービスであるNaaSは、機器購入を月額利用に置き換え、監視や保守を一体化しやすい形態です。市場予測や月額料金を個社のTCO比較へそのまま当てはめることはできません。機器を長期間使い続けられる企業では購入が有利になることもあるため、契約期間、解約費用、交換条件、設定変更費を比較します。
ネットワーク構築の対象範囲
ネットワーク構築とは、端末、サーバー、クラウドサービスを安全に接続するために、物理設計と論理設計を行い、機器設置、配線、設定、試験、運用設計までを実施することです。物理設計では配線経路、ラック、電源、無線アクセスポイントの設置場所を決めます。論理設計ではIPアドレス、VLAN、通信経路、認証、アクセス制御、ログ保存を定義します。
単一拠点のLAN更新と、多拠点のWAN刷新では費用構造が異なります。前者では現地調査、LAN配線、無線設計、施工時間が費用に影響します。後者では回線月額、拠点ごとのルーター、冗長回線、クラウド接続、運用監視の比重が大きくなります。
▲ ネットワーク総保有コスト(TCO)を構成するCAPEXとOPEXの分解構造
要件定義と帯域設計の進め方
ネットワーク構築費用を適正化するには、機器選定より先に利用者数、端末数、通信量、拠点、可用性を数値化します。
現状調査と要件整理
最初に、利用者数ではなく同時接続端末数を数えます。PCに加えてスマートフォン、タブレット、会議室端末、プリンター、監視カメラ、IoT機器が接続されるため、従業員数だけで機器性能を決めると不足しやすくなります。次に、クラウドストレージ、Microsoft 365などのSaaS、Web会議、VDI、基幹システムの利用状況を整理します。
要件定義で決めるべき項目は、拠点数、フロア面積、会議室数、無線利用エリア、在宅勤務者数、停止許容時間、バックアップ回線の要否、監査ログの保存期間です。停止許容時間が短い拠点では、ルーター二重化だけでなく、異なる経路の回線、切替試験、障害連絡の体制まで見積条件に含めます。
帯域計算の目安
帯域は「人数が何人なら遅い」という固定値ではなく、業務内容から見積もります。Web閲覧、SaaS同期、Web会議、VDIでは、必要となる上り・下り帯域、同時接続率、遅延への許容度が異なります。業務形態ごとの一律のMbps値を予算基準として使うのではなく、自社の実測値を基に帯域を設計します。
例えば、50人の拠点では、利用者数だけで必要帯域を確定させず、Web利用、アップデート、クラウドバックアップ、来客Wi-Fi、会議の同時開催を分けて把握します。常時の平均通信量だけでなく、混雑する時間帯のピーク、上り通信の利用率、パケット損失や遅延を測定して契約帯域を決めます。
主な利用形態 | 帯域計算の目安 | 設計時に追加確認する項目 |
|---|---|---|
Web・メール中心 | 同時接続数とピーク時の利用率を実測 | 来客Wi-Fi、クラウドバックアップ |
SaaS中心 | 同期処理と上り・下り通信量を実測 | 同期処理、拠点からの直接接続 |
Web会議中心 | 会議の同時開催数と上り帯域を実測 | 会議室の同時利用、上り帯域 |
VDI利用 | 画面転送量、遅延、同時利用数を実測 | 画面転送品質、遅延、冗長回線 |
設計から運用までの費用発生点
現状調査では、回線調査、電波調査、既存配線調査、構成図更新の費用が発生します。設計では、要件定義、基本設計、詳細設計、IPアドレス設計、VLAN設計、セキュリティポリシー作成が対象です。構築では、機材、搬入、配線、夜間作業、設定、試験、切替立ち会いが加わります。
運用開始後は、保守契約だけでなく、ファームウェア更新、証明書更新、アカウント追加、通信ルール変更、障害一次対応の費用を確認します。変更頻度が高い環境では、月額保守が安くても変更作業が都度課金なら年間費用が増えます。月あたりの変更件数を過去1年分から集計できるなら、その件数を見積依頼書に記載します。
ネットワーク構築費用とWAN回線の相場
ネットワーク構築費用は、LAN構築の初期費用とWAN回線の月額費用を分けて見積もると比較しやすくなります。本記事では一律の金額相場を掲載していません。拠点所在地・建物構造・配線経路・既設設備の再利用可否・工事時間帯・保守範囲の違いにより、同一構成でも最終見積額が数倍単位で異なるため、相場値を自社条件に当てはめると過大・過少見積もりの原因になるためです。費用の目安を把握するには、「同時接続端末数・拠点数・冗長化要否・保守対応時間・変更作業の年間件数」を固定した上で複数社に見積依頼し、同一前提での金額を比較する方法が実務的です。
LAN構築費用の内訳
LAN構築費用は、拠点規模、施工条件、保守範囲によって大きく変動します。人数や床面積だけで金額を確定することはできません。既設配線を再利用できるか、天井裏や床下の施工が必要か、夜間工事か、無線アクセスポイントの台数、PoE給電、冗長化、認証基盤連携の有無で見積額が変わります。
費目 | 主な内容 | 金額が変動する条件 |
|---|---|---|
機材費 | ルーター、スイッチ、無線AP、UTM、ラック | ポート数、PoE、冗長電源、保守年数 |
施工費 | LAN配線、ラック設置、電源、現地作業 | 配線距離、壁・床の施工、夜間・休日作業 |
設定費 | VLAN、Wi-Fi、VPN、認証、ログ、試験 | 拠点数、SSID数、通信ルール、移行難度 |
保守費 | 故障交換、監視、障害受付、オンサイト対応 | 対応時間、代替機、駆け付け範囲 |
回線費 | インターネット、閉域網、モバイル回線 | 帯域、SLA、拠点所在地、冗長化 |
費用相場を使う際は、「機材・設計・施工・設定・初年度保守を含むのか」を必ず揃えます。50万円の見積書が安く見えても、施工費や保守費が別建てであれば比較対象になりません。特に移転案件では、旧拠点の撤去、機器返却、原状回復、回線解約費が初期見積から漏れやすい項目です。
費用感の参考として、条件を固定した場合の構成例を以下に示します。いずれも実際の見積額は条件次第で上下するため、同一前提での複数社比較が前提です。
小規模オフィス(同時接続20端末以下、単一フロア、既設配線再利用):スイッチ・無線AP・UTMの機材費、基本設定費、初年度保守を含む初期費用の構成で見積もります。施工が最小限であれば機材・設定・保守が費用の大半を占めます。
中規模オフィス(同時接続50〜100端末、複数フロア、新規配線):配線工事・スイッチ増設・無線設計・VLAN設計・認証連携が加わります。夜間施工や電波調査が含まれると費用が増加します。
多拠点WAN刷新(5拠点以上、冗長回線、クラウド接続):回線月額・拠点ルーター・監視・保守の3年TCOで比較します。回線種別・帯域・SLA条件によって月額差が大きくなります。
WAN回線種別の比較
WAN回線の選定では、月額費用だけでなく、品質保証、クラウド接続の経路、拠点追加のしやすさ、運用体制を比較します。料金と導入期間は帯域、所在地、アクセス回線工事、契約期間、オプション、既存設備の条件で変わるため、回線種別ごとに一律の相場として扱いません。
回線種別 | 月額費用の目安 | 導入期間の目安 | 特徴 | 主な注意点 |
|---|---|---|---|---|
インターネットVPN | 回線・保守・機器を含めて個別見積 | アクセス回線の開通条件による | インターネット回線を暗号化して利用します。 | ベストエフォート回線では、混雑時の品質条件を契約で確認します。 |
IP-VPN | 帯域・拠点・保守条件により個別見積 | 回線工事・拠点条件による | キャリア閉域網を利用し、拠点間通信を構成します。 | クラウド通信を本社経由にすると帯域が集中します。 |
SD-WAN | 回線費、機器、ライセンス、運用費を合算 | 機器手配・回線開通・設定条件による | 複数回線をアプリケーション別に制御できます。 | 回線費、機器、ライセンス、運用費を合算します。 |
専用線 | 契約帯域・距離・SLAにより個別見積 | 要個別見積 | 契約上の帯域保証やSLAが提供されることが多い接続です。 | 高額になりやすく、帯域保証、可用性、遅延、復旧時間、拠点追加条件を契約書で確認します。 |
本社と拠点間で常時大容量の基幹データを扱い、停止時間を厳しく管理するならIP-VPNや専用線を比較対象にします。SaaSやインターネット利用が中心で、拠点ごとにクラウドへ直接接続したいなら、インターネットVPNやSD-WANを比較します。SASEサービスの接続拠点数や利用可能な地域は提供状況により変動します。海外拠点を含む構成では、候補サービスの公式サイトにある接続拠点一覧、対応国・地域、障害時の経路を確認し、利用地域に近い接続拠点が確認できれば限定検証に進み、確認できなければ既存回線を含む代替経路を比較対象にします。
ネットワークセキュリティ費用
ネットワークセキュリティ費用には、UTMやファイアウォールの購入費、脅威情報更新ライセンス、VPNまたはZTNAのアクセスライセンス、ログ監視、インシデント対応が含まれます。安価な機器を導入しても、サポート終了後に脆弱性対応ができなければ、更新費用と移行作業が前倒しになります。
IPAは、「CC(ISO/IEC 15408)概説」で、Common Criteriaを情報技術に関連した製品・システムが適切に設計され、その設計が正しく実装されていることを評価する国際標準規格と説明しています。またIPAの「セキュリティ要件適合評価及びラベリング制度(JC-STAR)」では、★1と★2は自己適合宣言方式、★3と★4は独立した第三者評価機関による評価報告書に基づく認証方式と案内しています。IoT機器をネットワークに接続する場合は、必要な保証水準に応じて、認証・評価情報、更新方針、ログ取得可否を調達条件に含めます。
低コスト化に向けた構成選定
ネットワークを低コスト化するには、必要帯域と可用性を維持したまま、過剰な回線、重複機能、社内運用工数を減らします。
回線と機器のライトサイジング
ライトサイジングは、利用実績に対して過大または不足している回線・機器の容量を見直す作業です。回線増速や機器更新の前に、通信量、ピーク時間、アプリケーション別の利用状況を実測することで、過剰な帯域や機器容量を見直す根拠が得られます。
月間の通信量が少ないからといって直ちに帯域を下げると、月末処理や全社会議で品質が悪化します。平日・休日、始業直後、昼休み明け、会議集中時間の利用率を比較し、ピーク時にも業務上必要な余裕が残るかで判断します。監視データが取得できるなら直近3か月分を使い、取得できないなら2週間以上の試験計測を行った後に契約変更を検討します。
購入型とサービス型の判断軸
自社で機器を購入する構成は、長期利用で月額支払いを抑えやすく、設定を細かく制御したい環境に向きます。一方で、更新時の調達、保守期限管理、障害対応、設定変更を自社で担う必要があります。NaaSやMSPによる運用委託は、初期費用を平準化し、監視や交換を契約に含めやすい一方で、最低利用期間、増減員時の課金、解約費、設定変更費を確認しなければTCOを比較できません。
外部委託を検討する際は、月額の表示額だけを比較せず、障害受付時間、オンサイト対応、機器交換、ライセンス更新、月次報告、変更作業の範囲を同一条件にそろえます。たとえば、3年TCOは「初期機材・施工・設定費+36か月分の回線・ライセンス・保守費+予定変更作業費+撤去・返却費+社内工数」で計算します。変更作業の単価と年間件数を見積書で確認できれば計算式に加え、確認できなければ変更作業を別枠の予備費として稟議に記載します。
補助金の扱い
補助金はネットワーク構築費用を一律に補填する制度ではありません。デジタル化・AI導入補助金では、申請回、申請枠、登録ITツール、契約形態によって対象経費が定められます。ソフトウェアやクラウド利用料が対象となる場合がある一方、LAN配線工事やハードウェア単体購入は対象外となるケースがあります。
補助金を前提に構築計画を立てる場合は、対象サービスとして登録されていること、交付決定前の契約・発注の扱い、設定費や保守費が対象に含まれるかを、申請回のIT導入補助金の公式公募要領・交付規程と登録ITツール画面で確認します。対象が確認できれば補助対象部分と自己負担部分を分けて稟議できます。対象が確認できなければ、補助金を除いた資金計画で回線・機器・工事を優先順位化します。
▲ 購入型(自社所有)とサービス型(NaaS/運用委託)の特徴比較
▲ 過剰コストを防ぐための回線・構成見直しフロー
導入時の失敗パターンと対策
ネットワーク構築で失敗しやすいのは、初期費用だけで判断し、施工条件や運用条件を要件に含めない場合です。
一式見積もりによる比較不能
「ネットワーク構築一式」とだけ記載された見積書では、機材費が高いのか、施工費が高いのか、保守が含まれるのかを判断できません。相見積もりでは、ルーター、スイッチ、無線アクセスポイント、UTMの型番・数量・単価を分け、施工、設定、試験、保守、出張、夜間対応、撤去を別項目にします。
ネットワーク・IT基盤の導入では、検討開始から導入完了まで半年以上かかることがあります。ASCII.jpが2024年に掲載した調査記事(「ネットワーク環境の見直しに関する実態調査」)によると、6か月以上を要する層が全体の57.8%を占め、社内承認プロセスで最も壁になった点は費用対効果の定量的な説明の難しさが17.4%で最多でした。承認プロセスでは、費用対効果を定量的に示せないことが障害になります。初期見積だけでなく、3年分の回線・保守・ライセンス・設定変更費を合計した表を作ると、稟議の比較条件をそろえられます。
無線アクセスポイントだけの更新
Wi-Fi 7対応アクセスポイントを導入しても、端末が対応していない、スイッチのPoE給電能力が不足している、アップリンクが混雑している、電波設計が未実施である場合は期待した性能になりません。Wi-Fi 7は選択肢の一つであり、全オフィスで一律に導入する前提ではありません。
高密度な会議室、動画利用、無線端末が多いエリアでは、端末対応状況、6GHz帯の利用条件、給電、スイッチ容量、バックボーンを確認した上で限定導入します。既存のWi-Fi 6環境で通信品質と端末数に問題がなければ、電波調査、チャネル設計、アクセスポイント配置の見直しが先になる場合もあります。
VPNの一律廃止
VPNには拠点間接続や限定された管理者アクセスで有効な用途があり、適切なパッチ適用、多要素認証、アクセス制御、ログ監視と組み合わせて運用できます。ZTNAやSASEは、ユーザー・端末単位のアクセス制御やクラウド利用に適した選択肢ですが、ID基盤、端末管理、アプリケーションの公開方式、ライセンス体系を整理せずに移行すると運用が複雑になります。
比較軸 | VPN | ZTNA・SASE |
|---|---|---|
主な接続単位 | ネットワークまたは拠点単位 | ユーザー、端末、アプリケーション単位 |
費用構造 | 機器、保守、回線、利用者管理 | 利用者・機能ごとの月額ライセンスが中心 |
向く条件 | 固定拠点間通信、限定用途の接続 | 在宅勤務、SaaS利用、細かなアクセス制御 |
注意点 | 脆弱性管理、集中型構成の帯域不足 | ID連携、端末状態、契約機能の整理 |
クラウドサービス中心で、社外利用者ごとに接続先を限定したい場合はZTNAの限定検証を行います。拠点間で安定した通信を優先し、利用者が限定される場合はVPNの設定・監視を強化する選択ができます。
冗長化試験の省略
回線やルーターを二重化しても、自動切替の設定、DNS、認証、クラウド接続、監視通知が設計されていなければ障害時に業務が止まります。導入時には主回線断、ルーター停止、電源断、認証基盤障害などを想定した試験項目を作り、切替時間と影響範囲を記録します。
試験票には、試験日時、試験対象、遮断方法、期待する切替先、許容停止時間、実測した切替時間、業務システム・DNS・認証・監視通知の結果、復旧手順、担当者を記録します。監査ログを取得でき、主回線断から復旧までの記録を残せるなら限定検証に進み、記録を残せない場合は監視設定と試験項目を整備してから切替日を決めます。
老朽化したハードウェアやサポート切れのソフトウェアは、障害対応・部品調達・設定移行などを通じてIT予算を継続的に圧迫することがあります。機器を使い切る方針でも、保守期限、交換部品、設定バックアップ、後継機への移行手順を管理台帳に残します。
見積もり比較と業者選定の基準
信頼できるネットワーク構築業者は、要件の不足を確認し、構築費用と運用費用の根拠を分けて提示します。
相見積もりのチェックリスト
見積比較では、総額の安さより、同じ条件が含まれているかを確認します。次の項目を表計算ソフトに転記すると、追加費用の発生源を見つけやすくなります。
機器のメーカー、型番、数量、単価、保守年数
ライセンスの対象機能、利用者数、更新時の想定費用
LAN配線の本数、ケーブル規格、配線距離、予備配線、試験費
無線調査、アクセスポイント配置、PoE給電、電波測定の有無
設計書、構成図、IPアドレス表、設定資料、試験成績書の納品範囲
平日・夜間・休日の施工費、出張費、搬入費、廃材処分費
保守の受付時間、復旧目標、代替機、オンサイト対応、変更作業単価
既存回線の解約、機器撤去、返却、原状回復にかかる費用
施工費が安くても、設計書や設定バックアップが納品されない場合、後任ベンダーへの引継ぎで追加費用が発生します。構成図と設定資料を自社資産として受け取れるかは、契約前に確認する項目です。
業者の提案力を確認する質問
業者には、「必要帯域をどの計測値で算定したか」「無線アクセスポイントの台数をどの電波調査で決めたか」「障害時にどの機器・回線から切り分けるか」「保守範囲外となる作業は何か」を質問します。回答に根拠となる設計条件があれば、比較可能な提案になります。
ネットワーク見直しの提案は、他の投資案件との優先順位や「現状で十分」という判断により承認が後回しになることがあります。投資対効果を定量化しにくいことも、その一因です。稟議では「速度が上がる」という表現ではなく、障害件数、停止時間、回線費、設定変更工数、更新期限を現状と導入後で比較します。
導入スケジュールの組み方
一般的な進め方は、現状調査と要件整理、基本設計、見積比較、機器・回線手配、構築・試験、切替・運用引継ぎの順です。インターネットVPN、IP-VPN、SD-WANの導入期間は、アクセス回線の開通、回線工事、ビル管理会社の承認、機器手配、夜間切替、既存機器の撤去の有無で大きく変わります。
新拠点開設では、開設日の直前に回線工事を置かず、回線開通後に通信試験と端末接続試験を行う期間を確保します。移転では、旧拠点と新拠点を一時的に並行稼働させる費用も予算に入れます。
社内ネットワーク構築の導入事例
導入事例は、削減率だけでなく、企業の課題、施策、対象範囲を自社条件と照らして読むと判断材料になります。
リーガルコーポレーションのWAN刷新
業種・規模:靴・革製品を扱い、全国に拠点を持つリーガルコーポレーションです。
導入時期:IIJが2018年に公開した事例です。公開から年数が経過しており、現在はネットワーク製品・料金・提供条件が変わっている可能性があります。
課題:拠点ネットワークの運用コストを見直す必要がありました。
施策:IIJ Omnibusへネットワークを刷新しました。
成果:IIJは、「株式会社リーガルコーポレーション様の導入事例」で、新たな監視体制やツールの導入を含め、トータル運用コストを従来に比べ17%以上削減できたと掲載しています。
この事例から読み取れるのは、回線単価だけでなく、運用を含めた総費用で比較している点です。自社でも複数拠点を持ち、拠点ごとに異なる機器や保守窓口を抱えているなら、回線費・機器保守・障害対応工数を合算して比較します。
クラウド費用とネットワーク帯域の一体管理
クラウド利用料の削減施策は、ネットワーク構築そのものの事例ではありません。ただし、クラウド接続を本社経由に集約している構成では、クラウド費用の増減が回線帯域の要否と直結します。クラウド費用を棚卸しする際は、通信経路・回線契約帯域・拠点からの直接接続の要否を同じタイミングで確認すると、回線費と合算した総費用で判断できます。
電力使用量を抑えるネットワーク機器構成(通信インフラの参考例)
この事例は通信キャリアの基幹インフラを対象としており、オフィスネットワークへ同じ削減率を適用するものではありません。ただし、機器選定時に消費電力・PoE予算・冷却コストを費用項目に含める考え方は、多数の無線APやPoEスイッチを導入する際に参考になります。
業種・規模:通信インフラの構成に関する企業発表です。
導入時期:2023年に公表された構成事例です。シスコ製NCS5500シリーズと富士通製1FINITYシリーズを用いた内容であり、現在の製品ラインナップや性能仕様は変わっている可能性があります。
課題:ネットワーク設備の電力使用量を抑えることです。
施策:ルーターと光伝送装置の構成を見直しました。
成果:KDDI、シスコ、富士通の2023年発表では、この構成により従来構成比で消費電力を約40%削減するとしています。この数値は通信インフラを対象とした構成例であり、オフィスネットワークへ同じ削減率を適用するものではありません。
オフィスネットワークでは同じ削減率をそのまま適用できませんが、消費電力、PoE予算、冷却、ラックスペースも運用費に含める考え方は参考になります。多数の無線アクセスポイントやPoEスイッチを導入する場合は、機器単価だけでなく電源容量と年間電力費を見積条件に含めます。
よくある質問
ネットワークコストとWAN回線費用について、見積もり時に生じやすい疑問へ直接回答します。
ネットワークコストを低く抑える具体的な手法
Q:ネットワークコストを低く抑えるには何から始めますか?
A:最初に、回線ごとの契約帯域、ピーク時の利用率、保守契約、ライセンス、設定変更件数を棚卸しします。利用実績に対して過剰な帯域が確認できればライトサイジングを検討し、確認できなければ帯域を維持したまま重複保守や不要な機能から見直します。
WAN回線の費用相場と選び方
Q:WAN回線の費用相場と選び方はどう考えますか?
A:WAN回線の月額費用は、回線種別だけでは決まりません。帯域、拠点所在地、アクセス回線工事、SLA、冗長化、機器・ライセンス・保守の含有範囲を同一条件にそろえて比較します。クラウド利用中心なら拠点からの直接接続と運用負荷を比較し、停止許容時間が短い基幹通信なら契約上の帯域保証、可用性、復旧時間、冗長化条件を優先します。
SD-LAN機器の費用
Q:SD-LAN機器の費用はどのように見積もりますか?
A:SD-LAN機器は本体価格だけでなく、管理ライセンス、クラウド管理、PoE給電、無線アクセスポイント、初期設定、保守を合算します。拠点追加が多い場合は、1拠点追加時の機器・ライセンス・設定費を見積書に明記できる契約なら、増設時の予算を管理しやすくなります。
ネットワークセキュリティ費用
Q:ネットワークセキュリティ費用はどこまで含めますか?
A:UTMやファイアウォールの機器費、脅威情報更新、VPN・ZTNAのライセンス、ログ監視、障害対応、証明書更新を含めます。購入費が低くても更新ライセンスや保守終了後の更改費が高い場合があるため、3年または5年の総額で比較します。
家庭用機器の利用条件
Q:小規模オフィスなら家庭用Wi-Fiルーターでも使えますか?
A:業務用端末、来客用Wi-Fi、プリンター、監視カメラを同じ機器に接続する場合は、VLAN、管理ログ、ファームウェア更新、保守対応を満たせる法人向け機器を比較対象にします。端末数ではなく、同時接続数、通信内容、業務停止時の影響で選定します。
まとめ
社内ネットワーク構築では、機器の価格だけでなく、LAN工事、WAN回線、セキュリティライセンス、保守、設定変更、情シスの障害対応工数まで含めてネットワークコストを比較します。まずは直近3か月の回線利用率、保守契約、機器の保守期限、変更作業の件数を一覧化します。その情報を基に、機材・施工・設定・保守・撤去を分けた同一条件の見積もりを取得すれば、過剰投資と見落とし費用を避けやすくなります。
本記事の内容に誤り等がございましたら、こちらからご連絡ください。
監修
Admina Team
情シス業務に関するお役立ち情報をマネーフォワード Adminaが提供します。
SaaS・アカウント・デバイスの管理を自動化し、IT資産の可視化とセキュリティ統制を実現。
従業員の入退社対応や棚卸し作業の工数を削減し、情報システム部門の運用負荷を大幅に軽減します。
中小企業から大企業まで、情シス・管理部門・経営層のすべてに頼れるIT管理プラットフォームです。




