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最終更新日
2026/01/30
企業のIT資産を保護し、業務の生産性を維持するためには、正確なアカウント管理が不可欠です。本記事では、情シス担当者が直面するID管理の煩雑さやセキュリティリスクを解消するため、運用の定義から効率的な手順、ツールの選び方まで、実務に即した視点で包括的に解説します。
アカウント管理とは
アカウント管理とは、組織内のシステムやサービスを利用するユーザーの識別情報であるIDと、それらに紐づく権限を適切に作成、変更、削除する一連のライフサイクル管理を指します。
システム利用者の本人確認を行う「認証」と、利用可能な範囲を制御する「認可」を正確に実行することで、セキュリティの確保と利便性の向上を両立させることが、この業務の核心的な目的です。
ユーザーIDのライフサイクル管理
アカウント管理の基本は、入社時の作成、異動時の変更、退職時の削除という従業員のステータス変化に同期してIDを制御することです。これはアイデンティティ・ライフサイクル管理と呼ばれ、常に情報の整合性を保つことが情シスの重要な役割となります。
認証と認可の違い
アカウント管理を正しく理解するには、認証と認可の区別が重要です。認証は「誰であるか」を特定するプロセスであり、パスワードや生体認証などが該当します。一方、認可は「そのユーザーに何を許可するか」を決定するプロセスであり、閲覧や編集といった権限の割り当てを指します。
シャドーITへの対応
近年では、情シスが把握していないサービスを現場が独自に契約して利用するシャドーITが課題となっています。アカウント管理の範囲を公式ツールだけでなく、全社的な利用状況の把握まで広げることで、情報漏洩リスクを未然に防ぐことが可能になります。
なぜ今、アカウント管理の重要性が高まっているのか?
アカウント管理の重要性が急増している背景には、クラウドサービスの利用拡大と、リモートワークの普及による境界型セキュリティの限界があります。
SaaSをはじめとする外部サービスの多用により、従業員一人ひとりが保持するID数が激増しています。管理すべきIDの数が手動運用のキャパシティを大きく超えて膨れ上がっているため、管理の自動化と集約化が急務となっています。
SaaS利用数の増加と管理の複雑化
現在の企業環境では、1社あたり数十から、多いときには数百のクラウドサービスを利用しています。各サービスごとに独立した管理画面でアカウントを発行・停止する作業は、情シスにとって膨大な工数負担となり、ヒューマンエラーによる設定ミスを誘発する要因となっています。
セキュリティリスクとしての幽霊アカウント
退職者のアカウントが削除されずに残っている「幽霊アカウント」や「休止アカウント」は、サイバー攻撃の格好の標的となります。適切にアカウント管理が行われていない状態は、元従業員による不正アクセスや、外部からのなりすましログインを許す大きな脆弱性となります。
コンプライアンスと内部統制の強化
J-SOX法などの内部統制対応において、アカウント管理はアクセス管理の要として厳格にチェックされます。誰がどの権限を持ち、いつアクセスしたかを監査ログとして残すことは、上場企業やISMSといった情報セキュリティ基準を遵守する企業にとって避けて通れない要件です。
情シスを悩ませるアカウント管理の主な課題
現場の情シス担当者が抱える最大の悩みは、運用の属人化と、入退社や異動時期に集中する過剰な業務負荷にあります。
アカウント発行の申請フローが不明確であったり、台帳管理がExcelやGoogleスプレッドシートによる手動更新で行われていたりすることで、リアルタイムな反映が困難になり、セキュリティホールが生まれるという構造的な課題が存在します。
管理台帳と実態の乖離
多くの企業では、表計算ソフトでアカウント一覧を管理していますが、手入力による更新漏れが頻発します。結果として、台帳には載っていないがシステム上にはアカウントが存在するという不整合が生じ、正確な棚卸しができなくなります。
権限設定の複雑化とブラックボックス化
組織改編に伴う権限の付け替えは非常に複雑です。前職の権限を残したまま新しい権限を付与する「権限の累積」が常態化すると、必要以上のアクセス権を持つユーザーが増え、最小権限の原則が形骸化します。
ユーザーの利便性とセキュリティのジレンマ
パスワードポリシーを厳格にしすぎると、ユーザーがパスワードを使い回したり、メモをPCに貼ったりするなど、かえってセキュリティを低下させる行動を招きます。また、パスワード忘れによるヘルプデスクへの問い合わせ対応も、情シスの貴重なリソースを圧迫します。
効率的なアカウント管理を実現するための4つの方法
アカウント管理を効率化するには、場当たり的な対応をやめ、標準化されたワークフローを構築することが最優先事項です。
ツールを導入する前に、誰が、いつ、どの権限でアカウントを持つべきかのルールを定義し、それを自動化できる環境を整えることで、管理工数を劇的に削減できます。
1. 現状の可視化と棚卸し
まずは、社内で利用されている全てのシステムとSaaSを洗い出し、現在のアカウント発行状況を正確に把握します。
利用中のサービス一覧の作成
未削除アカウントの特定と削除
特権IDと呼ばれる管理者権限保持者の見直し
2. アカウント運用のルール定義
入社から退社までの運用ルールをマニュアル化します。特に、アカウントの作成や削除を行う「プロビジョニング」のタイミングと責任範囲を明確にします。
ワークフローシステムを活用した申請フローの統一
役割に基づいたアクセス制御(RBAC)の導入
四半期に一度といった棚卸しサイクルの決定
3. シングルサインオンとID連携の検討
複数のサービスに1つのIDでログインできるシングルサインオン(SSO)を導入します。これにより、ユーザーは1組のIDとパスワードを覚えるだけで済み、管理者はIDaaS(アイダース)と呼ばれるクラウド型管理基盤で一括してアクセス制御が可能になります。
4. 管理ツールの選定と自動化
手動管理の限界を突破するために、適切なツールの導入を検討します。人事システムと連携し、入退社情報が反映された瞬間に各サービスのアカウントが自動生成・削除される仕組みを目指します。
アカウント管理手法の比較:Excel・IDaaS・SaaS管理ツールの違い
自社の規模や課題に合わせて、最適な管理手法を選択する必要があります。
小規模であれば表計算ソフトでの管理も可能ですが、中大規模かつSaaSを多用する企業では、IDaaSやSaaS管理ツールによる自動化が不可欠です。
管理手法 | 特徴 | メリット | デメリット |
|---|---|---|---|
Excel・スプレッドシート | 手動で台帳を更新 | 導入コストが不要 | 転記ミスや更新漏れが多発する |
Active Directory | 社内ネットワークの管理 | Windows環境との親和性が高い | クラウドサービスの管理には不向き |
IDaaS | クラウド型のID連携基盤 | シングルサインオンで利便性向上 | 導入コストと専門知識が必要 |
SaaS管理ツール | 利用状況の可視化に特化 | ライセンス費用の削減に強い | 認証そのものの制御機能は限定的 |
各手法の選び方の指針
コスト重視・小規模なら: Excelでのルール徹底と、Google Workspaceなどが持つ基本のSSO機能を活用します。
セキュリティ・利便性重視なら: OktaやMicrosoft Entra IDなどのIDaaSを導入し、多要素認証を強制します。
棚卸しを効率化したいなら: サービスごとの利用状況を可視化できるマネーフォワード IT管理クラウドなどのSaaS管理ツールが効果的です。
セキュリティを担保する特権ID管理のポイント
一般ユーザーのアカウント以上に厳格な管理が求められるのが、システム設定を変更できる特権IDです。
特権IDが漏洩すると、データの改ざんや大規模な情報漏洩に直結するため、必要な時だけ、必要な人に、最小限の権限を付与する運用を徹底しなければなりません。
特権IDの利用申請と承認フロー
管理者権限を持つアカウントを常時開放しておくのは危険です。利用が必要な際のみ申請を行い、承認された期間だけ一時的に権限を付与する「ジャストインタイムアクセス」の考え方を取り入れるのが理想的です。
操作ログの取得と監査
特権IDで行われた操作は、すべてログとして記録・保存する必要があります。いつ、誰が、何をしたかを後から追跡できる状態にすることで、不正操作の抑止力になるとともに、インシデント発生時の原因究明を迅速化できます。
アカウント管理を成功させる実務的なアプローチ
アカウント管理は、単なる事務作業ではなく、企業の防御力を高め、従業員の生産性を向上させるための戦略的なIT施策です。
まずは、現在社内にいくつアカウントが存在し、そのうちいくつが放置されているかを把握することから始めてください。いきなり高度な自動化を目指すのではなく、管理台帳の正確性を高め、退職者のアカウント削除を徹底するという基本を固めることが、確実なセキュリティ向上への近道です。
明日から取り組める第一歩として、直近3ヶ月以内に退職した従業員のアカウントが、メール、チャット、ファイルサーバーといった主要なシステムから完全に削除されているか、今すぐ再確認してみてください。 この小さな確認作業が、重大なインシデントを防ぐための最も実効性のあるアクションとなります。
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監修
Admina Team
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