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最終更新日
2026/01/15
2026年は、AIが「補助ツール」から「自律的な業務パートナー」へと進化を遂げ、企業のITインフラが根本から再定義される重要な年になります。本記事では、情報システム部門(情シス)の担当者や責任者が押さえておくべき2026年のITトレンドの主要項目と、実務への影響を専門的な視点で網羅しました。デジタルトランスフォーメーション(DX)の次なるフェーズに向けた戦略策定にお役立てください。
ITトレンド 2026:自律型AIとプラットフォームの統合が進む時代
2026年のITトレンドは、生成AIの高度な自律化(AIエージェント)と、それを支えるプラットフォームエンジニアリングの確立が中核となります。 従来の「人間がツールを操作する」形態から、AIがコンテキストを理解してタスクを完結させる形態へ移行し、IT運用そのものが自動化されるフェーズに突入します。
2024年から2025年にかけて進んだ生成AIの試験導入期を経て、2026年は「実用化・標準化」の段階にあります。ガートナー社などの調査機関が予測するように、AI TRiSM(信頼性・リスク・セキュリティ管理)が企業の必須要件となり、ただ技術を使うだけでなく「いかに安全に、持続可能な形で運用するか」が情シスの腕の見せ所となるでしょう。
自律型「AIエージェント」の普及で業務プロセスはどう変わる?
2026年には、単なるチャットボットを超え、目標を与えれば自ら計画・実行する「AIエージェント」の企業導入が加速します。ガートナー社は2026年までに企業アプリケーションの40%がタスク特化型AIエージェントを組み込むと予測していますが、同時に2027年末までに40%以上のエージェントAIプロジェクトがコスト、ビジネス価値の不明確さ、リスク管理の不備により中止される可能性も指摘しています。 これにより、定型業務の自動化率は向上する一方で、情シスはシステムの保守だけでなく、AIの行動ログ監視やガバナンス設計、そして失敗リスクへの対応力へと役割をシフトさせる必要があります。
AIエージェント(Agentic AI)による意思決定の自動化
AIエージェントは、APIを介して複数のSaaS(Software as a Service:クラウド型ソフト)を跨いで操作し、複雑なワークフローを完結させます。たとえば、「新規入社者のアカウント発行からPC手配、研修スケジュールの設定まで」を、人間が指示を出すだけでAIが裏側で全て実行するようになります。
情シスに求められる「AIガバナンス」の構築
AIが自律的に動くようになると、予期せぬ挙動やデータ漏洩のリスクが高まります。そのため、AIの入出力をフィルタリングし、権限管理を徹底する「AIガードレール」の設置が、2026年の情シスにおける最優先課題の一つとなります。
プラットフォームエンジニアリングがIT運用の標準に
プラットフォームエンジニアリング(Platform Engineering)は、開発者や利用者がセルフサービスでITリソースを利用できる環境を構築し、情シスの運用負荷を軽減する手法です。 複雑化したクラウドネイティブ環境において、運用の標準化と効率化を両立させるための「内部開発者プラットフォーム(IDP)」の構築が加速します。
開発者体験(DevEx)の向上とサイロ化の解消
情シスが共通基盤を提供することで、各部門が個別にクラウドを契約する「シャドーIT」を防ぎつつ、スピード感のあるシステム開発を支援します。これにより、インフラのプロビジョニング(準備・設定)待ち時間が解消され、組織全体の生産性が向上します。
セキュリティのシフトレフトと運用自動化
プラットフォーム側にセキュリティチェック機能を組み込むことで、問題が発生してから対処するのではなく、構築段階で脆弱性を排除する「シフトレフト」が実現します。2026年には、Infrastructure as Code(IaC:コードによるインフラ管理)がさらに進化し、AIによる構成最適化も組み込まれるでしょう。
2026年に不可欠なサイバーセキュリティの新基準
サイバー攻撃のAI化に対抗するため、防御側もAIを活用した「継続的な脅威露出管理(CTEM)」と、量子コンピュータ時代を見据えた暗号対策が不可欠です。 境界型防御は完全に過去のものとなり、アイデンティティ(ID)を核としたゼロトラスト戦略の深化が求められます。
AI TRiSMによるAIリスクの管理
AI TRiSM(AI Trust, Risk and Security Management)は、AIモデルの公平性、信頼性、データ保護を管理するフレームワークです。2026年には、AIによる誤情報の拡散やバイアス(偏り)を制御することが、企業のコンプライアンス維持において決定的な役割を果たします。
耐量子計算機暗号(PQC)への移行準備
量子コンピュータの実用化が現実味を帯びる中、従来の暗号方式が突破されるリスク(Harvest Now, Decrypt Later攻撃)への対策が始まります。2026年は、重要なデータの暗号アルゴリズムを、耐量子計算機暗号(Post-Quantum Cryptography:PQC)へ移行するためのロードマップ策定に着手すべき年です。
項目 | 従来の対策 | 2026年の対策 |
|---|---|---|
脅威検知 | シグネチャベース(既知の攻撃) | AIによる振る舞い検知・予測 |
認証 | パスワード・多要素認証 | パスワードレス・生体認証の統合 |
データ保護 | 境界内での保護 | データの暗号化とAI TRiSMによる管理 |
持続可能なIT(サステナブル・テクノロジー)の重要性の高まり
企業の社会的責任として、IT機器やデータセンターの消費電力を削減し、環境負荷を可視化する「サステナブルIT」の重要性が高まり、経営指標として考慮される企業が増加しています。一部の地域では規制要件も始まっていますが、グローバルな法的義務化はまだ限定的な段階です。 情シスは、ハードウェアの選定基準に性能やコストだけでなく、エネルギー効率やリサイクル性を考えていく必要があります。
グリーンコンピューティングと省電力設計
2026年には、AI学習による電力消費の爆発的増加が社会問題化しています。そのため、GPU(画像処理装置)の冷却効率を高めたデータセンターの利用や、省電力性能に優れたチップ(ARMベースのサーバーCPUなど)の採用が、コスト削減と環境保護の両面で重要視されます。
デジタル資産のライフサイクル管理
PCやサーバーの廃棄におけるデータ消去とリサイクルのプロセスを透明化することが求められます。循環型経済(サーキュラーエコノミー)に対応したベンダー選定を行い、IT資産の長寿命化を図る戦略が、情シスの新たなKGI(重要目標達成指標)となるでしょう。
空間コンピューティングと次世代ワークプレイス
空間コンピューティング(Spatial Computing)技術は、Apple Vision Proなどの登場により企業での試験導入が始まっています。特に製造業や医療、建設などの専門分野において、AR/VRを活用した遠隔作業支援や技術継承の取り組みが進んでいます。ただし、2026年時点ではまだ限定的な用途での活用が中心であり、一般的なオフィスワークへの広範な普及は2027年以降と見られています。
仮想オフィスと3Dビジュアライゼーション
一部の先進的な企業では、遠隔地にいるメンバーが同じ3D空間で設計図を囲み、リアルタイムで修正を加えるといった業務の試験運用が始まっています。情シスは、これら大容量データを低遅延で転送するためのWi-Fi 7や5G(第5世代移動通信システム)環境の整備、およびウェアラブルデバイスの管理(MDM:モバイルデバイス管理)を担うことになります。
遠隔保守・教育へのAR/VR活用
製造現場や建設現場における熟練工の技術継承を、AR(拡張現実)を用いて支援する仕組みが導入されます。情シスは、現場のデバイスが常に最新の状態であり、かつセキュアに社内ネットワークに接続される環境を構築・維持する責任があります。
進化するITトレンドを捉えた未来への適応戦略
2026年のITトレンドは、生成AIが試験導入期を経て実用化段階に移行し、テクノロジーがビジネスの「背景」として溶け込み始める過渡期を指しています。情報システム部門は、従来の「システムの番人」から、最新技術を安全かつ効率的に社内へ届ける「イネーブラー(実現者)」へと変貌を遂げなければなりません。
特に、AIエージェントの活用とサステナブルなインフラ構築は、企業の競争力を左右する二大要素となります。変化を恐れず、技術の変異を柔軟に取り入れる姿勢が、次世代のIT戦略を成功に導く鍵となるでしょう。
まずは、自社で利用している全SaaS・システムの「API連携可能性」をリストアップすることから始めましょう。
2026年の主役となるAIエージェントを動かすには、システム同士が繋がっていることが大前提です。どのデータが連携可能で、どこに自動化のボトルネックがあるかを把握することで、次世代ITへの道筋が見えてくるでしょう。
本記事の内容に誤り等がございましたら、こちらからご連絡ください。
監修
Admina Team
情シス業務に関するお役立ち情報をマネーフォワード Adminaが提供します。
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