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最終更新日
2026/01/30
DXの進展に伴い、企業のクラウド利用は爆発的に増加しました。利便性の反面、情シスが把握しきれない「シャドーIT」やコストの肥大化が深刻な課題となっています。本記事では、SaaS管理の定義から、運用を最適化する具体的な手法、管理ツール導入のメリット・デメリットまで、実務に即して網羅的に解説します。
SaaS管理とは?その定義と重要性
SaaS管理とは、組織内で利用されているすべてのSaaSの契約状況、利用ユーザー、アカウント権限、セキュリティ、コストを一元的に把握・最適化するプロセスです。 業務効率化のために導入されたクラウドサービスを、野放しにせず「安全」かつ「経済的」に運用するためのガバナンス構築を指します。
SaaS管理が必要とされる背景
企業のSaaS利用数は年々増加しており、2024年の調査では企業の平均導入数は106個に達しています。大企業では371のSaaSアプリケーションを使用しているケースもあります。かつてのように、自社サーバー(オンプレミス)を管理すれば良い時代は終わり、現在はインターネット上のプラットフォームをいかに制御するかが、情シスの最重要ミッションとなっています。
管理対象となる主な要素
SaaS管理において管理すべきデータは、大きく分けて以下の4点です。
契約情報: 更新日、契約プラン、年間/月間コスト、契約担当部署。
アカウント: ID/パスワードの発行状況、退職者のアカウント削除。
セキュリティ: 二段階認証の有効化、外部共有設定、連携アプリの権限。
利用状況: 実際にログインしているか、ライセンスに余剰がないか。
なぜ今、SaaS管理が急務なのか?
SaaS管理が急務な理由は、シャドーITによる情報漏洩リスクの増大と、未使用ライセンスによるコストの無駄を排除するためです。
個別の部署や社員が情シスの許可なく契約する「シャドーIT」は、企業のセキュリティホールとなり、退職者アカウントの放置は不正アクセスの温床となります。
セキュリティリスク:退職者のアカウント放置
SaaS管理が不十分な場合、退職した社員が以前のID/パスワードで社内データにアクセスできてしまうリスクがあります。
課題: 多くの企業では、退職者のアカウント削除が完全には行われておらず、情報漏洩やセキュリティインシデントの原因となっています。特に複数のSaaSを利用している場合、すべてのサービスからアカウントを削除することは容易ではありません。
対策: IDプロバイダ(IdP)を活用したシングルサインオンの導入や、アカウントの一括削除フローの構築が必要です。
コスト面:サイレント支出の増加
「どの部署が何を使っているか」が見えないと、同じ機能を持つツールを重複して契約したり、退職者のライセンス料を払い続けたりする事態が発生します。
課題: 実際には使われていないライセンスや、類似機能を持つツールの重複契約により、年間で数百万円から数千万円規模の無駄なコストが発生している企業も少なくありません。これらの「見えないコスト」は、適切な管理体制がなければ発見することが困難です。
シャドーITの深刻化
課題の背景: リモートワークの普及により、従業員が業務効率化のために独自にSaaSツールを導入するケースが増加しています。情報システム部門の承認を経ずに導入されたこれらのサービスは、セキュリティポリシーに準拠していない可能性があり、データ漏洩や不正アクセスのリスクを高めます。
国内の状況: 日本国内でも、情報システム部門が把握していないSaaSの利用が広がっており、ガバナンス強化が急務となっています。
SaaS管理を実現する2つの主要な手法
SaaS管理の手法には、Excelやスプレッドシートを用いた「台帳管理」と、専用の「SaaS管理プラットフォーム」を用いた「自動管理」の2通りがあります。
導入初期は手動管理で十分な場合もありますが、利用サービス数が30〜50を超えると、API連携を活用した自動化ツールの導入が現実的な選択肢となります。
1. 手動管理(Excel / Google スプレッドシート)
小規模な組織や、利用SaaSが10個以下の企業に適した手法です。
メリット: 追加コストがかからず、すぐに始められる。
デメリット: 更新が属人化しやすく、情報の鮮度がすぐに落ちる。また、実際の利用ログまでは追えない。
2. SaaS管理ツール(SMP)
APIを利用して、各SaaSから情報を自動取得する専門ツールです。
メリット: アカウントの自動検知、利用状況の可視化、入退社時の棚卸し自動化が可能。
デメリット: ツール自体の導入コストが発生し、すべてのSaaSがAPI連携に対応しているわけではない。
手法比較表
項目 | 手動管理(Excel/スプレッドシート) | SaaS管理ツール(SMP) |
|---|---|---|
管理コスト | 低い(人件費のみ) | 高い(月額費用+構築費) |
情報の正確性 | 低い(入力漏れが発生) | 高い(APIによる自動同期) |
シャドーITの検知 | 不可能(自己申告のみ) | 可能(ブラウザ拡張や経理連携) |
作業負担 | 高い(手動更新) | 低い(自動化) |
SaaS管理を成功させるためのプロセス
実効性のあるSaaS管理は、現状把握、ルール策定、運用の自動化という3段階のプロセスで進めるのが効率的です。
まずは「何が使われているか」の可視化から始め、次に「どう使うか」のポリシーを固めることが、現場の反発を抑えるコツです。
1. 現状の可視化(棚卸し)
まずは、社内で利用されているすべてのサービスを洗い出します。
ポイント: 情シスが把握しているものだけでなく、経理の精算データを確認することで、隠れたシャドーITを特定できます。
2. 導入・解約プロセスのルール化
「新しいSaaSを使いたいとき」と「辞めるとき」の手順を明確にします。
実装方法: セキュリティチェックシート(脆弱性評価)の提出を必須とし、情シスの承認なしでの決済を禁止します。
注意点: 現場のスピード感を削がないよう、標準的なツールは事前承認済みリストに入れておくなどの柔軟性も必要です。
3. ID連携とSSOの推進
アカウント管理の負荷を減らすため、可能な限りシングルサインオンに対応させます。
効果: ID管理を一元化することで、一つのマスターIDを無効化するだけで、連携するすべてのSaaSへのアクセスを遮断できます。
付加的メリット: セキュリティレベルの向上、ID・パスワード管理コストの削減が実現できます。
SaaS管理ツール導入のメリットと注意点
SaaS管理ツールの導入は、管理コストの劇的な削減とガバナンス強化をもたらしますが、ツール自体の管理やコストが新たな課題となる側面もあります。
導入を検討する際は、投資対効果が見合うかどうかを慎重に見極める必要があります。
メリット:情シスの「攻め」の時間を作る
運用の自動化: アカウントの発行・削除がボタン一つで完了し、手作業によるミスがなくなり、オフボーディング時間を大幅に削減できます。
コスト最適化: 「過去30日間ログインがないユーザー」を特定し、ライセンスを削減することで、ツール代金以上のコストカットが実現できる場合が多いです。
デメリットと注意点
対応SaaSの制限: 日本独自のマイナーなSaaSや自社開発ツールは、API連携ができず、結局手動管理が残る場合があります。
権限の集中: SaaS管理ツール自体が強力な権限を持つため、このツールへのアクセス管理(特権ID管理)を厳重にする必要があります。
導入コスト: 月額費用や初期構築費用が発生するため、小規模企業では費用対効果を慎重に検討する必要があります。
戦略的なSaaS運用のための具体的アクション
SaaS管理は、単なる「台帳作り」ではありません。それは、企業の生産性を最大化しつつ、見えないリスクを最小化するための重要な経営戦略です。 現在、多くの企業でクラウドサービスの利用が急速に拡大しています。特にコロナ禍以降、リモートワークの普及に伴い、SaaSの導入数は大幅に増加しました。しかし、IT部門がすべてのSaaS契約を正確に把握できている企業は決して多くありません。適切な管理体制を構築すれば、余ったリソースを「DXの推進」や「社内インフラの高度化」といった、より付加価値の高い業務に振り向けることができるようになります。 まずは、経理部門に過去3ヶ月分のSaaS支払明細を共有してもらうことから始めてみてください。台帳に載っていない未知のサービスが見つかるはずです。それが、健全なSaaS管理と強力なITガバナンスを構築するための第一歩となります。
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監修
Admina Team
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