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最終更新日
2026/01/20
企業が保有するハードウェアやソフトウェアの情報を正確に把握し、適切に運用・維持することをIT資産管理と呼びます。デジタルトランスフォーメーション(DX)の進展やテレワークの普及により、社外へ持ち出されるPCやスマートフォン、複雑化するクラウドサービスのライセンス管理の重要性がかつてないほど高まっています。本記事では、情シス(情報システム部門)が直面する課題を解決するために、IT資産管理の定義から具体的な導入ステップ、ツール選定のポイントまでを網羅的に解説します。
IT資産管理とは
IT資産管理とは、企業が業務で使用するハードウェア、ソフトウェア、ライセンスなどのIT資産を一覧化し、そのライフサイクル(導入から廃棄まで)を適切に管理・運用することです。
IT資産管理の定義と対象範囲
IT資産管理(IT Asset Management:ITAM)は、組織のITインフラを構成する物理的・論理的なリソースをすべて把握することを指します。管理対象は大きく分けて「ハードウェア」「ソフトウェア」「ライセンス」「ネットワーク機器」の4つに分類されます。
PCやサーバー、スマートフォン(モバイルデバイス)といった実体のある「ハードウェア資産」に加え、インストールされているOSやアプリケーション、そしてそれらを利用するための「ライセンス」という目に見えない権利をセットで管理することが不可欠です。近年では、オンプレミス環境だけでなく、SaaS(Software as a Service)などのクラウドサービスのアカウント管理も、広義のIT資産管理に含まれるようになっています。
資産管理と構成管理の違い
資産管理が「契約・コスト・所在」といった「モノとしての価値や権利」を重視するのに対し、構成管理は「各IT資産の相互関係や設定情報」といった「サービス稼働のための技術情報」を重視します。
例えば、1台のサーバーにおいて「いつ、いくらで購入し、誰が所有者か」を管理するのが資産管理であり、「そのサーバーにどのパッチが適用され、どのスイッチと接続されているか」を管理するのが構成管理です。情シスにおいては、セキュリティ対策や障害対応を迅速化するために、この両輪を組み合わせて運用することが求められます。
なぜIT資産管理が今、不可欠なのか?
IT資産管理の主な目的は、セキュリティリスクの低減、コンプライアンスの遵守、およびITコストの最適化という3点に集約されます。
セキュリティリスクへの対策(脆弱性管理)
IT資産管理を徹底することで、OSのバージョンアップ漏れやサポート終了(EoS)を迎えたソフトウェアの放置を防ぎ、サイバー攻撃の隙を与えない堅牢な環境を維持できます。
現代のサイバー脅威は、管理外のデバイス(シャドーIT)や、脆弱性が放置された古いソフトウェアを足がかりに侵入してきます。どのデバイスに何のソフトが入っているかをリアルタイムで把握できれば、重大な脆弱性が見つかった際に対象端末を即座に特定し、一括でパッチ(修正プログラム)を適用することが可能になります。これは、エンドポイントセキュリティの基礎となる極めて重要な工程です。
ライセンスコンプライアンスの遵守
適切なライセンス管理を行うことは、ソフトウェアメーカーからの監査(ライセンスオーディット)への対応や、意図しない不正利用による損害賠償リスクを回避するために不可欠です。
特にMicrosoftやAdobe、Oracleなどの大手メーカーは、ライセンスの使用状況を厳格に監視しています。購入数以上のインストール(ライセンス違反)や、規約に反する二次利用が発覚した場合、多額の追徴金や社会的信用の失墜を招く恐れがあります。ソフトウェア資産管理(SAM:Software Asset Management)のフレームワークに基づき、利用許諾条件と実際の利用状況を常に照合しておく必要があります。
ITコストの最適化と無駄の削減
IT資産を可視化することで、余剰在庫の把握や不要なライセンスの解約が可能となり、IT予算の最適化に直結します。
例えば、退職者が使用していたPCが返却された後、そのまま放置されていれば無駄な固定資産となります。また、全社員に一律で付与している高価なSaaSライセンスのうち、実際には数名しか使っていない機能があるかもしれません。利用実態に基づいたライフサイクル管理を行うことで、必要な場所に、必要な分だけリソースを配分する効率的な経営が実現します。
IT資産管理で管理すべき具体的な項目とは?
IT資産管理で管理すべき対象は多岐にわたりますが、基本となるのはハードウェア、ソフトウェア、ライセンスの3つの情報です。
ハードウェア資産の情報
ハードウェア管理では、物理的なデバイスのスペック、購入情報、所在、そして現在の利用者を紐付けて管理します。
基本情報: 資産番号、機器種別(PC、スマホ、タブレット)、メーカー、型番、シリアル番号
スペック: CPU、メモリ容量、ディスク容量、MACアドレス、IPアドレス
ライフサイクル情報: 購入日、リース/レンタル契約期間、保証期限、導入日、廃棄予定日
運用情報: 利用者名、所属部署、設置場所(拠点)、ステータス(使用中、在庫、修理中、廃棄済)
ソフトウェア資産の情報
ソフトウェア管理では、各デバイスにインストールされているすべてのアプリケーションの名前とバージョンを把握し、最新の状態であるかを確認します。
名称: ソフトウェア名、エディション(Pro/Enterpriseなど)
バージョン情報: バージョン番号、ビルド番号、サービスパック適用状況
インストール状況: インストール先PC、インストール日、実行ファイルのパス
アップデート情報: Windows Updateの適用状況、セキュリティパッチのバージョン
ライセンス資産の情報
ライセンス管理は最も複雑な領域であり、購入した「権利」と、実際にインストールされている「数」を一致させる必要があります。
購入情報: ライセンス形態(パッケージ、ボリュームライセンス、サブスクリプション)、購入数、契約番号
割り当て情報: 割り当て済みライセンス数、空きライセンス数、ユーザー/デバイス紐付け
有効期限: 更新日、契約終了日
証跡: ライセンス証書、領収書、インストールキー、プロダクトID
IT資産管理を成功させるための5ステップ
IT資産管理を円滑に開始し、定着させるには、現状把握から運用ルールの策定までを段階的に進めることが重要です。
STEP 1:現状の把握と管理対象の定義
まずは、自社にどのようなIT資産がどの程度存在するのかの概算を把握し、どこまでの範囲を管理するかを決定します。
すべての資産を一度に管理しようとすると挫折しやすいため、まずは「全社のノートPC」など、セキュリティリスクの高いものから着手するのが定石です。また、この段階で管理項目(台帳に載せる項目)を精査し、運用負荷と得られる効果のバランスを検討します。
STEP 2:IT資産管理ルールの策定
資産の導入から廃棄までのライフサイクルにおいて、誰が、いつ、何を行うかを規定する運用ルールを作成します。
購入ルール: 部門ごとの個別購入を禁止し、情シス経由の一括購入にする
台帳更新ルール: 人事異動やデバイスの故障時、どのようなフローで情報を更新するか
利用ルール: 私物デバイス(BYOD)の持ち込み制限や、許可されていないソフトのインストール禁止
STEP 3:IT資産情報の収集(インベントリ収集)
各デバイスから現在の状態に関するデータを収集します。これをインベントリ収集と呼びます。
小規模であれば手作業やExcel(エクセル)での申告も可能ですが、数十台規模になると手動での収集は限界を迎えます。資産管理ツール(エージェントソフト)を各端末にインストールし、ネットワーク経由で自動的に情報を吸い上げる仕組みを構築することが、情報の正確性を担保する鍵となります。
STEP 4:資産台帳の作成と照合
収集したインベントリ情報と、購入時の契約書類やライセンス証書を照らし合わせ、一元管理できる「資産台帳」を作成します。
ここで重要なのは、インベントリ収集した「実態」と、台帳上の「帳簿(権利)」の差異を明確にすることです。インストールされているのに購入履歴がないソフトや、紛失しているPCがないかを洗い出し、是正措置を講じます。
STEP 5:継続的な運用と監査の実施
IT資産管理は一度作って終わりではなく、常に最新の状態を維持するための継続的なメンテナンスが必要です。
定期的な棚卸し(年1〜2回程度)を実施し、物理的な現物確認と台帳情報の不一致を解消します。また、社内規定に反する操作(USBメモリの使用制限違反など)がないかをログ管理を通じてチェックし、ガバナンスを強化します。
エクセル管理と専用ツールの違い:どちらを選ぶべき?
IT資産管理の手法には、Excel(スプレッドシート)による手動管理と、専用のIT資産管理ツールによる自動管理があります。
比較項目 | Excel管理 | IT資産管理ツール |
|---|---|---|
導入コスト | ほぼゼロ(既存ソフトで対応可能) | 初期費用・月額費用が発生する |
情報の正確性 | 入力ミスや更新漏れが発生しやすい | 自動収集のため、常に最新かつ正確 |
管理負荷 | 台数が増えるほど指数関数的に増大 | 自動化により、情シスの工数を大幅削減 |
セキュリティ機能 | なし(情報の記録のみ) | 操作ログ取得、USB制御、パッチ配布が可能 |
適正規模 | 10台未満の小規模環境 | 数十台以上の企業、または多拠点展開 |
Excel管理のメリットと限界
Excel管理は、導入費用がかからず自由なレイアウトで台帳を作成できる点がメリットですが、台数が増えると情報の「鮮度」を保つことが困難になります。
特に、テレワーク環境で社外にあるPCの状態をExcelで把握するのは不可能です。更新が滞った台帳は「死んだ台帳」となり、セキュリティ事故が起きた際の調査に役立ちません。また、ソフトウェアのバージョン情報を手入力で追い続けるのは現実的ではなく、ライセンス違反の見逃しリスクも高まります。
一般的には、管理対象が10台未満の小規模環境であれば、Excelでの管理も選択肢となります。しかし、それ以上の規模になると、専用ツールの導入を検討すべきです。
IT資産管理ツールの導入メリット
専用ツール(IT Asset Management Software)を導入することで、インベントリ情報の自動収集だけでなく、セキュリティ対策や運用保守の効率化が可能になります。
近年のツールは、クラウド型(SaaS型)が主流となっており、VPNを通さずともインターネット越しに社外端末の状況を把握・制御できます。また、USBメモリなどの外部メディア制御、アプリケーションの配布、遠隔でのリモートデスクトップ操作など、IT資産管理の枠を超えた「PC管理ツール」としての機能を備えているものが多く、情シス業務全体の生産性を向上させます。
IT資産管理ツールを選定する際の3つのポイント
ツール選びで失敗しないためには、自社の環境(オンプレミス、クラウド、OS種別)と、解決したい課題を明確にする必要があります。
1. 自社のインフラ環境への対応状況
Windows PCだけでなく、Mac、iOS、Android、サーバー、仮想環境など、自社で使用しているすべてのプラットフォームを網羅できるかを確認します。
特にデザイン部門でMacが多く使われている場合や、業務でスマートフォン(MDM:モバイルデバイス管理)を多用している場合は、それらを一元管理できるツールを選ぶことで、管理画面の断片化を防ぐことができます。
2. 必要な機能とコストのバランス
資産管理、操作ログ、セキュリティパッチ配布、USB制限など、ツールによって搭載機能は多岐にわたります。
多機能なツールほど高価になる傾向があるため、「まずはライセンス管理を徹底したい」「リモートワーク中のサボり防止としてログを見たい」といった優先順位をつけ、必要な機能がパッケージされているものを選定しましょう。
3. 操作性とサポート体制
情シス担当者が日々触れる管理画面が使いやすいか(UI/UX)、そしてトラブル時に迅速なサポートが受けられるかは非常に重要です。
特に海外製ツールの場合、マニュアルの日本語化が不十分であったり、サポートのレスポンスが遅かったりすることがあります。国内シェアの高いツールであれば、知見が豊富で、日本の商習慣(ライセンス形態や法規制)に合わせた機能が充実していることが多いです。
精度の高いIT資産管理を実現し、攻めの情シスへ
IT資産管理は、単なる「持ち物リスト作り」ではありません。企業のリスクを最小化し、IT投資の効率を最大化するための戦略的な基盤です。正確な資産データがあれば、トラブル発生時の迅速な復旧や、適切なリプレース計画の策定、さらにはシャドーITの検知によるガバナンス強化まで、情シスがビジネスに貢献できる範囲は大きく広がります。
クラウドシフトやハイブリッドワークが当たり前となった今、古い管理手法から脱却し、自動化されたITデバイス管理体制を構築することが、企業の競争力を支える一歩となります。
まずは、「最後に資産台帳を更新したのはいつか」を確認し、デスクの引き出しや棚に眠っている予備機・故障機を10台分だけリストアップしてみましょう。台帳と現物のズレを肌で感じることで、自社に必要な管理レベルが明確になります。
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■ 従業員と紐づくデバイス管理の一元管理
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■ MDM連携による台帳更新の手間ゼロ化
IntuneやJamf ProなどのMDM(モバイルデバイス管理)と連携し、端末データをデバイス台帳に自動で取り込みます。MDM上の変更が即座に反映されるため、手入力の手間をなくすだけでなく、台帳の真正性をこれまでになく高めることができます。
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監修
Admina Team
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