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最終更新日
2026/01/06
企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)が加速する中で、避けて通れないテーマが「API連携」です。複数のSaaSや社内システムをシームレスに繋ぎ、データを一元管理することは、業務効率化だけでなく、経営判断の迅速化にも直結します。本記事では、API連携の基礎知識から、導入のメリット、技術的な仕組み、そして現場担当者が最も注意すべきリスク管理まで、専門的な視点で網羅的に解説します。
API連携とは
API連携とは、異なるソフトウェアやWebサービス同士を「API(Application Programming Interface)」というインターフェースを介して接続し、データや機能を相互に共有・活用する仕組みのことです。
システム間を「繋ぐ」窓口としての役割
API連携は、個別のアプリケーションが持つ特定の機能を外部から利用可能にし、システム同士を一つの有機的なネットワークとして機能させる役割を担います。
本来、開発言語やデータベース構造が異なるシステム同士を直接つなぐことは困難ですが、APIという「共通の窓口」を設けることで、安全かつ容易に情報のやり取りが可能になります。例えば、自社の基幹システムにある在庫データを、外部のECサイトや物流管理システムとリアルタイムに同期させるといった運用は、現代のIT戦略において不可欠な要素となっています。
Web APIの普及と現在の標準
現在、ビジネスの現場で「API連携」と呼ぶ場合、その多くはインターネット経由で通信を行う「Web API」を指します。
Web APIは、HTTP/HTTPSといった汎用的なプロトコル(通信規約)を利用するため、場所やデバイスを選ばずに連携できるのが特徴です。特に、クラウドサービス(SaaS)の台頭により、各ベンダーがAPIを公開して外部連携を推奨する「APIファースト」の流れが加速しています。これにより、企業は自社に必要な機能を複数のサービスから組み合わせて構築する「ベスト・オブ・ブリード」の環境を容易に実現できるようになりました。
API連携を導入する主なメリット
API連携を導入する最大のメリットは、手動のデータ入力作業を撤廃し、リアルタイムでの情報同期と業務プロセスの自動化を低コストで実現できる点にあります。
業務自動化による生産性の劇的な向上
APIによって異なるツール間を自動で同期させることで、情報の転記ミスをゼロにし、業務スピードを飛躍的に高めることができます。
二重入力の解消: 顧客管理システム(CRM)に入力した情報を、即座に会計ソフトやチャットツールへ反映。
リアルタイム性の確保: 現場で発生したデータが即座に経営ダッシュボードへ集計される。
人的リソースの有効活用: 単純なデータ移行作業からスタッフを解放し、よりクリエイティブな業務へシフト。
このように、API連携は単なる技術的な接続ではなく、組織全体のオペレーショナル・エクセレンスを実現するための手段となります。
開発コストと期間の圧縮
既存サービスのAPIを活用することで、全ての機能を自社でゼロから開発(スクラッチ開発)する必要がなくなり、開発コストを大幅に削減できます。
例えば、決済機能や地図表示、SMS送信といった高度な機能を自前で構築するには膨大な工数がかかりますが、Stripe(決済)やGoogle Maps(地図)などのAPIを利用すれば、短期間でプロフェッショナルな機能を自社システムに組み込めます。この「持たざるIT」への転換こそが、IT部門がスピード感を持ってビジネスに貢献するための鍵となります。
API連携の仕組みと通信の標準規格
API連携は、要求を出す「クライアント」と、機能を提供する「サーバー」が特定のルールに従って情報をやり取りすることで成立します。
リクエストとレスポンスの基本構造
API連携は、クライアントからの「リクエスト(要求)」に対し、サーバーが「レスポンス(応答)」を返すというシンプルなサイクルで動作します。
リクエスト: 「特定のデータを送ってほしい」「このデータを登録してほしい」といった命令を送信。
処理: サーバー側で認証やデータベース操作を実行。
レスポンス: 処理結果をステータスコード(成功なら200番台など)とともに返却。
このやり取りは高速に行われるため、ユーザーはシステムが分離していることを意識せずに操作を継続できます。処理時間は通信環境や処理内容により変動しますが、同期APIでは通常1秒未満での応答が推奨されています。
REST APIとJSON形式
現在のWeb APIにおいて、最も普及している設計手法が「REST(RESTful API)」であり、やり取りされるデータ形式は「JSON」が主流です。
REST API: HTTPメソッド(GET/POST/PUT/DELETE)を用いたシンプルで直感的な設計。
JSON: テキストベースで軽量なデータ形式。人間にも読みやすく、処理負荷が低い。
これらの標準規格が普及したことで、プログラミング言語(Java, Python, PHPなど)を問わず、多様なシステム間でのインテグレーションが容易になりました。
導入時に注意すべきデメリットとリスク
API連携は利便性が高い一方で、外部環境への依存度が高まるため、セキュリティや運用の継続性に関する「負の側面」を適切に管理する必要があります。
セキュリティの脆弱性とガバナンスの欠如
APIは外部に公開された「窓口」であるため、認証情報の管理が不十分だと重大なデータ漏洩を招くリスクがあります。
特に「APIキー」がソースコードにハードコーディングされたままGitHub等の公開環境へ漏洩する事故は後を絶ちません。実際に、2023年にはGitHubから1,200万件を超える認証情報が流出し、OpenAIのAPIキーの漏洩は前年比で1,212倍に増加したという調査結果も報告されています。また、社内の各部署が情シスの関与しないところで勝手にAPI連携を進める「シャドーAPI」の状態になると、どのデータがどこへ流出しているか把握できなくなります。OAuth 2.0などの安全な認可プロトコルの採用と、API利用状況の統合的な管理(APIガバナンス)が必須です。
接続先の仕様変更とベンダーロックイン
API連携は「相手の都合」に左右されるため、予告のない仕様変更やサービス停止が自社の基幹業務に致命的な影響を与える可能性があります。
仕様変更(破壊的変更): APIのパラメータ変更により、既存の連携プログラムが動作しなくなる。
レートリミット: アクセス回数制限を超えると、突然データ同期が遮断される。
サービス終了: 依存していたAPIサービス自体が終了(サンセット)し、代替機能の開発を余儀なくされる。
これらのリスクを軽減するためには、SLA(サービス品質保証)の確認や、異常検知時のアラート通知、そして万が一の際の代替手段(バックアッププラン)を事前に設計しておく必要があります。
API連携を成功させるための具体的な導入ステップ
API連携を円滑に進めるためには、技術的な実装に入る前の「準備」と、稼働後の「監視」のプロセスを重視してください。
STEP 1:連携要件の定義とAPIリファレンスの精読
まず、ビジネス側が求める「データの鮮度」と「連携のタイミング」を定義します。
接続先サービスの「APIリファレンス(仕様書)」を読み込み、必要なデータ項目が取得可能か、更新頻度は要件を満たすか、利用料金は予算内かを確認します。この段階で仕様上のミスマッチを見つけることが、プロジェクトの差し戻しを防ぐ最大のポイントです。
STEP 2:連携手法の選択(独自開発 vs iPaaS)
連携の実装方法を、コスト・工数・メンテナンス性の観点から決定します。
独自開発: 複雑なロジックや大量データの高速処理が必要な場合に適していますが、保守負荷は高くなります。
iPaaS(Integration Platform as a Service)の活用: ZapierやWorkato、Anyflowといったプラットフォームを利用することで、ノーコード・ローコードで迅速に連携を構築できます。APIの仕様変更をプラットフォーム側が吸収してくれるメリットもあります。
STEP 3:テストと運用監視体制の構築
本番稼働後は、APIが正常に動作しているかを常にモニタリングできる体制を整えます。
API連携のトラブルは「サイレント障害(エラーは出ていないが、データが正しく同期されていない状態)」になりがちです。定期的な疎通確認(ヘルスチェック)や、連携失敗時のエラーログ集計を自動化し、担当者がいち早く異変を察知できる仕組みを作ることが重要です。
APIを活用した柔軟なIT基盤の構築
API連携は、単なるデータ同期の手段にとどまらず、企業のビジネスモデルそのものを柔軟に変革するための強力なインフラです。
SaaSや基幹システム、オンプレミスのサーバーをAPIで繋ぎ、データが淀みなく流れる環境を構築することは、情シス部門にとって最も価値のある仕事の一つです。個別の連携を「点」で捉えるのではなく、プラットフォーム全体を「面」として最適化する視点を持つことで、保守性の高い、持続可能なシステム統合を実現できるでしょう。
まずは、現在社内で利用している主要なSaaSをリストアップし、それぞれの管理画面で『APIキーの発行状況』と『連携済みのアプリ一覧』を確認することから始めてみましょう。
現状、どのシステムがどこに繋がっているのか(あるいは繋がっていないのか)を可視化することが、安全で効率的なAPI連携への第一歩となります。
本記事の内容に誤り等がございましたら、こちらからご連絡ください。
監修
Admina Team
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